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第一章:あの日、再び
果たされない約束
しおりを挟む「だいたい…5時25分、ってとこか?」
このゆるいカーブの先、
森が少し開けた、広場のような空間があって。
その中央に、ヒマリと約束した…例の、”大きな切り株”がある。
天気は悪くないはずだが…
…ついさっき、ちょうどこの先から、
”落雷のような音と、空に黄色の稲妻”が、見えたばかりだ。
不思議と雨は降っていないが…山の天気は変わりやすい。
これから雨が降るとしたら、きっと最悪な告白になってしまう。
「あと少し、耐えてくれよっ。」
空に向かって、祈るようにつぶやき。
小走りで、カーブを曲がる。
曲がった道の先、森が少し開けて、
ほら、目の前には…
約束の、大きな切り株が…
……
………?
「ヨウっ!来るっ、なっ!」
そこには…
…あるはずの大きな切り株も。
ーー居るはずのヒマリも、いなかった。
代わりに、目に飛び込んできたのは…
「アオ兄…?
…え、なっ!!!なん、だよ。これ…!!!!!」
切り株があったはずの場所は、大きく地面がえぐられていて。
本来生えていた切り株や草はなく、土がむき出しの状態になっていた。そして…
……そのむき出しになった地面の傍ら。
生気のない顔を上に向け、
口から……血を流し倒れている、人物。
あれは…。
…恰幅がよく、ガッチリと恵まれた体格。
ただその腹部には…地面と同じ、大きくえぐられたような、穴が。
そのポッカリと空いた傷口からは、
大量の血が流れだしていて。あれは…そう…
「シ…ゲ…叔父さん?」
目の前に広がる、
日常からあまりにかけ離れた光景に、
俺はただ、その場に立ちつくすことしか、できないでいた。
ただ…
「シゲ…叔父さん…!」
もう一度、目の前の惨状を受け入れられずに、口に出す。
俺の祈るような叫びが響いても…
…今朝、豪快に笑っていたその顔は、
ピクリとも反応せず…。返事は、返って…こなかった。
「な、なん…で…!!!!」
状況が分からず、ただ狼狽えるばかりの俺に、
もう一度、アオ兄の、必死な声が届いた。
「ヨウっ!
いいからっ、早く!ここから、逃げるんだっ!」
パニックになりかけていた意識が、アオ兄の方へ向く。
「アオ兄っ!なんでっ!」
俺も必死に叫ぶ。
アオ兄は、俺の前方3メートルほど先、
倒れたシゲ叔父さんの近くで、こちらに背を向けて、立っていた。
「いいからっ!今は、何も考えずに!とにかくここから、離れてくれっ!」
顔だけ俺に振り返り、アオ兄は俺に向かって大声で叫ぶ。
「なんでっ…。」
俺は訳が分からずに、アオ兄に近付く。
「来るなっ!」
今度のアオ兄は、俺を振り返ることなく、大声で叫んだ。
「なっ…!」
…アオ兄は、よく見ると…傷だらけで。
離れていても、分かるほど…その息は、ハァハァと乱れている。
「アオ兄っ!大丈夫っ?!なんでっ!」
俺の何度目かの問いかけにも
「いいからっ、街に逃げるんだ!!!」
アオ兄は、こちらを振り返ることなく、
間髪入れずに、同じことばかりを叫ぶ。
辛そうな身体で、必死に立つアオ兄…。
…まるで、
目の前にいる何かから…俺を、守るみたいに…。
アオ兄の周り。
地面がえぐられ、木々がなぎ倒され…
…今までの地形とは、もはや別物になってしまったそこに…
「っ!?だ、…誰だっ!」
俺は、叫ぶ。
誰かが…いる。
アオ兄が身体を向けている先、
大きな木の陰に、寄りかかるように立つ、あれは…
「!?な、なんで…!?」
信じられない、信じたくない人物が。
俺たち兄弟を、まっすぐに見つめて…静かに、立っていた。
ーーー【黒の再来】まで、あと23分ーーー
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