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限界オタクと推しと聖女降臨祭。
偽物の末路
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〝アルバリ〟を名乗り、ヒナに魔呼びのライアーを弾くよう唆し、人々に混乱を招いた人物──通称・偽アルバリ。
彼の左頬には偽の【星の守護者】の証がある。
その情報を元に、騎士団は偽アルバリを捜索した。
数日後、火の都に隠れ住んでいた偽アルバリを発見した。
偽アルバリは騎士団を見るなり、逃走を図った。
騎士達は偽アルバリを捕獲しようと追いかけ、路地裏の行き止まりに彼を追い込んだ。
「追い詰めたぞ! 魔王軍のスパイめ!」
「大人しく投降しろ!」
騎士達が偽アルバリを取り囲む。
「ハハハハ! 追い詰めただって!? 傑作だな! 路地裏に追い込んだくらいで!?」
偽アルバリは高笑いをした。
「思い上がるのも大概にしろ、愚かな人間め! 貴様らは結局、偉大なる魔王様にひれ伏すしかないのだ……!」
偽アルバリは息を大きく吸った。
「魔王様、万歳!」
その言葉を言い終えるのと同時に、偽アルバリの体は爆発した。
偽アルバリは死亡。
爆破により、騎士数名が怪我。
近隣の建物が一部倒壊した。
□
「──まさか、自爆するとはな」
ベリエの執務室にて。
ベリエが一連の報告書に目を通し、そう呟いた。
「騎士団の注意力不足が招いたことです。申し訳ありません、ベリエ様」
騎士団長レオが頭を下げる。
「頭を上げてくれ、レオ騎士団長。皆、軽傷で済んで良かった」
ベリエは報告書を机に置き、手を組んだ。
「一般人を巻き込まずに済んだのは幸いだった。人の多い場所で爆破されていたら、目も当てられなかっただろう……」
ベリエは彼の横にいるアクアーリオに目を向けた。
「アクアーリオ博士、お前に聞きたい。ホムンクルスの体に爆弾が仕込まれていること、君は知っていたのか? 知ってて黙っていたのか?」
「……体内に爆弾を仕込むのは魔王軍の常套手段だ」
アクアーリオはため息混じりに言う。
「ただ、ホムンクルスは普通の人間よりも体が脆いから、高威力の爆弾を仕込めない。わざわざ仕込まないはずなのだ……」
「つまり、君は知るなかったと?」
「ああ。偽アルバリもまさか、自身の体が爆発するとは思っていなかったんだろう」
「どういうことだ、博士?」
「爆発するとわかっていたら、被害が大きくなる場所を選ぶ。魔王様に忠誠を誓っているなら尚更な」
「確かにそうだ……」
「ホムンクルスにも死の恐怖はある。ホムンクルスは人間を再現している。人間は死に怯えるものだ」
アクアーリオは続けた。
「『魔王様、万歳』──それが起爆スイッチだったのだろう。偽アルバリはその言葉が助けを呼ぶ合図だとでも聞かされていたに違いない」
魔物達は最初から、偽アルバリを捨て駒にするつもりだったのだろう。
「魔物とは、そういう連中だ」
アクアーリオは諦めたように吐き捨てた。
「魔物の冷酷さがこれほどまでとは……」
ベリエは背筋が寒くなった。
人の体に爆弾を仕掛け、「助けに行く」と嘘をつき、自分で起爆スイッチを押させる。
人を道具としてしか見ていない。
「他にも、爆弾を仕込んだホムンクルスが国内にいる可能性は……?」
「大いにあるだろう」
ベリエは唸るようにため息をついた。
「早く、頬に偽の【星の守護者】の証がある者を捕まなくては……。これ以上の被害者を出さないためにも」
「捕まえるときは、人気のないところを選ぶように言っておけ。また爆破されるやもしれん」
「……ああ」
ベリエはアクアーリオに疑いの目を向ける。
「博士、最後にもう一つ。お前の体に爆弾は仕込まれてないよな?」
「安心したまえ。爆弾探知機には反応していない。ボクは爆弾を仕込まれる前に、魔王軍領地から脱出したからね」
アクアーリオは自信のある顔つきでそう言った。
「では、失礼する」
アクアーリオはベリエの執務室を出た。
「……レオ騎士団長、どうだ? アクアーリオ博士の様子は」
レオは首を横に振った。
「今のところ、魔王軍と接触する素振りはありません」
「そうか……」
ベリエは何処かホッとしているようだった。
「バレた直後だ。博士も監視がつけられていることはわかっているでしょう。なかなか直ぐに、ボロは出しません」
「ああ、そうだな。まだ信じた訳ではない」
アクアーリオを糾弾したあと、リブラに提案された。
「アクアーリオに王家の陰の者をつけてはどうか」と。
「彼が亡命者であれ、スパイであれ、もう魔王軍が接触してくることはないでしょうが」
リブラはそう言い切った。
ホムンクルスだと発覚した時点で、アクアーリオも捨て駒なのだ。
この報告書に載っている、偽アルバリのように……。
「姉聖女・イオリとの約束を果たすためだけに、アクアーリオを不問にしただけではなかったようだな」
魔王軍と関係がなければ、アクアーリオはただの優秀な錬金術師だ。
王家の陰の者に監視をさせ、魔王軍と接触出来ないようにすれば、確固たるものとなる。
