転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第1巻第1章 とりあえず冒険者になってみます

冒険者、はじめました

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「さしあたって必要なのは金だ」

「お金? マッシュ結構お金持ちなんじゃないの?」

 広場のベンチでマッシュを膝に載せたマヤは首をかしげた。

「確かに私はそこらの魔物よりは金を持っているが、お金持ちというほどではない」

 マッシュによると、すぐにお金に困る程ではないが、かと言って稼ぎがない状態で過ごせば1ヶ月で底をつくらしい。

「じゃあ働くしかないのね。でも私、なんでか文字を読むのと話すのはできるみたいだけど、たぶん字は書けないよ?」

 この体のおかげなのか理由は不明だが、文字は読めて言葉はわかるが、試しに地面に文字を書こうとしたところ、全く無理だった。

「字が書けないとできる仕事は限られるな。おいおい”あの貴族”のところに行くことを考えると、街を選ばず働ける冒険者あたりが無難だろう」

 マッシュの言う”あの貴族”というは、言うまでもなくマッシュの家族を攫った貴族のことだ。

「冒険者! いいね、楽しそう」

 創作の世界でしか聞いたことのない単語に、マヤは心が踊った。

「ではそうしよう。とりあえず管理協会に行くぞ」

 広場のベンチを後にして、あいも変わらずマッシュを抱っこしたマヤは、マッシュに案内されるまま、冒険者の管理協会にたどり着いた。

「すみませーん」

 明るく挨拶して扉を開いたマヤに屈強な男たちの視線が刺さった。

「うわー、なんというかすごいね」

 屈強な男たちの中に、うさぎを抱えた美少女(自己評価)というは、なんとも場違いである。

「マヤ、気にすることはない、女の冒険者もそれなりにいるからな」

「あそこにいる男を締めあげてるのは確かに女だねー」

 マヤは三白眼になって抑揚のない声で言った。

 その視線の先では、マヤの言う通り、大男を同じくらい大きな女が締め上げていた。

「……普通の見た目の女冒険者もいる。みんながみんなあの手のパワータイプではない、はずだ」

 あまりの光景に、マッシュもしばらく言葉を失っていた。

「まあいいや、今はマッシュを信じるよ。いざとなったらマッシュをうさぎ鍋にして飢えをしのげばいいし」

「それでは私が死ぬだろう!? 全く……」

 そんなことを話しているうち、マヤは管理協会の窓口にたどり着いた。

「こんにちは、見学ですかお嬢さん?」

 むくつけき男たち(女もいたが)の中にあって、受付にいるきれいな女性は異彩を放っていた。

 三編みにして前に流した黒髪に、スラリと伸びた手足。髪色と同じ黒瞳にはモノクルが輝いている。

 小柄でどちらか言えば少女であるマヤと対照的に大人の女性といった印象だ。

「いえ、その、冒険者に成りたいんですけど、ここで合ってますか?」

「ええ、あっていますよ。でも大丈夫かしら? こう言っては何だけど、あなた見るからに弱そうだけど……」

 受付の女性の言葉に、後ろの冒険者達は失笑する。

「ねえマッシュ、こんなこと言われてるけど、私大丈夫なの?」

「心配いらん。受付の女、親切心なのはわかるが、あまりうちのマスターをいじめないでやってくれるか?」

「そちらは……そういうこと。人の言葉がわかる程の高位の魔物と一緒ってことね。それであれば問題ないでしょう」

 受付の女性は、納得した様子で手続きの準備を始める。

 何度か女性からの質問に答えた後、女性は1枚の紙をマヤに差し出した。

「このの内容で冒険者登録させてもらうけど、問題ないかしら?」

 女性が見せた紙には「魔物使いマヤ、魔物マッシュ、この2名を冒険者として登録する」というようなことが書かれていた。

「大丈夫です」

「それでは最後に魔石に魔力を登録してくれるかしら。これが終わればどこの管理協会でも冒険者としてのサービスを受けることができるわ。この魔石に手をおいてみてくれる?」

 言われるまま、マヤは女性が差し出す魔石に手をおいた。

 その瞬間、魔石が強く光り、すぐに収まった。

「はい、完了。それじゃあ、これからよろしくね、新人さん」

 こうして、マヤは冒険者になったのだった。

***

「それで、最初の仕事は近くの魔物退治ってことなんだけど、私全く戦えないよ?」

 あの後管理協会でマッシュが引き受けた依頼を紙を見ながら、マヤは前を歩くマッシュに声をかける。

 魔物退治のために街から出て街道を歩いているため、マッシュは自分で歩いている。

「問題ない、マヤ、お前には魔物使いの才能がある」

「そういえばそんなこと書いてあったね、さっきの書類にも」

「マヤはどう見ても貧弱だからな。戦士や剣士のようなスタイルで冒険者になりたいと言っても認めてもらえなかっただろう」

「うわっ、ひっどーい。私だってちょっとくらいは戦えるもん、たぶん、それっ、ほっ―――おっとと」

 剣を振り回す真似をして、マヤはバランスを崩して転びそうになってしまう。

「剣を振り回す真似だけでふらつくやつが、剣で戦えるわけ無いだろう……」

「だってしょうがないじゃん、この体をどうにもバランスが取りにくいんだもん」

 そもそもマヤがこの体になってから、まだ1日も経っていないのだ。

 その上、そこそこ筋力のある成人男性から、平均以下の筋力の女子に変わっているのである。

 胸の重さでバランスは取りづらいわ、手足も体幹も筋力が足りなくて思い通りに動かないわで、戦うなど夢のまた夢だろう

「言ってしまえば、それでも問題ないのが魔物使いだ。ほら、さっそく魔物たちが見えてきたぞ」

 まだマヤが何をすればいいのかさっぱりわからないまま、マッシュの言う通り前方に魔物の姿が見えてきた。

「ね、ねえ、まだ私何をすればいいかさっぱりなんだけど?」

「安心しろ、最悪マヤが何もできなくとも、今の私ならあの程度なんとでもなる」

「いやいや、マッシュうさぎだよね? あの魔物どう見ても狼系じゃん? その上、額になんか黒い宝石みたいなの埋まってるし、やたらデカいし、無理でしょ? 美味しくいただかれちゃうよ?」

「美味しくいただかれてやるつもりはないから安心しろ、と言っても信じられないだろうな」

「信じられないね!?」

「仕方ない、百聞は一見にしかずだ。マヤ、私に右掌を向けて『強化ブースト』と叫べ!」

 マッシュはそれだけ言い残すと、狼の魔物の群れへと一直線に駆けていく。

「え? え? どゆこと? え?」

「いいから早く言え!」

「あーもう、わかったよ! 『強化ブースト』!」

 マヤが半ばやけくそで叫んだ瞬間、マヤの右手から金色に輝く光の粒子が溢れ出し、マッシュを包む。

「よし! ひとまず初歩の初歩は問題ないみたいだな!」

 マッシュを包む金の粒子がすべマッシュに溶け込むと同時に、マッシュは魔物の群れの真ん中へと到着した。

「ふんっ!」

 鎧袖一触。

 マッシュが前足を1度振るっただけで、魔物の群れは黒い粒子となって消え、額の宝石だけが地面に転がった。

 こうして、マヤとマッシュの冒険者初仕事は幕を閉じたのだった。
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