104 / 126
本編
誓い②
しおりを挟む
確かに太っ腹の方ではあったけど、こんな風に無制限で何でも与えるタイプじゃなかった。
ある程度、線引きしてこちらに我慢や理解を求めるよう務めている。
それなのに、一体何故?
不審感や違和感を抱きつつ、私は横髪を耳に掛けようとする。
が、今日はハーフアップにしているため出来なかった。
『あら……』と心の中で呟く私は、おもむろに手を下ろす。
いつも髪を下ろしているから、ついやってしまった……ハーフアップなんて、春の祝賀会以来だし。
ラニット公爵夫人として初めて参加したパーティーを振り返り、私はふと顔を上げた。
そういえば────あの日は旦那様にプレゼントされたドレスを着ていたな、と思い出して。
『謝罪』という名目で贈られたことも一緒に甦り、私はハッとした。
「もしかして────また謝罪の一環で、プレゼントを?」
ほぼ無意識に思ったことを口走ってしまい、私は『あっ、不味い』と少し焦る。
が、夫は顔色一つ変えずにこちらを見つめるだけだった。
特段、気分を害している様子はない。
でも……だからこそ、異常だった。
図星、みたいね。もし、違うなら直ぐに訂正する筈だから。
『少なくとも、否定はする筈』と考え、私は額に手を当てて苦悩する。
だって、今回の謝罪理由は間違いなく────自分の家族の問題に巻き込んだことだから。
結婚式の件と違って、これは夫に非などない。
どちらかと言えば、被害者という立場。
それなのに、謝られるのはなんか違う。
だから、
「フェリクス様の件のお詫びということであれば、プレゼントは要りません」
手のひらを前に突き出し、私は拒絶の意志を露わにした。
金の瞳に、確固たる思いを滲ませて。
「ラニット公爵家に嫁入りした時点で、私もここの人間ですから。家の問題に頭を悩ませたり、力を尽くしたりするのは当然のことです」
『謝られるようなことじゃない』と主張し、私は少しばかり身を乗り出す。
自身の胸元に、手を添えながら。
「それに、夫婦は苦楽を分かち合うものでしょう?」
『何故、こうも他人行儀なのか』と不満を表し、私はそっと眉尻を下げる。
最近、少しずつ距離が縮まってきたのにいきなり突き放されたような衝撃を覚えて。
『自惚れていたのだろうか』と自問する中、夫は
「……私は誓いの言葉に同意しなかった」
と、結婚式の件を引き合いに出した。
『私達は苦楽を分かち合うような夫婦じゃない』と否定するように。
「っ……」
強く奥歯を噛み締める私は、言い表せようもないほど強い痛みを感じる。
と同時に────夫への愛情と恋心を自覚した。
いや、本当はもっと早く気づいていたのかもしれない。
でも、それを認めてしまったら今の関係が崩れる気がして怖かったのだ。
何より、一番近くに居るのにずっと片想いなんて辛すぎる。
まあ、結局もっと酷い状態になってしまったが。
『本当、目も当てられないわね』と思案しつつ、私は小さく深呼吸する。
ショックを受けるあまり、号泣……なんてことにならないように。
何とか乱れる心を鎮める中、夫は不意に立ち上がった。
「だから────」
ある程度、線引きしてこちらに我慢や理解を求めるよう務めている。
それなのに、一体何故?
不審感や違和感を抱きつつ、私は横髪を耳に掛けようとする。
が、今日はハーフアップにしているため出来なかった。
『あら……』と心の中で呟く私は、おもむろに手を下ろす。
いつも髪を下ろしているから、ついやってしまった……ハーフアップなんて、春の祝賀会以来だし。
ラニット公爵夫人として初めて参加したパーティーを振り返り、私はふと顔を上げた。
そういえば────あの日は旦那様にプレゼントされたドレスを着ていたな、と思い出して。
『謝罪』という名目で贈られたことも一緒に甦り、私はハッとした。
「もしかして────また謝罪の一環で、プレゼントを?」
ほぼ無意識に思ったことを口走ってしまい、私は『あっ、不味い』と少し焦る。
が、夫は顔色一つ変えずにこちらを見つめるだけだった。
特段、気分を害している様子はない。
でも……だからこそ、異常だった。
図星、みたいね。もし、違うなら直ぐに訂正する筈だから。
『少なくとも、否定はする筈』と考え、私は額に手を当てて苦悩する。
だって、今回の謝罪理由は間違いなく────自分の家族の問題に巻き込んだことだから。
結婚式の件と違って、これは夫に非などない。
どちらかと言えば、被害者という立場。
それなのに、謝られるのはなんか違う。
だから、
「フェリクス様の件のお詫びということであれば、プレゼントは要りません」
手のひらを前に突き出し、私は拒絶の意志を露わにした。
金の瞳に、確固たる思いを滲ませて。
「ラニット公爵家に嫁入りした時点で、私もここの人間ですから。家の問題に頭を悩ませたり、力を尽くしたりするのは当然のことです」
『謝られるようなことじゃない』と主張し、私は少しばかり身を乗り出す。
自身の胸元に、手を添えながら。
「それに、夫婦は苦楽を分かち合うものでしょう?」
『何故、こうも他人行儀なのか』と不満を表し、私はそっと眉尻を下げる。
最近、少しずつ距離が縮まってきたのにいきなり突き放されたような衝撃を覚えて。
『自惚れていたのだろうか』と自問する中、夫は
「……私は誓いの言葉に同意しなかった」
と、結婚式の件を引き合いに出した。
『私達は苦楽を分かち合うような夫婦じゃない』と否定するように。
「っ……」
強く奥歯を噛み締める私は、言い表せようもないほど強い痛みを感じる。
と同時に────夫への愛情と恋心を自覚した。
いや、本当はもっと早く気づいていたのかもしれない。
でも、それを認めてしまったら今の関係が崩れる気がして怖かったのだ。
何より、一番近くに居るのにずっと片想いなんて辛すぎる。
まあ、結局もっと酷い状態になってしまったが。
『本当、目も当てられないわね』と思案しつつ、私は小さく深呼吸する。
ショックを受けるあまり、号泣……なんてことにならないように。
何とか乱れる心を鎮める中、夫は不意に立ち上がった。
「だから────」
639
あなたにおすすめの小説
醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました
つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。
けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。
会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話
彩伊
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。
しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。
彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。
............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。
招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。
送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。
そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。
『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』
一日一話
14話完結
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる