本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど

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捜索開始《セオドア side》

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◇◆◇◆

 ────ミレイを隣室に送り出してから、二十分ほど経った頃。
私達は未だにミレイの服が届かないことに、疑問を覚えていた。

「……いくらなんでも、遅すぎないか?」

 アランが口火を切ると、キースがそれに続く。

「女性の着替えは大抵長いものッスけど、これはさすがに……」

「着脱の楽な既製服にも拘わらず、手間取りすぎだろう」

 私も不審感を露わにして、隣室に繋がる扉を睨んだ。
その横で、アランは顔を上げる。

「一度、声を掛けてみるか」

 ついに痺れを切らし、アランは行動に出る。

「ミレイ、まだ掛かりそうか?」

 コンコンッと隣室の扉をノックしつつ、アランは呼び掛けた。
が、返答なし。
その瞬間、誰もが嫌な予感を覚える。
最悪の事態が脳裏を過ぎる中、アランは扉に手を掛けた。

「入るぞ」

 一応断りを入れてから、アランは扉を開けようとする。
でも、鍵が掛かっているようで開かない。
それを理解するなり、アランは迷わず扉を蹴破った。

「ちょっ……!一体、何を……!」

「建物に傷をつけられては、困ります……!」

 不動産屋の男二人は『なんてことを!』と慌てふためく。
と同時に、キースが両手を合わせた。

「すみません、後でちゃんと修理代は支払うんで大目に見てほしいッス」

「なんなら、私達がこの物件を買ってもいい」

 『だから、静かにしろ』と圧を掛け、私は隣室に目を向ける。
────と、ここでアランが顔を歪めた。

「クソッ……!ミレイ達が居ない……!」

「「!」」

 ピクッと僅かに反応を示し、私とキースは隣室を見つめる。
不動産屋の男二人も途端に黙り込み、小さく息を呑んだ。

「完全にもぬけの殻だな。争った形跡も見られないし、何かで眠らされたか」

「それで、窓から脱出って訳ッスか」

 開いたままの窓を眺め、キースは『早く周辺の捜索をした方が良さそうッス』と提案する。
焦りを隠し切れない彼の前で、私は

「いや、そう決めつけるのはまだ早い」

 と、首を横に振った。
ミスリードという可能性を捨て切れなかったから。

「アラン、キース。お前達は建物内をくまなく、探せ」

 『建物のどこかに身を潜めているかもしれない』と指摘すると、二人は急いで廊下に出る。
ミレイの名前を呼びながら駆け回る彼らを他所に、私は不動産屋の男二人へ向き直った。

「さて、一応聞くが────お前達はこの件に噛んでいるのか?」

 状況からして限りなく可能性は低いものの、念のため確認する。
『あらゆる可能性を疑わなくては、いけないからな』と思案する私を前に、不動産屋の男二人は口を開いた。

「な、何も知りません……!本当です!」

「自分達はただ不動産屋として、普通に案内しただけで……!」

 嘘を言っているようには、見えない。
やはり、共犯という線は薄いか。
もし、そうなら一緒に逃亡している筈だからな。
わざわざ、この場に残るメリットはない。

 『情報流出のリスクを背負うだけだ』と考えていると、アランとキースが戻ってくる。

「ミレイ達の姿はどこにもなかった!」

「もうここからは離れたと見て、間違いないッス!」

 手短に報告を行うアランとキースに、私はスッと目を細めた。

「そうか。なら、こちらも本格的に動き出すぞ」

 『ここから先は時間との勝負だ』と告げ、私は腕を組む。

「アラン、お前は門番のところに行って検問を強化するよう伝えろ。それから、不動産屋の奴らをついでに送ってこい。もしかしたら、犯人に消されるかもしれないからな」

「「えぇ!?」」

 思わずといった様子で、不動産屋の男二人は声を上げた。
ガクガクと震える彼らを前に、私は『不安なら、護衛でも雇え』と言い放つ。
さすがにそこまで面倒は見れないため。

「キースは建物周辺の捜索と聞き込みだ。たとえ、成果が出なくても一時間で切り上げろ」

 『もちろん、発見した場合はその限りじゃないが』と話しながら、私は横髪を耳に掛けた。

「私はジェシカのところに行ってくる」

 おもむろに店のある方向を見つめ、私は腰に手を当てる。

「各自用事が済んだら、またここに集まれ」

 その言葉を合図に、私達はそれぞれ行動を開始した。

「────ジェシカ、話がある。裏に通せ」

 入店して開口一番にそう言うと、ジェシカや客は目を見開いて固まる。
が、私は気にせず奥の部屋に歩を進めた。

「ちょっ……待って!いきなり、何なの……!?」

 ジェシカは茶色がかった瞳に困惑を滲ませ、私の後を追い掛けてくる。
ただ、怒ることはなかった。
私が気まぐれや意地悪で、こんなことをするやつではないと分かっているからだろう。

「単刀直入に聞く。誰があの物件を支店にしようと言い出したんだ?」

 奥の部屋に入るなり話を切り出し、私は表情を硬くする。
気が急くあまり物々しいオーラを放つ私に、ジェシカは瞳を揺らした。

「えっ?何の話?」

「今日、下見に行ったあの空き家だ」

「下見?」

 大きく目を瞬かせ、ジェシカは困惑を示す。
本気で話についていけていない彼女を前に、私は内心頭を捻った。

「今朝、手紙でミレイと一緒に支店の場所を下見したいと誘ったんじゃないのか?」

「そんなの知らないわ。そもそも、ミレイちゃんに手紙なんて送っていないし……ここに支店を出すという話も、初耳よ」

 『王都の方は考えているけど』と述べつつ、ジェシカはこちらの話をハッキリ否定した。

「なんだと?」

 前提条件が覆されたことに、私は思わず怪訝な表情を浮かべる。
だが、妙に納得している自分も居た。
よく考えてみれば、新参者で土地勘のないミレイに支店の相談などおかしいと思っていたため。

 つまり、カーラという女が犯人……少なくとも、その一味であることは間違いないな。

 手口の強引さや用意周到さから組織単位の犯行を疑い、私は眉を顰める。
『この店の従業員だから、油断してしまった』と思案する中、ジェシカが少し身を乗り出してきた。

「ねぇ、一体何があったの?」

 いまいち状況を掴めずに居るジェシカは、説明を求める。
なので先程起こった出来事を伝えると、彼女は苦々しい表情を浮かべた。

「カーラが裏切ったのね……こんなことなら、ミレイちゃんに気をつけるよう・・・・・・・言っておくべきだったわ」

「どういうことだ?」

 こうなることを事前に知っていたかのような言い回しに、私は違和感を覚える。
と同時に、ジェシカが下を向いた。

「実は最近、同業者から執拗に既製服の作り方を探られているの。鬱陶しいから早く何とかしたいんだけど、彼らのバックには貴族が居るらしくてね。思うように、いかないのよ。それで、一先ずミレイちゃんに火の粉が降り掛からないよう接触を避けていて……」

 『警告しに行くことすらままならなかった』と主張し、ジェシカは額に手を当てる。

「けど、カーラが裏切ったのならその対応は意味を成さないわ。だって、ミレイちゃんが既製服の件に噛んでいるのは従業員なら何となく分かっているでしょうから」
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