転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

文字の大きさ
4 / 324
第1巻第1章 とりあえず冒険者になってみます

魔石

しおりを挟む
 マッシュが狼の魔物を一掃した現場に到着したマヤは、魔物がいた場所に落ちていた石を拾い上げる。

「これ、魔物の額にあった宝石だよね?」

「そうだ。それは魔石だ」

「魔石ってあの銀行とか冒険者管理協会とかにあったやつ?」

「そうだな」

「魔石って、魔物からとれるものなんだね」

 マヤは残り5つの魔石を拾うと、肩から斜めがけにしているポーチにしまった。

「それはちょっと正確じゃないな。自然界の動物が魔石の影響を受けて魔物になり、その体に魔石が生成されるのだ」

 マッシュによると、魔石には魔力のない動物に影響を与えて魔物化し、その生命エネルギーから魔石を生成させて自身を増殖する機能があるとのことだ。

「すごいね。ウイルスみたい」

「ういるす?」

「いや、なんでもない、気にしないで」

「まあいい、それより重要なのは、同じ魔石から増殖したものなら、色々便利なことができるということだ。マヤ、さっき拾った魔石を1つ貸してくれ」

「? いいけど?」

 マヤはポーチから魔石を取り出して、マッシュに渡す。

 それを受け取ったマッシュは駆け出すと、声が聞こえないほど遠くまで行ってしまった。

「マッシュ? 何するつもりなんだろう?」

 マッシュの意図が読めずマヤが首を傾げていると、

『マヤ、聞こえているか?』

「うわっ! え? なになに? どういうこと!?」

 到底声が聞こえるわけがないほど離れたところにいるマッシュの声が、突然聞こえて来たので、マヤは混乱した。

『今私は、魔石を通してマヤの頭の中に直接話しかけているのだ』

「頭の中に直接、ってそんなテレパシーみたいなことができるんだね」

『同じ魔石から増えたもの同士限定だがな』

「なるほど」

 マヤが納得すると、マッシュが走ってマヤのそばまで戻ってきた。

「この他にも色々できるんだが、まあ今はこれだけわかっていればいいだろう」

「じゃあとりあえずその魔石はマッシュに渡しとくね」

「そのほうがいいだろうな」

 どういう原理かわからないが、マッシュはそのモフモフの中に魔石をしまった。

「それで、今回の依頼はこれでおしまい?」

「そうだな。街道沿いに出た魔物というのはこいつらのことだろうしな」

「よーし、じゃあこれで一件落着だ、んーっと」

 マヤは1つ伸びをすると、街に向かって歩き始める。

「そういえばマッシュ、この依頼を達成したかどうかって、どうやって確かめるの?」

「今回の依頼の場合、魔石をいったん提出すれば問題ないだろう。討伐系は戦利品の確認でほとんどの場合問題ない」

「そうなんだ、じゃあさっさと冒険者管理協会に行って、確認してもらおう」

「そうだな」

 マヤとマッシュは街に戻ると、冒険者管理協会にやってきた。

 再び屈強な男たちの視線にさらされながら、マッシュを抱っこして受け付けに向かう。

「こんにちはー」

「あら、さっきの新人魔物使いさんとその使い魔物さんじゃない」

 マヤが受け付けに声をかけると、先程マヤを冒険登録してくれた女性が振り返った。

「魔物を倒してきたので確認してもらっていいですか?」

「これが依頼書だ」

 マヤが魔石をおいた横に、マッシュは依頼書と一旦マッシュに渡してい魔石をおいた。

「さっそく初任務達成なんてやるじゃない。ちょっとまってね、確認するから」

 女性は魔石を別の魔石に載せ、1つずつ確かめていく。

 程なくして、女性が顔を上げた。

「はい、確かに確認できたわ。間違いなく、この依頼の魔物の魔石ね。初任務達成おめでと―――」

「「「「「うおおおおおお!」」」」」

「うわっ!? なになになに!?」

