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赤い目と黒い瞳
第11話 また明日
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「ふむ、母上にされたのか」
「そうよ。元々素敵なのだけれど、飾るともっと素敵になったでしょ?」
「あぁ、目が離せない」
私が限界に達したところで響さんが雅様を離してくれて、なんとか心臓が爆発しないで持ちました。
でも、言葉の通り雅様はまだ私を見てきます。
は、恥ずかしい……。
「それにしても、本当に似合うな。今まで見てきたどのような女性よりも美しく、どのような花よりも華やかだ」
「それは同感よ。こんなにも素敵で美しい方を迎え入れられて、本当に幸せね、雅」
「あぁ」
~~~~~~本当に勘弁してください!
今度こそ心臓が終わりを迎えます!!
「だが、一つ気になるんだが――」
「組紐なら気づいているわよ。仕方がなかったのよ、これしかなかったのだから……」
「はぁ」と、悔しそうに深い溜息を吐いてしまった響さん。
私は、これも十分素敵だと思うのだけれど……。
赤い、鮮やかな組紐。
私には華やかすぎるかと思いますが……。
「なら、明日にでも外に行ってみるか」
「そ、外に?」
外ということは、お出かけ……でしょうか?
「あら、それはいいわね。こちらに嫁いでからは、ずっとお屋敷の中に缶詰め状態だったんだもの。少しは気晴らしにお出かけもいいと思うわ。でも――……」
途中で響さんが言葉を止めて、不安そうに雅様を見る。
何か気がかりでもあるのだろうか。
「母上、なにも俺様が連れて行くとは言っていない」
「え、雅様が共にではないのですか?」
────はっ、し、しまった。
つい、本音が口から出てしまった。
慌てて口を塞いでも遅い。
声がしっかりと届いてしまったらしく、二人が私を目を丸くして見る。
な、何とか誤魔化さないと……!
「あ、あの」
「俺様個人としては、共に行くのは構わないのだが、おそらく美月が辛い思いをするぞ」
えっ、辛い、思い……?
なんとなく、空気的に聞いてはいけないような気もするのだけれど、気になる。
だって、雅様とお買い物に行けるのかと思って、その、勝手に喜んでしまったです。
だから、雅様とお買い物に行けないのは、勝手なのですが、悲しいです、とても。
せめて、理由だけは教えていただけないかな……。
「俺様は、町の者に良く思われていないのだ」
「――――あっ」
そうだ。確か、雅様は冷酷無情で、人の心がない冷たい人物だと噂が流れていたんだ。
でも、女中さんは雅様を一切怖がっている様子もなかったし、むしろクスクスと楽しそうに笑っていた。
私のような、赤い瞳を持つ不吉な女にも優しく手を差し伸べてくれ、温かい言葉をかけてくれていたから、すっかり頭から抜けてしまいました。
「雅は責任感が強すぎるのよ。それでいて口数が少ない。それで勘違いされているの」
「で、ですが、女中さんなどは……」
「屋敷内の人達は、雅が実は天然で、仕事以外はへっぽこなのを知っているのよ」
へ、へっぽこ?
「へっぽこではない。少々苦手なだけだ」
「お肉を焼かせてみればまる焦げに、ぞうきんを絞ろうとしたら力加減を間違えて引きちぎる。刀の稽古指導をさせれば相手の心を折るまでボコボコにして、一人で買い物をさせようとしたら数刻迷子になり帰ってこない。これのどこがへっぽこではないのかしら?」
響さんが顔を向けると、目を合わせないようにすぐ雅様が顔を逸らした。
まさか、今の話、すべて本当なの?
「まったく……。貴方は当主なのだからやらなくてもいいと言ってもやるし、やらせれば出来ない。困った当主様だわ」
「うるさい」
腕を組み顔を逸らし続ける雅様は、なんだかかわいい。
「まぁ、そういう感じで。お屋敷の方々は、雅の本当の姿を知っているの。でも、町の人はそうでは無い」
そうでは、ない……。
「町の人は、仕事をしている時の雅しか知らないの。本気の時の雅しか、見ていないの。だから、きっと共に外に出れば、町の人は貴方の事も怖がってしまうわ」
眉を下げ、響さんは雅様に気を遣うように私に教えてくれた。
顔を逸らしていた雅様の表情に変化はない。特に気にしていないみたい。
「そういうことだ。だから、俺様と行かない方がいい。せっかく楽しい買い物だ、気分を害したくはないだろう」
雅様は自分ではなく、私が不快な気持ちにならないように配慮してくださっていたのですね。
いつも、当たり前のように人の事を考えられる雅様。そんな雅様を、私は全力で守りたい。
そんな、悲しい目を浮かべてほしくない。
膝の上に置かれている雅様の手にそっと、私の手を添えてみる。
こっちを向いてくれた雅様の瞳と、私の赤い瞳を合わせた。
「────私、雅様と共に町に行きたいです。雅様に、私の髪飾りを選んでいただきたいです」
笑顔で言うと、雅様は数秒固まり、そして――……
「はぁぁぁぁぁぁ……」
ため息をはいっ──なんでですか?!
「え、す、すす、すいません! い、忙しいですよね!? 図々しい真似をしてしまい誠に申し訳ありません!」
顔を覆って、雅様が深いため息を吐いてしまった。
感情的に動いてしまった自分に後悔……。
そうだよね。何も、私を思ってだけの言葉ではないよね。
雅様はお忙しい方。私の髪飾りなんかに時間を使ってなんていられない。
なんて図々しいのだ、私は。
今まで優しくしてくれたからって、私は図に乗りすぎた。
そもそも、私はこんな素敵で美しい雅様に嫁げる立場の人間ではない。
私は、たまたま運が良かっただけの、ただの力のない役立たずなのに……!!
雅様の邪魔だけはしないようにと思っていたのに、ここで迷惑をかけてしまうなんて……。
「ほれ、まただ」
「えっ――あ」
また、雅様に顔を上げされられた。
漆黒の瞳が、私の顔を映し出す。
「すぐに顔を俯かせるな」
「で、ですが、私は今、無礼なお願いを……」
「何が無礼だ、馬鹿者。俺様と共に町に行きたいのだろう? なら、まずは俯かせる癖を直せ。俺様の隣を歩くのだ、もう少し堂々とするがいい。じゃなければ、周りの視線に耐えられんぞ」
その言葉って、もしかして……。
「明日、時間を作ろう。共に町に出るぞ」
「は、はい!!」
雅様と、お買い物ができる。
思わず声を大きくしてしまったが、雅様は口角を上げて「また明日な」と、頭を撫でて部屋を出た。
「明日、楽しみです」
「そうね。なら、また明日もおめかししないとね」
「はい――おめかし?」
ふと、響さんを見ると、どや顔で先ほどまで使っていた化粧道具を持って、私を見ていました。
「そうよ。元々素敵なのだけれど、飾るともっと素敵になったでしょ?」
「あぁ、目が離せない」
私が限界に達したところで響さんが雅様を離してくれて、なんとか心臓が爆発しないで持ちました。
でも、言葉の通り雅様はまだ私を見てきます。
は、恥ずかしい……。
「それにしても、本当に似合うな。今まで見てきたどのような女性よりも美しく、どのような花よりも華やかだ」
「それは同感よ。こんなにも素敵で美しい方を迎え入れられて、本当に幸せね、雅」
「あぁ」
~~~~~~本当に勘弁してください!
今度こそ心臓が終わりを迎えます!!
「だが、一つ気になるんだが――」
「組紐なら気づいているわよ。仕方がなかったのよ、これしかなかったのだから……」
「はぁ」と、悔しそうに深い溜息を吐いてしまった響さん。
私は、これも十分素敵だと思うのだけれど……。
赤い、鮮やかな組紐。
私には華やかすぎるかと思いますが……。
「なら、明日にでも外に行ってみるか」
「そ、外に?」
外ということは、お出かけ……でしょうか?
「あら、それはいいわね。こちらに嫁いでからは、ずっとお屋敷の中に缶詰め状態だったんだもの。少しは気晴らしにお出かけもいいと思うわ。でも――……」
途中で響さんが言葉を止めて、不安そうに雅様を見る。
何か気がかりでもあるのだろうか。
「母上、なにも俺様が連れて行くとは言っていない」
「え、雅様が共にではないのですか?」
────はっ、し、しまった。
つい、本音が口から出てしまった。
慌てて口を塞いでも遅い。
声がしっかりと届いてしまったらしく、二人が私を目を丸くして見る。
な、何とか誤魔化さないと……!
「あ、あの」
「俺様個人としては、共に行くのは構わないのだが、おそらく美月が辛い思いをするぞ」
えっ、辛い、思い……?
