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Side-1:希望と贖いの旅々(後)
俺と友達になってくれ
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◆◇◆◇◆◇◆◇
『気にするな』
「気にするな……って、言われたってぇ……」
自分は大量殺戮者なんだ。どこまでいったって、同じ人殺しなんだと。
そんな幻想が、つたのように足に絡みついたまま。
「でも、今はこうするしか……ないよな」
選択肢は無限にあるようで、実のところはたった1つしかなかった。
……また、お世話になるのか。他人に。
いつ僕は、この借りをみんなに返せるのだろうか。
「おじゃま……します」
なんてことはない。そのガスの家は、王都にありがちな、1階建ての石造りの家だった。
「よぉ~、来たか! もうご飯はできてるぞ!」
『あら、こんにちは……えと、初めまして、フォルスと申します!』
テーブルの横にある椅子でくつろいでいたガスと、その横にいたジェールズ。……が、僕の目がひっついたのはそこじゃなかった。
僕が本当に驚いたこと、それは知らない女性までここに住んでる———なんてことじゃなく、その女性———フォルスさんが、浮いていたことにあった。
別に、フォルスさん自体は何の変哲もないと言っていい。ピンクのエプロンを身につけた、ポニーテールに髪を結んだお姉さん。……が、その足元を見た時、僕はあまりの異常さに口を開いた。
「浮いて……る、と言うか、足が……あ、あああ、足が……ない………っ?!」
そう、その人の足はなかった。
どう言うわけでそうなったのかは、聞く前に教えてくれた。
「ああ、フォルスの足の話な。……前にあっただろ?……その———ヘヴンズバースト?……だっけ?……んで、そのヘヴンズバーストの際に……フォルスは下半身を無くしたんだ。
正確に言えば、下半身部分を塩に変えられた。塩の柱の侵食だ。……フォルスにもそれは訪れたんだが、コイツは幸いスライムだったもんで、侵食された一部を切り離したんだ。
そして残ったのが、コイツの上半身。下半身に呼応するように生殖機能とかその他諸々も失われたさ。コイツはスライムだが、比較的他のスライムより人間に寄せて生活してるから、その辺の損害が大きくはあった」
ここ、でも、か。
ここでも、僕は———僕のしてしまったことは、影響を及ぼしていたのか。
「……あの、すいません。……ヘヴンズバーストを起こした人って———知ってますか?」
恐る恐る聞いてみたが、やはり答えは想像していた通りだった。
「知ってるさ。ケイ・チェインズってヤツだろ?……まあ、こんなところに住んでてもそれくらいは周知の事実さ。……このジェールズは、そう言うのには疎いけどな」
「兄貴ぃ、流石に俺だってそんぐらい知ってますよ……」
「———じゃあ、そのケイって人……が、どんな人かって……知ってますか」
「どんなヤツか?……最低最悪のクソ野郎———」
「……っ!」
「———って言われてるけど、実際に俺は見たことないからなんとも言えない。そもそもソイツの素性すら、俺たちは知らないんだ。
男か、女か。人間か、魔族か、子供か、大人か。何も知らないから、俺たちには恨みをぶつける権利なんてハナっから存在しないんだよ。……そうだろ、フォルス?」
『……そう。本当の姿を知ってからじゃないと、私たちは非難することを許されない。……というか、何も知らずにただ恨みをぶつけるだけって……ソレは私も、酷いと思うから……』
「———なら、そのケイって人が僕だとしたら……どうしますか。
フォルスさんの下半身がなくなった恨みを、僕にぶつけますか」
「……お前がそう言うんだったら、多分お前がそのケイ・チェインズってヤツなんだろうがなってことは、俺には分かるさ…………
ただ、お前がケイだとするならな~……お前、別に悪いヤツじゃないだろ」
「ソレを本人に聞いてどうするんですか兄貴ぃ……!」
「悪い人間……です。大勢の人を塩の柱に変えて、最終的にはあのサイドツーに乗ってた人界軍の人だって———殺しましたから」
「んーまあ、仕方ねえわな…………よし!」
