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第一章:あの日、再び
昼食は前向きに
しおりを挟む「そうか、5時半に2人きりで会う約束をね。素敵じゃないか。」
ちょうどお昼どきだったので、座席数の多い、
大通りに面したお店に入った。
お互いパンに鶏肉を挟んだチキンバーガーを頼み
「チカラについての話があるって…
…変な誘い方、しちゃったんですけどね。
あ、でも!残るミッションは、いよいよ!
誕生日プレゼントを、買うだけですっ!」
注文の品がくる間に、
今の所の作戦は、概ねうまくいっていることを話した。
「ブレイズ隊長のおかげで、
何を買うかはバッチリ決まってます!」
ブレイズ隊長は、3年前からの付き合いで。
恋愛相談をしたのは…半年くらい前。
…相談をしたというより、
俺の態度でバレちゃったんだけど。
「ヒマリちゃんとの世間話が、
ヨウ君のお役に立てて嬉しいよ。
彼女もきっと、喜んでくれるさ。」
どこまでも優しいこの人は、
ホワイトノーブルの真っ白な軍服を一切汚すことなく。
運ばれたバーガーを、器用に平らげていく。
「あ、俺の話ばっかりですみません。
ブレイズ隊長は、今回は何の用事でこの街へ?」
「ふふっ。ヨウ君の話はいつも楽しいよ。
私はいつもの見回りさ。ただ最近…この近くの街で、
発現者による事件があったばかりでね。
いつもの定期巡回より、少し早めに、様子を見に来たんだ。」
20歳の若さで、ホワイトノーブルの
”寒色系隊長”を務めているブレイズ隊長。
そんなに偉い人なのに、
ジャアナのような王都から離れた…
…目の届きにくい地域にも、熱心に巡回に来てくれる。
こんなところも、俺が憧れる大きなポイントだ。
それにしても…
「事件、ですか?」
「あぁ。ホワイトノーブルでいち早く対応して、
大きな事件にはならなかったから…良かったのだけど。
ただジャアナは…駐在する隊員が、非発現者だからね。
…人手不足で、何とも申し訳ないことだよ。」
言葉通りの表情で、目を伏せるブレイズ隊長に
「隊長のせいじゃないですっ!
発現者は貴重ですし…王都の方が!人も多いぶん、大変だと思いますっ!
謝らないでくださいっ!!!ごふぁっ。」
何か言わなきゃ!と焦った俺は、
頬張ったバーガーをむせながら、まくし立てるように話した。
「ふふっ。ありがとう。
ヨウ君は…本当に、優しいね。
君のような頼もしい若者が、この地域には多いから。
いつも私達は甘えてしまうよ。」
俺が汚したテーブルを、一緒にキレイにしながら。
ブレイズ隊長は、微笑みながら話を続ける。
「特に、ヨウ君のお兄さん…
…アオバ君は、本当に素晴らしい発現者だよ。」
ふんわりと微笑み、自らの言葉にウンウンと頷いている。
実はアオ兄は…ホワイトノーブルにそのチカラを認められて、
ここ1年ほど、熱心に入隊を勧められている。
たぶん今日、俺に話したいことっていうのも…
「アオバ君はその…元気かな?」
…やっぱり。
この話題になると、俺は途端に居心地が悪くなる。
「元気ですよ。今朝も、いじめられましたから。」
「ふふっ。君達兄弟は本当に仲が良いね。羨ましいな。
…それで…、やっぱりアオバ君は、ホワイトノーブルに入る気は、ないのかな?」
憧れの人の、寂しそうに肩を落とす姿は、
何度見ても…心苦しくなる。でも…
「この街や、山のみんなは守るけど…
…国のみんなを守るのは、俺の仕事じゃないかなぁって。」
アオ兄の言葉を、そのまま伝える。
何度誘われても、アオ兄の意見が変わることはなくて。
俺は毎回、申し訳ない気持ちになる。
「そうか…。
残念だけど、アオバ君の決意は固いようだね。
街想いで優しい彼らしいな。
頼ってばかりで申し訳ないが、この街に彼がいてくれるなら、私達も安心だよ。」
ブレイズ隊長は、残念さを感じさせないためか、やけに明るく答える。
…俺が。
…俺に、チカラがあれば…
「俺がっ!
すぐに凄い、発現者になります!
そしたら絶っ対、ホワイトノーブルに入って!
世界中のみんなを、守りますっ!!!!!」
気付いたら、椅子から思いっきり立ち上がり。
店中に聞こえる声で、宣言していた。
「あっ…。」
お店の人たちの視線を一身に浴び。
我に返って…そそくさと、椅子に戻る。
笑い声や、いいぞいいぞ~とはやし立てる声の中
「ヨウ君は、優しくて勇敢だ。
きっとみんなに慕われる発現者になるよ。
ーーー私が、保証する。」
ブレイズ隊長だけは、笑うことなく。
真剣な顔で、真っ直ぐに俺の目を見て、そう言ってくれた。
そんなブレイズ隊長に、目頭が熱くなってきて…
「お、俺っ、ブレイズ隊長に憧れててっ!
隊長みたいなっ『それは無理だねっ!』」
俺の第二の宣言は、何ともいけ好かない奴に遮られた。
「レンっ…!」
「わあ、レン君。今日も元気だね。」
会話だけでなく、テーブルにも割って入ってきたそいつは
「ブレイズ隊長、こんにちはっす!」
何とも軽い挨拶を述べて、椅子に座った。
「勝手に座るなっ!ってか、何が無理だって!?」
「発現者ですらないのに、
なぁ~にが『ブレイズ隊長みたいになる!』だよ!夢見すぎ。」
いつものように生意気なセリフを吐き。
悪びれる様子もなく、テーブルのポテトに手を伸ばす。
この、大きい態度に見合った、
一際目立つオレンジ色の髪をもつのは…
…”レン・キールマン”。
俺と同い歳で…ムカつくことに、3ヶ月前にチカラが発現しやがった。
「ブレイズ隊長みたいになるのは…
この俺、レン様だね。ね、ブレイズ隊長っ!」
ニコニコと隊長の方に向き直り、
エヘンと右腕をまくってみせる。
勅令はしていないが、それでもその、
レン特有の”赤みがかったオレンジ色=赤橙色”のカラーズが、
少しだけ、光ってみえた。
「ふふ。レン君なら、
私よりももっと、立派な発現者になれるよ。
もちろん…ヨウ君もね。
チカラが発現するタイミングは、人それぞれさ。
焦らなくても大丈夫。ーーー強い想いは、何よりのチカラになる。」
ブレイズ隊長は、
俺とレンの頭を両方の手でポンポンと叩き。
そして、今日一番の笑顔を見せてくれた。
「さて、そろそろ仕事に戻ろうかな。
とても楽しい昼食だったよ。付き合ってくれて、ありがとう。」
テーブルに、明らかに2人分以上のお金を置いて
「2人はデザートまでゆっくり食べるといい。
…ただし、夜まで持ち越さない程度に、ね。」
さっそうと席を立つ。
「あ、ありがとうございます!」
「あざっす!」
2人揃ってブレイズ隊長にお礼を言う。
ブレイズ隊長は満足そうに、
「またね。」
そう言って、軽やかに外へと歩いていった。
ーーー【黒の再来】まで、あと5時間と11分ーー
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