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第一章:あの日、再び
白銀の世界で
しおりを挟む「話をしている間に、多少回復したでしょうが…。
…ここまで、日が落ちている状態では。
アオバ君も、もうそのチカラを…十分に発現することは、できないでしょう。」
「…それは、お前も…同じだろう?」
アオ兄は、負けじと言い返す。
「残念ですが…私は少し、”特殊”、なんです。
…陽が落ちても、さほどチカラは落ちません。」
ブレイズ隊長の左腕が、”いつもと同じように”輝いて…
「博識なアオバ君でも、このチカラは知らないでしょう…
…残念ですが、さよならです。せめて苦しまないように…勅令するーーノエル、舞い狂え。」
ーーーヒュォォォォーーー
ブレイズ隊長の勅令で、周囲は一瞬でモヤに包まれる。
一瞬で…白銀の、世界に。
「なんだっ、これっ。」
俺は、一瞬で悪くなった視界に驚きながらも。気を抜かずに、周囲を警戒する。
あたりを包み込むモヤは、今まで何度も見てきた…ブレイズ隊長の、どの発現とも違っていて。
水色よりも、圧倒的に”白”に、近い色をしている。
「くそッ!ヨウ、こっちだっ!」
アオ兄に呼ばれ、何とか目をこらし。近くにいたアオ兄に駆け寄る。
「ヨウ、俺の後ろに、隠れてろ。」
そう言って…
…俺を振り返るアオ兄の瞳は、”深緑色”に、色づき始めていた。
(陽は、落ちてるのに…?!)
ブレイズ隊長も、アオ兄も、陽に…左右されない、のか?
ただただ混乱する俺に、当のアオ兄は
「ーーお前は、俺が、絶対守るから。」
いつもの、イタズラっ子のような目配せをして微笑む。
「アオ兄っ。」
結局、俺はわけもわからないまま、
目の前の、アオ兄の背中にしがみつくしかなかった。
「準備は、整いました。…一瞬です。」
気付けば、ブレイズ隊長の周り、
白銀のモヤの中を…大量の雪が、舞っていて。
「はっ…。」
急激に下がった気温に驚きながら、まるで季節が、冬になったかのような錯覚に陥る。
季節外れの…猛吹雪だ。
「この吹雪の塊が、君達にぶつかり…通り抜ける。
その一瞬の間に、意識も、体温も、すべてが…奪われます。」
ブレイズ隊長は、ずっと優しい口調で話し続ける。
「せめて…最後は。2人で仲良く、眠ってください。」
…そのセリフと、ほぼ同時。
「…っ。」
アオ兄が、無言で。
勢いよくーーー右手を、振り上げた。
…白銀の吹雪の中。
その怪しげな輝きに負けない、深緑色の輝きが。
まるで白銀に対抗するかのように、瞬く間に輝きを放ち………。
ーーードンッ!!!!
深緑色の光が、白銀の世界で、弾けた、ように見えた。
「な、にっ!」
白銀と深緑の混ざった、その光の中から。
突然、ブレイズ隊長の驚いた声が響いてきた。
ゆっくりと、白銀の世界が、なくなっていき…。
俺の目に、飛び込んできたのは…
「くっ。」
地面に膝をつき…血が滴る左腕を押さえる、ブレイズ隊長の姿だった。
「これは…っ。」
血の止まらない左腕を押さえ、ブレイズ隊長がつぶやく。
その表情は、俺の位置からは、見えなかった。
「くそっ、かすっただけかよ!」
俺の前に立つアオ兄は悔しそうに言い、急いで俺を振り返った。
「ヨウ…!」
そして、俺の手を引く。「逃げるぞっ!」
俺は、咄嗟のことに驚きながらも…
「だ、め…だっ。」
引かれる手を、もう片方の手で押さえて立ち止まる。
「ヒマリもっ…!」
ブレイズ隊長の背後、いまだ倒れたままのヒマリに目を向ける。
「ヒマリも、逃げなきゃ!」
ヒマリを…たった1人、ここに置いていくわけには、いかなかった。
…そんな俺の気持ちを察したアオ兄が続ける。
「ヒマリは…今は無理だ。
でも、すぐに殺されるわけじゃない。ここは一旦、逃げて助けを呼ぶしか…。」
「でも…っ。」
アオ兄の提案は、もっともだった。その通りなんだ…でも、でも俺は…。
どうしても、素直に頷けないでいると
「まさか…。アオバ君が、勅令せずチカラを発現させる、
”勅令放棄(ちょくれいほうき)”を習得しているとは。本当に、さすがアオバ君です。」
ブレイズ隊長が、少し苦しそうに。ゆっくりと、その場に立ち上がった。
「しかも、”分け与える”のとは、違うチカラですね。これは…”奪う”、チカラでしょうか。」
俺も初めて見た、アオ兄のチカラについて、ブレイズ隊長が、丁寧に分析してみせる。
「ちっ。やっぱ、”隊長”ってのは、伊達じゃない…よなぁ。」
アオ兄が舌打ちし、少し笑いながら。それでも悔しそうに答える。
「何でも、お見通し、なのねぇ…。
すぐには立ち上がれないくらい、”奪った”、つもりだったんだけどなぁ。」
「陽が昇っていれば、あるいは…というところでしょうか。
アオバ君のチカラには、本当に驚かされます。」
チカラの分析が当たっていて満足だったのか、
ついさっきまで苦しそうだったブレイズ隊長は、あっという間に…
…いつもと同じ、表情や息遣いに戻っていた。
「その歳で、そこまでチカラを扱えるとは。素晴らしい才能です。」
左腕の血は止まってはいないが、その見た目以上のダメージは…ブレイズ隊長からは、感じられなかった。
「ーーーここまで、か…。」
アオ兄が、俺に聞こえるか聞こえないかの声量でつぶやいて。
掴んでいた手を離し、俺に背を向ける。
「え?アオ兄、今なんて…?」
「ブレイズ隊長、頼みがあるんだけど。」
アオ兄は、俺の質問には答えず。
ブレイズ隊長の方に身体を向けたまま、大きな声で話しかけた。
「…聞きましょう。」
ブレイズ隊長の、落ち着いた声。
アオ兄は、さっきと同じ大きな声でーーー
「俺…やっぱり死にたくないからさぁ。
ホワイトノーブルに、入れてほしいなぁって。」
アオ兄は、俺の方を見ることがないまま。いつもの明るい調子で、そう、提案した。
ーーー【黒の再来】まで、あと11分ーーー
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