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世の中に絶望してた孤児の僕が王に拾われて溺愛される話
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しおりを挟む「何をしている。」
王の声が、部屋に響き渡る。
いつものように静かで少し低い声。だが、明らかに怒りを含んだ声だった。
当たり前だ。いくら僕に良くしてくれているとはいえ、王子は血の繋がっている可愛い息子。
平凡な孤児が口づけをするなんて、許されるはずがない。
「もう一度聞く。何を、している。」
さっきよりも押し殺したような低い声。
聞くだけで指先が冷たくなっていく。
そんな王の怒気などお構いなしに、王子が口を開く。
「父さん聞いてくれっ!こいつが俺に勝手に、」
「私はシュウに聞いているんだ。シュウ、何をしているんだ。」
僕を見つめる王。
いつもの優しい目ではない。
この姿を目に焼きつけておかなければ。
もう会えなくなるのだから。
「……王子に、口づけをいたしました。」
「なぜだ。」
王の眉間に皺が寄る。
そんな顔さえ、僕の胸を熱くさせる。
「王子を、あ、愛しているから、です……。」
王子に口づけをできるのは、王子の許嫁だけだ。それ以外の者が口づけをすると、不敬罪となり、最悪死刑になる。
いくら王が拾ってきた男といっても、何かしらの罰は下るはずだ。
王子にはすでに婚約者がいるし、そもそも王子が僕を好きになることなんて万にひとつもない。
僕を可愛いがっていた王でも、法律を覆してまで王子よりこんな平民を優先することはないだろうし、何より王子が黙ってない。
僕には罰が下る。
もうここにはいられない、良くて王宮追放だ。
死刑になったとしても構わないと思っている。
どうせ王宮に連れて来られなかったらのたれ死んでいただろうから。
どのみちもう王の傍にいることはできない……王に話しかけてもらうことも、触ってもらうことも、もうなくなるのだ。
「はははっシュウも冗談が言えるようになったのか。だが、時と場合を考えなくてはいけないよ。それとも、王子に無理やりされたのか?庇わなくたっていいんだよ。」
予想外の言葉に一瞬思考が止まる。
…王は何を言っているんだ?
庇ってなどいない。
だいたい、どう見たって僕が王子に口づけをしたように見えたはずなのに。
「なっ!父さん!こいつから俺にキ、キスしたんだ!口づけをしたんだぞ!平民で不細工のくせに……汚らわしい!死刑だ、あいつを一刻も早く殺してくれ!」
ゴキッ
気味の悪い音と共に、王に食って掛かっていた王子がその場に崩れた。
何が起こったのか。
「はあ、愚息が酷いことを言ったね。私のシュウに、あろうことか……いや、口にするのもおぞましい。シュウ、気を悪くしないでくれ。」
そう言いながら、王はゆっくり僕の方に近づいてくる。
王子が、僕を見ている。
虚ろな瞳で。
口からは唾液が垂らし。
いつもの大声が嘘のように、静かに身体を床に預け、ぴくりとも動かない。
いつの間にか、王は目の前にいた。
僕の頬を撫でながら、問いかける。
「さっきのは冗談なのだろう?……なんで、口づけをしていたんだい?本当の理由を教えてごらん。」
拾われた時と同じ、強い瞳で見つめられる。
だが、あの時よりも深く刻まれた目尻の皺を見ても、あの時のように安心することなどできなかった。
なぜ、冗談だと思うのだろうか。
なぜ、僕を責めないのだろうか。
なぜ、王子がそこに倒れているんだろうか。
なぜ、背筋が震えるんだろうか。
「……王子を愛しているからです。だから、僕が王子に、口づけをいたしました。」
「あぁ、甘やかしすぎてしまったのかもしれないな……シュウ、私のために生きろと、言ったはずだ。」
燃えるような強い瞳に動けずにいると、折れそうなほど強い力で腕を掴まれ、寝室へと引きずられる。
なぜ、なぜ、なぜ。
なぜ、王は僕を寝室へと連れていくの。
なぜ、王は僕の服を破いていくの。
なぜ、
王に犯されているの。
なぜ、なぜ、
なぜ………、
