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第5巻第1章 ヘンダーソン王国にて
デリックとマルコス
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「じゃあ剣神さんもマルコスさんがどこにいるかは知らないんだ」
デリックが知りうる限るの情報を聞いたマヤは、最後にもう一度確認する。
「そうなるな。基本的には何らかの手段でマルコス殿から連絡があった後、指定の場所に現れるドアの先で会う形だからな」
「なるほど……」
デリックの話を聞く限り、指定の場所に現れるドアというのは、ルースと同じ聖魔石のドアだろう。
しかしながらそれがわかったところで、ルースを含めた聖魔石のドアがどういう原理で空間転移を行っているのか知らないマヤにはどうすることもできない。
「それじゃあマルコス様のところに行くのは……」
クロエの言葉に、マヤはうなずく。
「そうだね。振り出しに戻った、とまでは言わないけど、具体的な方法は思いつかないなあ……」
マヤがどうしたものか、と考えていると、オリガがおずおずと手を上げた。
「あの、もしかしたらなんですけど……」
「どうしたの?」
「その、ですね。実は私、時々大学に行ってるんです」
「大学に? なんでまた? オリガくらい魔法に詳しかったら別に今更学ぶこととかないんじゃないの?」
オリガの言う大学とは、マヤがもといた世界の大学をそのまま参考にしてこちらに世界に作ったものだ。
諜報部隊を作った時に、その初めての任務として「世界中で頭はいいけどお金がなくて困ってるような人がいたらその情報も集めてくるように」というマヤの指示で諜報部隊によって見つけ出された国の組織などの属していない天才たちが研究などを行っている。
キサラギ亜人王国のお金で好きなだけ研究していい、という条件で呼び寄せたのだ。
「そうでもないですよ。より専門的な魔法の話ができてとっても勉強になるんです」
「そうなんだ。今のオリガ以上に高度な魔法の話ってもう想像すらできないけど……で、それがどうしたの?」
「実は大学では今、空間転移について研究中なんです」
「へえ、もしかしてルースの力で空間転移できることがわかったから?」
「ですね。ルースさんにできるなら魔法は空間転移を実現できるはず、という仮定のもと研究が始まったんです」
「なんというか、前にあったときにも思ったけど、大学の天才さんたちはすごい自信だよね」
「それは私もそう思います。そもそもルースさんは原初の魔王様たちしか存在を知らなかった聖魔石でできたドアに悪魔が封印された存在ですから、超常の存在が掛け合わされてるわけで、ルースさんにできるからと言って普通の魔法にできるかは正直わからないと思うんですが……」
「だよねー。でも、わざわざ今そんな話をしたってことは、ある程度成果は出てるってことだよね」
「ええ、驚くべきことに。今のところ転移自体は実現の目処すら立っていませんが、転移の原理はある程度解明されてきています」
「すごいじゃん! いつかは皆が空間転移し放題になるかもね」
「かもしれませんね。それでですね、この前大学に行った時点で、空間転移が行われた痕跡から転移先を特定することには成功していたんです」
「それじゃあ……」
「ええ、デリック様がマルコス様と会うときに扉が出てきたという場所に行けば、その痕跡から転移先を特定することができるはずです」
「だよね! よしっ、それじゃあ早速大学に行こう。ルース!」
「はあ、全く人使いの荒い……」
文句を言いながらもすぐにドアに変身してくれたルースへと、マヤはオリガの手を引いて入っていく。
マヤとオリガがドアをくぐった十数分後、マヤとオリガは、数人の学者を連れて戻ってきた。
「これが本物の空間転移! 感動しました!」
「ああ、これほどスムーズに空間を繋げられるとは! 驚きだ!」
「あーはいはい、興奮するのはわかるけど、今は急いでるからね。クロエさんに怒られたくなかったら静かにするようにー」
マヤの言葉に聞く耳を持たず話し続ける学者たちに、オリガが先ほどのクロエの様子を耳打ちする。
クロエが魔王デリックと初代剣聖カーリを正座させて叱りつけていたと聞いた学者たちは途端に静かになった。
「さて、それじゃあ剣神さん、そのマルコスさんと会うためのドアが現れたところに案内してくれるかな」
