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第二章 君を守るために僕は夢を見る
十八話 織田信長が土下座するまで、殴るのをやめない(2)
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金森可近は、撤退の準備と殿軍の根回しを、明から様に見せ付けた。
隠さなかった。
敵方にバレバレである。
食糧と武具を捨てずに、徳川軍のように堂々と撤退するように見える。
一緒に殿軍の手配を手伝う前田利家が、こっそりと質問する。
「これ、ワザとだよね? 小細工を活かす為だよね?」
「喋るな、唇を読まれる。次に質問したら、殴る」
既に数日を浪費しているので、可近にしては珍しく忙しなく手配を進める。
森可成への負担が、酷過ぎるのだ。
実際、撤退を開始する前日に、凶報がもたらされた。
森可成、討死
千の兵で三万の朝倉・浅井同盟軍を幾度も押し返し、三日に渡って足止めしたが、顕如が延暦寺の僧兵に出兵させたので戦線が崩壊した。
街道を封鎖して京都へ大軍を侵入させない戦術で、応援に来た二千の兵も活用し、ギリギリ持ち堪えられた戦線だったのに。
延暦寺の僧兵たちが別方向から攻めてきたせいで、無双キャラも力尽きた。
応援に来た織田信治(信長の弟)も討死したが、森可成の部下達が残る宇佐山城は落城せずに粘り、更に数日の足止めに成功した。
死後も部隊を戦わせられる、誠に稀代の武将でした。
「お陰で織田軍は、朝倉・浅井同盟軍より先に、京都に戻れます。この戦は、『攻めの三左(森可成の通称)』の勝ちです」
泣いたり喪に服す時間も惜しいので、金森可近は信長を急かす。
「後は。手筈通りに」
信長は愛馬に跨ると、溢れる涙を拭く手間すら省き、退却の先頭を走る。
三好三人衆軍から見ると、自分たちを包囲していた織田の大軍が引き上げて行くので、胸熱。
しかも石山本願寺の一向宗門徒が追撃に出るので、見ているだけ済む。
見物に回る三好三人衆軍の客将の一人、斎藤龍興は、織田軍の殿軍が柴田勝家と和田惟政なのを見て顔を顰める。
「猪武者と、キリスト教贔屓か。一向宗と戦っても、離反する兵が少なそうな二人だ」
まだ二十代前半だが、織田軍との戦歴は抜群なので、三好三人衆軍の面々も解説役を黙認する。
「あれを崩すのは、難儀だろう。我々も出撃すべきです」
斎藤龍興の進言に、周囲の反応は薄い。
三好一号「慌てなくてもいいぜ。あの方向は、淀川」
三好二号「一向宗が、川沿いの舟を全て隠しておいた」
三好三号「これで織田軍は、袋の鼠。背水の陣。ジ・エンド・オブ・織田センチュリー」
三好三人衆は、今度こそ勝った気でいる。
「織田軍が撤退すると見せかけて、石山本願寺を取りに行く場合もありえます。進撃の準備だけでも、しておきましょう」
京都優先なので可能性は低いが、相手は戦国サイコパス織田信長。三好三人衆はビビって臨戦体制を整える。
三好一号「油断せずに、戦況を見定めよう」
三好二号「そ、そうだよね、まだ相手は三万以上の大軍だものね」
三好三号「流石にタッちゃんは、苦労人だぜ」
これで一向宗任せにせず、追撃の準備が出来たので、斎藤龍興は安堵する。
織田軍を追撃するチャンスを逃す事だけは、もうしたくないので、安堵する。
(今度こそ! 三好三人衆軍と、雑賀衆が追撃すれば、今度こそ信長の首を蹴り飛ばせる!)
