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第二章
進捗報告
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「じゃあ、僕達も席に着こう」
という兄の発言により、私達も近くの椅子に腰を下ろす。
これで全員着席した訳だが……一体、何が始まるのだろうか。
『やっぱり、アレ関係かな?』と首を傾げる中、父とアレン小公爵が互いに頷き合った。
かと思えば、おもむろに席を立つ。
「これは後ほどレーヴェン殿下にもお伝えするが」
そう前置きしてから、父はこちらを……いや、ルーシーさんを見た。
「聖女候補殿より承った、アイテムの収集及び四天王の討伐────全て完了した」
「急かす訳じゃないが、あとはお前達の分だけってことになる」
「「!!」」
想定より遥かに早い進捗具合に、私とルーシーさんは衝撃を受けた。
兄やリエート卿はもう既に知らされていたのか、あまり驚いた様子はない。
ただ、やはり表情は硬かった。
魔王との戦いがより現実味を帯びてきて、不安と緊張に苛まれているのかもしれない。
「出来ることなら手助けしてやりたいが、聖女候補殿の話を聞く限り静観するのが一番だと思われる」
「だから基本ノータッチを貫くが、何か力になれることがあれば言ってくれ」
「もちろん、遠慮はナシよ?私達は気を使われるより、頼られる方が嬉しいんだから」
朗らかに微笑む母は、『いつでも連絡してきなさい』と言い聞かせる。
ちゃんと頼れる存在が居るんだよ、と示すように。
人一倍責任感の強いメンバーが揃ってしまったため、子供達だけで抱え込まないか心配なのだろう。
気遣わしげな視線をこちらに向ける母の横で、アレン小公爵は再度席に着く。
「まあ、これで報告っつーか話は終わり。結界、もう解いてもいいぞ」
『ありがとな』と言って笑うアレン小公爵に、私は一つ頷いた。
パンッと手を叩いて結界を解除し、少しだけ肩の力を抜く。
────と、ここでルーシーさんが席を立った。
「お話、ありがとうございました。そろそろ時間ですので、お先に失礼します」
イベント開始時刻のことを気にしているのか、ルーシーさんは早々に踵を返す。
父達の進捗具合を聞いて焦ったのか、それとも単に気合いが入っているのか、彼女は足早に生徒会室を出ていった。
一応、まだ時間に余裕はあるというのに。
「なあ、今回の任務はルーシーに一任するんだったよな?」
パタンと閉まった扉を見つめ、リエート卿は頬杖をつく。
どこか心配そうな雰囲気を漂わせる彼に、私はそっと眉尻を下げた。
「はい。未来予知によると、ルーシーさん一人で任務をこなしていたようなので。下手に介入するのは、危険と判断しました。幸い、危害を加えられるような場面はないそうですし」
「じゃあ、俺達は本当に何も出来ないなぁ」
「そうですね……こうなったら、普通に学園祭を楽しむしかないと思います」
『ルーシーさんもそれを望んでいますし』と言うと、リエート卿は小さく頷いた。
歯痒い気持ちを押し殺すように軽く伸びをして、立ち上がる。
と同時に、目を剥いた。
「あっ……リディアの個人発表のやつ、もうすぐかも」
「「「!!」」」
ガバッと勢いよく掛け時計に視線を向け、私の家族は慌てて扉へ向かう。
それはもう鬼気迫る勢いで。
普段おっとりしている母さえも目を光らせ、素早く廊下に出た。
かと思えば、直ぐにどこかへ行ってしまう。
「あー……確か、個人発表のオークションは一年生の作品から順番に競売に掛けられるんだっけ?」
あっという間に居なくなってしまったグレンジャー公爵家の面々を前に、アレン小公爵は苦笑する。
その隣で、リエート卿も微妙な表情を浮かべた。
「夫人や公爵はまだ分かるけど、何でニクスまで焦ってんだよ。あいつ、既に同じものを持っているじゃん」
先日大量にプレゼントしたブレスレットを思い浮かべ、リエート卿はやれやれと頭を振った。
かと思えば、愉快げに目を細める。
「今回のオークションの最高値は、これで決まりだな」
「なんなら、俺達も便乗するか?」
まさかの悪ノリに転じたアレン小公爵に、私は思わず肩を震わせた。
だって、グレンジャー公爵家とクライン公爵家が競い合ったら、間違いなくとんでもない値段になるから。
