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【番外編】悪役令嬢にされた私。(フィルミーナ嬢視点)
しおりを挟む私は何を間違ってしまったのだろうか。
全てが最初から、間違いだったのかもしれない。
始まりは、一目惚れだった。
第一皇子殿下の婚約者を選ぶお茶会に参加した私は、まだまだ夢見がちな少女だった。
まるで物語から出てきたような皇子殿下をみて、私は初めての恋に落ちた。そして、人生で初めて、どうしても手に入れたくなった。
このお茶会で頑張れば、私がお嫁さんに、皇妃様になれる。目的が出来て、その目的を達成する為の手段が、目の前に転がっていたのだ。
私より可愛い令嬢、私より賢い令嬢、私と同じ家格の令嬢、私より愛嬌のある令嬢、私よりあざとい令嬢
みんな魅力的だった。でも、私が皇子殿下の婚約者になると、私自身が決めたのだ。醜い欲を隠し、必死に自分を売り込んだ。
その結果、私が婚約者に選ばれた。
私はライバル達に打ち勝った。
自分が誇らしかった。
婚約者となった私は、皇子殿下と再会した。
「改めてよろしくね。フィルミーナって呼んで良い?僕のことはカイルって呼んでね」
「はい。カイル殿下」
とても嬉しかった。初めて好きになった人のお嫁さんになれるのだと、当時は舞い上がった。
そして、婚約者に決まったことにより、始まった皇子妃教育はとても過酷だった。
早朝から夜遅くまで行われる教育は、非常に多岐に渡り、遊んでる暇など一切なかった。
それでも私は頑張れた。
私の努力が、国のため、民のため、カイル殿下のため、何より私自身の将来のためになるのだ。
自分の血となり肉となる教育なので、常に意欲的に取り組めた。
カイル殿下とは、月に一度、設けられた婚約者の日にお茶をしていた。
私には何よりのご褒美の時間だった。
このために頑張っていたのだ。と、毎回幸せを噛み締めていた。
私とカイル殿下は婚約者という関係ではあるが、恋愛感情というよりは、友人関係に近いものだった。
しかし、この関係も大人になれば変わるのだと、漠然と思い込んでいた。
だって、私はカイル殿下の婚約者なのだから。
カイル殿下と結婚し皇妃となるのは、私なのだから。
大人になれば、カイル殿下も、私を愛する人として慕って、大事にしてくれる。そして私達は結婚するのだ。
何故ならばそれは、幼き頃に、私が勝ち取った未来なのだから。
今になって考えると、何故、盲目的に未来を信じられていたのか、わからない。
…………………….
15歳になりアカデミーに入学した。
アカデミーを卒業すれば、カイル殿下と結婚出来る。
この3年を乗り切れば、今までの努力が全て報われるのだ。
皇子殿下と結婚する。
始まりは小さな恋心だったが、月日を重ねるにつれ、大きな目標へと成長していた。
目標なんて、綺麗な言葉では表せないものに、なっていたのかもしれない。
今となっては、それもわからない。
アカデミーの教育は皇妃教育に比べ、時間の拘束も少なく、拍子抜けするほど簡単であった。
アカデミーの期間は、皇妃教育と公務も必要最低限になっていた。
これにより、皇子殿下の婚約者となってから初めて、自分の時間が出来た。
新しく出来た自分の時間も、全て勉強に充てた。
私とカイル殿下が、未来の国を作っていくのだと考えれば、休んでなど居られなかった。
いくらやっても、いくら考えても、やり過ぎという事はなかった。出来る事をやらないのは怠慢だと。自分を叱咤し、必死に取り組み続けた。
アカデミーは2年目になり、1年生が新たに入学してきた。
それくらいの認識だった。
私の日常は変わらない。あと2年でカイル殿下と結婚出来る。と、更に勉学や社交に力を注いでいた。
しかし、この時すでに私の日常は、気付かぬ内に、ジワジワと蝕まれていた。
ある日気が付いたら、カイル殿下が敵を見るかのように、私のことを睨み付けてきていた。
