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第87話 奪われる神の魔水晶(ゴッドクリスタル)
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「一体、どうなってるんだ! 戦線の状況はどうなっている!」
魔族に侵攻されているエルフ国は騒々しかった。エルフの森は焼き払われ、その上で魔族達に攻め込まれているのである。
無論、前線で闘っているエルフ兵達は地獄のような光景を見ているとは思うが、それでも攻め込まれているエルフ国もまた大慌ての様子を呈していた。
様々な指示をし、また大量の報告を受けるエルフ王もまた、大慌ての様子であった。
「魔族達はエルフの森に火を放ちました。その上で攻め込んできており、今はエルフ兵による消火活動と戦闘行為が行われています……ですが、どちらも状況としては芳しくありません」
使いのエルフが苦々しい表情で告げる。
「……くっ。そうか」
エルフ王は打てる手は打った。だが、それでも尚、状況が改善していくようには見えなかった。
万事休す……と思われた。
「お父様……」
その不安はエルフの姫である娘――ソフィアにまで伝染する。その事を危惧したエルフ王は必死で平静の様子を取り繕った。
「大丈夫だ。ソフィア。私が何とかする……何でもソル君と言ったか。人間の彼等も協力してくれている。きっと何とかなる。だから心配するな」
「はい……お父様」
エルフ王はソフィアを宥めた。
――と、その時であった。
「へぇ……随分と大変そうじゃないか」
「だ、誰だ!?」
どこからともかく声がした。そして、美しい銀髪の少年であった。ただならぬオーラを放っており、そしてどこからともなく現れた事から、エルフ王は直観的に相手が魔族だと認識した。
それもただの魔族ではない。相当に高位な魔族である。周りにいるエルフ兵達ではどうこうできない相手かもしれないと感じていた。
「僕の名は魔人レイ。君たちの敵である魔王様の手先さ」
「魔族の者か! な、なんだ! 何が目的だっ!」
「目的なら知っているんじゃないかなぁ? この魔族とエルフ族の抗争がなぜ起きたのか? その原因を考察してみればすぐに結論は出せるよ」
「神の魔晶石(ゴッドクリスタル)か……しかし、そんなもの、どこにも」
「シラを切っても無駄だよ。僕の事をそんなに甘く見ない事だ……君達はもっとも身近で安全なところに神の魔晶石(ゴッドクリスタル)を隠したはずだよ……そう。そこにいるエルフのお姫様――ソフィア様と言ったか。彼女の体内に君達は神の魔晶石(ゴッドクリスタル)を隠したのさ」
「……どうしてそれを……」
ソフィアは驚いていた。
「心配しなくてもカマをかけたわけじゃない。確信があったのさ。大事なものを隠そうとした時、どこに隠すのが一番安全か。簡単な推察だよ。肌身離さず自分で持っていたいっていうのがまともな心理だよ……お見通しなんだよ、そんな事は」
「どうするつもりなのです?」
「聞くまでもないだろ。大人しく寄越すなら良し。抵抗するなら殺してでも奪うまでさ」
魔人レイは楽しんでいるかのように笑う。
「くっ! 姫様を守れっ!」
幾人ものエルフ兵が槍を持って魔人レイに立ち向かう。
「邪魔だよ」
――しかし、その勇敢さも空しく、その一言と共にエルフ兵は吹き飛んでいった。
恐らくは魔法による衝撃波であろう。
「「「ぐわあああああああああああ!」」」
エルフ兵の悲鳴が虚しく響く。
「さて、それじゃあ、頂こうか」
魔人レイは舌なめずりをして、ソフィアを見下ろした。
「や、やめろっ! 私の娘に手を出すなっ!」
エルフ王が立ち塞がる。
「邪魔だよ。エルフの王様。死にたいのか?」
魔人レイはエルフ王を睨む。
「うっ……」
それだけでエルフ王は蛇に睨まれたカエルのように動けなくなってしまった。
「お願いです! 神の魔晶石(ゴッドクリスタル)は渡します。ですからどうか、お父様の命をお助けください」
「……交渉になってないんだよ。別に君達を殺して、その上で神の魔晶石(ゴッドクリスタル)を奪えばいいんだからさ」
「そんな……」
ソフィアの表情が絶望に染まるのであった。
「さあ、それじゃあ、頂こうか。目的の物を」
魔人レイの右腕に魔力が宿る。あの手でソフィアの体内に忍び込むつもりなのだ。
「うっ、ぐぅ、いやああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
心臓の当たりに魔人レイの手が飲み込まれていく。激しい痛みがするのか、ソフィアは苦悶の表情と、ともに悲鳴を上げた。だが、魔人レイはその様子を見て楽しんでいた。愉悦のあまり笑みをこぼす。
「ふっふっふ……ああ……あった、あった。これだ」
「あっ……ああっ」
魔人レイはソフィアの胸から輝かしい結晶を取り出す。金色よりも余程輝く、眩しいばかりの結晶。それがエルフの国の秘宝、神の魔結晶(ゴッド・クリスタル)そして、魔族の切り札である魔道砲の動力源である。
「ソフィア!」
エルフ王は叫ぶ。
「……さて。用も済んだし、君達の処分は――まあいい。君達エルフは大した脅威ではないんだが、君達を処分している内にあの連中に駆け付けられたら厄介だ。やっと手に入れた神の魔結晶(ゴッド・クリスタル)を失うわけにもいかない」
魔人レイは転移魔法(テレポーテーション)を使用する。
「じゃあね」
そしてその場から消えた。
「ソフィア! 無事かっ!」
エルフ王はソフィアに駆け寄る。
「はっ……はい。お父様」