 女性が言い終わる前に、後ろにいた男たちが突然大声を上げたため、マヤは驚いて腰を抜かしてしまった。

 腰を抜かしたマヤの腕から抜けた出したマッシュが、マヤを守るように男たちとマヤの間に身を踊らせる。

「ごるああああ! 少しは静かにできねええのか筋肉バカどもおおおお!」

「え? お、お姉さん!?」

 今度は男たちと反対側、ついさっきまでマヤの戦利品を解析し、優しく微笑んでいた受け付けの女性が、男たちを怒鳴りつけていた。

 あまりの迫力に同一人物かどうか疑わしいレベルだ。

「「「「「ご、ごめんなさい、フリーダ姉さん…」」」」」

 受け付けの女性、改めフリーダの怒鳴られた男たちは、母親に怒られた子供よろしく大人しくなる。

「こほんっ。ごめんなさいね、うちのバカどもがうるさくて」

 フリーダは受付から出てくると、マヤに肩を貸してくれた。

 おかげでマヤはようやく立ち上がれた。

「いえいえ、気にしてませんけど……。それより、ありがとうございます、フリーダさん。もう大丈夫です」

「そう? それならいいのだけれど」

「それよりも、何だったんです、今の?」

「そうね、まあ簡単に言えば、あなたが冒険者としてのやっていけそうだったから嬉しかったのよ」

「はあ……?」

「突然こんなこと言われてもわからないわよね。簡単に説明すると―――」

 フリーダによると、ここ数ヶ月新人冒険者が1日で辞めることが多く、今回の新人がやっていけるのかをみんな気にしていたらしい。

 その上、見ての通りこの街の冒険者はほとんどが男で、女がいても男勝りの女戦士しかおらず、男たちは可愛い女冒険者を待ち望んでいたらしい。

 結果、マヤが初任務をサクッと終わらせてきて、これから冒険者としてやっていけそうだとわかった瞬間、男たちが歓喜の声を上げた、というわけらしかった。

「つまり、歓迎されてるってことですか?」

「簡単に言うとそうね」

「なるほど、そういうことなら」

 マヤはくるりと回って男達へと振り返ると、

「はじめまして、マヤっていいます。今日から冒険者として頑張ります。よろしくおねがいします!」

そう言ってペコリと頭を下げた。

 男たちは一瞬顔を見合わせたあと、マヤの後ろでフリーダがうなずいたのを見て、再び歓喜の声を上げたのだった。

***

「いやー、いい人たちだったね」

「そうだな、人は見かけによらないものだ」

 あの後マヤは、流れで開かれることになったマヤの歓迎会に参加することとなり、近くの食堂で先輩冒険者たちと夕飯を食べにいっていた。

 そこでわかったことだが、いかにも粗暴そうな屈強な男たちは、話して見ると以外にも紳士的で優しい人たちだったのだ。

「優しい親戚のおじさんみたいな感じ? まあ思いのほか年も離れてたしねー」

 見かけにはわかりにくいが、マヤからすれば親ほどに年の離れた冒険者ばかりだった。

「冒険者としてのやっていけそうか?」

「うん、あの人たちとなら大丈夫そう。それに、マッシュもいるしね」

「頼られるのは悪い気はしないが、マヤいずれは最低限の戦えるようになってもらわんと困るぞ?」

「わかってる、わかってるってー。それに、マッシュの家族も助けにいかないとだしね」

「なんだ、覚えていたのか」

「当然だよ。だってまだ今朝の話だよ?」

「……そういえばそうだったな。色々ありすぎて随分昔のことのように思える」

「確かにね。そういうわけで、しばらくはお世話になると思うけど、私も頑張るから、明日からもよろしくね、マッシュ」

「ああ、任せろ」

 こうして、マヤの異世界一日目は幕を閉じたのだった。

 この後、うさぎであるマッシュが一緒泊まれる宿屋を探すのにたいそう苦労することになるのだが、それはまた別のお話。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...