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第二章 君を守るために僕は夢を見る
四話 京都奉行・木下秀吉(2)
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京都奉行・木下秀吉は、殿中御掟に従わなかった幕臣や大名にドンドン注意し、正式な手続きを行うように口煩く指導しまくった。
「違うだぎゃあ、そこは織田の利権が絡んでいるから、岐阜の認可待ち! 勝手に進めないでちょ」
「三年前の土地訴訟の件、引き伸ばしている間に、押領したでしょ? バレているだぎゃあ、元に戻して」
「賄賂を渡さないからといって、陳情に来た相手を口論で追い返すとは卑怯だぎゃあ! その件は他でやるから、反省しなさい」
「蹴鞠の会に混じって、将軍様に直訴したでしょ? バレバレだぎゃあ! 正式な手続きでやり直してちょ」
「あんた、担当者の間をたらい回しにさせようとか、京都奉行をなめとんのか? 次にやったら、このセクシー蜂須賀小六に、ディープキスさせるぞ、奥さんの前で」
身分差から見れば、会う事も許されないレベルの高官や大名に向かって、『信長の任命した京都奉行』という肩書きで食い付いて『真っ当な仕事』を促す。
やられた方から見たら堪らないだろうが、長年仕事を遅らせて汚職に励んだ方が悪い。
秀吉には、充分な行儀作法が身に付いていない、という理由で面会謝絶しようとしても、
「はあ? この木下藤吉郎秀吉は、幕臣にして従五位下にして兵部大輔の細川様から礼儀作法を教わっているだぎゃあ! お前様は、細川様のご教授に、手抜かりがあったと申すのか? そうかそうか。じゃあ、細川様を呼んで来るから、待っとれよボケナス」
不機嫌な細川藤孝と対面したくないので、木下秀吉に会って小言を言われるしかなかった。
ネタにされた細川藤孝は、真っ当に仕事をする幕臣が増えたので、笑いが止まらない。
こうあって欲しいと願った幕府の再建が、十年前まで小者だった助平男のノリと勢いで進むのかと思うと、爽快な見ものである。
中には将軍の権威を借りて手続きを誤魔化そうとする輩も少なくなかったが、秀吉は信長にも将軍にもフットワーク軽く会いに行き、汚職を実行前に潰しまくった。
「将軍様~! この件は汚職案件なので、キャンセルしてちょ! だめ? まさか~(笑) 共犯を疑われますぞ、否定して潰しましょうよ、将軍様」
「将軍様~! 手続きの省略を指示したという話が回ってきましたよ、嘘ですよね? はい、秀吉が潰しておきます。失礼しました」
「殿、浮気がバレたので、ねねを宥めておいてください! 恩に着ます! いつもですけど!!」
汚職は潰したが、自身の浮気は防げなかった。
幕府高官による汚職が激減した京都は、経済が以前よりも良く回るようになったので、秀吉の評判が急上昇する。
幕府への届出を、『汚職をせずに仕事をする』秀吉に頼む者が急増する。
秀吉は快く調子よく勢いよく引き受けまくったが、事情を知る者は『出来た弟』木下秀長に同情して合掌した。
そして、秀吉の忠告を聞き入れずに汚職体質を改めなかった者は、次々と信長から罷免され追放されて、消えた。
お陰で京都は、加速度的に快適な経済圏になった。
永禄十二年(1569年)八月二十四日
想定以上に京都の治安・経済・行政が良くなったので、信長は伊勢地方攻略の仕上げに入る。
京都で頑張っていた丹羽長秀と木下秀吉も呼んで、戦功の稼ぎ場を与えてあげる。
七万の大軍で総勢一万六千の北畠軍と戦うのだから、京都で仕事中の面々は放っておいてあげてもいいだろうに、呼んだ。
今の感覚でこのやり方を見ると酷いと思われるだろうが、武家にとっては戦場働きから外される方が「チャンスが与えられなかった!」事になるので、親切である。
木下秀吉もその辺は重々承知しているので、大喜びで伊勢攻めに加わった。
そしてうっかり、死にかけた。
織田軍は手始めに阿坂城(三重県松阪市)を包囲し、降伏勧告が断られると、信長は木下秀吉を指名した。
今回の戦の、先陣である。
京都奉行を上首尾に勤めた、ご褒美である。
先陣を任されるのは初めてなので、秀吉は張り切って城攻めを始める。
まずは得意の、調略で。
「はい、阿坂城の皆さん、こんにちは~。織田軍の侍大将にして京都奉行の、木下藤吉郎秀吉です! 得意技は、愛のある調略とバレない浮気!
