黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

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第一章:あの日、再び

正義の色

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「くそッ!勅令するーーリュウマ、分け与えよッ!」

叫ぶような、祈るような…そんな、アオ兄の勅令が、聞こえた。


あっという間にドラゴンのリュウマが現れ、

「バオオォ~。」

俺の周り一帯に、深緑色の炎を吐く。

ーーー炎を受けた周囲の木々や植物は、勢いよく成長し。
後ろから走って追いついてきたアオ兄と俺を、すっぽりと覆う、大きなドーム状の盾になった。




ーードォンッ!!

「くっ。」

「ってぇ。」

盾に守られ、直撃こそしなかったが、
この時の衝撃で、俺は地面に叩き付けられる。

少ししてドームが消えた時も、苦しそうな呼吸で立つアオ兄の横で、
俺はまだ、地面に尻もちをついたままだった。


「ヨウっ、大丈夫か?怪我してないか?」
焦ったアオ兄が、尻もちをつく俺に、心配そうに駆け寄る。

「うん、平気…。それより、アオ兄は…?」

俺の無事にほっとした様子のアオ兄は、俺の質問には答えず。


すぐに、俺の前に立ち

「はぁ…はぁ…。」乱れた息使いのまま、
背後の俺を守るように、ブレイズ隊長に向き直った。



「咄嗟に、そこまでの範囲を守ることができるとは…
…やはり、アオバ君は、優秀な発現者ですね。」

ブレイズ隊長は、優しく微笑む。

「…。」
アオ兄は、何も答えない。


「アオバ君…もう一度聞きます。
どうしても、私達に協力しては…もらえませんか?」


「えっ?」
俺は、ブレイズ隊長の…意外な提案に、驚く。


ブレイズ隊長は、アオ兄の返事を待たずに。優しい口調で、話を続ける。

「私の目的は…ただ、ヒマリを連れて行くこと。
だから、1人になるタイミングを、見計らったのです。

しかし…まさか彼女が、後をつけられていたとは。
見られなければ…叔父さんを殺すことも、ありませんでした。本当です。
殺したくは…ありませんでした。」

ブレイズ隊長は、本当に残念そうな声色で言う。


「ただ…君達は、まだ生きている。

よく考えてみてください。
このまま戦っても…君達に、勝ち目はありません。

私の初撃で負傷していたとはいえ、
発現者である叔父さんと…私達の戦闘に気付き、すぐに合流したアオバ君と。
優秀な発現者2人がかりで、勝てなかった私に…

…君達2人で、勝てる見込みはありませんよ。」



俺は、何も…言い返せ、なかった。

俺には…何のチカラも、ないから。


「私の正義…ホワイトノーブルに、協力してはくれませんか?」

ブレイズ隊長は、いつもの優しい微笑みで提案する。

「…アオ兄…。」

俺は、俺より少し前に立ち、
俺を守るように立つ、アオ兄に声をかける。

俺は…俺には…、もう、何も分からなかった。
色々なことが一度に起こって…
俺は…何を、信じればいいんだろう?
ブレイズ隊長は…悪い人、じゃない…のか?


「…アオ兄?」
もう一度、何も言わずに俺を守ってくれている、

…俺が唯一、絶対に信じられる人の、名前を呼んだ。




「…嘘、つくなよ。」

ずっと黙っていたアオ兄が、ゆっくりと口を開く。


「さっきの攻撃、間違いなく…当たってたら、ヨウはっ…死んでた。」

肩で息をするアオ兄は、
怒りと悲しみをにじませた表情のまま、淡々と話し続ける。

「人を、叔父さんを…簡単に、殺しておいて。何が、正義だっ。

…心底思うよ、今までのお前の誘い、ずっと断ってた俺を…褒めやりたい、ってね。」

最後は強気に、不敵に笑いながら言うアオ兄。



でも…その身体は、

チカラの使いすぎだろう、息もまだ乱れたままで。
話しているだけで、立っているだけで…辛そう、だった。


「そうですか…。
優秀なチカラが、失われるしかないなんて。本当に…残念です。」

ブレイズ隊長は、静かに首を振りながらつぶやいた。
そして、ゆっくりとこちらに視線を合わせて。

ゆっくりと、息を整えている。

(また…また、勅令するのか?その前にっ…)

「ヒマリっ、ヒマリを!
どこへ、連れて行く気だ!連れて行ってどうする!?」


どうしても気になった、
さっきの会話で湧き上がった疑問をぶつける。

「なんで、ヒマリなんだよっ!」

俺の、心からの叫び。

この場で初めて…ブレイズ隊長が、まっすぐ、俺だけを見る。
…悲しそうな、哀れんでいるような表情で。

「冥途の土産…というやつですね。私と君の仲です、教えてあげましょう。
ヒマリは、彼女は…”禁色(キンジキ)”、なのですよ。」



「…キンジキ?」

「…っ、黒の悪魔、か…。」

ブレイズ隊長の”土産話”に、対称的な反応をする俺たち。

俺には何のことか分からなかったが…
アオ兄は、ブレイズ隊長の一言で、多くのことを理解したらしい。



「アオバ君の、その反応…。
”禁色”は、ホワイトノーブルでは、隊長格にしか知らされていない”秘密”なのですが。
…さすが、博識なアオバ君、ですね。」

ブレイズ隊長は優しく微笑む。

「知っていてやはり、私達に協力する気はないということですね。…残念です。」


ブレイズ隊長が、ゆっくりと、左腕を、胸の前に突き出す。
「これ以上、ここに人が来ては困ります。終わりにしましょう。」


突き出された左腕が、水色に…輝き始める。ーーー





ーーー【黒の再来】まで、あと15分ーーー
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