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第三章
戦勝パーティー
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「じゃあ、今回のエスコートは────リエート卿にお願いします」
────と、返事した一ヶ月後。
私はリエート卿より送られた黄色のドレスに身を包み、皇城へ足を運んだ。
既に多くの人々で溢れ返ったホールを前に、私はリエート卿と共に歩を進める。
太陽を象ったデザインの髪飾りを揺らしながら。
「ふぅ……緊張する」
各国の王族や貴族も参加しているパーティーだからか、リエート卿は小さく深呼吸した。
その際、タンザナイトで作った小さなピアスが光を反射して輝く。
また、黒に近い紫のタキシードが少し揺れた。
「こんなに豪勢なパーティーはなかなか、ありませんものね」
「いやいや、そっちじゃねぇーよ。俺が緊張しているのは、リディアをちゃんとエスコート出来るかどうかで……失敗したら、お前に恥を掻かせることになるし」
『それだけは絶対に避けないと』と使命感に燃え、リエート卿は気を引き締めた。
「せっかく俺を選んでもらったんだ、後悔のないようにしたい」
どことなく凛とした雰囲気を漂わせるリエート卿に、私はふわりと柔らかく微笑む。
「お気持ちは嬉しいですが、そんなに気負う必要はありませんわ。リエート卿がミスをした時は、パートナーの私がカバーしますから」
『何もかも全部一人で背負い込む必要はない』と主張し、繋いだ手をギュッと握り締めた。
「お互い助け合いながら、パーティーを楽しみましょう?せっかく、私達のために開いてくれたんですから」
『楽しまなきゃ損です』と述べる私に、リエート卿は僅かに目を剥き、ようやく表情を和らげる。
「そうだな」
ギュッと手を握り返し、リエート卿は肩の力を抜いた。
いつものペースを取り戻したのか、もうあまり緊張していない。
『それにしても、マジで人多いなぁ』と驚く彼を前に、私は目を細めた。
リラックス出来たようで、良かったわ。
などと思っていると、リエート卿が壁際に立つ金髪の男性を見てゲンナリする。
「ニクスのやつ、凄い形相で睨んでくるんだけど……ファーストダンスは譲ってやったんだから、ちょっとは機嫌直せよ」
デビュタントパーティーを彷彿とさせる役割分担について言及し、リエート卿は溜め息を零した。
『祝いの席で殺気立つなよ……』とボヤく彼を他所に、私も兄の方へ視線を向ける。
すると、兄は少しだけ表情を和らげた。
『すぐ攫いに行くからな』
と口の動きだけでこちらに伝え、兄はスッと目を細める。
────と、ここで衛兵の大声が鼓膜を揺らした。
反射的に後ろを振り返ると、観音開きの扉が開く様子を目にする。
「デスタン帝国の太陽ノクターン・ゼニス・デスタン皇帝陛下と、レーヴェン・ロット・デスタン皇太子殿下のご入場です!」
その言葉を合図に、ノクターン皇帝陛下とレーヴェン殿下は会場内へ足を踏み入れた。
サッとお辞儀する帝国貴族や会釈程度に頭を下げる他国の王族達を前に、二人は前へ進んでいく。
そして玉座に辿り着くと、おもむろに腰を下ろした。
「ご苦労。楽にしてくれて構わない」
片手を上げて私達の敬意に答えると、ノクターン皇帝陛下は手を組む。
「まずは戦勝パーティーに参加してくれたこと、心より感謝する。魔王討伐という記念すべき出来事を君達と祝えて、とても嬉しい。今夜は心行くまで楽しんでいってくれ」
『無礼講だ』と宣言し、ノクターン皇帝陛下はゆるりと口角を上げた。
かと思えば、スルリと顎を撫でる。
「さて────今回の主役である英雄達は、前へ出てきてほしい」
『君達の労をねぎらいたいんだ』と述べるノクターン皇帝陛下に促され、私達は玉座の前まで移動した。
無論、皇太子であるレーヴェン殿下も。
皆一様に跪き声掛かりを待つ中、ノクターン皇帝陛下は席を立った。
「見事魔王を討ち滅ぼした英雄達よ、どうか楽にしてほしい。私はただ、君達に礼を言いたいだけなのだ」
『そんなに畏まる必要はない』と言い、ノクターン皇帝陛下は顔を上げるよう促す。