なんとなく、空気的に聞いてはいけないような気もするのだけれど、気になる。
だって、雅様とお買い物に行けるのかと思って、その、勝手に喜んでしまったです。
だから、雅様とお買い物に行けないのは、勝手なのですが、悲しいです、とても。
せめて、理由だけは教えていただけないかな……。
「俺様は、町の者に良く思われていないのだ」
「――――あっ」
そうだ。確か、雅様は冷酷無情で、人の心がない冷たい人物だと噂が流れていたんだ。
でも、女中さんは雅様を一切怖がっている様子もなかったし、むしろクスクスと楽しそうに笑っていた。
私のような、赤い瞳を持つ不吉な女にも優しく手を差し伸べてくれ、温かい言葉をかけてくれていたから、すっかり頭から抜けてしまいました。
「雅は責任感が強すぎるのよ。それでいて口数が少ない。それで勘違いされているの」
「で、ですが、女中さんなどは……」
「屋敷内の人達は、雅が実は天然で、仕事以外はへっぽこなのを知っているのよ」
へ、へっぽこ?
「へっぽこではない。少々苦手なだけだ」
「お肉を焼かせてみればまる焦げに、ぞうきんを絞ろうとしたら力加減を間違えて引きちぎる。刀の稽古指導をさせれば相手の心を折るまでボコボコにして、一人で買い物をさせようとしたら数刻迷子になり帰ってこない。これのどこがへっぽこではないのかしら?」
響さんが顔を向けると、目を合わせないようにすぐ雅様が顔を逸らした。
まさか、今の話、すべて本当なの?
「まったく……。貴方は当主なのだからやらなくてもいいと言ってもやるし、やらせれば出来ない。困った当主様だわ」
「うるさい」
腕を組み顔を逸らし続ける雅様は、なんだかかわいい。
「まぁ、そういう感じで。お屋敷の方々は、雅の本当の姿を知っているの。でも、町の人はそうでは無い」
そうでは、ない……。
「町の人は、仕事をしている時の雅しか知らないの。本気の時の雅しか、見ていないの。だから、きっと共に外に出れば、町の人は貴方の事も怖がってしまうわ」
眉を下げ、響さんは雅様に気を遣うように私に教えてくれた。
顔を逸らしていた雅様の表情に変化はない。特に気にしていないみたい。
「そういうことだ。だから、俺様と行かない方がいい。せっかく楽しい買い物だ、気分を害したくはないだろう」
雅様は自分ではなく、私が不快な気持ちにならないように配慮してくださっていたのですね。
いつも、当たり前のように人の事を考えられる雅様。そんな雅様を、私は全力で守りたい。
そんな、悲しい目を浮かべてほしくない。
膝の上に置かれている雅様の手にそっと、私の手を添えてみる。
こっちを向いてくれた雅様の瞳と、私の赤い瞳を合わせた。
「────私、雅様と共に町に行きたいです。雅様に、私の髪飾りを選んでいただきたいです」
笑顔で言うと、雅様は数秒固まり、そして――……
「はぁぁぁぁぁぁ……」
ため息をはいっ──なんでですか?!
「え、す、すす、すいません! い、忙しいですよね!? 図々しい真似をしてしまい誠に申し訳ありません!」
顔を覆って、雅様が深いため息を吐いてしまった。
感情的に動いてしまった自分に後悔……。
そうだよね。何も、私を思ってだけの言葉ではないよね。
雅様はお忙しい方。私の髪飾りなんかに時間を使ってなんていられない。
なんて図々しいのだ、私は。
今まで優しくしてくれたからって、私は図に乗りすぎた。
そもそも、私はこんな素敵で美しい雅様に嫁げる立場の人間ではない。
私は、たまたま運が良かっただけの、ただの力のない役立たずなのに……!!
雅様の邪魔だけはしないようにと思っていたのに、ここで迷惑をかけてしまうなんて……。
「ほれ、まただ」
「えっ――あ」
また、雅様に顔を上げされられた。
漆黒の瞳が、私の顔を映し出す。
「すぐに顔を俯かせるな」
「で、ですが、私は今、無礼なお願いを……」
「何が無礼だ、馬鹿者。俺様と共に町に行きたいのだろう? なら、まずは俯かせる癖を直せ。俺様の隣を歩くのだ、もう少し堂々とするがいい。じゃなければ、周りの視線に耐えられんぞ」
その言葉って、もしかして……。
「明日、時間を作ろう。共に町に出るぞ」
「は、はい!!」
雅様と、お買い物ができる。
思わず声を大きくしてしまったが、雅様は口角を上げて「また明日な」と、頭を撫でて部屋を出た。
「明日、楽しみです」
「そうね。なら、また明日もおめかししないとね」
「はい――おめかし?」
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