黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

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第一章:あの日、再び

水汲みは2人で

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「そういえば仕事、ちゃんと上手くいってるの?」

俺より少し後に食べ終わったアオ兄と一緒に、
食器を洗う水を汲みに、家のすぐ近くの井戸へ向かった。

その道中、
特に気になっていた訳では無いが…何となく。
仕事について、質問をしてみた。

…いや、本当は、何となく…じゃ、ない。
さっき父さんのことを、思い出した時…


アオ兄一人に頼りきりのこの生活が、

少し…申し訳なく、なったからだった。


「そりゃもうバッチリよ!
 俺のリュウマは、優秀だからねぇ。
 さっきもばっちし!予想以上に実ったよ。」

チカラの効果が発揮される”実り”までは見ていなかったけど。
あの後すぐ、いつものように、木にはたくさんの果実が実ったらしい。

アオ兄の、”深緑のカラーズ”から発現した”オーバーのリュウマ”の炎には、
生命を癒したり、成長を促したりする”チカラ”がある。

さらに言うと、
その炎に促され実った果実自体にも、炎よりは劣るが、同じような力が宿る。

こうした”癒やしのチカラを保持した果実”は、アオ兄の仕事の中でも、よく依頼されるものの1つだ。

「依頼された分以外はジャムにして…保存がきくようにしてから、配るつもり。
そろそろ毎日山を降りるの、キツくなってきたからねぇ~。

ってか、毎年毎年、ミタ山の夏、暑すぎでしょ!」

昨日からいよいよ8月。
ここ、ミタ山で、最も山頂付近に暮らす俺たちの家から、
山の麓のジャアナの街まで…片道、だいたい歩いて2時間。

さすがに毎日降りるのは…厳しい季節だ。



「アオ兄も、歳には勝てない…か。」

「誰がオジサンだってぇ?」

コツッと、頭を殴られる。
もちろん、その顔は全然怒っていない。

「そういうヨウの方こそ!
昔っから夏、グッタリじゃん。よく親父と、水遊びしてただろ。」

そう言われて、自分の中にある、幼い記憶を引っ張り出す。

今日みたいに暑い日...たぶん6歳くらいか。

父さんが満面の笑みで…

俺に…


…水を、ぶっかけてくる。


「…父さん、イジワルだった。」

「はぁ?!どんな記憶だよ。」

「アオ兄とそっくりな、ニヤニヤ顔で…。水、ぶっかけてきた。」

それを聞いて、アオ兄はニヤッと笑う。

「違うちが~う!
ニヤニヤ顔じゃなくて!

『ヨウが愛しいな~』
って顔に、決まってるだろ?」

そう言って向けてくるキメ顔には…
…確かに、父さんの存在も感じられて。


「本当に…。
…父さんも、そう思ってくれてたなら。

まぁ…悪くない、かな。」

俺は、笑って答える。


「…思ってたよ。当たり前だろ。」

アオ兄も、俺と同じ顔で、そう言った。



「さ~て、はやく帰って、薪割り薪割りっと。」

元気よく水桶を担ぎ、アオ兄は来た道を戻り始めた。

その背中を追って、
父さんのオーバーである”黄緑色のドラゴン”を思い出し…

…俺は、寂しくても…温かい、気持ちになった。



ーーー【黒の再来】まで、あと9時間と16分ーーー


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