レベル0の最強剣士~レベルが上がらないスキルを持つ俺、裏ダンジョンに捨てられたが、裏技を発見し気が付いたら世界最強になっていた。

つくも/九十九弐式

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第50話 セレモニーの開催

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(バハムート視点)

「ふむ……」

 バハムートは観客席でその様子を眺めていた。バハムートは出場しないのである。だから観客席で大人しく観戦する事にした。

 ソルは他の闘技者と同じく、闘技ステージに整列している。

「やはり凄い人だの……人間とは存外に野蛮な宴が好きなようだ」

 観客席は大勢の人々がいた。バハムートは闘技者の付き添いという事で別段費用はかからなかったが、一般の観客はそれなりの入場料を支払っているようだ。
 
 そして、その上で賭けも行っている。誰が優勝するか賭けるのだ。その上で闘技場内では飲食物も販売されている。金がなければできない事であった。娯楽とは上級国民の嗜好品である。

 日々の生活に精一杯の人間、食うにも困っている人間に娯楽を楽しんでいる余裕などない。

 隣にいる家族連れ、そこにいる小さな男の子が甘菓子を頬張っているのが目に入った。

「ごくり……」

 バハムートは唾液を飲み込む。流石のバハムートでも人間社会で食糧を手に入れるのは『お金』という交換物が必要な事は理解できたし、他人のものを無断で奪いとるとまずい事が起きる、という程度の理解は最近できた。

 そのため、隣にいる少年から甘菓子を奪い取るような蛮行はしなかった。主人(マスター)であるソルに叱られると思い、必死に自制した。

「仕方ないの……この野蛮な宴でも見ているとするか」

 バハムートは剣神武闘会の観戦に集中した。

 ――とはいえ。

「我も決してこういう野蛮な宴は嫌いではないがの……ふふっ」

 バハムートは笑みを漏らした。血湧き、肉躍るのであった。竜種にとっても闘争は根源的欲求だ。血が騒ぐのだ。だから今、この状況は決して不本意な状況ではなかったのである。

 ◇
(偽クレア視点)

 そこは王族がいる、貴賓室であった。普通の観客席とは違い、王族は隔離された観客室が用意されている。高いところにある席で、一般客は立ち入れない特別な席だ。そこは王族、その関係者しか立ち入る事ができない、特別席であった。

 そこにはクレア――に『変化』のスキルで化けたメイドであるレティシアの姿があった。もしバレたら面倒な事になる。クビになるだけならまだいい。最悪は何らかの刑罰を与えられる事だろう。何せ、クレアが剣神武闘会に黙って出場する事に加担をしたのである。
 武闘会とは言葉を選ばずに言えば野蛮な殺し合いである。

 クレアは下手をすれば怪我をする事であろう。最悪は死んでしまうかもしれない。武闘会の参加者は不慮の事故により死亡した場合でも国に賠償を求めないように、出場の際に契約書にサインをさせられているらしい。

 大体、この武闘会では毎年数名の死者が出ているのだ。それでもやめられないのはその苛烈さ故に、より多くの観光客が訪れ、国に金を落としていくからだろう。

 少数の人間の命よりも国益が優先される。それが国家を運営していく上での闇でもあったし、触れてはならない部分であった。

「どうしたのだ? クレア、随分と緊張した顔をしているではないか?」

 父であるフレースヴェルグの国王が聞いてきた。

 ギクリ。ドレスを着てめかし込んだ偽クレアは気まずそうに微笑む。

「な、何でもありませんわ。お父様」

「そ、そうか。具合が悪いのかと思ったぞ。何せこう暑いではないか。それなのに暑苦しいドレスなど着せられているから」

「か、関係ありませんわ。お父様。だって、私には固有スキルである『煉獄の加護』がありますから。温度が高くなっても平気なんです……」

 必死に冷や汗を流しながら、偽クレアは微笑む。確かに、本物のクレアならば言っている言葉の通りだ。固有スキルの影響により、多少の高温など意にも介さない事であろう。
 
 しかし今この場にいるのは偽クレアである。故に『煉獄の加護』による効果など発揮されるわけもなく、ただただ暑いのをやせ我慢しているだけなのである。

「はぁ……そうだったな、お前は。平気だったらよいのだが」

「そうです。平気なんです。だからお父様も剣神武闘会の方に集中してください。もうすぐセレモニーが始まります。お父様も開催前にお話をされなければならないでしょう」

「うむ……そうだったな」

「国王陛下! もうすぐ開催セレモニーの時間です。前に出てください」

「うむ……」

 国王は衆目の下へと向かう。

 ◇

(バハムート視点)

 国王が皆の前へ現れた。バハムートはその様子を観客席から見る。

「ふむ……あれが国王か」

 つまりはあの時、王城で世話を焼いてくれたソルの幼馴染——王女クレアの父親という事になる。国王というと冠をした髭を生やした老人を思い浮かべるが、思っていたよりも若かった。

クレアが15歳である事を考えれば、その父親はせいぜい30代というところだろう。若々しいのも当然だった。若々しいというよりは純粋に若いのだ。中年というのも申し訳ない位に。

「皆の者よく集まってくれた。これよりフレースヴェルグで四年に一度行われる『剣神武闘会』の開催を行う!」

 割れんばかりの歓声がした。そして拍手や指笛も。一気に闘技場のボルテージが上がっていくのを感じた。

「戦士達よ。己の力を存分に示してほしい。そして最善を尽くし、剣の頂きを目指して欲しい。その死力を尽くした果てに、必ずやそれに相応する報いがある事をここに約束しよう」

 使用人が何かを持ってきた。

「優勝者には金紙幣100枚、さらには今後四年間の『剣神』の称号。さらに副賞として」

 国王は使用人から受け取った剣を高々と翳す。

「我が王国に伝わる秘剣を授けよう」

 それは赤い鞘に納められた、赤色の剣であった。燃える炎のような剣。

「この剣の名は聖剣レーヴァテインという。我がフレースヴェルグ国に代々伝わる聖剣である」

 おおおおおおおおお!

 と、観客と出場者から感嘆とした声が漏れてくる。金指名100枚も魅力的であるし、『剣神』という称号や名誉も魅力的だ。それにも増して、あの聖剣には金には代えられない特別な価値があった。

 売れば金紙幣100枚にはなりうるだろうが、金紙幣100枚出したからといって、確実に手に入るかはわからない。相場によってはもっと高い値段が付く事もあり得よう。それほどの一品なのである。

 その為、出場者のギラギラとした目が、余計にギラついていったのを感じた。テンションが上がっているのである。時と場合によっては対戦者を殺す事すら躊躇わない程の気迫を感じる。

「それでは諸君らの健闘を祈る! それでは早速ではあるが、Аブロックの第一試合から始めようではないか!」

 準備が進められる。出場者たちは控室に移動させられる。闘技場ステージに残されたのは二人の戦士だけであった。その二人がАブロック第一試合の対戦者なのである。

 ゴン!

 大きな鐘が鳴らされた。それがゴング代わりであった。

「今これより『剣神武闘会』を始める事とする!」

 国王は宣言した。

「「はあああああああああああああああああああああ!」」

 戦士、二人は高らかな掛け声を上げる。
 
 キィン! そして観衆の雑音にも負けない程の甲高い、音。剣と剣が激しくぶつかる音が奏でられたのである。
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