34 / 42
大天狗
氷鬼先輩の兄さんの実力!
しおりを挟む
森を進めば進むほど、カラス天狗は道を阻むように現れた。
「よっ!!」
「せい!」
湊は両手に炎がともっているクナイを無限にお札から出し、投げる。
隙を突き、翔は氷で作られている槍を振り回しカラス天狗の急所を一突き。すぐに倒していく。
二人は、司と言った天才と、凛と言った秀才がいる為、かくれてしまうことが多いが、決して実力が低いわけではない。
逆に、司達が高すぎるだけで、二人とも退治屋の中では群を抜いている。
それを証拠に、一気に三体出てきたカラス天狗をものの数分で全滅させた。
森を歩くだけで体力がうばわれる中、肉弾戦を得意とする二人は体を休ませることが出来ない。だが、表情は笑っており、余裕そうに戦う。
一応、いつでも動けるようにしていた司と凛は、二人の戦闘を見て苦笑い。
自分達をほめていた二人の実力を再確認した。
この中で一番おどろいているのは詩織で、ありえないと言いたげに二人の戦闘を見ていた。
「兄さんは、普段はふざけているけど、誰よりも努力して実力を身に着けたって言っていたな」
「え、そうなんですか?」
「実際に僕は、兄さんの修行を見たことないからわからないけどね。母さんが言っていたから本当じゃないかな」
そんな話をしていると、すぐに先に進めるようになり、五人は森を進む。
そんな五人を水晶を通して見ている一体のあやかしがいた。
薄暗い部屋で王様が座るような椅子に座っているのは、カラス天狗のような見た目をしているあやかし。
だが、大きさは、カラス天狗の倍以上。
その後ろには、執事のような雰囲気をまとっているカラス天狗が立っていた。
「――――ほう、ただの人間ではないな」
「はい。大天狗様。あの四人は、退治屋と呼ばれる組織から派遣されたものだとお見受けします」
「なるほど。退治屋か…………」
水晶から五人を見ていたのは、まさに今、司たちがねらっているあやかし、大天狗。
黒い瞳を鋭く光らせ、後で待機していたカラス天狗は首を傾げていた。
「……………………まぁ、よい。今まで来た者よりは手応えありそうだが、所詮人間は人間。ここまではたどり着けんよ」
余裕そうにふんぞり返る大天狗の視線の先の水晶は、いつの間にか違う景色を映し出していた。
それは、青空をはばたく大量の黒い集団。
十や二十ではないカラス天狗が、司たちの元へと向っていた。
※
森を歩いていた五人は、湊が足を止めたことで皆が止まる。
沈黙が続く中、詩織以外の四人は険しい顔を浮かべていた。
唯一何もわかっていない詩織は、近くにいた司を見た。
「あの、司先輩、何が…………」
「ちょっと、体力を温存とか考えられなくなってきたかもしれないなって思って」
司の言葉に、詩織はみんなが視線を向けている空中を見た。
今は、青空が広がり、きれいとしか思えない。
何をそんなに警戒しているのだろうと思っていると鼓膜を揺らす、翼をはばたかせている音に気づいた。
もっと、耳を澄ませると、何が近づいてきているのか徐々にわかり、顔を真っ青にした。
「ま、まさか……」
「うん、そのまさかだよ」
司は汗をにじませ、歯を食いしばる。
そんな彼の視線の先には、とうとう目視できるようになるまで近付いて来たカラス天狗の大群が視界に入った。
「ひっ!?」
詩織の小さな悲鳴と共に、司は一枚のお札を取り出した。
「ヒョウッ――――」
司が持っているお札の中で一番強い式神、雪女であるヒョウリを出そうとすると、翔が手を出し止めた。
「ここは、俺達に任せろ」
強気な翔を見て、司はヒョウリを出すのをやめた。
湊は翔が考えていることがわかり、笑みを浮かべ一枚のお札を出した。
「いいのかい? もしかしたら、俺達は大天狗との戦闘に参加出来なくなるかもしれないよ?」
「構わないだろう。ここには、天才と秀才の二人がいるんだからな。それに、鬼の血少女も」
(なに、その、鬼の血少女って……)
聞こうかどうか悩んでいるうちに、翔と湊は駆けだしてしまった。
凛が「ちょっと!!」と、手を伸ばすが、止まらない。
カラス天狗たちは、しゃくじょうを鳴らし、地上へと一気に降りてきた。
「翔さん、湊さん!!」
詩織が叫ぶ。同時に、炎がまい上がった。
――――ゴォォォオオオオ!!
