転生したら追放された雑用スキルで世界最強になっていた件~無自覚に救国してハーレム王になった元落ちこぼれの俺~

fuwamofu

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第2話 雨の森で拾った光

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朝焼けが森を淡く染め上げるころ、カイはフェンリルトと共に新しい街へ向かって歩いていた。昨日の出来事が夢のように思えた。巨大な狼と契約し、自分のスキルが謎の覚醒を見せたこと。けれど腕の紋章は確かにそこにある。何度見ても、金色の光が皮膚の下で脈打っていた。

「人間、お前、名前を名乗ったか?」  
フェンリルトが低く問う。  
「カイだよ。元は冒険者ギルド所属。まあ、今は追放されてるけどな。」  
「なるほど。ならば我が呼ぶときは“主(ぬし)”ではなく“カイ”でよいな。」  
「そんなにかしこまるなよ、対等で行こう。俺だってまだ訳が分からないんだ。」  

フェンリルトはふっと鼻を鳴らす。「その謙虚さ、悪くはない。我も退屈しのぎに付き合おう。」

しばらく歩いていると、森の上空がどんよりと曇り始めた。風が湿ってくる。  
「雨が降りそうだな。」  
「この辺りは昼前に急なスコールが来る。小屋か洞窟を見つけた方がいい。」  
フェンリルトの嗅覚が方角を示し、一行は森の奥へ進んだ。

やがて朽ちた木々の向こうに、半ば崩れかけた石造りの祠が見えた。森に飲み込まれた古代遺跡のような佇まいだ。  
「ここなら雨をしのげる。」  
カイが中へ入ろうとした瞬間、湿った風が祠の奥から吹き抜けた。  

何か、泣いている──いや、声ではない。光の粒が漂い、まるで誰かの感情そのものが空気に染み出しているようだった。  
「……フェンリルト、何か感じるか?」  
「魔力だ。それも、かなり古い。」  
「古いって?」  
「時代を越えて残るほどの“祈り”の残滓。精霊か、あるいはそれに近い存在だ。」

カイはゆっくりと光の方へ歩み寄った。床には青白い魔法陣が掠れた形で描かれている。  
中心には小さなクリスタルが転がっていた。触れた瞬間、光が爆ぜた。

「うわっ!?」  
光が収まると、そこに一人の少女が倒れていた。透き通るような金髪、白い法衣、そして薄く輝く翅。人間ではない。  

「……フェンリルト、これは……?」  
「間違いない、上位精霊族の娘だ。だが霊力が極端に落ちている。」  

カイは少女をそっと抱き起こした。体温はある。微かに息をしている。  
「ひどい怪我じゃないか……!」  
腕には黒い魔力の刻印が浮かんでいた。呪詛だ。普通の人間なら触れるだけで生命を蝕まれるほどの強力なもの。  

だが、カイの手がそれに触れた瞬間、紋章が淡く輝いた。  
【補助対象に異常状態を検知】  
【自動調整を実行します】  
という光の文字が浮かぶ。次の瞬間、少女の腕の呪いが煙のように消えていった。

「……なんだ、これ……」  
「お前の“雑用”だ。呪詛解除まで補助範囲なのか。まるで神の手だな。」  
フェンリルトが低く呟く。カイは答えに詰まった。  

少女のまぶたがゆっくりと開く。  
「……あなた、は……?」  
その声は小鳥のさえずりのように柔らかだった。  

「俺はカイ。通りがかりの冒険者、みたいなもんだ。君の名前は?」  
「……リュミナ。森の光の民……多分、そう呼ばれていたと思う。」  
「多分?」  
「記憶が少し、欠けていて……でも、あなたの手に触れた時、暖かかった。」  

リュミナはかすかに笑った。頬にほんのりと血色が戻る。  
外では本格的な雨が降り始め、祠の中を一定の静寂が包んだ。  

「しばらく休むといい。」  
カイは薪を並べ、焚火を灯した。火の温かさと、彼のスキルの効果で湿気が自然と和らぐ。  
「この炎……普通の火じゃない。」リュミナが目を見張る。「心が穏やかになる。」  
フェンリルトが鼻を鳴らした。「この男といると、炎も空気も最適化されるのだ。奇妙だが、悪くはない。」

「俺、何かをした覚えはないんだけどな……。」カイは苦笑した。  
それでも、確かに周囲の空気が心地よい。リュミナも深く息をついた。  

「あなたの力、何かに似ている。私たち精霊が、世界と調和する時の波長……でも、もっと大きなものに近い。」  
「大きなもの?」  
「“世界適応”……古の言葉で“すべてを調整する者”。」  

その言葉に、カイの胸がざわめいた。  
前回の戦闘でも、火の扱いも、狼との契約も、「適応」して成立していた。  
まさか、自分のスキル名が——。

「……世界適応、それが俺のスキルの本質なのか。」  
「たぶん、ね。でも使い方を誤れば、世界そのものを壊す。」  
リュミナの表情が少しだけ暗くなる。  
「あなたの力が完全に開かれた時、秩序が揺らぐ。だから記憶をなくした私たち精霊が、あなたを見つけるように運命づけられていたのかも。」

「そんな大げさな……俺はただの追放者だよ。」  
「いいえ、あなたはもう……違う。」リュミナが微笑む。「あなたの力で、私は救われた。」  

その言葉が妙に胸に残った。  
カイは視線を炎に落とす。  
パチパチと燃える音。  
いつの間にか雨が上がり、木の葉の滴が光を反射していた。  

やがて、リュミナは静かに立ち上がった。  
「もう少しで完全に癒えるわ。お願い、私も一緒に行かせて。」  
「危ない道になるかもしれない。」  
「それでも……支えたいの。私、あなたの“補助”になりたい。」  

その言葉に、カイは思わず笑った。  
「補助の補助か……俺らしいな。」  
「なら決まりだ。」フェンリルトが立ち上がる。「我ら三人、奇妙な縁で結ばれたチームだ。」  

森の木々が静かに風に揺れた。  
太陽が差し込み、祠の中に虹がかかる。その光景を見つめながら、カイはぼんやりと呟いた。  
「追放されたけど、悪くないな。ここから始めよう。新しい旅を。」  

リュミナが嬉しそうに笑い、フェンリルトが鼻を鳴らした。  
三人の前に広がるのは、まだ誰も知らない広大な世界だった。  
そしてその中心にいるのは、無自覚な最強へと歩み出した一人の青年。  

(続く)
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