「ああ、こっちだ」
マヤはデリックの案内で道場から少し離れた森に中へとやってきた。
「ここ?」
デリックが足を止めたのは、森の中の多少開けた場所だった。
開けた、とは言っても本当に多少開けているというだけで、デリックが立ち止まらなければただの森だと思って通り過ぎていただろう。
「そうだ」
「それじゃあ早速痕跡を探してみてくれるか――って早いな!?」
マヤが声をかけるまでもなく、学者たちはいつの間にやら取り出した謎の装置を組み立てて痕跡の解析に入っていた。
何やらぶつぶつと言いながら作業を進める彼ら彼女らの瞳はキラキラと輝いている。
(あー、この人たち空間転移の研究するの相当好きなんだね……空間転移オタクか)
言われる前に動き始め、ぶつぶつ何かを言いながら目を輝かせて作業をする様子を見て、マヤはいわゆるオタクと呼ばれる人種に似ているなと感じた。
マヤ自身もこちらに来る前はアニメや漫画のオタクだったので、好きなものに夢中になる気持ちはよくわかった。
マヤが学者たちの姿に親近感を覚えていると、どうやら解析が終わったらしく、学者の1人がマヤのところにやってくる。
「陛下、マルコス様の居場所がわかりました」
「おお、早いね。どれどれ…………って、これじゃわからないんだけど?」
マヤは謎の数字が羅列されただけの紙をピラピラと振って報告してきた学者に示す。
それを見た学者も、マヤがそう言うことはわかっていたのか、困ったように笑って頭をかく。
「実はですね、その数字が示す場所が地図上に存在しないんですよ。だからそのままの数字になってるんです」
「地図上にない? どういうこと?」
「そうですね、簡単に説明するとですね――」
学者の説明によると、今回使っている解析装置は、予め地図に方眼を書き込み、解析した目的地をその地図上の座標で示す、というものだったらしい。
なので当然学者たちが地図に引いた数値の範囲でしか座標は存在しないのだが、今回出てきた座標は学者たちが地図上に引いた最大の数字よりも大きな座標らしいのだ。
つまり、今回の座標は簡単に言えば地図の外側がマルコスのいる場所だ、ということになるらしい。
「うーん、どういうことだろう?」
せっかく見つかったマルコスへの唯一の道が閉ざされてしまった可能性が頭をよぎり、マヤは冷や汗をかくのだった。
デリックが知りうる限るの情報を聞いたマヤは、最後にもう一度確認する。
「そうなるな。基本的には何らかの手段でマルコス殿から連絡があった後、指定の場所に現れるドアの先で会う形だからな」
「なるほど……」
デリックの話を聞く限り、指定の場所に現れるドアというのは、ルースと同じ聖魔石のドアだろう。
しかしながらそれがわかったところで、ルースを含めた聖魔石のドアがどういう原理で空間転移を行っているのか知らないマヤにはどうすることもできない。
「それじゃあマルコス様のところに行くのは……」
クロエの言葉に、マヤはうなずく。
「そうだね。振り出しに戻った、とまでは言わないけど、具体的な方法は思いつかないなあ……」
マヤがどうしたものか、と考えていると、オリガがおずおずと手を上げた。
「あの、もしかしたらなんですけど……」
「どうしたの?」
「その、ですね。実は私、時々大学に行ってるんです」
「大学に? なんでまた? オリガくらい魔法に詳しかったら別に今更学ぶこととかないんじゃないの?」
オリガの言う大学とは、マヤがもといた世界の大学をそのまま参考にしてこちらに世界に作ったものだ。
諜報部隊を作った時に、その初めての任務として「世界中で頭はいいけどお金がなくて困ってるような人がいたらその情報も集めてくるように」というマヤの指示で諜報部隊によって見つけ出された国の組織などの属していない天才たちが研究などを行っている。
キサラギ亜人王国のお金で好きなだけ研究していい、という条件で呼び寄せたのだ。
「そうでもないですよ。より専門的な魔法の話ができてとっても勉強になるんです」
「そうなんだ。今のオリガ以上に高度な魔法の話ってもう想像すらできないけど……で、それがどうしたの?」
「実は大学では今、空間転移について研究中なんです」
「へえ、もしかしてルースの力で空間転移できることがわかったから?」
「ですね。ルースさんにできるなら魔法は空間転移を実現できるはず、という仮定のもと研究が始まったんです」
