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20 豪商の家1
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夜道を駆けて、灯さんが逃げてきたという道を逆に辿った。
豪商の屋敷は金持ちが住んでる高級住宅街にあって、着いた頃は深夜もとうに回っていた。足も痛いし、ふらふらだ。
暗くて分かりにくいけど、もしかしてここ、高藤様の屋敷の近くかも。
アドレナリン出た勢いで来ちゃったけど、これオーナーに叱られないかな?
いや、確実に叱られるよね。
なんだっけ、足抜け? 遊女だったら、連れ戻されて折檻されるパターンだ。
「ぽめ太くん?」
繋いでいた手に白く健が浮き出てる。力を込めすぎたことに気づいて、俺は慌てて手を離した。
考えたら、俺、喧嘩したことないし。
なんで灯さんを守れると思ったんだろう。
「こっち」
通用口を通って、屋敷の中を進む。
元々ここにいたからか、灯さんは暗闇の中も躊躇なく進んでいく。
廊下には明かり一つもないし、みんな寝静まっているようだ。
あれ?
そういえば、通用口もすんなり開いたな。
鍵も掛かってなかったし、不用心過ぎるだろ。
階段をそうっと上がって、明かりが漏れる大きな扉の前で灯さんは立ち止まった。
「……旦那様の部屋?」
隙間から漏れる光に照らされた灯さんの顔色が、ものすごく白かった。
「ごめん、ぽめ太くん」
ガツンと後頭部に強い痛みが走った。
寒さに目が覚めた。
ぼうっとする視界に、低い天井が見えてくる。
ここはどこだろう? 雑魚寝部屋でもないし、仕事部屋とも違う。
頭を動かしたらものすごい激痛がした。思わず痛む箇所を手で押さえたら、血がぬるっとついた。
そうか……。
ぼんやりとした頭に、これまでのことが思い出されてくる。
俺は灯さんと豪商の家に来た。
そして。
多分、頭を殴られた。
でも、誰に?
周りに誰かいたか?
目が慣れてくると、そう暗い部屋じゃないことに気がついた。
俺が寝かされていたのはロフトみたいなところで、ハシゴが掛けられた下階から何かの音が聞こえてきた。
そっと這っていって下を覗くと、大柄な男がうつ伏せになった白い体を組み敷いているのが見えた。
グチュグチュという水音と肉がぶつかる音、揺すられる度に小さな悲鳴が俺のところにも聞こえてくる。
なんだ?
艶めいた声も様子もまるでない。
どこか一方的な……これはレイプ?
大きな男がイッたみたいに動きを止めて、それから白い体を転がした。
仰向けに倒れ込んだ人は……。
灯さんだ!
一気に霞がかかっていた頭の焦点があった。
慌てて起き上がろうとして、でも、痛さに呻いて蹲ってしまう。
「なんだ、目が覚めたのか、渡り人」
俺の呻きが届いたのか、男が顔を上げてニヤッと笑った。
流した長めの前髪がリロイ様に似てるけど、まるで似合ってなくて気持ち悪い。
「何やっ……痛ッ」
自分の声が頭に響いて、俺は手で押さえて蹲った。
「おいおい、あれだけで頭が割れたのか? 渡り人は柔いってのはホントだな」
小馬鹿にしたような笑いを漏らしてから、男は灯さんの着物で自分の前を拭った。
「お前、なんなんだ」
「俺が拾ったんだ、どうしようが勝手だろ。これくらいしか価値がないからな」
こいつが、例の豪商か!
豪商が顎をしゃくると、少し浅黒い肌のがっしりした男が灯さんの体を肩に担いでハシゴを登ってきた。
思わず身構えたけど、そいつは灯さんを放ると無言で降りていってハシゴを外した。
「お前、陰間なんだってなぁ? お前が聖女じゃなかったら、あとで味見くらいしてやるよ」
豪商が自分の前を直しながら、煙管を吹かしてる。
カッコつけてるけど、煙管を吹かしてカッコいいのはオーナーだけだからな!
