最弱だと追放された俺、実は神々の加護持ちでした 〜知らぬ間に世界最強になってた俺を今さら呼び戻そうとしてももう遅い〜

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第4話 傷ついたスライム、実は神獣

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森を抜けた先に、小さな集落が見えた。草葺きの屋根が並び、煙突から薄く煙が上がっている。文明というにはあまりに素朴だが、旅人が休むには十分な規模だ。  

レインは背中の荷を降ろして息をついた。「ふう、ようやく人里に戻れたな」  
リアが汗を拭いながら微笑む。「……やっとですね。王都まではまだ距離がありますし、今日はこちらで休みましょう。」  

肩の上でぷるぷると震えるルミナが、うれしそうに鳴いた。  
「ピュルッ」  
「お前も疲れたか」レインが笑うと、ルミナはうんうんと頷くように体を揺らす。  

村の入り口には木の柵があり、その先に見張りらしい老人が立っていた。彼は旅人を見ると怪訝な顔をしたが、リアの姿を見た瞬間、態度を変えた。  
「おお……これは……! 王族の紋章……?」  
リアは微笑んで答えた。「はい。アルミリア王国第二王女、リア・エルミスです。どうか一晩、避難所を貸してもらえますか?」  
老人は慌てて頭を下げた。「も、もちろんでございます! すぐに準備を!」  

レインはその光景を苦笑しながら見ていた。「便利だなあ、王族ってのは」  
「仕方ないでしょう? こういう時のための身分ですもの」とリアはあっけらかんと答えた。  

村の中央にある集会小屋を借り、二人と一匹はようやく腰を落ち着けた。木の扉を閉めると、ルミナがその場にころんと転がり、金色の光を弱々しく放つ。  

「……ルミナ? どうした?」  
ぷるんと体を震わせたが、光がどんどん弱まっていく。レインが慌てて抱き上げると、手の中が少し熱い。まるで高熱を出した子どものようだ。  

「リア、ルミナが……!」  
王女はすぐさま駆け寄り、神聖魔法の詠唱を始めた。淡い光がルミナを包み、優しく癒やす。しかし、ルミナの光は完全には戻らなかった。  

「おかしい……癒しの魔法が効かない……!」  
レインは歯を食いしばる。「昨日戦った時、何か傷を負ったのかもしれない。オレが気づかなかった……」  

リアは目を伏せ、低く呟いた。「神獣がここまで弱るのは、宿主との契約が不安定な時です。レイン、あなたの加護が暴走してルミナを蝕んでいるのかもしれません。」  

「そんな……!」  
焦燥が胸を焼く。ルミナの体がますます透けていく。  

その時、小屋の扉がノックされた。  
「王女殿下……? そちらで光が漏れておりますが、大丈夫で……」  
「問題ありません」とリアが答えると、扉の外の足音が遠ざかった。  

レインはルミナを手にし、深く息を吸いこんだ。「……オレの中の力を、制御できればいいんだな?」  
リアは警告するように言った。「危険です。下手に加護を解放すれば、あなた自身が壊れるかもしれません。」  
「でも、このままじゃルミナが死ぬ。放っておけるわけないだろ。」  

リアは言葉を失い、その目に一瞬、何かを決意する光が宿る。  
「……わかりました。私が補助します。あなたの加護と私の聖力を合わせれば、もしかしたら均衡が取れるかもしれません。」  

二人は床にルミナをそっと置き、向かい合って目を合わせた。リアが両手を合わせ、聖句を唱える。レインも目を閉じて力を集中させる。心の奥に、あの白い光が再び姿を現した。  

――これは、お前が望む力か。  

頭の中に、声が響く。男でも女でもない、透き通るような声。レインは恐れずに答える。  
「違う。でも今この瞬間だけは、必要なんだ。仲間を助けたい。」  

――ならば、加護は応える。汝の想いに。  

白い光が一気に広がり、小屋の中を満たした。眩しさにリアが目を覆う。レインは声を上げることもできず、光の奔流の中に立ち尽くしていた。  

その光はやがてルミナの身体に流れこみ、透けていた身体が再び輝きを取り戻す。小さな体が淡い金色に染まり、まるで羽のような光の揺らめきをまとった。  

「ピュウウ……!」  
高く澄んだ鳴き声が響き、ルミナが宙に浮かび上がる。  

レインの手の中から抜けるように舞い、空中でぐるぐると回った。部屋の空気が変わる。まるで神殿の中に立つような荘厳さ。  

「これは……」リアが息を呑む。「完全覚醒した……!」  

ルミナの体が瞬時に変化し、人間の子どものような姿をとる。光の髪、宝石のような瞳。小さな羽根が背中で淡く揺れていた。  

「お、おい……これがルミナ……?」  
「はい。真の神獣形態です。あなたの加護が完全に共鳴したのでしょう。」  

ルミナは両手を胸の前で合わせ、透き通る声で言った。  
「ありがとう、主様。危うく、消滅するところでした。」  
その丁寧な口調に、レインは思わず固まった。「しゃ、喋った!?」  

リアは苦笑を漏らす。「神獣ですから。当然、人の言葉も理解できます。」  

ルミナは小さく頭を下げた。「主様――いいえ、レイン。あなたの加護、“創世の光”が私の存在を安定させました。これからは、あなたと共に戦います。」  

レインは照れたように後頭部を掻く。「……戦うって言っても、オレそんな立派なもんじゃ――」  
ルミナが微笑みながら遮る。「あなたが自分をどう思おうと、真実は一つです。あなたこそ、“加護王”の再来。」  

リアが息を飲んだ。「加護王……それは、すべての神の力を束ねた者の称号。そんな存在が再び現れるなんて……!」  

「いやいやいや!」レインが慌てて手を振る。「オレはただの追放冒険者だって!」  

ルミナとリアは、お互いを見て微笑むだけだった。  

その時、小屋の外でざわめきが起きた。「おい! 魔物だ! 南の畑に魔物が出たぞ!」  

レインは立ち上がる。「またかよ……休む暇もないな。」  
リアが頷く。「行きましょう。村の人たちを守らなければ。」  

三人が外に飛び出すと、畑の向こうで灰色の狼の群れが暴れていた。十匹以上、牙を光らせ、村人を追い詰めている。  

レインは剣を抜く。「ルミナ、サポートを!」  
「了解です、主様。」  

ルミナの両手が光り、天から無数の光球が降り注いだ。狼たちはその場で動けなくなり、動揺する間にレインが一気に踏み込む。  

「はああっ!」  
斬撃が風を裂き、数秒後、すべての狼が塵となって霧散した。  

沈黙。やがて畑にいた村人たちが歓声をあげる。「すごい!」「あの人、神の戦士だ!」  

リアは笑みを浮かべた。「……英雄、ですね。」  
「いや、違う。ただ、できることをしただけだ。」  

ルミナが手のひらを胸の前に当てて言う。「それを英雄というのです。」  

レインはその言葉に何も返せず、空を見上げた。青く高い空。その煌めきが、どこか彼を試すように光っていた。  

その胸に、ほんの少しだけ誇りが灯る。  

「……行こう。まだ旅は始まったばかりだ。」  

「はい、レイン。」リアとルミナが揃って応えた。  

深い森を抜けた小さな村。その地から、彼らの運命は静かに次の舞台へと動き始める。  

(続く)
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