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ただの花屋の僕だけど、ツンデレ女騎士団長に一目惚れしたのであなたを溺愛したいです。
前編
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ああ、もうくたくただ。
朝からずっとリヤカーを引いて花を売るのは、かなり疲れる。
しかも今日は売れ行きが悪いし……困ったなぁ。
僕はリヤカーに山ほど残っている花を見た。こんなにきれいなのに、どうしてみんな買おうとしないんだろう。
もうすぐ夕方になるっていうのに、今日の稼ぎじゃ晩御飯を食べられない。
はぁ、と僕はため息をついた。
街中を見ると、仕事を切り上げた人たちが家路を急いでいる。徐々に赤く染まる空は、黒い鳥でさえも巣に帰ろうとしてる。
「仕方ない。今日は晩御飯抜きだ……」
とぼとぼキコキコとうなだれながら家に帰ろうとしていたら、ドシンと誰かにぶつかってしまった。
「なにしやがる、ガキ!!」
「わ、すみません!」
ガキって僕、もう二十五歳ですけど!
わー、よりによって街のごろつきにぶつかっちゃったよ。しかも二人もいる、どうしよう?
「ああん? 男のくせに花なんか売りやがって」
「いいでしょう? 花は癒されますし、一本いかがですか?」
「いらねーよ、ばーか! 気持ち悪ぃ。こうしてやる!」
「あっ!!」
ごろつきたちがいきなり剣を抜いて振り回した。
花は無惨にも切り刻まれて辺りに舞い散る。
「ヒャッハー!!」
「悪ぃことはやめらんねぇな!」
僕の、花が……!!
「やめて、やめてください!!」
止めようとしたけど、ごろつきの肘が僕の顎に当たって尻もちをついた。
痛い。なんでこんなにひどいことをするんだ。
「やめ……」
「やめろ、貴様ら」
ギン、ギンッと音がしたかと思うと、ごろつきたちの剣が宙に舞った。
僕の目の前には、大きな人影。
「げ、無表情の悪魔! 女騎士団長アビゲイル!!」
「逃げろ!」
「逃がすわけがないだろう」
その人はあっという間にごろつきたちを地面に押さえつけてしまった。すごい。
この人があの有名な女騎士団長さんか。間近で初めて見たよ。
大きな人だ。女性なのに、僕より少し背が高いみたい。
「有り金を全て出せ。この青年に渡すんだ」
いや、それだけ聞いたら、アビゲイルさんが悪者みたいに聞こえちゃうけどね?
「有り金全部渡したら、見逃してくれるんすか~?」
「そんなわけないだろう。お前ら二人ともブタ箱行きだ」
「ひーっ」
「いいから金をよこせ」
え、騎士団長って正義の味方で合ってますよね?
アビゲイルさん は有無も言わさずごろつきたちの財布を取り出すと、中身の全てを僕に渡してくれた。
「賠償代だ。足りるか」
「ひぇ?! は、はい、十分です!」
「次からは気をつけろ」
「は、はい、ありがとうございます!!」
ってかごろつき、いくら持ってるの? 札束すごいんだけど、本当にもらっていいのかな。
「あの、やっぱりこれだけでいいです。残りはお返しします」
さすがにもらえなくて、僕は切られた花の分だけもらうと、残りはアビゲイルさんに渡した。
「欲のない男だ。もらっておけばよいものを」
「いえ、さすがにそういうわけには……その人にも、生活があるでしょうし……」
「悪さをして稼いだ金だ。お前のような善良な市民に還元しても問題はない。こいつらは生涯、ブタ箱に詰め込んでおくから気にするな」
「「ぶひいぃーー」」
アビゲイルさんがごろつきたちの背中を踏んだ。ブタのような声を上げて涙を流し始めたごろつきたちを見ると、さすがにちょっと心が痛む。
「あの、もうあなたにやられて反省していると思うので……許してあげてくれませんか?」
「はぁ? なにを言って……」
「しましたーー!」
「反省しましたァァア!!」
「ほら、本人たちもこう言ってますし」
「こんな奴らの言葉など、信じられるわけがないだろう」
アビゲイルさんは自分の剣をザシュッと地面に突き刺した。目の前で鈍く光る剣を見たごろつきたちは、いよいよ漏らしてしまいそうになってる。
「あの、僕、こんなこともうしないって約束してくれたら、それで十分です」
「約束するぅうう!」
「しまっするぅううう!!」
僕はそう訴えてごろつきたちも約束してくれたけど、無表情の悪魔と呼ばれる女騎士団長さんは納得いってないみたいだ。
「こいつらはクソだぞ。野放しにしておけば、必ずなにかをやらかすに違いないんだ。だから全員ブタ箱行きに──」
「女の子がクソとかブタ箱なんて言葉を使っちゃ、ダメですよ」
「なっ」
僕は無事だったデイジーを一輪リヤカーから取り出すと、アビゲイルさんの耳元につけてあげた。
「え?」
「すごく似合ってます。かわいいですね」
「な、な、なにを……っ」
一体誰が無表情の悪魔なんて言い出したのかな。真っ赤に染まったアビゲイルさんの顔は、天使みたいにかわいいのに。
朝からずっとリヤカーを引いて花を売るのは、かなり疲れる。
しかも今日は売れ行きが悪いし……困ったなぁ。
僕はリヤカーに山ほど残っている花を見た。こんなにきれいなのに、どうしてみんな買おうとしないんだろう。
もうすぐ夕方になるっていうのに、今日の稼ぎじゃ晩御飯を食べられない。
はぁ、と僕はため息をついた。
街中を見ると、仕事を切り上げた人たちが家路を急いでいる。徐々に赤く染まる空は、黒い鳥でさえも巣に帰ろうとしてる。
「仕方ない。今日は晩御飯抜きだ……」
とぼとぼキコキコとうなだれながら家に帰ろうとしていたら、ドシンと誰かにぶつかってしまった。
「なにしやがる、ガキ!!」
「わ、すみません!」
ガキって僕、もう二十五歳ですけど!