と思って武者震いしていたのに、織田軍が淀川を渡って「全軍撤退に成功した」という報せが。
「はあああああああああ???????!!!!????」
斎藤龍興でなくても、大声で絶叫したくなる展開だった。
現場を見張っていた者たちから、事の詳細が、伝えられる。
「信長自身が、渡河地点を探し出して、全軍で一気に渡っただと???」
せっかちな信長は、自身で馬を走らせて川の浅い部分を探し出し、一気に全軍を渡河させた。
殿軍も含めて。
いかにも殿軍で奮戦しそうな顔ぶれを揃えたのは、ブラフだった。
慌てて一向宗の軍勢が同じ渡河地点から追おうとしたが、淀川の水量が増して渡れなくなった。
織田軍、完全撤退、成功。
三好一号「どこまで悪運値が高いのだ信長は?!」
三好二号「やだ! もうやだ! 何で死なないの、あのサイコパス」
三好三号「後は朝倉・浅井同盟軍に任せて、祝勝会をしようぜ。我々だけは、判定勝ちを成し遂げたのだから」
三好一号&二号&三号「レッツ宴会!!!!」
勝った事には間違いはない。
斎藤龍興は、酒席は断って(彼も成長している)、石山本願寺に出向いて情報を整理する。
「淀川の近辺で、水門を調整して川の高さを操作した形跡は?」
「調査中だ。上流で堤を使った形跡も含めて」
石山本願寺の指揮官クラス下間頼廉は、眉間に深々と皺を刻んで苦い顔を隠さない。
ここで信長を逃してしまった以上、延々と逆襲に備える羽目になるので、既に心労が全身を軋ませている。
その苦労を何年もしてきたので、斎藤龍興は親身になって協力する。
「相当な根回しを、何日も前から打っていたと見受けられます。恐らくは、石山本願寺が夜襲をかけた夜から」
「信長は、欲に負けて継戦を望んでいた。信長の発案ではないな」
「出来た家来が、先手を打ったのでしょう」
「信長の周囲で、そこまで勝手に事を進める者といえば、松永弾正」
「金森可近」
斎藤龍興は、個人的に絶対に許せないキャラの名前を、一向宗に吹き込む。
正解ではあるが、推理ではなく私怨だ。
「金ヶ崎で、信長の影武者を務めたという、噂の茶坊主武将か?」
下間頼廉は、斎藤龍興の言う事を鵜呑みにしない。
茶坊主とまで誹られるサボり魔が、いざという時は軍師として織田軍を救うなどという中二病展開、普通は信じてくれない。
「彼奴の根回しを侮ってはいけません。美濃斎藤家が滅びた原因の半分は、金森可近の根回しです」
「もう半分は、お主自身だな」
「はい、そうです」
素直に認めた。
斎藤龍興ですら、成長する。
「つまり金森可近の脅威度は、お主に匹敵すると」
下間頼廉は金星を逃した反動か、昏い方向にユーモアを発揮している。
「揶揄わないでください、聖職者だろう」
「聖職者に殺したい相手を殺させようとする外道に対して、緩い対応をしている。感謝せよ」
僧でありながら武の才を見込まれて指揮官クラスに抜擢された男に軽く睨まれて、斎藤龍興は瞬時に土下座する。
「はい、すいませんでした」
斎藤龍興は、流浪の逃亡生活の末に、素直に謝罪するスキルを身に付けていた。
「しかし、捨て置けない人物では、あるな。当方でも調べておく」
斎藤龍興の下心を知っている上で、下間頼廉は金森可近の吟味を始める。
恐らくは今の作者同様、「そんなバカな。こんなアホな展開が、史実でいいのか?」と思っただろう。
隠さなかった。
敵方にバレバレである。
食糧と武具を捨てずに、徳川軍のように堂々と撤退するように見える。
一緒に殿軍の手配を手伝う前田利家が、こっそりと質問する。
「これ、ワザとだよね? 小細工を活かす為だよね?」
「喋るな、唇を読まれる。次に質問したら、殴る」
既に数日を浪費しているので、可近にしては珍しく忙しなく手配を進める。
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延暦寺の僧兵たちが別方向から攻めてきたせいで、無双キャラも力尽きた。
応援に来た織田信治(信長の弟)も討死したが、森可成の部下達が残る宇佐山城は落城せずに粘り、更に数日の足止めに成功した。
死後も部隊を戦わせられる、誠に稀代の武将でした。
「お陰で織田軍は、朝倉・浅井同盟軍より先に、京都に戻れます。この戦は、『攻めの三左(森可成の通称)』の勝ちです」
泣いたり喪に服す時間も惜しいので、金森可近は信長を急かす。
「後は。手筈通りに」
信長は愛馬に跨ると、溢れる涙を拭く手間すら省き、退却の先頭を走る。
三好三人衆軍から見ると、自分たちを包囲していた織田の大軍が引き上げて行くので、胸熱。
