16 / 72
第一章:あの日、再び
悲劇はいつも、突然に
しおりを挟む「アオバ、これも運んでくれ!」
シゲ叔父さん、本当に嬉しそうだな。
「え~?このテーブル、
これ以上乗るとこないんですけどぉ?」
自分の家で、薪割りやジャムの仕込みを終えた俺は、
誕生日会に向けて、黙々と料理をする、
シゲ叔父さんの手伝いに来ていた。
「まだまだ作るぞ!
ほら、新しいテーブルを出せばいいんだ!」
ワハハ、と豪快に笑い。
笑い方以上に豪快な動作で、隣の部屋から、テーブルを引っ張ってきた。
一人娘の誕生日…まあ、上機嫌にならないわけがない、か。
「…あれ、ヒマリは?」
先程まで、大柄なシゲ叔父さんに隠れつつも、
テキパキと働いていたのに。
ふと気づくと、
働き者の金髪の少女、ヒマリは、
俺の見える範囲から、いなくなっていた。
「あ!あぁ…そろそろ5時半か…。」
シゲ叔父さんは、ついさっきまでの、豪快な笑顔を少し引つらせ。
大の男には可愛すぎるエプロンを、いそいそと脱ぎはじめた。
「え?なになに、なんかの準備?」
俺がそう問いかけている間にも、準備を整えた様子で。
シゲ叔父さんは、玄関に向かっていく。
(玄関?ヒマリを探しに行くのか?)
…っ!!ま、まさか…!!
「俺の可愛い弟の勝負を…邪魔する気!?」
「…。」
「シ、シゲ叔父さん!気持ちは分かるけどっ…!」
無言で出ていこうとする背中を、慌てて呼び止めた。
「分かってる。分かってるよ。
ヨウは、良い子だ…。俺たちなんかより、よっぽどな。」
「…じゃあ…。」
「ただ…
俺の見てないところで言うなんて、許せん!
男なら、俺の目の前で、堂々と言えってぇんだ!」
そう言って、ワハハと豪快に笑う。
なぁんだ。緊張はしているらしいが、話せばいつもの叔父さんだ。
「いやぁ、いくらなんでも、
初めての告白が、相手の父親の見てる前って…。
うちの可愛いヨウを、あんまりいじめちゃダメだよ?」
ひとまず止めるのを諦めた俺は、
せめてお手柔らかに…と、
叔父さんの背中を、笑顔でちょんっとつついた。
「まあ、アオバに免じて…
…隠れて見るだけに、してやるか!ワハハ!最初はな!」
何だかんだ、嬉しそうに玄関を抜け。
叔父さんは、ゆっくりとした足取りで森へ向かった。
「ヨウなら…ま、大丈夫か。なんたって、俺の弟だしっ!」
ウンウンと、自分に言い聞かせるように納得し。
作りかけの鍋を、一人で完成させるべく、キッチンに戻った。
ーードォォオン!!!
ミタ山の、中腹にて。
日が落ち始め、昼の空から、
夜空に取って代わろうとする景色に
ーー雷鳴のような音と、”黄色い光”が、溶けて…広がる。
…ただそれは、雷ではない。
音の発生源…”大きな切り株”の周囲には、
雷ではありえない…”黄色のモヤ”と、眩しい光が…。
麓の街ジャアナの住人で、
音やモヤに気づいた者は、一人もいなかった。
それに気付けたのは…
…山の中腹付近にいた、数人だけ。
ただ、それは確かに確実に…
”現実だ”とでもいうように、
ひっそりと、山に、ゆるく、鈍く、反響して。ーーー
ーーー【黒の再来】まで、あと31分ーーー
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる