黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

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第三章:来たる日に備えて

走馬灯ではない

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深々と、お辞儀をするヤマト。


その少し離れた所で
濃い真っ黄色のモヤに包まれた派手男は



「ったく、何なんだお前は!?

ちょーし狂うぜ…!」



イライラとつぶやき

乱暴に、左腕を振り上げた。


「俺のチカラは、しょーじき言って、地味だ!

ただ、紐を発現させるだけ、なんだからな。


でも、チカラなんてのは、
使い方次第で、まったく別のモンになる。


チカラをロクに知らねーらしい武術家さんに

お望み通り、教えてやるよ…

…身をもって、知れ。


勅令するーーナナ、滑り寄れ!」






ーードンッ!!!




黄色のモヤの中心から、勢いよく、


大蛇…

いや、それよりも、もっと大きくて、太い。


例えるなら、巨木のような紐が、飛び出して。



冷静に構えていたヤマト目がけて

一直線に向かっていった。



「ヤマトっ!避けろ!」


黄色のモヤが、濃過ぎて。

俺の位置からじゃ…派手男の付箋は、

とてもじゃないが、読めなくなってしまった。


(こうして叫ぶことしか…できない…っ!)





俺の叫びが聞こえたのかは分からないが



ヤマトは、きっと初めて見るだろう

巨木のような紐が向かってきても、


焦ること無く、難なくかわしてみせた。





ーーガスッ!!!


かわされた紐は、

ヤマトの脇の地面に当たり


深々と地面をえぐって、静止した。




「すごいパワーと質量デス!

当たったら、ただの怪我では済みませんネ。


でも、さっきの紐より、太い分

スピードが、とっても遅いデス。


僕なら、簡単に避けられマスっ!」




”えっへん!”とでも
言い出しそうなポーズで

嬉しそうに、ヤマトは説明してみせた。


(巨木のような大きさで、あのスビード。

俺にとっては、十分すぎるほど、速い。

ダメージが無くても、たぶん、避けられない。


ヤマトが…速すぎるんだ。)



俺は改めて、

生身で、デタラメに強いヤマトを凝視する。



(これで…俺と同じ”禁色”?

でも、チカラも知らないし…。

本当に…何者なんだ?)



俺が、深まる謎に

思考を奪われていると



「とっておきの技は、今のデスカ?

もう少し、スピードを速くしてほしいデス!

パワーは、本当に素晴らしいノデ!」



ヤマトは、その場でピョンピョン跳ねながら

ご機嫌なまま、派手男に話しかけた。





派手男は、巨木が避けられてからずっと

無表情のまま、立ち尽くしていたが



ヤマトの、この言葉を聞くと

ニヤリと笑って、こう答えた。



「お褒めの言葉、ありがとーゴザイマス。


だが…手加減は、しねーからなっ!」



派手男が、言葉と同時に

左腕を、勢いよく振り上げる。




ーーギュギュルル!!!





派手男の合図と同時に、

さっき倒れた巨木のような紐から


細い、尖った紐が、複数

本当に、
巨木から生える木の枝のように伸びていった。



もちろん、
そのすべての枝の標的は、ヤマトで。




(近距離から、あんなスピード…!

いくらヤマトでも、あれじゃ…!)



「ヤマトっ!」


「っ…!」


ヤマトはとっさの攻撃にも慌てず


猫のようにしなやかな動きで
死角から迫ってきた、枝のような紐を避ける。



でも…


その内の1本だけは、避けきる事ができず。




ーーズサッ!


