敵対勢力の私は、悪役令嬢を全力で応援している。

マイネ

文字の大きさ
12 / 13

【番外編】悪役令嬢にされた私。(フィルミーナ嬢視点)

しおりを挟む

 私は何を間違ってしまったのだろうか。
全てが最初から、間違いだったのかもしれない。


 始まりは、一目惚れだった。
第一皇子殿下の婚約者を選ぶお茶会に参加した私は、まだまだ夢見がちな少女だった。


 まるで物語から出てきたような皇子殿下をみて、私は初めての恋に落ちた。そして、人生で初めて、どうしても手に入れたくなった。
 

 このお茶会で頑張れば、私がお嫁さんに、皇妃様になれる。目的が出来て、その目的を達成する為の手段が、目の前に転がっていたのだ。


 私より可愛い令嬢、私より賢い令嬢、私と同じ家格の令嬢、私より愛嬌のある令嬢、私よりあざとい令嬢


 みんな魅力的だった。でも、私が皇子殿下の婚約者になると、私自身が決めたのだ。醜い欲を隠し、必死に自分を売り込んだ。


 その結果、私が婚約者に選ばれた。


 私はライバル達に打ち勝った。


 自分が誇らしかった。


 婚約者となった私は、皇子殿下と再会した。
「改めてよろしくね。フィルミーナって呼んで良い?僕のことはカイルって呼んでね」

「はい。カイル殿下」


 とても嬉しかった。初めて好きになった人のお嫁さんになれるのだと、当時は舞い上がった。


 そして、婚約者に決まったことにより、始まった皇子妃教育はとても過酷だった。


 早朝から夜遅くまで行われる教育は、非常に多岐に渡り、遊んでる暇など一切なかった。


 それでも私は頑張れた。
 私の努力が、国のため、民のため、カイル殿下のため、何より私自身の将来のためになるのだ。


 自分の血となり肉となる教育なので、常に意欲的に取り組めた。


 カイル殿下とは、月に一度、設けられた婚約者の日にお茶をしていた。

 私には何よりのご褒美の時間だった。
 このために頑張っていたのだ。と、毎回幸せを噛み締めていた。


 私とカイル殿下は婚約者という関係ではあるが、恋愛感情というよりは、友人関係に近いものだった。


 しかし、この関係も大人になれば変わるのだと、漠然と思い込んでいた。


 だって、私はカイル殿下の婚約者なのだから。
 カイル殿下と結婚し皇妃となるのは、私なのだから。

 大人になれば、カイル殿下も、私を愛する人として慕って、大事にしてくれる。そして私達は結婚するのだ。


 何故ならばそれは、幼き頃に、私が勝ち取った未来なのだから。


 今になって考えると、何故、盲目的に未来を信じられていたのか、わからない。


…………………….

