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第二章:新しい世界
死を選ぶ理由
しおりを挟む「お前に…選ばせてやるよ!」
嬉しそうに、そう言うノヴァンの顔を。
状況が分からない俺は…ただ、見つめることしか出来ない。
(生きる…?死ぬ…?それって…)
混乱する俺を助けてくれたのは、
「何の説明もせずに…!ほんと”簡単に”、言い過ぎですよっ!」
ノヴァンの横に立っていた、サクヤだった。
「だって~。回りくどいの、苦手なんだよな~。」
「いくら何でも、すっ飛ばし過ぎです。
…ヨウ君。”2つの選択”、については。ちゃんと、順を追って…説明しようと思います。
ですが、まずは…”あの日”、ミタ山で。一体何があったのか。真実を…教えて、くれませんか?」
真剣に、そう頼まれて。
俺はいまだ、多分この人たちの手で…椅子に、拘束されたまま。なんだけど……。
(この人には、…嘘、つきたくないなぁ。)
どこか、アオ兄を感じさせる、サクヤの姿に。
気付いたら、”あの日”、見たこと全てを…何の嘘偽りなく、2人に話していた。
「…分かりました。やはり…ホワイトノーブル、絡みですね…。」
「も~。あいつら、ほんっとにロクなことしないよなぁ~。」
「しかも…”ヒュー・ブレイズ”が、直々に動いていたとは…。」
黙って聞いてくれていた2人は、話が終わると、それぞれに感想を口にした。
そして…
「んじゃ、まぁ!ここからが、本題だな。…おっほん!あーあー。」
喉の調子を整え始めた、ノヴァンに告げられる。
「ヨウ・オリーヴァー君!君を…
…”深淵の黒色隊(ブラックアビス)”のメンバーとして、歓迎しようっ!」
ノヴァンは、嬉しそうなニヤケ顔で…そう、俺に言い放った。
「…え?」
さっきまで…俺、”生きる”とか、”死ぬ”とか…選べって、言われてなかったっけ…?
「あ、言い忘れてた!」
そう言って、”てへっ、うっかりうっかり!”、と言いながら。
自分の頭を、”コツン”と叩くノヴァンに…
「うちに入るの、断ったら、
…もちろん、”死刑”、だからなっ?」
…軽く、本っ当に、軽く…。とびきりの笑顔で。そう、付け加えられた。
(し、死刑…?だから、拘束されて…っ!)
俺は、人生で初めて突きつけられた宣告に、
驚き…そして、改めて、拘束されていることが怖くなって。
何も、言い返す事ができなかった。
そんな時…
「なーにが、”言い忘れてた!てへっ”、ですか!いい歳して!ま~た説明も無しに…全くっ…。」
ノヴァンを押しのけるように、サクヤが俺の正面にきて。
どこからか持ってきた椅子に座り、目線を合わせて…
…いまだ状況についていけない俺に、ゆっくりと、説明を始めた。
「ヨウ君、辛いことを話してくれて…ありがとう。だいたいは、僕らブラックアビスの推測と、一致したよ。
そこで…君は、最後…。『紅いモヤの中で、長い時間過ごした』と、言っていたけど…。
本当は、その間…、君は…
…”黒の悪魔”、そのもの…だったんだ。」
…そこから、サクヤに説明されたこと…。
俺は、信じられなかった。
信じたく…なかった。でも…。
「一応…現場のミタ山の、写真です。君が倒れていたのが…このあたりで…。」
写真を…見た時に。
色々なことが、鮮明に蘇ってきた。そうだ…俺が。こんなに…ミタ山を、吹き飛ばして…。
俺が…みんなを…。
俺は…
「…”黒の悪魔”…なんですか?」
頭をよぎったことが…自然と、口に出ていた。
「…アオッ兄も…ヒマリもっ…!他にも、誰か…。俺がっ…黒の悪魔の、チカラでっ…?」
俺は、いつの間にか、泣いていた。
考えたく…なかった。
守りたい人たちを、守ろうとした…だけなのに。
その、大切な人たちを…俺が…伝承の、旅人のように…悪魔のチカラで…地上から、消し去った?
そうだ…あの時。悲しみと…怒りで、我を、忘れて。チカラを…止められなくて…。
俺が…みんなの恨む、”黒の悪魔”に…なって…しまったのだろうか?
写真を、もう一度見てみる。
写真の焦げた地面に、ポツンと写る…あれは、多分…紙袋。
そして、そこからこぼれ出ている…黄色のハンカチ。
でも、それはもう…他の人が見たらきっと、ただの、真っ黒に焦げ付いた、かたまりで…。
「俺っ…。死んだ方が…いいの、かな。」
俺はまた、思ったことが、自然と口から出ていた。
さっき言われた、”生きるか”…”死ぬか”。
”死ぬ”を選べば…”死刑”、だったっけ…。
俺は…”黒の悪魔”で…。
”生きるか”…”死ぬか”…。
そうだ、きっと…この人たちは。
俺がすすんで、死を選ぶようにって、説得して、くれてるのかな…。
そんなことを、考えていた時。
「お前…。
生きたくて、”ああ”なったんじゃ、ないのかよ。」
今まで、ずっとヘラヘラしていたノヴァンが。
真剣な顔で…俺に問いかける。
(生き…たくて…?)
俺は…あの時…。
そうだ、あの時…一番に考えていたことは…
「俺は…
…死んでも、良かったんだ。…みんなが…助かる、なら。」
俺は、あの時思ったことを、正直に伝えた。
あの時…俺だって、死にたいわけじゃ、なかったけど…。
でも、死んでもいいと思えるくらい、守りたい人がいたから。
「俺が死んでも…、アオ兄や、ヒマリが生きててくれるなら、それで…。
でも…なのに…。俺が、”黒の悪魔”のチカラで…。」
…命をかけて、守りたかった2人はもう…いない。
俺は…
(2人のいない世界なら…もう…。)
流れ続ける涙を頬に感じながら、
ぼぅっとした頭で…そう、思い始めていた。
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