わー、よりによって街のごろつきにぶつかっちゃったよ。しかも二人もいる、どうしよう?
「ああん? 男のくせに花なんか売りやがって」
「いいでしょう? 花は癒されますし、一本いかがですか?」
「いらねーよ、ばーか! 気持ち悪ぃ。こうしてやる!」
「あっ!!」
ごろつきたちがいきなり剣を抜いて振り回した。
花は無惨にも切り刻まれて辺りに舞い散る。
「ヒャッハー!!」
「悪ぃことはやめらんねぇな!」
僕の、花が……!!
「やめて、やめてください!!」
止めようとしたけど、ごろつきの肘が僕の顎に当たって尻もちをついた。
痛い。なんでこんなにひどいことをするんだ。
「やめ……」
「やめろ、貴様ら」
ギン、ギンッと音がしたかと思うと、ごろつきたちの剣が宙に舞った。
僕の目の前には、大きな人影。
「げ、無表情の悪魔! 女騎士団長アビゲイル!!」
「逃げろ!」
「逃がすわけがないだろう」
その人はあっという間にごろつきたちを地面に押さえつけてしまった。すごい。
この人があの有名な女騎士団長さんか。間近で初めて見たよ。
大きな人だ。女性なのに、僕より少し背が高いみたい。
「有り金を全て出せ。この青年に渡すんだ」
いや、それだけ聞いたら、アビゲイルさんが悪者みたいに聞こえちゃうけどね?
「有り金全部渡したら、見逃してくれるんすか~?」
「そんなわけないだろう。お前ら二人ともブタ箱行きだ」
「ひーっ」
「いいから金をよこせ」
え、騎士団長って正義の味方で合ってますよね?
アビゲイルさん は有無も言わさずごろつきたちの財布を取り出すと、中身の全てを僕に渡してくれた。
「賠償代だ。足りるか」
「ひぇ?! は、はい、十分です!」
「次からは気をつけろ」
「は、はい、ありがとうございます!!」
ってかごろつき、いくら持ってるの? 札束すごいんだけど、本当にもらっていいのかな。
「あの、やっぱりこれだけでいいです。残りはお返しします」
さすがにもらえなくて、僕は切られた花の分だけもらうと、残りはアビゲイルさんに渡した。
「欲のない男だ。もらっておけばよいものを」
「いえ、さすがにそういうわけには……その人にも、生活があるでしょうし……」
「悪さをして稼いだ金だ。お前のような善良な市民に還元しても問題はない。こいつらは生涯、ブタ箱に詰め込んでおくから気にするな」
「「ぶひいぃーー」」
アビゲイルさんがごろつきたちの背中を踏んだ。ブタのような声を上げて涙を流し始めたごろつきたちを見ると、さすがにちょっと心が痛む。
「あの、もうあなたにやられて反省していると思うので……許してあげてくれませんか?」
「はぁ? なにを言って……」
「しましたーー!」
「反省しましたァァア!!」
「ほら、本人たちもこう言ってますし」
「こんな奴らの言葉など、信じられるわけがないだろう」
アビゲイルさんは自分の剣をザシュッと地面に突き刺した。目の前で鈍く光る剣を見たごろつきたちは、いよいよ漏らしてしまいそうになってる。
「あの、僕、こんなこともうしないって約束してくれたら、それで十分です」
「約束するぅうう!」
「しまっするぅううう!!」
僕はそう訴えてごろつきたちも約束してくれたけど、無表情の悪魔と呼ばれる女騎士団長さんは納得いってないみたいだ。
「こいつらはクソだぞ。野放しにしておけば、必ずなにかをやらかすに違いないんだ。だから全員ブタ箱行きに──」
「女の子がクソとかブタ箱なんて言葉を使っちゃ、ダメですよ」
「なっ」
僕は無事だったデイジーを一輪リヤカーから取り出すと、アビゲイルさんの耳元につけてあげた。
「え?」
「すごく似合ってます。かわいいですね」
「な、な、なにを……っ」
一体誰が無表情の悪魔なんて言い出したのかな。真っ赤に染まったアビゲイルさんの顔は、天使みたいにかわいいのに。
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