転生したら追放された雑用スキルで世界最強になっていた件~無自覚に救国してハーレム王になった元落ちこぼれの俺~

fuwamofu

文字の大きさ
3 / 4

第3話 スキルの正体は「世界適応」

しおりを挟む
森の奥が静まり返っていた。昨夜の激しい雨の名残が、ところどころ水たまりを残している。木々の葉から滴る雫の音だけが、規則的なリズムを刻んでいた。  
カイは石の祠の前に立ち、腕に刻まれた金色の紋章を見つめていた。何度確認しても消えない。光が呼吸を合わせるように脈動している。

「その印、相当な力だな。」フェンリルトが静かに言った。  
「契約の証でもあるが、それ以上の何かを感じる。」  
「俺も、そう思う。けど、どう使えばいいか分からない。」  
「お前の内にある力は、“世界適応”だろう。」リュミナが横から口を開いた。「昨日も言ったけど、その力は単なる補助能力じゃない。世界そのものの均衡を“修正”するもの。」

「修正?」カイが首を傾げる。  
「たとえばね、火が強すぎれば理想的な温度に、冷たすぎれば適温に。“存在が望む最良の状態”へ勝手に調整される。それが、あなたのスキル。」  
「なるほど……つまり、相手が敵でも味方でも、俺の“雑用”として手を貸す範囲で、最適化されるってことか。」  
フェンリルトが鼻を鳴らす。「理屈は分からぬが、確かにカイの存在下では環境が穏やかだ。昨日の嵐ですら、寝心地が悪くなかった。」

カイは苦笑した。「便利すぎるな……でも、怖くもある。」  
「力に振り回されるな。」リュミナの声は静かだがどこか強い。「あなたが制御できなければ、周囲があなたに“最適化”され過ぎてしまう。生命の自然な流れを歪めるほどに。」  

カイは黙り込んだ。確かに、あの狼が敵意を失い従ったのも、力の効きすぎだったのかもしれない。  
「そうならないためには?」  
「“意志”だ。自分がどう在りたいかを明確に保つこと。あなたのスキルは、あなたの心を基点に働くから。」

リュミナの目は真剣で、どこか寂しげだった。フェンリルトが顎をしゃくる。  
「試しに、どこまで通用するか確かめてみよう。」  
「試すって……どこで?」  
「森の奥には“腐敗の沼”がある。魔物が棲み着き、百年近く近づく者がいない土地だ。あれを浄化できるか見たい。」

「浄化なんて、どうやるんだよ。」カイは呆れたように言いながらも、内心は少しだけ興味があった。  
「行って確かめればいい。」リュミナが小さく笑う。「世界適応なら、必ず何かが起こるはず。」

三人は森の深部へ向かって歩き出した。  
霧が濃く、空気が重い。鳥の声も聞こえない。足を踏み出すたびにぬめる感触がする。腐敗の臭いが鼻をついた。そこに、どす黒い水面が広がっていた。

「これが……腐敗の沼。」カイが呟く。  
「魔物の怨念や、滅んだ魔導士の呪詛が混ざり合ってる。普通は近づくだけで命を落とすわ。」リュミナの声が震えた。  
フェンリルトの毛並みが逆立つ。「中から何か来るぞ。」

水面が渦を巻く。黒い塊が盛り上がり、無数の腕を伸ばした。人でも魔獣でもない。  
怨念の塊が形を成した“瘴魔”だった。

「カイ、下がれ!」  
リュミナが光の障壁を張るが、瘴魔が触れた瞬間にひびが走る。  
フェンリルトが突進して牙を突き立てたが、粘つく身体が噛み砕けず弾かれた。  
「これはまずい。通常の攻撃は効かん!」