『0が一つ多いどころの騒ぎじゃない……』と青ざめ、私は首を横に振る。
「本当にただのブレスレットなので、勘弁してください」
「ははっ。安心してくれ。冗談だ。俺の狙いはリエートの作品だけだからな」
『そのために温存しておかないと』と言い、アレン小公爵はキラリと目を光らせた。
獲物を狙う狩人のように真剣な彼に、リエート卿は小さく肩を竦める。
多分個人的にやめてほしいんだろうが、もう何を言っても無駄だと悟っているようだ。
『勝手にしてくれ』とでも言うように一つ息を吐き、リエート卿は頭の後ろに手を回す。
「んじゃ、俺達は適当にそこら辺ブラブラしようぜ」
「ただここで公爵達の帰りを待っているのも、退屈だもんな」
リエート卿の提案に理解を示し、アレン小公爵は『さあ、行こう』と促してくる。
その視線の先には、どう考えても私しかおらず……。
「えっ?あの、私もご一緒してよろしいんですか?せっかくの兄弟水入らずですのに」
『お邪魔では?』と心配する私に、リエート卿とアレン小公爵は顔を見合わせた。
かと思えば、プッと吹き出す。
「あんだけ家族ぐるみの付き合いをしておいて、今更そんなの気にすんなよ」
「それに弟とは、また明日にでも二人で回ればいいんだし」
『てか、四日間ずっと二人きりにされても困る』と冗談めかしに言い、アレン小公爵は目を細めた。
『気にしなくていい』と言葉や態度で表す彼を前に、リエート卿は長テーブルに寄り掛かる。
「大体、ここでリディアを放置したら間違いなくニクス達に怒られるって」
「ついでにウチの両親からも」
「リディアのこと、めちゃくちゃ気に入っているからなぁ」
しみじみとした様子で呟き、リエート卿はどこか遠い目をする。
『もはや、あれ自分の娘扱いだよ』と語りつつ、身を起こした。
と同時に、こちらへ手を差し伸べる。
「てことで、一緒に行こうぜ」
いつものように明るく笑って、リエート卿はエスコートを申し出た。
『楽しい思い出を作ろう』と述べる彼に促され、私は手を重ねる。
ここまで言ってもらって、断るのはさすがに失礼かと思い。
何より、私も彼らと過ごしたかった。
お兄様達が戻ってくるまでの間だけ、兄弟水入らずにお邪魔させてもらおう。
などと考えながら、私はリエート卿やアレン小公爵と共に生徒会室を後にした。
という兄の発言により、私達も近くの椅子に腰を下ろす。
これで全員着席した訳だが……一体、何が始まるのだろうか。
『やっぱり、アレ関係かな?』と首を傾げる中、父とアレン小公爵が互いに頷き合った。
かと思えば、おもむろに席を立つ。
「これは後ほどレーヴェン殿下にもお伝えするが」
そう前置きしてから、父はこちらを……いや、ルーシーさんを見た。
「聖女候補殿より承った、アイテムの収集及び四天王の討伐────全て完了した」
「急かす訳じゃないが、あとはお前達の分だけってことになる」
「「!!」」
想定より遥かに早い進捗具合に、私とルーシーさんは衝撃を受けた。
兄やリエート卿はもう既に知らされていたのか、あまり驚いた様子はない。
ただ、やはり表情は硬かった。
魔王との戦いがより現実味を帯びてきて、不安と緊張に苛まれているのかもしれない。
「出来ることなら手助けしてやりたいが、聖女候補殿の話を聞く限り静観するのが一番だと思われる」
「だから基本ノータッチを貫くが、何か力になれることがあれば言ってくれ」
「もちろん、遠慮はナシよ?私達は気を使われるより、頼られる方が嬉しいんだから」
朗らかに微笑む母は、『いつでも連絡してきなさい』と言い聞かせる。
ちゃんと頼れる存在が居るんだよ、と示すように。
人一倍責任感の強いメンバーが揃ってしまったため、子供達だけで抱え込まないか心配なのだろう。
気遣わしげな視線をこちらに向ける母の横で、アレン小公爵は再度席に着く。
「まあ、これで報告っつーか話は終わり。結界、もう解いてもいいぞ」
『ありがとな』と言って笑うアレン小公爵に、私は一つ頷いた。
パンッと手を叩いて結界を解除し、少しだけ肩の力を抜く。
────と、ここでルーシーさんが席を立った。
「お話、ありがとうございました。そろそろ時間ですので、お先に失礼します」
イベント開始時刻のことを気にしているのか、ルーシーさんは早々に踵を返す。