今すぐに寝返って、城門を開けてくれたら、命も財産もベッドの下のエロ本も保証するだぎゃあ!
さあ、レッツ寝返り!」
返事は、矢弾の雨で返ってきた。
「仕方がないだぎゃあ。普通に攻めよう」
下準備もない場所での急な調略なので、そりゃあ上手くはいかない。
防御柵で矢弾を防ぎながら、普通に攻めようと兵を先に進ませる。
戦の初日なので、敵の飛び道具の数は、途切れてくれない。
戦線が、膠着する。
木下隊が立ち止まっている間に、阿坂城城主・大宮入道の息子である大宮大之丞吉行が、自慢の強弓で秀吉を狙って射た。
秀吉は、矢弾が届かない場所で声援を送っていたのだが、初めての先陣を信長が観戦している最中である。
そんなには後ろに下がっていなかった。
弓矢スキルに自信のある者ならば狙撃可能な、危険な距離に身を晒していた。
「木下殿。あと二十歩下がった方が、いいのだ」
竹中半兵衛が警告するが、秀吉は聞かない。
護衛の蜂須賀小六は流石に落ち着いて、その身で秀吉の盾になっている。
そんな蜂須賀小六の股下を抜けて、大宮大之丞吉行の放った矢が、秀吉の左太ももに刺さる。
サッカーで偶に見かける、股下抜きパスに近い要領で、秀吉の太ももに深々と矢が刺さる。
「いっっっっっっっっっっっ痛あああああああああああああああああ?!?!?! 刺さってる!!??」
戦国時代でベスト3に入る大声の男の叫び声なので、全軍が秀吉の負傷を知った。
秀吉の長い戦歴の中で、なんと唯一記録されている戦傷である。
「秀吉いいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
同じく戦国時代でベスト3に入る大声の信長の声が、阿坂城の皆さんにも、響く。
「一益(滝川一益)!!!! 秀吉に代われ!!!!」
信長の激怒と攻め手の交代が伝わり、阿坂城の中で、恐慌が発生する。
京都周辺国を瞬時に平定した信長が、降伏勧告を無視した相手に対して、寺社仏閣でも焼き討ちで滅ぼしている話は既に有名だ。
その恐ろしい男の怒声を生で聴き、城内の人々は次の瞬間に訪れる未来予想図を思い描いてしまう。
「今のうちに降伏しないと、信長に、皆殺しにされる」
城主に降伏を促す心の余裕もなく、家来たちが鉄砲に使用する火薬に水を掛けて、台無しにする。
鉄砲が使えなくなり、勝手に投降する兵が続出したので、城主は諦めて降伏を決めた。
一応は、木下隊が攻撃している最中の降伏なので、木下隊の手柄である。
後は滝川一益の部隊が引き継ぎ、木下隊は信長に褒められて、先陣の面目を保った。
足を負傷して動けない秀吉を、信長が見舞う。
「どうじゃった、先陣は?」
「もう少しで、拙者の大人袋が射抜かれておりました」
信長は笑いながら秀吉の頭を叩いて、次の用事に去った。
「小六~。わし、前線に出るのは、やめとくわ。こうなる前に、差配しとくのが、戦じゃ」
「そりゃあ、そうだろう」
蜂須賀小六は、それを『大将は矢弾の届く所にいるべきではない』事と受け取った。
竹中半兵衛は、静かに頷く。
「ずっと京都奉行でおれ。似合っているし、向いている」
小六の小言に、秀吉は頷かない。
「幕府からクズを追い出しただけじゃ。クズが減れば、わしの出番は、終いじゃ」
蜂須賀小六は、この賢い男が何に目標を変えたのか、見当が付かなかった。
竹中半兵衛は、この友が何処まで進むのか、口に出さずに見守る。
ただ、この友は京都奉行こそが最適任の職場であったのではないかと、微かに惜しむ。
「違うだぎゃあ、そこは織田の利権が絡んでいるから、岐阜の認可待ち! 勝手に進めないでちょ」
「三年前の土地訴訟の件、引き伸ばしている間に、押領したでしょ? バレているだぎゃあ、元に戻して」