カイは咄嗟に両手を前に出した。何かしなくてはと願う。  
その瞬間、体の奥から言葉にならない衝動が湧きあがる。  
【環境不均整を検知】  
【補正開始】  

視界が白に染まり、沼全体が震えた。  
瘴魔が苦しげに咆哮を上げる。体が溶け、黒い泥が光に変わっていく。  
空気の淀みが晴れ、澄んだ風が吹き抜けた。  

フェンリルトもリュミナも息を呑んでいた。  
「……光が……瘴気を……!?」  
「神域の浄化か? いや、それ以上だ。」  

やがて沼は完全に静まり返った。濁った水は透明に戻り、草の芽が地面から顔を出した。  
カイは膝をつく。全身の力が抜け、頭の奥で鈍い痛みがあった。  
「カイ!」リュミナが駆け寄り、治癒の魔法をかける。  
「無事か?」フェンリルトが低く唸る。  
「……うん。ただ、力を使い過ぎたみたいだ。でも……浄化、できたんだよな?」  

リュミナは頷き、微笑を浮かべた。「ええ。あなたは“世界”を最も自然な形に戻した。瘴気すら、本来の生命力に還元されたの。」  
「そんなこと、できるのか……。」  
「できたじゃない。」  

リュミナの言葉に、カイは思わず笑った。だがその笑みの裏に、ほんの少しの不安がある。  
もしこの力が暴走すれば、自然どころか全ての生き物さえ“最適化”されるのではないか。生も死も、善も悪もなくなってしまう。  

「……怖いな、この力。」  
「だからこそ、使い方を学ぶんだ。」リュミナが柔らかく言った。「あなたは破壊者ではなく、調和者になれる。」  
「調和者……。」  
その言葉を反芻しながら、カイは立ち上がった。フェンリルトが隣に並ぶ。  
「主ではなく仲間として言う。お前の力はこの世界に必要だ。だが他者に知られれば、狙われるだろう。」  
「狙われる?」  
「“世界適応”は神域に連なる領域だ。人間の王国どころか、神々ですら干渉したがるはず。」  

カイは唇を噛んだ。  
「だったら隠すしかないな。俺のスキルを“雑用”のままにしておこう。」  
「賢明だ。」フェンリルトが頷く。「力を知られぬうちに成長すれば、敵も対処できまい。」  

リュミナも小さくうなずいた。「これから行く町には、冒険者ギルドがある。あなたの討伐記録を改めれば、きっと再登録できるわ。」  
「追放された俺でも?」  
「ええ。新しい名前、新しい肩書きでね。」  

新しい名前。新しい旅。  
カイは沼の跡地を見渡した。そこには小鳥の声と、柔らかな風が戻っていた。  
彼の胸の痛みは、消えていなかった。それでも前を見据える。  

「俺、やってみるよ。今度こそ、自分の力を誰かのために使いたい。」  
「それでこそ主だ。」フェンリルトが尻尾を振る。  
「仲間。」リュミナがその言葉を優しく繰り返す。  

三人は再び森を抜け、光の差す方角へと歩き出した。  
遠くから聞こえる風の音が、まるで新しい物語の始まりを告げているようだった。  

(続く)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~

fuwamofu
ファンタジー
魔力量ゼロの落ちこぼれとして勇者パーティを追放された少年リアン。 絶望の果てに始めた自由な旅の中で、偶然助けた少女たちが次々と彼に惹かれていく。 だが誰も知らない。彼こそが古代勇者の血を継ぎ、世界を滅ぼす運命の「真なる勇者」だということを──。 無自覚最強の少年が、世界を変える奇跡を紡ぐ異世界ファンタジー!

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ノアは、敵を弱体化させる【呪物錬成】スキルで勇者パーティを支えていた。しかし、その力は地味で不吉だと疎まれ、ダンジョン攻略失敗の濡れ衣を着せられ追放されてしまう。 全てを失い、辺境の街に流れ着いたノア。生きるために作った「呪いの鍋」が、なぜか異常な性能を発揮し、街で評判となっていく。彼のスキルは、呪いという枷と引き換えに、物の潜在能力を限界突破させる超レアなものだったのだ。本人はその価値に全く気づいていないが……。 才能に悩む女剣士や没落貴族の令嬢など、彼の人柄と規格外のアイテムに惹かれた仲間が次第に集まり、小さな専門店はいつしか街の希望となる。一方、ノアを追放した勇者パーティは彼の不在で没落していく。これは、優しすぎる無自覚最強な主人公が、辺境から世界を救う物語。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

処理中です...