 
 15歳になりアカデミーに入学した。
アカデミーを卒業すれば、カイル殿下と結婚出来る。

 この3年を乗り切れば、今までの努力が全て報われるのだ。


 皇子殿下と結婚する。


 始まりは小さな恋心だったが、月日を重ねるにつれ、大きな目標へと成長していた。


 目標なんて、綺麗な言葉では表せないものに、なっていたのかもしれない。


 今となっては、それもわからない。


 アカデミーの教育は皇妃教育に比べ、時間の拘束も少なく、拍子抜けするほど簡単であった。


 アカデミーの期間は、皇妃教育と公務も必要最低限になっていた。


 これにより、皇子殿下の婚約者となってから初めて、自分の時間が出来た。


 新しく出来た自分の時間も、全て勉強に充てた。
 私とカイル殿下が、未来の国を作っていくのだと考えれば、休んでなど居られなかった。


 いくらやっても、いくら考えても、やり過ぎという事はなかった。出来る事をやらないのは怠慢だと。自分を叱咤し、必死に取り組み続けた。


 アカデミーは2年目になり、1年生が新たに入学してきた。


 それくらいの認識だった。


 私の日常は変わらない。あと2年でカイル殿下と結婚出来る。と、更に勉学や社交に力を注いでいた。



 しかし、この時すでに私の日常は、気付かぬ内に、ジワジワと蝕まれていた。




 ある日気が付いたら、カイル殿下が敵を見るかのように、私のことを睨み付けてきていた。


 睨まれるような事をした心当たりはないし、理由がわからない。理由を聞こうと殿下に直接話しかけたが、無視されてしまった。


 殿下はいつも優しかったのに。幼い頃から長い時間ずっと婚約者だったのに。どうしてなのか、理由が全くわからなかった。とても悲しい気持ちになったのを覚えている。


 しかし、程なくして、理由は判明した。
 カイル殿下と男爵令嬢が大変親しい仲だ。との噂が流れてきたのだ。



 噂の真相を確かめるため、噂の男爵令嬢を探した。大きな声で笑いながら、廊下を走っていたので、すぐに見つけられた。


 令嬢は何人もの高位貴族の令息を引き連れ、楽しそうに笑っていた。


 しばらく観察していたら、カイル殿下が来たようで、その男爵令嬢は大きく手を振りながら、耳障りな声で「カイルー!こっちよー!」と叫んでいた。


 会話内容は聞こえないが、男爵令嬢に歩み寄るカイル殿下は、私が見たことのない表情をしていた。


 大切な物を、心から慈しむような表情であった。私はその表情を見た瞬間に、悟ってしまった。私は負けたのだと。



……………………



「フィルミーナ様、あのアバズレどうされるおつもりですか!?」
「あんなの許されませんわ!」
「何とかしませんと!」


 口々に同じ派閥の人達が騒ぎ立てる。
 私に何を期待しているのか知らないが、どうしたら良いのか、わかるのなら教えて欲しい。


 私は幼い頃から一生懸命努力してきた。
人生の全てを捧げてきたと言っても、過言ではない。


 騒ぎ立てている令嬢達が、寝ている間、遊んでいる間、だらけている間、私はずっと努力し続けてきたのだ。


 彼女達は、まるで小判鮫だ。何故私が、おこぼれを啜りにくる者の言う事を、聞かなければならないのか。理解に苦しむ。


 これ以上どうしたら良いのか、私にはわからなかった。

 
 どうする事も出来ずに、私は日々を過ごしていた。誰かに相談しようと思っても、陛下や皇妃様、両親や兄弟。誰に相談するのも正解とは思えなかった。



 これからのことについて悩みながら、俯き歩いていた。


 ふと気が付いたら、目の前に人が現れた。

 「ごめんあそばせ」と言って、道を譲ろうと顔を上げると、あの男爵令嬢が居た。


 すると、何を思ったのか、水入りの大きな容器をもった男爵令嬢は、そのまま大量の水を頭から被ったのだ。


 ずぶ濡れになった令嬢をみて、私はただただ唖然としてしまった。


 程なくして、令嬢は突然「キャー!」と叫び声をあげ、駆け出した。

 悲鳴を聞き、駆け付けた令息に、何やらこちらを指差しながら、抱きつき訴えていた。


 そのとき、私はハメられたのだと気が付いた。


 その後も令嬢は、度々私の前に現れた。
何故か私が行く場所を知っているようで、避けようと思っていても、行く先々に現れた。


 勝手に転んだり、階段から飛び降りたり、自ら教科書や制服をボロボロにしている場面にも遭遇した。


 私を罠に嵌めたいのだろうが、理由と目的がわからなかった。


 私は未来の皇子妃のため、陰ながら皇家の護衛がついている。そのため、事件の全てが冤罪だと簡単に証明出来る。


 しかし、私は認めたくないが、現在すでに殿下から冷遇されている。寵愛を受けているのは、男爵令嬢のはずだ。


 その彼女が、更に私に罪を被せようとしてくる、理由がわからなかった。


 男爵令嬢の目的がわからないまま、年度末のパーティーを迎えた。


 殿下は婚約者であるはずの、私をエスコートしてくれず、1人で会場入りすることになった。


 好奇の視線に晒された。何故、私がこんな目に合わねばならないのか、考えた。しかし、何もわからなかった。


 その後、男爵令嬢を伴って、殿下が現れた。


 程なくして殿下は無情にも、私を断罪した。
 男爵令嬢の目的はこれだったのだ。


 私はやっていないと言っても、聞いてもらえなかった。

 幼い頃から殿下のために、私の全てを捧げて、努力してきたのに。話すら聞いてもらえなかった。


 私が無実を証明することは簡単だ。


 でも、今それをここで主張したら、カイル殿下は観衆の面前で何の根拠もなしに、無実の婚約者を断罪し、貶めたことになってしまう。


 …もうどうでもよかった。でも、ずっと好きだった殿下の足を、私が引っ張ることだけは、絶対にしたくなかった。


 恋心など淡い思いではなく、私自身の意地とプライドに掛けて、殿下を貶めることを選べなかった。


 そして、そのためであるのならば、私がこの場で貶められても構わなかった。



 後でいくらでも、弁明の機会はあるのだから。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!卒業式で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、アンジュ・シャーロック伯爵令嬢には婚約者がいます。女好きでだらしがない男です。婚約破棄したいと父に言っても許してもらえません。そんなある日の卒業式、学園に向かうとヒソヒソと人の顔を見て笑う人が大勢います。えっ、私婚約破棄されるのっ!?やったぁ!!待ってました!! 婚約破棄から幸せになる物語です。

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に

ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。 幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。 だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。 特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。 余計に私が頑張らなければならない。 王妃となり国を支える。 そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。 学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。 なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。 何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。 なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。 はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか? まぁいいわ。 国外追放喜んでお受けいたします。 けれどどうかお忘れにならないでくださいな? 全ての責はあなたにあると言うことを。 後悔しても知りませんわよ。 そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。 ふふっ、これからが楽しみだわ。

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)

ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」  王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。  ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約破棄された男爵令嬢は隠れ聖女だった。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...