【完結】クズ男と決別した私の未来は輝いている。

カシスサワー

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第86話【決着】

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 扉が開き、入ってきたのは――
 黒田圭太、西園寺俊一、そして大泉社長の三人だった。

 俊一の姿を認めた瞬間、

 ――噓だろ。
 ――空港の男が、なぜ……。

 圭吾は、その場で凍りつく。

 一方で、

「圭太……どうして、お前が……」

 驚きを隠せない明が、思わず声を漏らした。

 その問いに答えたのは、匠だった。

「彼が、【NexSeed黒田】の新しい社長です」

 その一言に、部屋の空気が張りつめる。

 だが匠は、それを意に介することもなく、淡々と話を続けた。

「もっとも、現在の【NexSeed黒田】は危機的状況にあります。そのため、今後は業務内容をゲームソフト開発に一本化する予定です」

 そして視線を大泉社長へと向け、

「その事業転換については、【天空デジタル株式会社】の大泉社長が全面的にサポートしてくださいます。ですから――【NexSeed黒田】が倒産することはありません」

 淡々と告げられたその言葉は、圭吾にとっても、明にとっても、もはや覆しようのない“結論”だった。

「倒産だと……【NexSeed黒田】は、そこまで追い込まれているのか?」

 太郎が、低い声で問いかける。

 明も圭吾も、言葉を失ったままだ。

「はい。取引先が、ほぼ撤退していますから」

 匠が静かに答える。

 しばらく沈黙していた太郎が、再び口を開いた。

「……圭太に、社長が務まるのか?」

 その疑問に応えたのは、大泉社長だった。

「圭太くんは、非常に優秀な人材ですよ。私の会社でも、CTO候補として将来を期待していました。仕事への姿勢も誠実で、人柄も高く評価されています」

 その流れを引き継ぐように、俊一が口を開く。

「【天空デジタル株式会社】は、私たち西園寺財閥がバックアップしている企業です。それに、大泉社長は、私が心から尊敬している先輩でもあります。
 西園寺財閥と関わりのある企業と提携できる――悪い話ではないと思いますが」

「私たち、ということは……君は、西園寺の……」

 太郎の問いに、俊一は迷いなく答える。

「西園寺勝造の孫で、幸の兄です」

 その事実を突きつけられた圭吾は、絶望に打ちひしがれ、力なく肩を落とした。

「黒田会長、どちらを選択しますか?」

 匠の、選択を迫るその声に、一切の感情はない。

 西園寺財閥に逆らう――この国では、それ自体がありえない。

 黒田ホールディングスを守るか。
 それとも、孫の圭吾を守るか。

 多くの社員を抱える企業のトップとして、太郎が出せる答えは、最初から一つしかなかった。

「圭吾は――地方の過疎地域にある会社へ、一般社員として派遣する。それでいいか?」

 太郎の選択に、匠は小さく頷き、

「最後に、もう一つ。黒田圭吾――彼には、幸を蔑み、傷つけ、脅したことを反省してもらい、彼女にきちんと謝罪してもらいます。もちろん、土下座で」

 圧のこもった声で、匠が命じる。

「……ど、土下座って……」

 プライドの高い圭吾にとって、謝罪そのものが屈辱だった。

 それを土下座で行うなど、耐え難い侮辱でしかない。

 拳を強く握りしめる圭吾に、

「早く、謝らんか!」

 苛立ちを露わにした太郎が怒鳴りつける。 

 黒田太郎にとっても、ライバル会社の若造に主導権を握られている現状は、かなりの屈辱だった。 

 圭吾はソファーから立ち上がり、重い足取りで絨毯の上に跪く。

 そして――

「いろいろと、申し訳ありませんでした」

 そう言って、頭を下げた。

「誰に謝っているんですか?」

 匠が、低く問いかける。

 圭吾はぐっと唇を噛みしめ、

「……幸さん。いろいろと、申し訳ありませんでした」

 再び頭を下げ、謝罪した。

 その一部始終を、匠は無言で動画に収めていた。

 動画を撮り終えた匠は、静かに告げる。

「幸に近づかないように。もし近づいた場合は、躊躇なくこの動画をSNSに公開します。黒田家の方でも、
 彼の監視をお願いします」

 そう念を押した。

 話し合いは、これで終わりだった。

 匠と幸、俊一、そして圭太と大泉社長は、連れ立って玄関へと向かう。

 その時――

「西村さん」

 由紀が、幸を呼び止めた。

 足を止めた幸のもとへ、由紀が小走りで近づく。

「あのっ……助けてくれて、ありがとうございます。……それと……意地悪して、
 ごめんなさい」

 そう言って、由紀は深く頭を下げた。

 思いがけない謝罪に、幸は一瞬戸惑いながらも、

「気にしてないから。大丈夫よ」

 穏やかな声で、そう答える。

 すると由紀は、

「本当に……すみませんでした」

 と、もう一度頭を下げ、高瀬社長のもとへと戻っていった。

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