限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら

フオツグ

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限界オタクと推しとお兄ちゃんと。

限界オタクが乙女と推しの兄について話してみたら

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 イオリとノヴァのやり取りを見て、ヴァルゴは「ウフフ」と笑った。

「何を隠そう、妹聖女ちゃんの聖女の力詐欺を暴いたのはリブラちゃんなの」
「え!」

 イオリは驚いて大きい声を出してしまった。

「リブラさんはヒナの罪を追求しないと思ってました」
「どうして?」
「だって、リブラさんは星の神教を信仰しているでしょう? 星の神が選んだ【星の聖女】を貶めるようなこと、しないと思ってました」

 ヴァルゴは首を横に振った。

「リブラちゃんほど【天秤座の守護者】の称号に相応しい人間はいないわ。実の両親ですら裁判にかけるほどだもの」
「両親が裁判に……?」

 ノヴァが反応した。
 リブラはノヴァの兄。
 リブラの両親は、勿論、ノヴァの両親でもある。

「何をしたんだ? お父さ──【天秤座の守護者】の両親は」
「家名を使って霊感商法紛いのことをしていたらしいわ。あとは、教会で引き取っていた孤児を売っていたとか……。他にも色々と悪どいことをしていたみたい」
「嘘……だろ……。あの人達が……?」

 ノヴァは信じられないようだった。

「告発したのはリブラちゃんだったわ。今、その二人は雪国監獄で刑に服しているらしいけれど」
「そんな……ことが……」

 ノヴァは自分の足元を見る。
 リブラの両親がリブラによって裁かれたのはイオリも知っていた。
 リブラメインのイベントストーリーで語られていたからだ。
 そこでも弟であるはずのノヴァの話は一切出て来なかった。
──ノヴァくんの様子を見るに、両親が裁かれたのはノヴァくんがゾンビになった後なのね……。

「家族でも……容赦ねえんだな、あいつ」

 ノヴァの呟きにイオリはハッとする。

「まさか自分も両親みたいに裁かれるって思ってる?」
「当然だろぉ。魔王軍だぞ、こっちは」
「話したらわかってくれるよ! ゾンビが人を噛まないように教えてたって!」
「絶対に噛まなかった訳じゃねえ」
「ゾンビ全員の行動を管理出来る訳ないじゃない! それくらい、リブラさんもわかるはず!」
「楽観的に考え過ぎ」

 ノヴァはへっと自虐的に笑う。

「相手は大神官だ。立場のある人間。魔物のオレを処分しない訳にはいかねえだろうが」
「リブラさんは頭堅そうに見えて、結構寛容なんだよ? 無愛想だけど感情表現は豊かで、感情的になることもあって、そこがまた魅力的っていうか。ほら、ちょっと抜けているところもあるし──」

 バン、とノヴァが机を叩いて立ち上がる。
 イオリは驚いてノヴァを見上げた。

「……少し、一人にしてくれ」

 ノヴァは浮かない顔のまま、自分の部屋に入って行った。

「ノヴァくん……」

 イオリはノヴァの後ろ姿を心配そうに眺める。
──私、何か気に障るようなこと言っちゃったかな……?
 ヴァルゴは「フフ」と笑う。

「愛、ね」
「ヴァルゴ姉……」
「愛は人を狂わせる……。狂ってるくらいがアタシは好みだけれど」
「わかります! 私はノヴァくんに狂わされましたから!」

──人生やら、性癖やら、様々なものを!
 イオリは自信を持って言える。

「好きな人に狂わされる……うーん、それも素敵ねん」
「だから、ノヴァくんには幸せになって貰いたいんです。……いや、少し困らせたい欲求もあるっちゃあるんですけど……。概ね幸せと言える環境にしたいというか……」
「わかるわよ。好きな子ほど意地悪したくなっちゃうのよねん」
「わかってくれますか……!」

 イオリはキラキラした目でヴァルゴを見つめた。

「……そのためにはまず、リブラさんとの仲を取り持たなきゃ」
「それはどうして? ゾンビちゃんの幸せが、リブラちゃんとどう関係があるの?」
「……ノヴァくんは人間の国に居場所がないと思ってるんです」

 帰る場所がないから、魔物の自分を受け入れてくれる魔王軍に席を置いた。
 しかし、魔王軍はことあるごとに元人間だと揶揄い、馬鹿にされていた。
 魔王軍にもノヴァの居場所はない……。
 もし、人間に戻れるのなら、人間の国に戻りたいだろう。
 それが絶対に叶わない願いだとしても、願わずにはいられない。

「魔物のノヴァくんでも受け入れて貰える……。リブラさんになら、チャンスがあります」
「……それは、兄弟だから?」
「はい」
「見通しが甘いわねん、イオリちゃん」

 ヴァルゴは笑う。

「リブラちゃんは魔物殲滅過激派よ。魔物討伐数は【星の守護者】の中でトップ。いくら兄弟だったとはいえ、魔物になった弟を受け入れるかしら」
「受け入れています」

 イオリは何の疑いもなく言う。

「この家にはものが少ない。でも、昔ノヴァくんが使っていた机もベッドも本棚も、置いてあったんです。リブラさんはノヴァくんのことを忘れていない……」
「……んふふ。アナタ、探偵か何かかしら?」
「妄想が趣味なもので……」
「面白いわね。わくわくしちゃう。……よおし!」

 ヴァルゴはすっと立ち上がる。

「これから、リブラちゃんとお話しに行きましょう」
「え?」
「リブラちゃんの本心を聞きに行くのよ! 善は急げ、でしょ?」

 ヴァルゴはバチン、とバチバチのまつ毛でウインクをした。
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