くっそ、頭さえ痛くなきゃ怒鳴りつけてやるのに。
豪商の屋敷は金持ちが住んでる高級住宅街にあって、着いた頃は深夜もとうに回っていた。足も痛いし、ふらふらだ。
暗くて分かりにくいけど、もしかしてここ、高藤様の屋敷の近くかも。
アドレナリン出た勢いで来ちゃったけど、これオーナーに叱られないかな?
いや、確実に叱られるよね。
なんだっけ、足抜け? 遊女だったら、連れ戻されて折檻されるパターンだ。
「ぽめ太くん?」
繋いでいた手に白く健が浮き出てる。力を込めすぎたことに気づいて、俺は慌てて手を離した。
考えたら、俺、喧嘩したことないし。
なんで灯さんを守れると思ったんだろう。
「こっち」
通用口を通って、屋敷の中を進む。
元々ここにいたからか、灯さんは暗闇の中も躊躇なく進んでいく。
廊下には明かり一つもないし、みんな寝静まっているようだ。
あれ?
そういえば、通用口もすんなり開いたな。
鍵も掛かってなかったし、不用心過ぎるだろ。
階段をそうっと上がって、明かりが漏れる大きな扉の前で灯さんは立ち止まった。
「……旦那様の部屋?」
隙間から漏れる光に照らされた灯さんの顔色が、ものすごく白かった。
「ごめん、ぽめ太くん」
ガツンと後頭部に強い痛みが走った。
寒さに目が覚めた。
ぼうっとする視界に、低い天井が見えてくる。
ここはどこだろう? 雑魚寝部屋でもないし、仕事部屋とも違う。
頭を動かしたらものすごい激痛がした。思わず痛む箇所を手で押さえたら、血がぬるっとついた。
そうか……。
ぼんやりとした頭に、これまでのことが思い出されてくる。
俺は灯さんと豪商の家に来た。
そして。
多分、頭を殴られた。
でも、誰に?
周りに誰かいたか?
目が慣れてくると、そう暗い部屋じゃないことに気がついた。
俺が寝かされていたのはロフトみたいなところで、ハシゴが掛けられた下階から何かの音が聞こえてきた。
そっと這っていって下を覗くと、大柄な男がうつ伏せになった白い体を組み敷いているのが見えた。
グチュグチュという水音と肉がぶつかる音、揺すられる度に小さな悲鳴が俺のところにも聞こえてくる。
なんだ?
艶めいた声も様子もまるでない。
どこか一方的な……これはレイプ?
大きな男がイッたみたいに動きを止めて、それから白い体を転がした。
仰向けに倒れ込んだ人は……。
灯さんだ!
一気に霞がかかっていた頭の焦点があった。
慌てて起き上がろうとして、でも、痛さに呻いて蹲ってしまう。
「なんだ、目が覚めたのか、渡り人」
俺の呻きが届いたのか、男が顔を上げてニヤッと笑った。
流した長めの前髪がリロイ様に似てるけど、まるで似合ってなくて気持ち悪い。
「何やっ……痛ッ」
自分の声が頭に響いて、俺は手で押さえて蹲った。
「おいおい、あれだけで頭が割れたのか? 渡り人は柔いってのはホントだな」
小馬鹿にしたような笑いを漏らしてから、男は灯さんの着物で自分の前を拭った。
「お前、なんなんだ」
「俺が拾ったんだ、どうしようが勝手だろ。これくらいしか価値がないからな」
こいつが、例の豪商か!
豪商が顎をしゃくると、少し浅黒い肌のがっしりした男が灯さんの体を肩に担いでハシゴを登ってきた。
思わず身構えたけど、そいつは灯さんを放ると無言で降りていってハシゴを外した。
「お前、陰間なんだってなぁ? お前が聖女じゃなかったら、あとで味見くらいしてやるよ」
豪商が自分の前を直しながら、煙管を吹かしてる。
カッコつけてるけど、煙管を吹かしてカッコいいのはオーナーだけだからな!
くっそ、頭さえ痛くなきゃ怒鳴りつけてやるのに。
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