しかも石山本願寺の一向宗門徒が追撃に出るので、見ているだけ済む。
見物に回る三好三人衆軍の客将の一人、斎藤龍興は、織田軍の殿軍が柴田勝家と和田惟政なのを見て顔を顰める。
「猪武者と、キリスト教贔屓か。一向宗と戦っても、離反する兵が少なそうな二人だ」
まだ二十代前半だが、織田軍との戦歴は抜群なので、三好三人衆軍の面々も解説役を黙認する。
「あれを崩すのは、難儀だろう。我々も出撃すべきです」
斎藤龍興の進言に、周囲の反応は薄い。
三好一号「慌てなくてもいいぜ。あの方向は、淀川」
三好二号「一向宗が、川沿いの舟を全て隠しておいた」
三好三号「これで織田軍は、袋の鼠。背水の陣。ジ・エンド・オブ・織田センチュリー」
三好三人衆は、今度こそ勝った気でいる。
「織田軍が撤退すると見せかけて、石山本願寺を取りに行く場合もありえます。進撃の準備だけでも、しておきましょう」
京都優先なので可能性は低いが、相手は戦国サイコパス織田信長。三好三人衆はビビって臨戦体制を整える。
三好一号「油断せずに、戦況を見定めよう」
三好二号「そ、そうだよね、まだ相手は三万以上の大軍だものね」
三好三号「流石にタッちゃんは、苦労人だぜ」
これで一向宗任せにせず、追撃の準備が出来たので、斎藤龍興は安堵する。
織田軍を追撃するチャンスを逃す事だけは、もうしたくないので、安堵する。
(今度こそ! 三好三人衆軍と、雑賀衆が追撃すれば、今度こそ信長の首を蹴り飛ばせる!)
と思って武者震いしていたのに、織田軍が淀川を渡って「全軍撤退に成功した」という報せが。
「はあああああああああ???????!!!!????」
斎藤龍興でなくても、大声で絶叫したくなる展開だった。
現場を見張っていた者たちから、事の詳細が、伝えられる。
「信長自身が、渡河地点を探し出して、全軍で一気に渡っただと???」
せっかちな信長は、自身で馬を走らせて川の浅い部分を探し出し、一気に全軍を渡河させた。
殿軍も含めて。
いかにも殿軍で奮戦しそうな顔ぶれを揃えたのは、ブラフだった。
慌てて一向宗の軍勢が同じ渡河地点から追おうとしたが、淀川の水量が増して渡れなくなった。
織田軍、完全撤退、成功。
三好一号「どこまで悪運値が高いのだ信長は?!」
三好二号「やだ! もうやだ! 何で死なないの、あのサイコパス」
三好三号「後は朝倉・浅井同盟軍に任せて、祝勝会をしようぜ。我々だけは、判定勝ちを成し遂げたのだから」
三好一号&二号&三号「レッツ宴会!!!!」
勝った事には間違いはない。
斎藤龍興は、酒席は断って(彼も成長している)、石山本願寺に出向いて情報を整理する。
「淀川の近辺で、水門を調整して川の高さを操作した形跡は?」
「調査中だ。上流で堤を使った形跡も含めて」
石山本願寺の指揮官クラス下間頼廉は、眉間に深々と皺を刻んで苦い顔を隠さない。
ここで信長を逃してしまった以上、延々と逆襲に備える羽目になるので、既に心労が全身を軋ませている。
その苦労を何年もしてきたので、斎藤龍興は親身になって協力する。
「相当な根回しを、何日も前から打っていたと見受けられます。恐らくは、石山本願寺が夜襲をかけた夜から」
「信長は、欲に負けて継戦を望んでいた。信長の発案ではないな」
「出来た家来が、先手を打ったのでしょう」
「信長の周囲で、そこまで勝手に事を進める者といえば、松永弾正」
「金森可近」
斎藤龍興は、個人的に絶対に許せないキャラの名前を、一向宗に吹き込む。
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「もう半分は、お主自身だな」
「はい、そうです」
素直に認めた。
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下間頼廉は金星を逃した反動か、昏い方向にユーモアを発揮している。
「揶揄わないでください、聖職者だろう」
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僧でありながら武の才を見込まれて指揮官クラスに抜擢された男に軽く睨まれて、斎藤龍興は瞬時に土下座する。
「はい、すいませんでした」
斎藤龍興は、流浪の逃亡生活の末に、素直に謝罪するスキルを身に付けていた。
「しかし、捨て置けない人物では、あるな。当方でも調べておく」
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