父達の進捗具合を聞いて焦ったのか、それとも単に気合いが入っているのか、彼女は足早に生徒会室を出ていった。
一応、まだ時間に余裕はあるというのに。
「なあ、今回の任務はルーシーに一任するんだったよな?」
パタンと閉まった扉を見つめ、リエート卿は頬杖をつく。
どこか心配そうな雰囲気を漂わせる彼に、私はそっと眉尻を下げた。
「はい。未来予知によると、ルーシーさん一人で任務をこなしていたようなので。下手に介入するのは、危険と判断しました。幸い、危害を加えられるような場面はないそうですし」
「じゃあ、俺達は本当に何も出来ないなぁ」
「そうですね……こうなったら、普通に学園祭を楽しむしかないと思います」
『ルーシーさんもそれを望んでいますし』と言うと、リエート卿は小さく頷いた。
歯痒い気持ちを押し殺すように軽く伸びをして、立ち上がる。
と同時に、目を剥いた。
「あっ……リディアの個人発表のやつ、もうすぐかも」
「「「!!」」」
ガバッと勢いよく掛け時計に視線を向け、私の家族は慌てて扉へ向かう。
それはもう鬼気迫る勢いで。
普段おっとりしている母さえも目を光らせ、素早く廊下に出た。
かと思えば、直ぐにどこかへ行ってしまう。
「あー……確か、個人発表のオークションは一年生の作品から順番に競売に掛けられるんだっけ?」
あっという間に居なくなってしまったグレンジャー公爵家の面々を前に、アレン小公爵は苦笑する。
その隣で、リエート卿も微妙な表情を浮かべた。
「夫人や公爵はまだ分かるけど、何でニクスまで焦ってんだよ。あいつ、既に同じものを持っているじゃん」
先日大量にプレゼントしたブレスレットを思い浮かべ、リエート卿はやれやれと頭を振った。
かと思えば、愉快げに目を細める。
「今回のオークションの最高値は、これで決まりだな」
「なんなら、俺達も便乗するか?」
まさかの悪ノリに転じたアレン小公爵に、私は思わず肩を震わせた。
だって、グレンジャー公爵家とクライン公爵家が競い合ったら、間違いなくとんでもない値段になるから。
『0が一つ多いどころの騒ぎじゃない……』と青ざめ、私は首を横に振る。
「本当にただのブレスレットなので、勘弁してください」
「ははっ。安心してくれ。冗談だ。俺の狙いはリエートの作品だけだからな」
『そのために温存しておかないと』と言い、アレン小公爵はキラリと目を光らせた。
獲物を狙う狩人のように真剣な彼に、リエート卿は小さく肩を竦める。
多分個人的にやめてほしいんだろうが、もう何を言っても無駄だと悟っているようだ。
『勝手にしてくれ』とでも言うように一つ息を吐き、リエート卿は頭の後ろに手を回す。
「んじゃ、俺達は適当にそこら辺ブラブラしようぜ」
「ただここで公爵達の帰りを待っているのも、退屈だもんな」
リエート卿の提案に理解を示し、アレン小公爵は『さあ、行こう』と促してくる。
その視線の先には、どう考えても私しかおらず……。
「えっ?あの、私もご一緒してよろしいんですか?せっかくの兄弟水入らずですのに」
『お邪魔では?』と心配する私に、リエート卿とアレン小公爵は顔を見合わせた。
かと思えば、プッと吹き出す。
「あんだけ家族ぐるみの付き合いをしておいて、今更そんなの気にすんなよ」
「それに弟とは、また明日にでも二人で回ればいいんだし」
『てか、四日間ずっと二人きりにされても困る』と冗談めかしに言い、アレン小公爵は目を細めた。
『気にしなくていい』と言葉や態度で表す彼を前に、リエート卿は長テーブルに寄り掛かる。
「大体、ここでリディアを放置したら間違いなくニクス達に怒られるって」
「ついでにウチの両親からも」
「リディアのこと、めちゃくちゃ気に入っているからなぁ」
しみじみとした様子で呟き、リエート卿はどこか遠い目をする。
『もはや、あれ自分の娘扱いだよ』と語りつつ、身を起こした。
と同時に、こちらへ手を差し伸べる。
「てことで、一緒に行こうぜ」
いつものように明るく笑って、リエート卿はエスコートを申し出た。
『楽しい思い出を作ろう』と述べる彼に促され、私は手を重ねる。
ここまで言ってもらって、断るのはさすがに失礼かと思い。
何より、私も彼らと過ごしたかった。
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