言われるがまま楽な体勢を取る私達の前で、彼は玉座の前にある段差をゆっくり降りた。
「『光の乙女』の能力である未来予知で誰よりも早く危機を察知し動いてくれた、ルーシー嬢。優れた頭脳で策を練り皆のサポートに当たってくれた、我が息子レーヴェン・ロット・デスタン。強いリーダーシップと魔法の才能で勝利へ導いてくれた、ニクス・ネージュ・グレンジャー小公爵。卓越した剣術と腕力で皆を守ってくれた、リエート・ライオネル・クラウン令息。自分の持てる力の限りを尽くして勝利に大きく貢献してくれた、リディア・ルース・グレンジャー嬢」
紹介の意味も込めてわざわざ一人一人の名前を呼び、ノクターン皇帝陛下は私達の前までやってきた。
と同時に、少しばかり身を屈めた。
予定になかった行動に驚いていると、ノクターン皇帝陛下は私達の頭を優しく撫でる。
「本当によくやってくれた。君達の成し遂げた偉業は、永遠に語り継がれることだろう。今夜の催しはその第一歩だ」
『この伝説が色褪せることはない』と断言し、ノクターン皇帝陛下は大きく両手を広げた。
「我々デスタン帝国は歴史が続く限り、君達英雄に感謝し、その畏敬を示し続ける。これは未来永劫変わらない誓いであり、私ノクターン・ゼニス・デスタンの望みだ」
心の底から感謝していることを示し、ノクターン皇帝陛下は立つよう指示する。
────と、ここで乾杯用のワインや果実水が配られた。
グラスに入った液体を前に、ノクターン皇帝陛下は周囲を見回す。
誰もがパーティーの開始を心待ちにする中、彼は
「英雄達の切り開いてくれた未来が、平和が永遠に続くことを願って────乾杯!」
と、叫んだ。
グラスを高く持ち上げるノクターン皇帝陛下を前に、私達は『乾杯!』と復唱する。
その途端、会場内は一気に賑やかになり、音楽も始まった。
豪華絢爛と言うべきパーティーがスタートし、周囲の人々は笑みを零す。
「リエート様、リディア様。初めまして、私はウォール王国の第二王子です」
「魔王討伐、おめでとうございます。ところで、このあとお時間はありますでしょうか?」
「良ければ、一度我が国にお越しください。英雄様なら、いつでも大歓迎です」
早速声を掛けてきた王族や貴族に、私とリエート卿はすっかり取り囲まれてしまった。
────と、返事した一ヶ月後。
私はリエート卿より送られた黄色のドレスに身を包み、皇城へ足を運んだ。
既に多くの人々で溢れ返ったホールを前に、私はリエート卿と共に歩を進める。
太陽を象ったデザインの髪飾りを揺らしながら。
「ふぅ……緊張する」
各国の王族や貴族も参加しているパーティーだからか、リエート卿は小さく深呼吸した。
その際、タンザナイトで作った小さなピアスが光を反射して輝く。
また、黒に近い紫のタキシードが少し揺れた。
「こんなに豪勢なパーティーはなかなか、ありませんものね」
「いやいや、そっちじゃねぇーよ。俺が緊張しているのは、リディアをちゃんとエスコート出来るかどうかで……失敗したら、お前に恥を掻かせることになるし」
『それだけは絶対に避けないと』と使命感に燃え、リエート卿は気を引き締めた。
「せっかく俺を選んでもらったんだ、後悔のないようにしたい」
どことなく凛とした雰囲気を漂わせるリエート卿に、私はふわりと柔らかく微笑む。
「お気持ちは嬉しいですが、そんなに気負う必要はありませんわ。リエート卿がミスをした時は、パートナーの私がカバーしますから」
『何もかも全部一人で背負い込む必要はない』と主張し、繋いだ手をギュッと握り締めた。
「お互い助け合いながら、パーティーを楽しみましょう?せっかく、私達のために開いてくれたんですから」
『楽しまなきゃ損です』と述べる私に、リエート卿は僅かに目を剥き、ようやく表情を和らげる。
「そうだな」
ギュッと手を握り返し、リエート卿は肩の力を抜いた。
いつものペースを取り戻したのか、もうあまり緊張していない。
『それにしても、マジで人多いなぁ』と驚く彼を前に、私は目を細めた。
リラックス出来たようで、良かったわ。
などと思っていると、リエート卿が壁際に立つ金髪の男性を見てゲンナリする。
「ニクスのやつ、凄い形相で睨んでくるんだけど……ファーストダンスは譲ってやったんだから、ちょっとは機嫌直せよ」
デビュタントパーティーを彷彿とさせる役割分担について言及し、リエート卿は溜め息を零した。
『祝いの席で殺気立つなよ……』とボヤく彼を他所に、私も兄の方へ視線を向ける。
すると、兄は少しだけ表情を和らげた。
『すぐ攫いに行くからな』
と口の動きだけでこちらに伝え、兄はスッと目を細める。
────と、ここで衛兵の大声が鼓膜を揺らした。
反射的に後ろを振り返ると、観音開きの扉が開く様子を目にする。
「デスタン帝国の太陽ノクターン・ゼニス・デスタン皇帝陛下と、レーヴェン・ロット・デスタン皇太子殿下のご入場です!」
その言葉を合図に、ノクターン皇帝陛下とレーヴェン殿下は会場内へ足を踏み入れた。
サッとお辞儀する帝国貴族や会釈程度に頭を下げる他国の王族達を前に、二人は前へ進んでいく。
そして玉座に辿り着くと、おもむろに腰を下ろした。
「ご苦労。楽にしてくれて構わない」
片手を上げて私達の敬意に答えると、ノクターン皇帝陛下は手を組む。
「まずは戦勝パーティーに参加してくれたこと、心より感謝する。魔王討伐という記念すべき出来事を君達と祝えて、とても嬉しい。今夜は心行くまで楽しんでいってくれ」
『無礼講だ』と宣言し、ノクターン皇帝陛下はゆるりと口角を上げた。
かと思えば、スルリと顎を撫でる。
「さて────今回の主役である英雄達は、前へ出てきてほしい」
『君達の労をねぎらいたいんだ』と述べるノクターン皇帝陛下に促され、私達は玉座の前まで移動した。
無論、皇太子であるレーヴェン殿下も。
皆一様に跪き声掛かりを待つ中、ノクターン皇帝陛下は席を立った。
「見事魔王を討ち滅ぼした英雄達よ、どうか楽にしてほしい。私はただ、君達に礼を言いたいだけなのだ」
『そんなに畏まる必要はない』と言い、ノクターン皇帝陛下は顔を上げるよう促す。
言われるがまま楽な体勢を取る私達の前で、彼は玉座の前にある段差をゆっくり降りた。
「『光の乙女』の能力である未来予知で誰よりも早く危機を察知し動いてくれた、ルーシー嬢。優れた頭脳で策を練り皆のサポートに当たってくれた、我が息子レーヴェン・ロット・デスタン。強いリーダーシップと魔法の才能で勝利へ導いてくれた、ニクス・ネージュ・グレンジャー小公爵。卓越した剣術と腕力で皆を守ってくれた、リエート・ライオネル・クラウン令息。自分の持てる力の限りを尽くして勝利に大きく貢献してくれた、リディア・ルース・グレンジャー嬢」
紹介の意味も込めてわざわざ一人一人の名前を呼び、ノクターン皇帝陛下は私達の前までやってきた。
と同時に、少しばかり身を屈めた。
予定になかった行動に驚いていると、ノクターン皇帝陛下は私達の頭を優しく撫でる。
「本当によくやってくれた。君達の成し遂げた偉業は、永遠に語り継がれることだろう。今夜の催しはその第一歩だ」
『この伝説が色褪せることはない』と断言し、ノクターン皇帝陛下は大きく両手を広げた。
「我々デスタン帝国は歴史が続く限り、君達英雄に感謝し、その畏敬を示し続ける。これは未来永劫変わらない誓いであり、私ノクターン・ゼニス・デスタンの望みだ」
心の底から感謝していることを示し、ノクターン皇帝陛下は立つよう指示する。
────と、ここで乾杯用のワインや果実水が配られた。
グラスに入った液体を前に、ノクターン皇帝陛下は周囲を見回す。
誰もがパーティーの開始を心待ちにする中、彼は
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と、叫んだ。
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その途端、会場内は一気に賑やかになり、音楽も始まった。
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「リエート様、リディア様。初めまして、私はウォール王国の第二王子です」
「魔王討伐、おめでとうございます。ところで、このあとお時間はありますでしょうか?」
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