「なんというか、前にあったときにも思ったけど、大学の天才さんたちはすごい自信だよね」
「それは私もそう思います。そもそもルースさんは原初の魔王様たちしか存在を知らなかった聖魔石でできたドアに悪魔が封印された存在ですから、超常の存在が掛け合わされてるわけで、ルースさんにできるからと言って普通の魔法にできるかは正直わからないと思うんですが……」
「だよねー。でも、わざわざ今そんな話をしたってことは、ある程度成果は出てるってことだよね」
「ええ、驚くべきことに。今のところ転移自体は実現の目処すら立っていませんが、転移の原理はある程度解明されてきています」
「すごいじゃん! いつかは皆が空間転移し放題になるかもね」
「かもしれませんね。それでですね、この前大学に行った時点で、空間転移が行われた痕跡から転移先を特定することには成功していたんです」
「それじゃあ……」
「ええ、デリック様がマルコス様と会うときに扉が出てきたという場所に行けば、その痕跡から転移先を特定することができるはずです」
「だよね! よしっ、それじゃあ早速大学に行こう。ルース!」
「はあ、全く人使いの荒い……」
文句を言いながらもすぐにドアに変身してくれたルースへと、マヤはオリガの手を引いて入っていく。
マヤとオリガがドアをくぐった十数分後、マヤとオリガは、数人の学者を連れて戻ってきた。
「これが本物の空間転移! 感動しました!」
「ああ、これほどスムーズに空間を繋げられるとは! 驚きだ!」
「あーはいはい、興奮するのはわかるけど、今は急いでるからね。クロエさんに怒られたくなかったら静かにするようにー」
マヤの言葉に聞く耳を持たず話し続ける学者たちに、オリガが先ほどのクロエの様子を耳打ちする。
クロエが魔王デリックと初代剣聖カーリを正座させて叱りつけていたと聞いた学者たちは途端に静かになった。
「さて、それじゃあ剣神さん、そのマルコスさんと会うためのドアが現れたところに案内してくれるかな」
「ああ、こっちだ」
マヤはデリックの案内で道場から少し離れた森に中へとやってきた。
「ここ?」
デリックが足を止めたのは、森の中の多少開けた場所だった。
開けた、とは言っても本当に多少開けているというだけで、デリックが立ち止まらなければただの森だと思って通り過ぎていただろう。
「そうだ」
「それじゃあ早速痕跡を探してみてくれるか――って早いな!?」
マヤが声をかけるまでもなく、学者たちはいつの間にやら取り出した謎の装置を組み立てて痕跡の解析に入っていた。
何やらぶつぶつと言いながら作業を進める彼ら彼女らの瞳はキラキラと輝いている。
(あー、この人たち空間転移の研究するの相当好きなんだね……空間転移オタクか)
言われる前に動き始め、ぶつぶつ何かを言いながら目を輝かせて作業をする様子を見て、マヤはいわゆるオタクと呼ばれる人種に似ているなと感じた。
マヤ自身もこちらに来る前はアニメや漫画のオタクだったので、好きなものに夢中になる気持ちはよくわかった。
マヤが学者たちの姿に親近感を覚えていると、どうやら解析が終わったらしく、学者の1人がマヤのところにやってくる。
「陛下、マルコス様の居場所がわかりました」
「おお、早いね。どれどれ…………って、これじゃわからないんだけど?」
マヤは謎の数字が羅列されただけの紙をピラピラと振って報告してきた学者に示す。
それを見た学者も、マヤがそう言うことはわかっていたのか、困ったように笑って頭をかく。
「実はですね、その数字が示す場所が地図上に存在しないんですよ。だからそのままの数字になってるんです」
「地図上にない? どういうこと?」
「そうですね、簡単に説明するとですね――」
学者の説明によると、今回使っている解析装置は、予め地図に方眼を書き込み、解析した目的地をその地図上の座標で示す、というものだったらしい。
なので当然学者たちが地図に引いた数値の範囲でしか座標は存在しないのだが、今回出てきた座標は学者たちが地図上に引いた最大の数字よりも大きな座標らしいのだ。
つまり、今回の座標は簡単に言えば地図の外側がマルコスのいる場所だ、ということになるらしい。
「うーん、どういうことだろう?」
せっかく見つかったマルコスへの唯一の道が閉ざされてしまった可能性が頭をよぎり、マヤは冷や汗をかくのだった。
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