指1本も動かせないほど酷使した身体を、再び揺さぶられる。
すでに自分は出し尽くしてしまったが、彼は満足していないようだった。
「ぁあっ…っひ……お、お許しを、っはぁ、王、許し、ぁあ゙っ」
うわ言のように、許しを請う言葉だけが口から溢れ落ちる。
まさかこれが罰なのか。王に犯されることが、王子にキスした僕への。
王は怪しげな笑みを浮かべ、腰を打ちつける。
いつもの、優しい微笑みではない、どこかほの暗く、それでいて色っぽい、そんな笑み。
「私は勘違いしていたのかな。シュウは私が好きだと、シュウには私しかいないと、そう思っていたのだが。」
王の腰の動きが一層速くなる。
激しい律動に、僕の下腹部は感覚が無くなりつつあった。しかし、快感だけは確かに拾うのだ。
「シュウ、シュウ、あいつを、王子を好きだなんて、愛しているなんて嘘だろう?シュウの瞳に私以外の者が映るだけでも気が狂いそうになるのに、あ、愛しているだなんて、そんな、ははっ嘘なんだろう?シュウ、シュウ、私だけのシュウだ。誰にも渡しはしない。初めて会ったあの日から、お前は頭の先からつま先まで、全て、全て私のものだ、シュウ、もうあんな馬鹿げたことは言ってはいけないよ。今回だけだ、許してやるのは、次は、殺してしまうかもしれない、いや、殺したくはない、いつも、シュウはいつも私だけを見て、私だけを考えて、シュウ、私のそばに、シュウ、シュウ、シュウ、」
腰を動かしながら僕に狂気的な愛を囁くのは、この国で一番の男だ。
誠実で、厳しくも優しくて、僕を“人間”にしてくれた、僕にとって神様のような。
僕のなにがいいのか。
目の前の男はただただ僕の名前を呼び続ける。
なんだ、愛していたのは自分だけではなかったのか。
こんなに狂おしい想いを胸にしまっていたのは、僕だけではなかったのだ。
口元が緩む。
王、王様、僕を、
力の入らない身体に鞭打ち、王の首に腕をまわす。
そのまま王の首筋にかぶりつき、耳元で囁いた。
「 。」
王は目を見開き、僕の身体を抱きしめた。
***
その後、王の拾ってきた平凡な孤児を見かけた者はいない。
即位を間近に控えていた王子も失踪し、二度と王宮に姿を現すことはなかった。
そして、王はいつまでもこの国の王となり得たのだ。
「はい、これでおしまい。」
「えー。もっとおはなしー!」
「もう寝る時間だよ。」
「まだ眠くないもん。」
そう言いながらも、目の前の少年は瞼を擦り、眠たげな眼を必死で開けようとしていた。
一生懸命眠気と戦うその姿に自然と笑みが溢れる。
「だめだ、寝なさい。」
「ちぇー……ねぇ、その王様が大好きな男の子はどうなったの?」
「さぁ、わからないなぁ。」
「気になるよぅ!」
「まぁこの話はこの国の言い伝えみたいなものだから。実際、ここ何百年は女王様がこの国を治めておられるんだ。本当の話だったとしても、むかーしの話さ。」
以前は差別が激しかったとされるこの国も、今では身分や見た目、性別など関係なく国民全ての生活水準がほぼ平等になり、国政に満足する国民が多いと近隣諸国から注目を浴びている。
「ふぅん。つまんないの。」
「さ、早く寝なさい。」
「うん……」
「?どうした?」
「その男の子さ、」
「なんだ?ずいぶん気になってるようだな。」
「うん、あのさ、王様と、幸せになったかな。」
小さくて丸い瞳を不安で揺らし、おずおずと聞いてくる少年を安心させたくて、優しく頭を撫でながら答える。
「………あぁ、なったさ、きっと。またいつでも読んであげるから、今日はもう寝なさい。」
「そうだよね、へへ、父さんおやすみ!」
「あぁ、おやすみ、“シュウ”」
よほど眠かったのか、ベッドの中ですぐにすうすうと寝息を立てる少年を見つめる。
“僕を永遠に、離さないで”
シュウ、私のシュウ。
お前はずっと、私のそばに。
王族でも、平民でも姿がどんなに変わっても。
シュウはシュウ。私の中では何も変わらない。
たとえ生まれ変わって、私の子供になったとしても。
「約束だからな、一生離さないよ、シュウ」
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