世界を越えてもその手は 裏話

犬派だんぜん

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世界を越えてもその手は 続3章 ドロップ品のオークション 1

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◆ドガイ王宮(1. 着地地点)

「陛下、大変です! 神獣様が王宮前広場にお着きになりました」
「どういうことだ?」
「突然空から降りていらっしゃいました」
「陛下、神獣様のもとに向かわれては」
「急いで向かう」
「それが、すでに神獣様は中央教会へと飛んでいかれました。ですが契約者様とアイテムボックス保持者がまだいらっしゃいます。王宮を訪問していた司教様とともに教会へと馬車で向かうそうです」
「近衛兵、契約者様を謁見の間にご招待してください」
「いや、時間が惜しい。私が向かう。急げ」

「契約者様は?!」
「陛下、申し訳ございません、引き留めましたが力及ばず、馬車ですでに中央教会へ向かわれました」
「……無念だ」
「しかし、なぜ神獣様は王宮に?」

「テオリウス殿下」
「神獣様が王宮にいらっしゃったと聞いて出てきたのですが」
「すでに中央教会へと向かわれました」
「テオリウス王子、そなたはモクリークで神獣様と面識がおありだと思うが、なぜ神獣様が王宮広場にいらっしゃったかお分かりか?」
「神獣様にとっては、教会の敷地がどこまでかなど些末なことなのかもしれません」(あの神獣様、ずいぶんとおおらかでいらっしゃるらしいから、近くに広いところがあったって感じなんじゃないかなあ)

「昨日はお騒がせいたしました」
「いや、問題ない。大司教、神獣様は何か目的があって王宮広場を訪れられたのか?」
「いえ、以前にモクリークを訪問した司教がちょうど王宮前におりましたので、教会の敷地と思われたようです」
「そうか。なんとか神獣様にお目にかかることはできないだろうか」
「神獣様のお気持ち次第ですので」(謁見など設定したところで、出てくださるかはそのときのご気分によるでしょう)


◆ドガイの中央教会(1. 着地地点)

『あ、首飾りくれた人発見』
「し、神獣様?!」
「神獣様、ようこそドガイへお越しくださいました。アレックス様はどちらですか?」
『チーズくれる人が、チーズがこっちにあるって』
「チーズをくれる人……?」
「大司教様、グザビエ司教のことでは。モクリークにてアレックス様がそう紹介されていましたよね」
『なあ、チーズは?』
「ご、ご案内いたします。どうぞこちらへ。グザビエ司教の所在を確認して、ブラン様のお出迎えを頼む」
((今回は突然すぎたからか、大司教様が感激でお倒れにならなくてよかった!))


◆ミンギ王国のとある街(1. 着地地点)

「大司教様、この先の街であふれが起きたようです」
「迂回してドガイに向かう道があるか聞いてきます」
「いえ、我々も住民の避難を手伝いましょう」
「ですが大司教様、そうなると神獣様のご到着に間に合いません」
「仕方がありません。ブラン様とグァリネ様にはご理解いただけるでしょう」(というより、気にもなさらないでしょう)
「では、護衛には荷物の警護に専念してもらって、我々はこの地の教会の方の指示を仰ぎましょう」

「ドガイへ向かっておりましたが、お手伝いいたします。このあたりのことは分かりませんので、ご指示ください」
「それは、とてもありがたいのですが、モクリークの大司教様にお手伝いいただくわけには……」
「神の前に人の階位など意味を成しません。モンスターから逃げている住民にも同じことです」
「では、周りの街から手伝いが来るまで、お願いいたします。あの、もしお持ちでしたら、ポーション類をご提供いただけないでしょうか」
「旅の間に必要になる分のみで、量は多くありませんが、全てお渡しいたします」


◆少し前のモクリークの中央教会(3. リネの入浴方法)

『お風呂、一緒に入ってみたい!』
「いいよ。お風呂は気持ちいいから、リネも好きになると思うよ」
「リネ、ダメだ」
『なんで?』
「ダメなものはダメだ」
「アル? なんでダメなの?」
「……ダメだ」(ユウの裸を見せたくない)
『えー、オレも入りたいのにー』
『ごちゃごちゃうるさい。さっさと入ってこい!』


◆ドガイ中央教会(3. リネの入浴方法)

「命がけのモッツァレラチーズ……」
「教会に時間停止のマジックバッグをお預けいただければ、万難を排してお届けいたしますが」
「やめてください! そんな、誰かの命を懸けてまで食べたいわけじゃないです。気軽に言ってごめんなさい」
「ユウ、食べたくなったら、リネに飛んでもらおう」
(神獣様にご足労いただくくらいなら、国中の冒険者を動かしてでも届けますから!!)
『オレの好きなものもあるならいいよ』
「リネ、ありがとう! 美味しいものたくさん用意してもらうね!」
(荷運び人ならぬ、荷運び神獣様。畏れ多すぎて、止めるべきなのか、笑い飛ばすべきなのか、分からない……)


◆モクリークのダンジョン(3. リネの入浴方法)

「それ、もしかしてマジックバッグか?」
「ああ。時間停止だぞ。いいだろー」
「「「おおー!」」」
「容量は?」
「ギルドの分類では一応小だけど、特小って感じだ。五人分のダンジョン攻略中の食料は入りきらないんだ」
「だが、堅いパンばかりにならないのはいいなあ」
「どこで出たんだ?」
「下層一つ目なんだが、ギルドによると一つ目で時間停止が出たのは初めてらしい。その分容量が小さいんだろうけど」
「へえ、そういうこともあるんだな」
「ポーションの保存期間を考えなくていいのが、一番の恩恵だな」
「そっかー。容量大もいいけど、時間停止も捨てがたいなあ」
「だよなあ。やっぱり最初は時間停止か?」
「ってお前、まずSランクにならないと入れないだろうが」
「夢は大きく持たないと」
「頑張れ。Sランクになりさえすれば、三年待たなくてもカークトゥルスに入れるのはモクリークの冒険者の特権だからな」
「よーし、頑張るぞー」
「ギルドの推薦もらえるように、悪さはするなよ」
「うるせえ。俺たちは、品行方正なパーティーだ」
「お前、そんな難しい言葉を知ってたんだな」
「話は変わるが、あのカークトゥルス推薦制度が始まってから、変な奴らが減った気がしないか? 上層でうだうだしてる、カークトゥルスのために他の国から来たんだろうなってパーティー見なくなったよな」
「Sランクにふさわしいドロップ品の買い取り履歴がない奴は推薦してもらえないらしいぜ」
「俺、ギルドで断られてるパーティー見たぞ。モクリーク中で情報を共有しているらしくて、他のところでもめたからダメだって言われて、めっちゃキレてた」
「マジかよ。一度でもやらかしたらアウトなのか」
「そのためにモクリークで三年頑張って断られたら、キレるわな」
「そんなパーティーなら、そもそも頑張ってないんじゃないか?」
「あー、たしかに」
「まあ、カークトゥルスが荒れたら、氷花と獣道と軍以外立ち入り禁止、とかになりかねないからな」
「この国のギルドならやりそう。ましてや今は神獣様もついてくるしな」
「この冬から、氷花がいる間は立ち入り禁止になるんじゃないか?」
「大丈夫だろ。あの神獣様だぞ? やらかす奴がいたらギルドの前に神獣様が燃やすさ」
「ギルドが追放するより手っ取り早いな」
「だな」
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