黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

文字の大きさ
33 / 72
第二章:新しい世界

黒の悪魔が死ぬまで

しおりを挟む

「まあ、そういうわけよ!」

ノヴァンも、ニヤッと笑って。

椅子から立ち上がり…右手を、サクヤと同じように、俺に差し出した。




そして…


「だから言ったろ、

うちに入らなきゃ、…危険分子ってことで、”死刑”、なんだって。

要するに…黙って入ればいいんだよ、入れば。黙って俺に、任せとけ!」


ハハハ!と、心底楽しそうに笑うノヴァン。



「ほんっと、アナタって…緊張感のない人ですね。」

サクヤが、振り返って、呆れた様子でノヴァンに告げる。

俺も…同じことを思ったから、キレイに代弁してくれて、スッキリした。



「サクちゃんが、考えすぎなだけだって~。

ま、大丈夫大丈夫!

組織に入ったら、俺がちゃ~んと、”監視”してやるからさ。あっ!”保護”…だったっけ!てへっ。」


「サクちゃんって呼ぶな!あと、その仕草もキツイ!」



…そんな、楽しそうな2人やり取りを、見つめる。



俺…

この人たちを、信じても…良いのかな。



俺は…

…死ななくて、良いのかな。



でも…。


「アオ兄…。」


色々なことを考えながら、無意識に…そう、つぶやいていた。





「…ヨウ君。」

サクヤが、俺のつぶやきを聞いて…悲しそうに、目を伏せる。



俺は…、俺だけが…。

生きていて、良いんだろうか?


大切なひとのいない、この世界で。


この人たちの手をとって…それで…。




少しの、沈黙。

薄暗い部屋で流れた…重い空気を、やぶったのは、




「お前さ…。」

サクヤの少し後ろに立つ、ノヴァンだった。




「さっき、俺が、

『生きたくて、”ああ”なったんじゃ、ないのか』って聞いた時、

…『みんなのためなら、死んでもよかった』って、言ったよな?」



真剣な表情で、ノヴァンは、真っ直ぐに俺を見つめる。

俺は、そんなノヴァンの視線から、目をそらせないまま…黙って話を聞く。





「誰かのために…死ぬ覚悟ができるやつはさ、

”誰かのため”なら……生き続ける覚悟だって、できるだろ?


”黒の悪魔”の被害者を、これ以上出さないために。
お前にしかできないこと、俺たちと一緒にさ。

頑張ろうぜ、

”誰かのため”に、”黒の悪魔が死ぬまで”。」



(誰かの、ために…。黒の悪魔が、死ぬまで。)



「そうですよ。
ヨウ君の、”ニセモノの黒の悪魔のチカラ”は
ホワイトノーブルの、ブレイズによって、引き起こされたようなものです。

君は被害者です。責任を感じる必要は、ないんですよ。


それに、これは…きちんと確認をとってから、言おうと思ったのですが。
君の幼馴染の…ヒマリ・プリマナは、生きている可能性が、高いです。」


「えっ!ヒマリが…!?」


俺は、信じられない事実に耳を疑った。


「ええ。ホワイトノーブルは…当初の目的通り、
”禁色”の彼女を、あの場から連れ去ったようです。」


「そう、なのか…!良かった…ほんとうに…。」


「それに、これもまだ調査中ですが…

あの日の惨劇…いつの間にか、世間では【黒の再来】と、呼ばれるようになりましたが…
…あのミタ山での【黒の再来】で、亡くなったのは…ヒュー・ブレイズの攻撃を直接受けた、2人だけです。

つまり、君のチカラで、犠牲者は、出ていないんですよ。」



「え…。」


俺は…。誰も…?

本当に…?



「君の発現したチカラは、7年前の【黒の誕生】には、遠く及びません。
7年前、リビ山は…その全て、山まるごと1つ、一瞬で吹き飛ばされましたが…
今回、同じような大きさのミタ山は、せいぜい、その斜面が…3分の1ほど、削り飛ばされた位です。

あとは、目撃者によると…君が、最後に爆発させた”紅色の光”も、そのほとんどが…空中に、放電していったそうです。


こういった、チカラの弱さや、使い方も、
ヨウ君が、本当の意味で”黒の悪魔ではない”という、根拠になっているんですよ。」


サクヤが、優しく微笑む。



そうか…俺は…、みんなを…。

「良か、たっ…!

俺、みんなを…殺し、ちゃったのかって。おれっ…。」


安心したのか、それとも嬉しかったのか…

頬を伝う涙の理由が、俺には、ハッキリとは分からなかった。





「ネタバラシ、早いんだからなー全く。」

調査結果、確定前なのにいいの~?と。
ノヴァンは、少し面白くなさそうに言う。


「だって…!これ以上…、ヨウ君の…傷つく顔が…見れなくて…。」

サクヤは、少し申し訳無さそうに、ノヴァンを振り返った。




「お前なぁ…。ほんと、優しすぎるのも程々にしとけよ?ったく…。

…ヨウにはさ、

”俺のせいで死んだやつらの分まで…、俺、頑張る!!!”…みたいな。

アツ~イ覚悟、期待してたんだけどな~。」


ノヴァンは、頭をくしゃくしゃと掻きながら。
顔は伏せているため、その表情は、分からなかった。


そしてそのまま、椅子に座る俺の目の前に立ち。

上から覗き込むように、こう言った。


「じゃあ、まぁ!こうなったからにはさ、

せっかく生きてた幼馴染も…ついでに、世界も。

全部まとめて、お前が救ってやれ!



”誰かのために、死ぬ覚悟ができるやつ” は、
そんくらいおっきな、”生き続ける覚悟”も…できんだろ?」


ノヴァンが、ニヤッと笑った。



(俺が、ヒマリを…みんなを…守る…!)


(…全ての元凶、”黒の悪魔が死ぬまで”!)


そう、胸に…湧き上がる想い。

その、新たに湧き上がったアツイ想いを、2人に伝えようと。



口を開きかけた…その時。



「あ!そういや、サクにも言い忘れてたことがあったんだった!」


俺が、口を開く前に。


ノヴァンが、片方の手で、”ポンッ”と、もう片方の手のひらを叩いて、こう言った。



「さっきのお前の説明、間違ってる所があるわ。



ヒュー・ブレイズの攻撃で、”本当の意味で”、亡くなったのは…1人、だけだぞ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...