何か覚悟を決めたように目を見開いたガスさんは、こちらに詰め寄り、そして言い放った。
「俺と友達になってくれ!」
『気にするな』
「気にするな……って、言われたってぇ……」
自分は大量殺戮者なんだ。どこまでいったって、同じ人殺しなんだと。
そんな幻想が、つたのように足に絡みついたまま。
「でも、今はこうするしか……ないよな」
選択肢は無限にあるようで、実のところはたった1つしかなかった。
……また、お世話になるのか。他人に。
いつ僕は、この借りをみんなに返せるのだろうか。
「おじゃま……します」
なんてことはない。そのガスの家は、王都にありがちな、1階建ての石造りの家だった。
「よぉ~、来たか! もうご飯はできてるぞ!」
『あら、こんにちは……えと、初めまして、フォルスと申します!』
テーブルの横にある椅子でくつろいでいたガスと、その横にいたジェールズ。……が、僕の目がひっついたのはそこじゃなかった。
僕が本当に驚いたこと、それは知らない女性までここに住んでる———なんてことじゃなく、その女性———フォルスさんが、浮いていたことにあった。
別に、フォルスさん自体は何の変哲もないと言っていい。ピンクのエプロンを身につけた、ポニーテールに髪を結んだお姉さん。……が、その足元を見た時、僕はあまりの異常さに口を開いた。
「浮いて……る、と言うか、足が……あ、あああ、足が……ない………っ?!」
そう、その人の足はなかった。
どう言うわけでそうなったのかは、聞く前に教えてくれた。
「ああ、フォルスの足の話な。……前にあっただろ?……その———ヘヴンズバースト?……だっけ?……んで、そのヘヴンズバーストの際に……フォルスは下半身を無くしたんだ。
正確に言えば、下半身部分を塩に変えられた。塩の柱の侵食だ。……フォルスにもそれは訪れたんだが、コイツは幸いスライムだったもんで、侵食された一部を切り離したんだ。
そして残ったのが、コイツの上半身。下半身に呼応するように生殖機能とかその他諸々も失われたさ。コイツはスライムだが、比較的他のスライムより人間に寄せて生活してるから、その辺の損害が大きくはあった」
ここ、でも、か。
ここでも、僕は———僕のしてしまったことは、影響を及ぼしていたのか。
「……あの、すいません。……ヘヴンズバーストを起こした人って———知ってますか?」
恐る恐る聞いてみたが、やはり答えは想像していた通りだった。
「知ってるさ。ケイ・チェインズってヤツだろ?……まあ、こんなところに住んでてもそれくらいは周知の事実さ。……このジェールズは、そう言うのには疎いけどな」
「兄貴ぃ、流石に俺だってそんぐらい知ってますよ……」
「———じゃあ、そのケイって人……が、どんな人かって……知ってますか」
「どんなヤツか?……最低最悪のクソ野郎———」
「……っ!」
「———って言われてるけど、実際に俺は見たことないからなんとも言えない。そもそもソイツの素性すら、俺たちは知らないんだ。
男か、女か。人間か、魔族か、子供か、大人か。何も知らないから、俺たちには恨みをぶつける権利なんてハナっから存在しないんだよ。……そうだろ、フォルス?」
『……そう。本当の姿を知ってからじゃないと、私たちは非難することを許されない。……というか、何も知らずにただ恨みをぶつけるだけって……ソレは私も、酷いと思うから……』
「———なら、そのケイって人が僕だとしたら……どうしますか。
フォルスさんの下半身がなくなった恨みを、僕にぶつけますか」
「……お前がそう言うんだったら、多分お前がそのケイ・チェインズってヤツなんだろうがなってことは、俺には分かるさ…………
ただ、お前がケイだとするならな~……お前、別に悪いヤツじゃないだろ」
「ソレを本人に聞いてどうするんですか兄貴ぃ……!」
「悪い人間……です。大勢の人を塩の柱に変えて、最終的にはあのサイドツーに乗ってた人界軍の人だって———殺しましたから」
「んーまあ、仕方ねえわな…………よし!」
何か覚悟を決めたように目を見開いたガスさんは、こちらに詰め寄り、そして言い放った。
「俺と友達になってくれ!」
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