「くっ!!」



勢いよく、
鋭く細い紐が、ヤマトの脇腹に、突き刺さった。






「つっ!」


ヤマトは、一瞬、
苦しそうに顔を歪めたが


怖いほど冷静に、
脇腹に刺さった紐を引き抜き。




そのまま、巨木の紐からも離れ

俺のすぐそばに、避難するように下がってきた。





「ヤマトっ!」


俺は身体を起こして、

急いで、近くにきたヤマトに駆け寄る。




ヤマトは膝をついたまま、

刺された脇腹を押さえ、止血しようとしていた。



「やられちゃい…マシタっ…。」


俺は、押さえているヤマトの手の上から

傷をジッと見て、具合を把握しようとする。



(ダメだ…この傷…

近くで見ると、意外と、深いっ…。)



押さえるヤマトの手をすり抜けて

真っ赤な血が溢れ出し、地面に滴り落ちていく。




「俺の服、使って!」



俺は急いでシャツを脱ぎ、

ヤマトの腹部に巻きつけた。




「アリガ、トウッ…いっ!」


ヤマトは礼儀正しくお礼を言ったが、

その表情は、痛みで歪んでいる。


呼吸も、かなり荒くなっているのが分かった。






「ははは!

俺のとっておき、どうだったぁ~?」



派手男が、ご機嫌な様子で、

濃い黄色のモヤから、軽やかに現れた。




「種明かしをするとな、

俺は、勅令放棄は出来ねーから
ちゃーんと一回の勅令で、

大きな紐とは別に、
細い紐も何本か、発現させてたんだわ。」



ご機嫌のまま話し続け

少しずつ、俺たちに近付いてくる。



「大きい紐って、派手でさー、

とっておきって感じがしただろ?


だがな、本当のとっておきは、


避けて油断した所に
大きな紐の影から出てくる、細い紐だったんだよ。



さっき真面目にやり合った時、
俺の近くから出る、紐の攻撃じゃ

複数本だろうが、いくらやっても

素早い武術家さんには、軌道を読まれて
ギリギリで避けられるなーって、分かった。



それなら、どデカイの
気持ちよーく、避けさせてやってからさ

こっそり狙えばいいんじゃん?って、なったわけよ。」



俺ってかしこーい!

とか何とかつぶやきながら、


派手男は、どんどんこちらへ近付いてくる。





「あの大きな紐がさ、

避けられて、
地面にぶつかっても消えなかった時、

お前、不自然に思わなかったの?



まさか、次の攻撃は、

勅令に注意しとけば大丈夫だーって、思ったとか?



ったく、これだから

考えナシのバカは、
戦闘に向かないんだよなー。



シオン、だったか?

お前は賢いけど、
明らかに戦闘経験ナシの貧弱者。



そんでいきなり現れたお前は

武術家の戦闘服着て
”いかにも”って感じなのに…


チカラも知らねーらしいし?

戦闘経験が無いのか…。


それとも、ただの戦闘バカで

チカラとか、考えらんねーのか?」



派手男は嬉しそうに話しながら

俺たちのすぐ目の前で、歩みを止めて。



地面に膝をつく俺たちを見下ろして、

吐き捨てるように、言った。



「まあいいや。

どっちにしろ、お前ら2人とも

俺には勝てねーってことだからさ。」






(くそ…!)



俺は、下から派手男を見上げ

悔しい気持ちで一杯になる。



隣のヤマトに視線をやると、

俺と同じように、
痛みで歪む顔に、悔しさが滲んでいた。




(今日は…悔しい気持ちばかりだ。

今日は…。)



走馬灯、とはちょっと違うと思うけど。


追い込まれて、
今日一日のことを、ふと考えて…。




『あの派手男を
お前たち”2人で”どうにかしろよ。』


ある人の声が、妙に、頭に引っかかった。



(そうだ、あの時…ノヴァンさんは…。)



『”2人で”は、言葉通り”2人で”、だな!』


(ダメージで動けない俺に、”2人で戦え”って…。)




俺は、必死に考える。



(あの人は…

未熟な俺たちでも、”2人なら”

派手男に勝てるって、そう、伝えたかった…?)



チカラを使える俺。

身体能力の高いヤマト。

そんな2人が、一緒に戦う、方法…。



『”読みながら”応援してやってよ。』



(そうか…!これならっ!)


俺は、ある作戦を思いつき…



(でも、結局…一か八か、だ…。


これも、今日…
よく考えてる気がするな…。)


ただ悔しいより、

一か八か、やってやる方が

よっぽど良いな、と思った。




俺は覚悟を決めて…



ヤマトに、抱きついた。



「勅令するーールナ、忍び漂え!」
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