炎の竜巻。周りには、雪の結晶。
カラス天狗の集団は動きを止める。
いや、止まるしかなかった。
カラス天狗の周りにふぶく雪、囲うようにまい上がる炎。
何が起こるのかと警戒しているカラス天狗達。
だが、その警戒は無意味。
ふぶきは、もう止められない。
大量のカラス天狗のしゃくじょうが凍り始める。
あわてふためき、どよめき合うカラス天狗の隙を突き、今度は足元が凍り始めた。
あわてたとしてもおそい。
ざわざわとうろたえ始めたカラス天狗にとどめを指そうと、湊が動く。
右手を前に出すと、まい上がった炎がカラス天狗達を燃やす。
蒸発することで倍のダメージを与え、大量のカラス天狗は灰になり一体残らずいなくなった。
「す、すごい……」
「今のが、本当の合わせ技?」
司と凛は、尊敬の眼差しを向け、詩織は目をかがやかせている。
でも、カラス天狗を退治した二人は汗をにじませ、その場に倒れ込んでしまった。
「兄さん!?」
すぐに司と凛、詩織がかけ寄り支えた。
「大技を出すと、やっぱり体力がうばわれるねぇ」
「今のはそう簡単に出せるもんじゃないからな。まぁ、ここから大天狗は近いだろう。あとは、任せたぞ」
湊と翔は、苦しそうな笑みを浮かべつつ、期待を込めた瞳を弟と妹に向けた。
頭をなで、二人は立ち上がった。
「俺達は、ここで離脱する。詩織ちゃんのことは任せたぞ」
「離脱って……?」
「一応、ついては行けるが、戦闘には参加できないということだ。いいとこ、結界を張り自分達を守るのが精一杯。足手まといにはならないつもりだが、期待はしないでくれ」
「よっ!!」
「せい!」
湊は両手に炎がともっているクナイを無限にお札から出し、投げる。
隙を突き、翔は氷で作られている槍を振り回しカラス天狗の急所を一突き。すぐに倒していく。
二人は、司と言った天才と、凛と言った秀才がいる為、かくれてしまうことが多いが、決して実力が低いわけではない。
逆に、司達が高すぎるだけで、二人とも退治屋の中では群を抜いている。
それを証拠に、一気に三体出てきたカラス天狗をものの数分で全滅させた。
森を歩くだけで体力がうばわれる中、肉弾戦を得意とする二人は体を休ませることが出来ない。だが、表情は笑っており、余裕そうに戦う。
一応、いつでも動けるようにしていた司と凛は、二人の戦闘を見て苦笑い。
自分達をほめていた二人の実力を再確認した。
この中で一番おどろいているのは詩織で、ありえないと言いたげに二人の戦闘を見ていた。
「兄さんは、普段はふざけているけど、誰よりも努力して実力を身に着けたって言っていたな」
「え、そうなんですか?」
「実際に僕は、兄さんの修行を見たことないからわからないけどね。母さんが言っていたから本当じゃないかな」
そんな話をしていると、すぐに先に進めるようになり、五人は森を進む。
そんな五人を水晶を通して見ている一体のあやかしがいた。
薄暗い部屋で王様が座るような椅子に座っているのは、カラス天狗のような見た目をしているあやかし。
だが、大きさは、カラス天狗の倍以上。
その後ろには、執事のような雰囲気をまとっているカラス天狗が立っていた。
「――――ほう、ただの人間ではないな」
「はい。大天狗様。あの四人は、退治屋と呼ばれる組織から派遣されたものだとお見受けします」
「なるほど。退治屋か…………」
水晶から五人を見ていたのは、まさに今、司たちがねらっているあやかし、大天狗。
黒い瞳を鋭く光らせ、後で待機していたカラス天狗は首を傾げていた。
「……………………まぁ、よい。今まで来た者よりは手応えありそうだが、所詮人間は人間。ここまではたどり着けんよ」
余裕そうにふんぞり返る大天狗の視線の先の水晶は、いつの間にか違う景色を映し出していた。
それは、青空をはばたく大量の黒い集団。
十や二十ではないカラス天狗が、司たちの元へと向っていた。
※
森を歩いていた五人は、湊が足を止めたことで皆が止まる。
沈黙が続く中、詩織以外の四人は険しい顔を浮かべていた。
唯一何もわかっていない詩織は、近くにいた司を見た。
「あの、司先輩、何が…………」
「ちょっと、体力を温存とか考えられなくなってきたかもしれないなって思って」
司の言葉に、詩織はみんなが視線を向けている空中を見た。
今は、青空が広がり、きれいとしか思えない。
何をそんなに警戒しているのだろうと思っていると鼓膜を揺らす、翼をはばたかせている音に気づいた。
もっと、耳を澄ませると、何が近づいてきているのか徐々にわかり、顔を真っ青にした。
「ま、まさか……」
「うん、そのまさかだよ」
司は汗をにじませ、歯を食いしばる。
そんな彼の視線の先には、とうとう目視できるようになるまで近付いて来たカラス天狗の大群が視界に入った。
「ひっ!?」
詩織の小さな悲鳴と共に、司は一枚のお札を取り出した。
「ヒョウッ――――」
司が持っているお札の中で一番強い式神、雪女であるヒョウリを出そうとすると、翔が手を出し止めた。
「ここは、俺達に任せろ」
強気な翔を見て、司はヒョウリを出すのをやめた。
湊は翔が考えていることがわかり、笑みを浮かべ一枚のお札を出した。
「いいのかい? もしかしたら、俺達は大天狗との戦闘に参加出来なくなるかもしれないよ?」
「構わないだろう。ここには、天才と秀才の二人がいるんだからな。それに、鬼の血少女も」
(なに、その、鬼の血少女って……)
聞こうかどうか悩んでいるうちに、翔と湊は駆けだしてしまった。
凛が「ちょっと!!」と、手を伸ばすが、止まらない。
カラス天狗たちは、しゃくじょうを鳴らし、地上へと一気に降りてきた。
「翔さん、湊さん!!」
詩織が叫ぶ。同時に、炎がまい上がった。
――――ゴォォォオオオオ!!