「賄賂を渡さないからといって、陳情に来た相手を口論で追い返すとは卑怯だぎゃあ! その件は他でやるから、反省しなさい」
「蹴鞠の会に混じって、将軍様に直訴したでしょ? バレバレだぎゃあ! 正式な手続きでやり直してちょ」
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身分差から見れば、会う事も許されないレベルの高官や大名に向かって、『信長の任命した京都奉行』という肩書きで食い付いて『真っ当な仕事』を促す。
やられた方から見たら堪らないだろうが、長年仕事を遅らせて汚職に励んだ方が悪い。
秀吉には、充分な行儀作法が身に付いていない、という理由で面会謝絶しようとしても、
「はあ? この木下藤吉郎秀吉は、幕臣にして従五位下にして兵部大輔の細川様から礼儀作法を教わっているだぎゃあ! お前様は、細川様のご教授に、手抜かりがあったと申すのか? そうかそうか。じゃあ、細川様を呼んで来るから、待っとれよボケナス」
不機嫌な細川藤孝と対面したくないので、木下秀吉に会って小言を言われるしかなかった。
ネタにされた細川藤孝は、真っ当に仕事をする幕臣が増えたので、笑いが止まらない。
こうあって欲しいと願った幕府の再建が、十年前まで小者だった助平男のノリと勢いで進むのかと思うと、爽快な見ものである。
中には将軍の権威を借りて手続きを誤魔化そうとする輩も少なくなかったが、秀吉は信長にも将軍にもフットワーク軽く会いに行き、汚職を実行前に潰しまくった。
「将軍様~! この件は汚職案件なので、キャンセルしてちょ! だめ? まさか~(笑) 共犯を疑われますぞ、否定して潰しましょうよ、将軍様」
「将軍様~! 手続きの省略を指示したという話が回ってきましたよ、嘘ですよね? はい、秀吉が潰しておきます。失礼しました」
「殿、浮気がバレたので、ねねを宥めておいてください! 恩に着ます! いつもですけど!!」
汚職は潰したが、自身の浮気は防げなかった。
幕府高官による汚職が激減した京都は、経済が以前よりも良く回るようになったので、秀吉の評判が急上昇する。
幕府への届出を、『汚職をせずに仕事をする』秀吉に頼む者が急増する。
秀吉は快く調子よく勢いよく引き受けまくったが、事情を知る者は『出来た弟』木下秀長に同情して合掌した。
そして、秀吉の忠告を聞き入れずに汚職体質を改めなかった者は、次々と信長から罷免され追放されて、消えた。
お陰で京都は、加速度的に快適な経済圏になった。
永禄十二年(1569年)八月二十四日
想定以上に京都の治安・経済・行政が良くなったので、信長は伊勢地方攻略の仕上げに入る。
京都で頑張っていた丹羽長秀と木下秀吉も呼んで、戦功の稼ぎ場を与えてあげる。
七万の大軍で総勢一万六千の北畠軍と戦うのだから、京都で仕事中の面々は放っておいてあげてもいいだろうに、呼んだ。
今の感覚でこのやり方を見ると酷いと思われるだろうが、武家にとっては戦場働きから外される方が「チャンスが与えられなかった!」事になるので、親切である。
木下秀吉もその辺は重々承知しているので、大喜びで伊勢攻めに加わった。
そしてうっかり、死にかけた。
織田軍は手始めに阿坂城(三重県松阪市)を包囲し、降伏勧告が断られると、信長は木下秀吉を指名した。
今回の戦の、先陣である。
京都奉行を上首尾に勤めた、ご褒美である。
先陣を任されるのは初めてなので、秀吉は張り切って城攻めを始める。
まずは得意の、調略で。
「はい、阿坂城の皆さん、こんにちは~。織田軍の侍大将にして京都奉行の、木下藤吉郎秀吉です! 得意技は、愛のある調略とバレない浮気!
今すぐに寝返って、城門を開けてくれたら、命も財産もベッドの下のエロ本も保証するだぎゃあ!
さあ、レッツ寝返り!」
返事は、矢弾の雨で返ってきた。
「仕方がないだぎゃあ。普通に攻めよう」
下準備もない場所での急な調略なので、そりゃあ上手くはいかない。
防御柵で矢弾を防ぎながら、普通に攻めようと兵を先に進ませる。
戦の初日なので、敵の飛び道具の数は、途切れてくれない。
戦線が、膠着する。
木下隊が立ち止まっている間に、阿坂城城主・大宮入道の息子である大宮大之丞吉行が、自慢の強弓で秀吉を狙って射た。
秀吉は、矢弾が届かない場所で声援を送っていたのだが、初めての先陣を信長が観戦している最中である。
そんなには後ろに下がっていなかった。
弓矢スキルに自信のある者ならば狙撃可能な、危険な距離に身を晒していた。
「木下殿。あと二十歩下がった方が、いいのだ」
竹中半兵衛が警告するが、秀吉は聞かない。
護衛の蜂須賀小六は流石に落ち着いて、その身で秀吉の盾になっている。
そんな蜂須賀小六の股下を抜けて、大宮大之丞吉行の放った矢が、秀吉の左太ももに刺さる。
サッカーで偶に見かける、股下抜きパスに近い要領で、秀吉の太ももに深々と矢が刺さる。
「いっっっっっっっっっっっ痛あああああああああああああああああ?!?!?! 刺さってる!!??」
戦国時代でベスト3に入る大声の男の叫び声なので、全軍が秀吉の負傷を知った。
秀吉の長い戦歴の中で、なんと唯一記録されている戦傷である。
「秀吉いいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
同じく戦国時代でベスト3に入る大声の信長の声が、阿坂城の皆さんにも、響く。
「一益(滝川一益)!!!! 秀吉に代われ!!!!」
信長の激怒と攻め手の交代が伝わり、阿坂城の中で、恐慌が発生する。
京都周辺国を瞬時に平定した信長が、降伏勧告を無視した相手に対して、寺社仏閣でも焼き討ちで滅ぼしている話は既に有名だ。
その恐ろしい男の怒声を生で聴き、城内の人々は次の瞬間に訪れる未来予想図を思い描いてしまう。
「今のうちに降伏しないと、信長に、皆殺しにされる」
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後は滝川一益の部隊が引き継ぎ、木下隊は信長に褒められて、先陣の面目を保った。
足を負傷して動けない秀吉を、信長が見舞う。
「どうじゃった、先陣は?」
「もう少しで、拙者の大人袋が射抜かれておりました」
信長は笑いながら秀吉の頭を叩いて、次の用事に去った。
「小六~。わし、前線に出るのは、やめとくわ。こうなる前に、差配しとくのが、戦じゃ」
「そりゃあ、そうだろう」
蜂須賀小六は、それを『大将は矢弾の届く所にいるべきではない』事と受け取った。
竹中半兵衛は、静かに頷く。
「ずっと京都奉行でおれ。似合っているし、向いている」
小六の小言に、秀吉は頷かない。
「幕府からクズを追い出しただけじゃ。クズが減れば、わしの出番は、終いじゃ」
蜂須賀小六は、この賢い男が何に目標を変えたのか、見当が付かなかった。
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またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。
漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
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