睨まれるような事をした心当たりはないし、理由がわからない。理由を聞こうと殿下に直接話しかけたが、無視されてしまった。
殿下はいつも優しかったのに。幼い頃から長い時間ずっと婚約者だったのに。どうしてなのか、理由が全くわからなかった。とても悲しい気持ちになったのを覚えている。
しかし、程なくして、理由は判明した。
カイル殿下と男爵令嬢が大変親しい仲だ。との噂が流れてきたのだ。
噂の真相を確かめるため、噂の男爵令嬢を探した。大きな声で笑いながら、廊下を走っていたので、すぐに見つけられた。
令嬢は何人もの高位貴族の令息を引き連れ、楽しそうに笑っていた。
しばらく観察していたら、カイル殿下が来たようで、その男爵令嬢は大きく手を振りながら、耳障りな声で「カイルー!こっちよー!」と叫んでいた。
会話内容は聞こえないが、男爵令嬢に歩み寄るカイル殿下は、私が見たことのない表情をしていた。
大切な物を、心から慈しむような表情であった。私はその表情を見た瞬間に、悟ってしまった。私は負けたのだと。
……………………
「フィルミーナ様、あのアバズレどうされるおつもりですか!?」
「あんなの許されませんわ!」
「何とかしませんと!」
口々に同じ派閥の人達が騒ぎ立てる。
私に何を期待しているのか知らないが、どうしたら良いのか、わかるのなら教えて欲しい。
私は幼い頃から一生懸命努力してきた。
人生の全てを捧げてきたと言っても、過言ではない。
騒ぎ立てている令嬢達が、寝ている間、遊んでいる間、だらけている間、私はずっと努力し続けてきたのだ。
彼女達は、まるで小判鮫だ。何故私が、おこぼれを啜りにくる者の言う事を、聞かなければならないのか。理解に苦しむ。
これ以上どうしたら良いのか、私にはわからなかった。
どうする事も出来ずに、私は日々を過ごしていた。誰かに相談しようと思っても、陛下や皇妃様、両親や兄弟。誰に相談するのも正解とは思えなかった。
これからのことについて悩みながら、俯き歩いていた。
ふと気が付いたら、目の前に人が現れた。
「ごめんあそばせ」と言って、道を譲ろうと顔を上げると、あの男爵令嬢が居た。
すると、何を思ったのか、水入りの大きな容器をもった男爵令嬢は、そのまま大量の水を頭から被ったのだ。
ずぶ濡れになった令嬢をみて、私はただただ唖然としてしまった。
程なくして、令嬢は突然「キャー!」と叫び声をあげ、駆け出した。
悲鳴を聞き、駆け付けた令息に、何やらこちらを指差しながら、抱きつき訴えていた。
そのとき、私はハメられたのだと気が付いた。
その後も令嬢は、度々私の前に現れた。
何故か私が行く場所を知っているようで、避けようと思っていても、行く先々に現れた。
勝手に転んだり、階段から飛び降りたり、自ら教科書や制服をボロボロにしている場面にも遭遇した。
私を罠に嵌めたいのだろうが、理由と目的がわからなかった。
私は未来の皇子妃のため、陰ながら皇家の護衛がついている。そのため、事件の全てが冤罪だと簡単に証明出来る。
しかし、私は認めたくないが、現在すでに殿下から冷遇されている。寵愛を受けているのは、男爵令嬢のはずだ。
その彼女が、更に私に罪を被せようとしてくる、理由がわからなかった。
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私が無実を証明することは簡単だ。
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…もうどうでもよかった。でも、ずっと好きだった殿下の足を、私が引っ張ることだけは、絶対にしたくなかった。
恋心など淡い思いではなく、私自身の意地とプライドに掛けて、殿下を貶めることを選べなかった。
そして、そのためであるのならば、私がこの場で貶められても構わなかった。
後でいくらでも、弁明の機会はあるのだから。
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