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2章 第三王子に婚約破棄されて不幸のどん底に叩き落され没落してしまった令嬢は行く宛もなく
第6話
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降り出した雨は、まるで天が怒りをぶつけるように雷鳴を伴い、容赦なく地を叩いていた。
びしょ濡れになったセリカリーナは、ようやく屋敷の門をくぐった。
靴からは水が滴り、髪は頬に張りつき、吐く息が震えている。
疲労のせいか、寒さのせいか、それとも恐怖か――自分でも判然としなかった。
婚約破棄を告げられたあの瞬間から、世界はずっと軋み続けている気がした。
宮廷のざわめき、嘲りと憐れみの混じった視線、そして血溜まりに沈む父の姿。
それらが耳と瞼の裏に焼き付き、剥がれ落ちることなく彼女を蝕んでいた。
震える唇で、セリカリーナは屋敷の者たちに今夜の出来事を告げた。
第三王子からの婚約破棄――そして、父が暗殺されたことを。
言葉を吐き出すたびに胸が裂けるようで、声は途中から掠れていた。
その報せを聞いた瞬間、家中に雷が落ちたような衝撃が走った。
いや――実際に、雷が落ちたのだ。
耳をつんざく轟音とともに、屋根を貫いた稲妻が炎を呼んだ。
豪奢だった屋敷の紋章旗が燃え上がり、金糸の刺繍が赤く溶け、やがて灰となって空へ散る。
燃え盛る光が雨粒を朱に染め、夜空にかすかな煙の匂いを残した。
雷が落ちた後、雨は不思議なほどすぐに止んだ。
だから炎の勢いは衰えずに、業火が屋敷を包み燃やし尽くした。
残ったのは瓦礫の崩れる音と、誰かが誰かの名を呼ぶ悲鳴だけ。
その声は夜に吸い込まれ、やがて風の音と区別がつかなくなった。
夜が明けた。
濃い灰の匂いが漂う朝の空気の中で、セリカリーナは焼け落ちた屋敷の前に立ち尽くしていた。
かつての誇りも栄華も、いまは黒い煤の中に沈んでいる。
隣に立つ執事も、侍女も、誰もが沈黙のまま。
その沈黙が「この家はもう終わりだ」と告げていた。
それは真実だった。
父の死と婚約破棄によって王家の庇護を失い、積年の悪行が暴かれた。貴族たちは待っていたかのように牙を剥き、正義の名のもとに糾弾した。
ハーベスト家は断罪され、家名も領地も財産も――すべて、灰のように散った。
セリカリーナ自身に罪は問われなかったが、この国には、もう居場所がなかった。
かつて“完璧な令嬢”と讃えられたその名も、いまや「没落令嬢」と嘲られるだけ。
誰も彼女を庇わなかった。
恩を受けた者たちは、昨日までの笑顔を捨てて、静かに屋敷を去っていった。
一人となったセリカリーナは、少ない資産である一頭の馬-名はプレオ-に跨がり、王都の灯を背に走り出した。
行くあてはない。
頼る者もいない。
ただ、彼方に広がる見知らぬ地だけが、彼女を受け入れるかのように沈黙していた。
びしょ濡れになったセリカリーナは、ようやく屋敷の門をくぐった。
靴からは水が滴り、髪は頬に張りつき、吐く息が震えている。
疲労のせいか、寒さのせいか、それとも恐怖か――自分でも判然としなかった。
婚約破棄を告げられたあの瞬間から、世界はずっと軋み続けている気がした。
宮廷のざわめき、嘲りと憐れみの混じった視線、そして血溜まりに沈む父の姿。
それらが耳と瞼の裏に焼き付き、剥がれ落ちることなく彼女を蝕んでいた。
震える唇で、セリカリーナは屋敷の者たちに今夜の出来事を告げた。
第三王子からの婚約破棄――そして、父が暗殺されたことを。
言葉を吐き出すたびに胸が裂けるようで、声は途中から掠れていた。
その報せを聞いた瞬間、家中に雷が落ちたような衝撃が走った。
いや――実際に、雷が落ちたのだ。
耳をつんざく轟音とともに、屋根を貫いた稲妻が炎を呼んだ。
豪奢だった屋敷の紋章旗が燃え上がり、金糸の刺繍が赤く溶け、やがて灰となって空へ散る。
燃え盛る光が雨粒を朱に染め、夜空にかすかな煙の匂いを残した。
雷が落ちた後、雨は不思議なほどすぐに止んだ。
だから炎の勢いは衰えずに、業火が屋敷を包み燃やし尽くした。
残ったのは瓦礫の崩れる音と、誰かが誰かの名を呼ぶ悲鳴だけ。
その声は夜に吸い込まれ、やがて風の音と区別がつかなくなった。
夜が明けた。
濃い灰の匂いが漂う朝の空気の中で、セリカリーナは焼け落ちた屋敷の前に立ち尽くしていた。
かつての誇りも栄華も、いまは黒い煤の中に沈んでいる。
隣に立つ執事も、侍女も、誰もが沈黙のまま。
その沈黙が「この家はもう終わりだ」と告げていた。
それは真実だった。
父の死と婚約破棄によって王家の庇護を失い、積年の悪行が暴かれた。貴族たちは待っていたかのように牙を剥き、正義の名のもとに糾弾した。
ハーベスト家は断罪され、家名も領地も財産も――すべて、灰のように散った。
セリカリーナ自身に罪は問われなかったが、この国には、もう居場所がなかった。
かつて“完璧な令嬢”と讃えられたその名も、いまや「没落令嬢」と嘲られるだけ。
誰も彼女を庇わなかった。
恩を受けた者たちは、昨日までの笑顔を捨てて、静かに屋敷を去っていった。
一人となったセリカリーナは、少ない資産である一頭の馬-名はプレオ-に跨がり、王都の灯を背に走り出した。
行くあてはない。
頼る者もいない。
ただ、彼方に広がる見知らぬ地だけが、彼女を受け入れるかのように沈黙していた。
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