ソフィアの目は虚ろになっていたが、命の心配はないようであった。
こうして魔人レイの襲撃は一応の終結を迎えたのである。
魔族に侵攻されているエルフ国は騒々しかった。エルフの森は焼き払われ、その上で魔族達に攻め込まれているのである。
無論、前線で闘っているエルフ兵達は地獄のような光景を見ているとは思うが、それでも攻め込まれているエルフ国もまた大慌ての様子を呈していた。
様々な指示をし、また大量の報告を受けるエルフ王もまた、大慌ての様子であった。
「魔族達はエルフの森に火を放ちました。その上で攻め込んできており、今はエルフ兵による消火活動と戦闘行為が行われています……ですが、どちらも状況としては芳しくありません」
使いのエルフが苦々しい表情で告げる。
「……くっ。そうか」
エルフ王は打てる手は打った。だが、それでも尚、状況が改善していくようには見えなかった。
万事休す……と思われた。
「お父様……」
その不安はエルフの姫である娘――ソフィアにまで伝染する。その事を危惧したエルフ王は必死で平静の様子を取り繕った。
「大丈夫だ。ソフィア。私が何とかする……何でもソル君と言ったか。人間の彼等も協力してくれている。きっと何とかなる。だから心配するな」
「はい……お父様」
エルフ王はソフィアを宥めた。
――と、その時であった。
「へぇ……随分と大変そうじゃないか」
「だ、誰だ!?」
どこからともかく声がした。そして、美しい銀髪の少年であった。ただならぬオーラを放っており、そしてどこからともなく現れた事から、エルフ王は直観的に相手が魔族だと認識した。
それもただの魔族ではない。相当に高位な魔族である。周りにいるエルフ兵達ではどうこうできない相手かもしれないと感じていた。
「僕の名は魔人レイ。君たちの敵である魔王様の手先さ」
「魔族の者か! な、なんだ! 何が目的だっ!」
「目的なら知っているんじゃないかなぁ? この魔族とエルフ族の抗争がなぜ起きたのか? その原因を考察してみればすぐに結論は出せるよ」
「神の魔晶石(ゴッドクリスタル)か……しかし、そんなもの、どこにも」
「シラを切っても無駄だよ。僕の事をそんなに甘く見ない事だ……君達はもっとも身近で安全なところに神の魔晶石(ゴッドクリスタル)を隠したはずだよ……そう。そこにいるエルフのお姫様――ソフィア様と言ったか。彼女の体内に君達は神の魔晶石(ゴッドクリスタル)を隠したのさ」
「……どうしてそれを……」
ソフィアは驚いていた。
「心配しなくてもカマをかけたわけじゃない。確信があったのさ。大事なものを隠そうとした時、どこに隠すのが一番安全か。簡単な推察だよ。肌身離さず自分で持っていたいっていうのがまともな心理だよ……お見通しなんだよ、そんな事は」
「どうするつもりなのです?」
「聞くまでもないだろ。大人しく寄越すなら良し。抵抗するなら殺してでも奪うまでさ」
魔人レイは楽しんでいるかのように笑う。
「くっ! 姫様を守れっ!」
幾人ものエルフ兵が槍を持って魔人レイに立ち向かう。
「邪魔だよ」
――しかし、その勇敢さも空しく、その一言と共にエルフ兵は吹き飛んでいった。
恐らくは魔法による衝撃波であろう。
「「「ぐわあああああああああああ!」」」
エルフ兵の悲鳴が虚しく響く。
「さて、それじゃあ、頂こうか」
魔人レイは舌なめずりをして、ソフィアを見下ろした。
「や、やめろっ! 私の娘に手を出すなっ!」
エルフ王が立ち塞がる。
「邪魔だよ。エルフの王様。死にたいのか?」
魔人レイはエルフ王を睨む。
「うっ……」
それだけでエルフ王は蛇に睨まれたカエルのように動けなくなってしまった。
「お願いです! 神の魔晶石(ゴッドクリスタル)は渡します。ですからどうか、お父様の命をお助けください」
「……交渉になってないんだよ。別に君達を殺して、その上で神の魔晶石(ゴッドクリスタル)を奪えばいいんだからさ」
「そんな……」
ソフィアの表情が絶望に染まるのであった。
「さあ、それじゃあ、頂こうか。目的の物を」
魔人レイの右腕に魔力が宿る。あの手でソフィアの体内に忍び込むつもりなのだ。
「うっ、ぐぅ、いやああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
心臓の当たりに魔人レイの手が飲み込まれていく。激しい痛みがするのか、ソフィアは苦悶の表情と、ともに悲鳴を上げた。だが、魔人レイはその様子を見て楽しんでいた。愉悦のあまり笑みをこぼす。
「ふっふっふ……ああ……あった、あった。これだ」
「あっ……ああっ」
魔人レイはソフィアの胸から輝かしい結晶を取り出す。金色よりも余程輝く、眩しいばかりの結晶。それがエルフの国の秘宝、神の魔結晶(ゴッド・クリスタル)そして、魔族の切り札である魔道砲の動力源である。
「ソフィア!」
エルフ王は叫ぶ。
「……さて。用も済んだし、君達の処分は――まあいい。君達エルフは大した脅威ではないんだが、君達を処分している内にあの連中に駆け付けられたら厄介だ。やっと手に入れた神の魔結晶(ゴッド・クリスタル)を失うわけにもいかない」
魔人レイは転移魔法(テレポーテーション)を使用する。
「じゃあね」
そしてその場から消えた。
「ソフィア! 無事かっ!」
エルフ王はソフィアに駆け寄る。
「はっ……はい。お父様」
ソフィアの目は虚ろになっていたが、命の心配はないようであった。
こうして魔人レイの襲撃は一応の終結を迎えたのである。
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