「リブラ殿は強かですからねえ」
レオは大口を開けて笑った。
「レオ騎士団長、引き続き、アクアーリオ博士の監視を頼む」
「御意」
レオは敬礼をした。
彼の左頬には偽の【星の守護者】の証がある。
その情報を元に、騎士団は偽アルバリを捜索した。
数日後、火の都に隠れ住んでいた偽アルバリを発見した。
偽アルバリは騎士団を見るなり、逃走を図った。
騎士達は偽アルバリを捕獲しようと追いかけ、路地裏の行き止まりに彼を追い込んだ。
「追い詰めたぞ! 魔王軍のスパイめ!」
「大人しく投降しろ!」
騎士達が偽アルバリを取り囲む。
「ハハハハ! 追い詰めただって!? 傑作だな! 路地裏に追い込んだくらいで!?」
偽アルバリは高笑いをした。
「思い上がるのも大概にしろ、愚かな人間め! 貴様らは結局、偉大なる魔王様にひれ伏すしかないのだ……!」
偽アルバリは息を大きく吸った。
「魔王様、万歳!」
その言葉を言い終えるのと同時に、偽アルバリの体は爆発した。
偽アルバリは死亡。
爆破により、騎士数名が怪我。
近隣の建物が一部倒壊した。
□
「──まさか、自爆するとはな」
ベリエの執務室にて。
ベリエが一連の報告書に目を通し、そう呟いた。
「騎士団の注意力不足が招いたことです。申し訳ありません、ベリエ様」
騎士団長レオが頭を下げる。
「頭を上げてくれ、レオ騎士団長。皆、軽傷で済んで良かった」
ベリエは報告書を机に置き、手を組んだ。
「一般人を巻き込まずに済んだのは幸いだった。人の多い場所で爆破されていたら、目も当てられなかっただろう……」
ベリエは彼の横にいるアクアーリオに目を向けた。
「アクアーリオ博士、お前に聞きたい。ホムンクルスの体に爆弾が仕込まれていること、君は知っていたのか? 知ってて黙っていたのか?」
「……体内に爆弾を仕込むのは魔王軍の常套手段だ」
アクアーリオはため息混じりに言う。
「ただ、ホムンクルスは普通の人間よりも体が脆いから、高威力の爆弾を仕込めない。わざわざ仕込まないはずなのだ……」
「つまり、君は知るなかったと?」
「ああ。偽アルバリもまさか、自身の体が爆発するとは思っていなかったんだろう」
「どういうことだ、博士?」
「爆発するとわかっていたら、被害が大きくなる場所を選ぶ。魔王様に忠誠を誓っているなら尚更な」
「確かにそうだ……」
「ホムンクルスにも死の恐怖はある。ホムンクルスは人間を再現している。人間は死に怯えるものだ」
アクアーリオは続けた。
「『魔王様、万歳』──それが起爆スイッチだったのだろう。偽アルバリはその言葉が助けを呼ぶ合図だとでも聞かされていたに違いない」
魔物達は最初から、偽アルバリを捨て駒にするつもりだったのだろう。
「魔物とは、そういう連中だ」
アクアーリオは諦めたように吐き捨てた。
「魔物の冷酷さがこれほどまでとは……」
ベリエは背筋が寒くなった。
人の体に爆弾を仕掛け、「助けに行く」と嘘をつき、自分で起爆スイッチを押させる。
人を道具としてしか見ていない。
「他にも、爆弾を仕込んだホムンクルスが国内にいる可能性は……?」
「大いにあるだろう」
ベリエは唸るようにため息をついた。
「早く、頬に偽の【星の守護者】の証がある者を捕まなくては……。これ以上の被害者を出さないためにも」
「捕まえるときは、人気のないところを選ぶように言っておけ。また爆破されるやもしれん」
「……ああ」
ベリエはアクアーリオに疑いの目を向ける。
「博士、最後にもう一つ。お前の体に爆弾は仕込まれてないよな?」
「安心したまえ。爆弾探知機には反応していない。ボクは爆弾を仕込まれる前に、魔王軍領地から脱出したからね」
アクアーリオは自信のある顔つきでそう言った。
「では、失礼する」
アクアーリオはベリエの執務室を出た。
「……レオ騎士団長、どうだ? アクアーリオ博士の様子は」
レオは首を横に振った。
「今のところ、魔王軍と接触する素振りはありません」
「そうか……」
ベリエは何処かホッとしているようだった。
「バレた直後だ。博士も監視がつけられていることはわかっているでしょう。なかなか直ぐに、ボロは出しません」
「ああ、そうだな。まだ信じた訳ではない」
アクアーリオを糾弾したあと、リブラに提案された。
「アクアーリオに王家の陰の者をつけてはどうか」と。
「彼が亡命者であれ、スパイであれ、もう魔王軍が接触してくることはないでしょうが」
リブラはそう言い切った。
ホムンクルスだと発覚した時点で、アクアーリオも捨て駒なのだ。
この報告書に載っている、偽アルバリのように……。
「姉聖女・イオリとの約束を果たすためだけに、アクアーリオを不問にしただけではなかったようだな」
魔王軍と関係がなければ、アクアーリオはただの優秀な錬金術師だ。
王家の陰の者に監視をさせ、魔王軍と接触出来ないようにすれば、確固たるものとなる。
「リブラ殿は強かですからねえ」
レオは大口を開けて笑った。
「レオ騎士団長、引き続き、アクアーリオ博士の監視を頼む」
「御意」
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