幻想機動天使 ヴェンデッタ・ゼロ〜Vendetta:Zero-If my wish could come true〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
83 / 237
其は天命の刻、誰が為の決意

改めて

しおりを挟む
「…………ん……んん……」

 ブランはなんだかヤキモキしている。もどかしそうに顔を歪めて、今のウルプスさんの話について考えているようだ。

「ブラン少年よ、苦悩し迷う君に、とっておきの呪文を教えてやろう。

 謝るんだ。自分の過去の過ちを認めて、謝ることこそ、理解につながる一歩だ。謝って、互いの事情を聞いて、そして納得できるところで『いいよ』と許せばいい。そんな簡単なことで、人間は分かり合えるはずなんだ」

 でも、そんな簡単には行かない。簡単に謝ることができたのなら、簡単に納得することができたのなら、今こうはなっていない、と。

 それでもウルプスさんは、せめて身近な課題からでもいいから、そこからでも『分かりあうこと』を始めようと言っているんだ。

 ———理解し、分かりあうこと……か。


「……ご……すまん……色々と…………魔族だからって、色々言ったのは……悪かった」

 まさか。本当にブランが、ヤンスに対して頭を下げるなんて……!
 みんなの視線は釘付けだ。そのように変わったブランを見て、まるで見直したような目線で皆はブランを見つめていた。

「お……んふ、分かったならいいでヤンスよ、どーせそこまで気に留めてもいないでヤンスから」




「そうだ、それで……そんな子供くさい方法でだって、人間は分かり合える。それを、いつまでも忘れないでくれ。

 ……最も、今反乱を起こしているヤツらには、そんなこと言っても聞かないだろうが」






 今の一連の話を聞いていて、僕は僕自身を肯定されたような気がした。

『人を殺さずに戦闘を終える』、そんなことだけでも、分かり合える一歩には繋がるはずだ、と。

 僕たちが本当に立ち向かわなくちゃいけない敵は、同じ人間じゃない。本当の敵は神なんだ、人間の力じゃ到底及ばない存在なんだ。

 だからこそ、こんなところで殺し合いなんてしてる場合じゃない。みんなが分かり合えば、それでいいはずなのだから。


 だからこそ僕は、これからも不殺を徹底する。たとえそれでどんな結末になったとしても、僕は受け入れるだから。


◆◆◆◆◆◆◆◆


「では、再度改めての現状の確認だ。ヤンス、気が済んだのならば報告を頼む」

「……まず、この空間の外は、西大陸のどこかの森だったでヤンス。どこか湿っぽくて……おそらく、南部の沼地じゃないかと思うでヤンス。

 周りにサイドツーと思しきニオイはなし……だったでヤンスが、ちょっとばかり時間が経ったので今はどうなってるか分かんないでヤンス」

「……そうか、ご苦労だった。……南部と来れば都合がいい、目的地までかなりのショートカットになった。……20分後に出発だ、私のように……排泄などに時間を要するのであれば、早めに終わらせるが良い。以上だ」


 ……まあ、とりあえず。これからも僕は戦わなくちゃいけないのは確かだ。……この、ヴェンデッタに乗って。

 人界王を送り届ける……ただそれだけでいいんだ、だけども……僕は心配なんだ、色々と。

 前教官もだし、離れ離れになっちゃった隊長もそうだけど……何より、アイツの———リコのことが。

 姿が見えないから……なのもあるけど、アイツは不審な言動を何回も繰り返していた。……もしかしたら……信じたくはないんだけれども、僕の敵に回ってしまってるかもしれない。だから———、


 ……いや、でも……そんなに気にかけることなのか?

 そもそもなんで僕は、あんなヤツのためにここまで考えてるんだ。……本当に、どうでもいいはずだろ。

 たとえ、もしアイツが既に死んでいたとしても。僕には何も関係のない話じゃないか。……なんで僕は、そんなに……


「何を思い詰めた顔をしておる」

 ん……あれ?
しおりを挟む
感想 239

あなたにおすすめの小説

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

処理中です...