炎の竜巻。周りには、雪の結晶。
カラス天狗の集団は動きを止める。
いや、止まるしかなかった。
カラス天狗の周りにふぶく雪、囲うようにまい上がる炎。
何が起こるのかと警戒しているカラス天狗達。
だが、その警戒は無意味。
ふぶきは、もう止められない。
大量のカラス天狗のしゃくじょうが凍り始める。
あわてふためき、どよめき合うカラス天狗の隙を突き、今度は足元が凍り始めた。
あわてたとしてもおそい。
ざわざわとうろたえ始めたカラス天狗にとどめを指そうと、湊が動く。
右手を前に出すと、まい上がった炎がカラス天狗達を燃やす。
蒸発することで倍のダメージを与え、大量のカラス天狗は灰になり一体残らずいなくなった。
「す、すごい……」
「今のが、本当の合わせ技?」
司と凛は、尊敬の眼差しを向け、詩織は目をかがやかせている。
でも、カラス天狗を退治した二人は汗をにじませ、その場に倒れ込んでしまった。
「兄さん!?」
すぐに司と凛、詩織がかけ寄り支えた。
「大技を出すと、やっぱり体力がうばわれるねぇ」
「今のはそう簡単に出せるもんじゃないからな。まぁ、ここから大天狗は近いだろう。あとは、任せたぞ」
湊と翔は、苦しそうな笑みを浮かべつつ、期待を込めた瞳を弟と妹に向けた。
頭をなで、二人は立ち上がった。
「俺達は、ここで離脱する。詩織ちゃんのことは任せたぞ」
「離脱って……?」
「一応、ついては行けるが、戦闘には参加できないということだ。いいとこ、結界を張り自分達を守るのが精一杯。足手まといにはならないつもりだが、期待はしないでくれ」
0
あなたにおすすめの小説
大人にナイショの秘密基地
湖ノ上茶屋
児童書・童話
ある日届いた不思議な封筒。それは、子ども専用ホテルの招待状だった。このことを大人にナイショにして、十時までに眠れば、そのホテルへ行けるという。ぼくは言われたとおりに寝てみた。すると、どういうわけか、本当にホテルについた!ぼくはチェックインしたときに渡された鍵――ピィピィや友だちと夜な夜な遊んでいるうちに、とんでもないことに巻き込まれたことに気づいて――!
カリンカの子メルヴェ
田原更
児童書・童話
地下に掘り進めた穴の中で、黒い油という可燃性の液体を採掘して生きる、カリンカという民がいた。
かつて迫害により追われたカリンカたちは、地下都市「ユヴァーシ」を作り上げ、豊かに暮らしていた。
彼らは合言葉を用いていた。それは……「ともに生き、ともに生かす」
十三歳の少女メルヴェは、不在の父や病弱な母に代わって、一家の父親役を務めていた。仕事に従事し、弟妹のまとめ役となり、時には厳しく叱ることもあった。そのせいで妹たちとの間に亀裂が走ったことに、メルヴェは気づいていなかった。
幼なじみのタリクはメルヴェを気遣い、きらきら輝く白い石をメルヴェに贈った。メルヴェは幼い頃のように喜んだ。タリクは次はもっと大きな石を掘り当てると約束した。
年に一度の祭にあわせ、父が帰郷した。祭当日、男だけが踊る舞台に妹の一人が上がった。メルヴェは妹を叱った。しかし、メルヴェも、最近みせた傲慢な態度を父から叱られてしまう。
そんな折に地下都市ユヴァーシで起きた事件により、メルヴェは生まれてはじめて外の世界に飛び出していく……。
※本作はトルコのカッパドキアにある地下都市から着想を得ました。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~
☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた!
麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった!
「…面白い。明日もこれを作れ」
それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる