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君を買いたいと言われましたが、私は売り物ではありません
後編
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「……ここだ」
ゼノンさんはそう言うと、家を開けて中に入っている。
「ちょ、勝手に入っていいんですか!?」
「…………」
返事ないんですけど?
私も恐る恐るゼノンさんについていく。
「ゼノンか? 勝手に入ってくるな」
不機嫌そうなライネル様の声がしたにも関わらず、勝手にその部屋の扉を開けるゼノンさん。
「……シオーネ?」
ライネル様が私の姿を見て、わずかに首を傾げながら、手はストレイアテイルをかわいがっている。
「……テイル……!!」
一瞬固まったかと思ったら、ゼノンさんは驚きの声を上げていた。そういえば、ストレイアテイルをお嫁にしたのはライネル様だったって、伝えてなかったわ。
「テイル──…………ッ」
ゼノンさんはライネル様に近づいたかと、ストレイアテイルを奪い取った。
「おい、ゼノン。お前、婚約者を放ってなにをしているんだ」
私とゼノンさんとストレイアテイルへ交互に視線を送るライネル様。
っていうか婚約者って誰……え、私?
「あの、ライネル様! 勘違いしていると思うのですが」
「大丈夫だ、振られた以上邪魔はしない。そもそも俺がシオーネの店に行ったのは、ゼノンの恋を叶えるためだったからな」
「………はい?」
ちょっとライネル様がなにを言っているのかわからない。
当のゼノンさんはストレイアテイルに夢中になっているし。どういうこと!?
「ライネル様が初めてお店に来た時、私を買うとか言ってましたよね?」
「ああ。本当にシオーネを買うつもりだった」
冗談じゃなかったんですか、あれ……軍人が人を買うのはまずいのでは? いえ、軍人じゃなくてもだめだけど!
「ゼノンがシオーネに夢中になり、無限に金を貢いでいると知ってな」
そこの情報からまず間違ってますが?
ゼノンさんが夢中になっていたのは、お店の動物たち!
そして貢いでいたのも動物たちなのに、まさかの私に貢いでいたと勘違いを……!
「金でどうにかなる女ならば、俺が買い取ってゼノンに与えようと思っていた」
そんな、おもちゃを買うみたいに私を買い与えようとしないでくださいぃ!
「どうしてそこまでしようと……」
「ゼノンは以前、シオーネに振られて一ヶ月ほど使い物にならなかったことがあったんだ」
あ、それ、きっとお気に入りの子がお嫁に行っていなくなった時だ。そもそも私は振るどころか、告白されてすらいない。
「なのに諦めずに、また貢ぎ始めた。これではキリがない。無理にでも結婚させて落ち着かせ、バリバリ働かせようと思っていた」
それで私を買い与えて結婚させようと……以前ライネル様が、ゼノンさんのことを世話の焼ける男だと言っていたのは、そういう意味!?
「じゃあ、ずっと私のお店に通っていたのは……」
「シオーネの弱みを握るか、どうにか懐柔して、さっさとゼノンと結婚させてやろうと思ってな」
そんな……理由で……毎日来てたんだ……。
なんだ。
私、好かれてるって勘違いして……勝手にライネル様のこと、好きになって……っ
結婚するつもりでいたなんて、バカみたい……っ
ライネル様は、私のこと全然そんな目で見てなかったのに……。
「まぁ、俺が策をめぐらさずとも上手くいったようだがな。結婚すると聞いた時、すぐに相手はゼノンだとわかった。他に親しい男も来なかったからな」
勘違いが過ぎる………!
本当に切れ者と言われる軍事顧問? 色恋に関しては疎いの? 恋愛偏差値どうなってるんですか!?
そもそも、部下の恋愛事情に深入りしてません?? プライベートは干渉しないルールだって言ってませんでしたっけ!
「お二人とも、無言で家に入ったり貢ぐ相手を調べたり、お互いに干渉し過ぎじゃ……」
「まぁ、ついな」
ルールを作っても、つい気になって干渉しちゃうんですね? 仲良し……!
勘違いしたのは、干渉し過ぎないようにと努力した結果なのかも。重要な箇所だけ共有されていないものね。
ゼノンさんは我関せずで、もう二度と会えないと思っていたストレイアテイルを愛で続けている。
「そろそろ名無しを返せ。俺の嫁だ」
「…………テイルは俺がもらう」
「お前にはシオーネがいるだろう。婚約者を前に浮気するんじゃない」
なんかすごい会話ですね?
「あの、ライネル様。私、ゼノンさんと結婚はしませんよ?」
「浮気が許せないのか?」
「いえいえ、そりゃ浮気は許せないですけど、そもそもゼノンさんとは付き合ってすらないので浮気もなにもないです」
「…………ん?」
ライネル様の眉間に皺が寄った。そんな顔でさえも美形で、つい魅入ってしまう。
「付き合って……ないのか? しかしシオーネは結婚すると言っただろう」
「それは……」
ああ、ライネル様の勘違いを笑えない。私もめちゃくちゃ勘違いしてたから!
でも、笑われてもいい。ちゃんと、自分の気持ちだけは伝えよう。
「私、ライネル様と結婚する気満々だったんです!」
「………………は?」
ですよね! でもぽかーんと開けた口も素敵。
あれ? でも急に顔が赤く……?
「……俺の気持ちを知っていたのか」
「ライネル様の……気持ち?」
私は首を傾げる。
「ゼノンさんのために、私を買おうと奮闘していたんですよね?」
「まぁ……最初はそうだった。シオーネは悪女だと思っていたからな」
ライネル様の中で、私はゼノンさんをたらしこむ悪女だったんですね!? だから買おうなんて発想に!
「私を嫁に欲しいって言ってたのも、自分の嫁ではなくてゼノンさんの嫁に欲しいって意味だったんですよね?」
「その時は、そうだったな」
「その時は?」
逆側に首を傾げると、ライネル様は少し頬を赤らめたまま目を伏せた。
「その、つもりだったんだが……いつしかゼノンに渡したくないと思うようになってしまっていた」
「それって……」
え? 待って。
鼓動がうるさくて、上手く考えがまとまらない……
それって、それって、つまり!?
「動物相手にいつも一生懸命なシオーネに、俺はいつの間にか惹かれていたようだ」
まっすぐ向けられた顔に、もう照れはなくって。
ほんの少し見せられた笑みに、私の顔は爆発してしまいそう!
「わ、私を好きってことですか?」
「そうなるな。正直、結婚すると言われた時はショックすぎて、癒しに手を出さずにはいられなかった」
それでこの子をお嫁にもらってくれてたんですか!
「シオーネ」
「は、はい」
優しい声で名前を呼ばれて、心臓が不規則に動きそうになる。
「俺と結婚するという気持ちは、今も変わっていないか?」
甘いのです……お顔が……!
「はいっ! どうか、私もお嫁にもらってください!」
「俺の嫁は一人で十分だ。ストレイアテイルは、傷心のゼノンに譲ろう。すまんな、ゼノン」
ストレイアテイルを譲るという言葉にだけ反応したゼノンさんは、顔をキラキラとさせている。
そんなお顔もできたんですね、ゼノンさん……!
「……いいのか」
「ああ。その代わり、シオーネは諦めろ」
「……? ……わかった」
そこの勘違いはされたまま……? わかったって言ってるゼノンさんもよくわかってなさそうですけど。
「これで心置きなく結婚できる」
軽く息を吐いたかと思うと、ライネル様の真剣な瞳は私に向けられた。
「シオーネ。俺にもらわれてくれ」
ひやぁ、プロポーズ……!
でもうちの子たちをもらっていくお客様たちと、同じ言葉で笑えてしまう。
「ふふっ。私、高いですよ?」
「一生かけて払っていくさ。まずは、手付金だ」
背中に手を回されたかと思うと、ぐいっと抱き寄せられて──
「ひゃっ!?」
おでこに……! キ、キスを……!!
「手、手が早過ぎますよ、ライネル様っ」
「心配するな。嫁は大事にする主義だ」
本当ですか? 本当ですね?
私が見上げると、ライネル様は優しく目を細めてくれて。
隣でストレイアテイルが「ンミッ」と鳴いていた。
今までたくさんの子をお嫁に出してきた私にも、ようやくもらってくれる人が現れたようです。
ゼノンさんはそう言うと、家を開けて中に入っている。
「ちょ、勝手に入っていいんですか!?」
「…………」
返事ないんですけど?
私も恐る恐るゼノンさんについていく。
「ゼノンか? 勝手に入ってくるな」
不機嫌そうなライネル様の声がしたにも関わらず、勝手にその部屋の扉を開けるゼノンさん。
「……シオーネ?」
ライネル様が私の姿を見て、わずかに首を傾げながら、手はストレイアテイルをかわいがっている。
「……テイル……!!」
一瞬固まったかと思ったら、ゼノンさんは驚きの声を上げていた。そういえば、ストレイアテイルをお嫁にしたのはライネル様だったって、伝えてなかったわ。
「テイル──…………ッ」
ゼノンさんはライネル様に近づいたかと、ストレイアテイルを奪い取った。
「おい、ゼノン。お前、婚約者を放ってなにをしているんだ」
私とゼノンさんとストレイアテイルへ交互に視線を送るライネル様。
っていうか婚約者って誰……え、私?
「あの、ライネル様! 勘違いしていると思うのですが」
「大丈夫だ、振られた以上邪魔はしない。そもそも俺がシオーネの店に行ったのは、ゼノンの恋を叶えるためだったからな」
「………はい?」
ちょっとライネル様がなにを言っているのかわからない。
当のゼノンさんはストレイアテイルに夢中になっているし。どういうこと!?
「ライネル様が初めてお店に来た時、私を買うとか言ってましたよね?」
「ああ。本当にシオーネを買うつもりだった」
冗談じゃなかったんですか、あれ……軍人が人を買うのはまずいのでは? いえ、軍人じゃなくてもだめだけど!
「ゼノンがシオーネに夢中になり、無限に金を貢いでいると知ってな」
そこの情報からまず間違ってますが?
ゼノンさんが夢中になっていたのは、お店の動物たち!
そして貢いでいたのも動物たちなのに、まさかの私に貢いでいたと勘違いを……!
「金でどうにかなる女ならば、俺が買い取ってゼノンに与えようと思っていた」
そんな、おもちゃを買うみたいに私を買い与えようとしないでくださいぃ!
「どうしてそこまでしようと……」
「ゼノンは以前、シオーネに振られて一ヶ月ほど使い物にならなかったことがあったんだ」
あ、それ、きっとお気に入りの子がお嫁に行っていなくなった時だ。そもそも私は振るどころか、告白されてすらいない。
「なのに諦めずに、また貢ぎ始めた。これではキリがない。無理にでも結婚させて落ち着かせ、バリバリ働かせようと思っていた」
それで私を買い与えて結婚させようと……以前ライネル様が、ゼノンさんのことを世話の焼ける男だと言っていたのは、そういう意味!?
「じゃあ、ずっと私のお店に通っていたのは……」
「シオーネの弱みを握るか、どうにか懐柔して、さっさとゼノンと結婚させてやろうと思ってな」
そんな……理由で……毎日来てたんだ……。
なんだ。
私、好かれてるって勘違いして……勝手にライネル様のこと、好きになって……っ
結婚するつもりでいたなんて、バカみたい……っ
ライネル様は、私のこと全然そんな目で見てなかったのに……。
「まぁ、俺が策をめぐらさずとも上手くいったようだがな。結婚すると聞いた時、すぐに相手はゼノンだとわかった。他に親しい男も来なかったからな」
勘違いが過ぎる………!
本当に切れ者と言われる軍事顧問? 色恋に関しては疎いの? 恋愛偏差値どうなってるんですか!?
そもそも、部下の恋愛事情に深入りしてません?? プライベートは干渉しないルールだって言ってませんでしたっけ!
「お二人とも、無言で家に入ったり貢ぐ相手を調べたり、お互いに干渉し過ぎじゃ……」
「まぁ、ついな」
ルールを作っても、つい気になって干渉しちゃうんですね? 仲良し……!
勘違いしたのは、干渉し過ぎないようにと努力した結果なのかも。重要な箇所だけ共有されていないものね。
ゼノンさんは我関せずで、もう二度と会えないと思っていたストレイアテイルを愛で続けている。
「そろそろ名無しを返せ。俺の嫁だ」
「…………テイルは俺がもらう」
「お前にはシオーネがいるだろう。婚約者を前に浮気するんじゃない」
なんかすごい会話ですね?
「あの、ライネル様。私、ゼノンさんと結婚はしませんよ?」
「浮気が許せないのか?」
「いえいえ、そりゃ浮気は許せないですけど、そもそもゼノンさんとは付き合ってすらないので浮気もなにもないです」
「…………ん?」
ライネル様の眉間に皺が寄った。そんな顔でさえも美形で、つい魅入ってしまう。
「付き合って……ないのか? しかしシオーネは結婚すると言っただろう」
「それは……」
ああ、ライネル様の勘違いを笑えない。私もめちゃくちゃ勘違いしてたから!
でも、笑われてもいい。ちゃんと、自分の気持ちだけは伝えよう。
「私、ライネル様と結婚する気満々だったんです!」
「………………は?」
ですよね! でもぽかーんと開けた口も素敵。
あれ? でも急に顔が赤く……?
「……俺の気持ちを知っていたのか」
「ライネル様の……気持ち?」
私は首を傾げる。
「ゼノンさんのために、私を買おうと奮闘していたんですよね?」
「まぁ……最初はそうだった。シオーネは悪女だと思っていたからな」
ライネル様の中で、私はゼノンさんをたらしこむ悪女だったんですね!? だから買おうなんて発想に!
「私を嫁に欲しいって言ってたのも、自分の嫁ではなくてゼノンさんの嫁に欲しいって意味だったんですよね?」
「その時は、そうだったな」
「その時は?」
逆側に首を傾げると、ライネル様は少し頬を赤らめたまま目を伏せた。
「その、つもりだったんだが……いつしかゼノンに渡したくないと思うようになってしまっていた」
「それって……」
え? 待って。
鼓動がうるさくて、上手く考えがまとまらない……
それって、それって、つまり!?
「動物相手にいつも一生懸命なシオーネに、俺はいつの間にか惹かれていたようだ」
まっすぐ向けられた顔に、もう照れはなくって。
ほんの少し見せられた笑みに、私の顔は爆発してしまいそう!
「わ、私を好きってことですか?」
「そうなるな。正直、結婚すると言われた時はショックすぎて、癒しに手を出さずにはいられなかった」
それでこの子をお嫁にもらってくれてたんですか!
「シオーネ」
「は、はい」
優しい声で名前を呼ばれて、心臓が不規則に動きそうになる。
「俺と結婚するという気持ちは、今も変わっていないか?」
甘いのです……お顔が……!
「はいっ! どうか、私もお嫁にもらってください!」
「俺の嫁は一人で十分だ。ストレイアテイルは、傷心のゼノンに譲ろう。すまんな、ゼノン」
ストレイアテイルを譲るという言葉にだけ反応したゼノンさんは、顔をキラキラとさせている。
そんなお顔もできたんですね、ゼノンさん……!
「……いいのか」
「ああ。その代わり、シオーネは諦めろ」
「……? ……わかった」
そこの勘違いはされたまま……? わかったって言ってるゼノンさんもよくわかってなさそうですけど。
「これで心置きなく結婚できる」
軽く息を吐いたかと思うと、ライネル様の真剣な瞳は私に向けられた。
「シオーネ。俺にもらわれてくれ」
ひやぁ、プロポーズ……!
でもうちの子たちをもらっていくお客様たちと、同じ言葉で笑えてしまう。
「ふふっ。私、高いですよ?」
「一生かけて払っていくさ。まずは、手付金だ」
背中に手を回されたかと思うと、ぐいっと抱き寄せられて──
「ひゃっ!?」
おでこに……! キ、キスを……!!
「手、手が早過ぎますよ、ライネル様っ」
「心配するな。嫁は大事にする主義だ」
本当ですか? 本当ですね?
私が見上げると、ライネル様は優しく目を細めてくれて。
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