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Side-1:希望と贖いの旅々(後)
殺してみせたことさえ、ないくせに
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「友……達……?」
「あぁそうだ、友達だ友達! お前友達いなさそうだろ?」
「うっ……そう言われると、マトモに友達してくれたのって……アイツぐらいしかいない……!」
「だろ?」
そう言われるとなんかちょっと腹立つ……!
「まあ、友達ってんなら……もう一度改めて自己紹介しとかないとな!
俺の名前はガス! ここらで……なんか色々やってる! そう、依頼とかサイドツーの修理とかギルドのボランティアとか、色々だな!
そしてコイツがジェールズ! いっつも俺に着いてきてくれる大親友なんだぜ~っ!」
「どうも、何かと影が薄いと言われがちなジェールズです、よろしくぅ」
「あっはは、よろしく……お願いしますね……」
……なんか、楽しそうだな、ガスさん。
きっと毎日を楽しんで生きてるんだ。……こんな退屈そうな場所なのに、当の本人は一切退屈そうな顔を見せないんだから。
「そしてアイツがな~……っ!」
ガスが向いた方向は、先程『フォルス』と呼ばれていた人(?)の方だった。そこまで溜めて言うような事実でもあるのだろうか。
「アイツが……アイツが……俺の彼女のフォルスだ! まあさっきも言った通り本物の姿はスライムだが、フツーに人間として接して大丈夫だからな!」
『はい!……元気な女の子、フォルスです!』
「元気……って、足ないんですけど……」
どうせそんなこと気にせず話を進めるんだろうな、と呆れながら。
「で、俺たちのことよく分かったか?」
「分かったか……と言われると、まあまあ…………ですけど」
「ならもう一回自己紹介する必要があるな! 俺の名は……」
「ああっもういいですっ!」
◆◆◆◆◆◆◆◆
「……で、どうしようか?」
「どうしよう……?」
「いや、友達になるためにお前とやること。何をやれば、俺はお前と友達になれるのか、俺はそれを全脳内回路を用いて演算している」
「そ、そうですか……?」
友達になるために……やるべきこと、か。
ガスさんはガスさんなりに真面目に考えてるんだな、言い回しがちょっと意味不明だけど。
「……そもそも、僕なんかがそんなのになっても……いいんですか?」
「というと?」
「その……フォルスさんの……足、だって……僕が奪って……僕がヘヴンズバーストを起こしたから……だから」
空気が沈む。そんなことは分かっていた。
分かっていたけど、自分はそんなに恵まれてもいい人間なんかじゃないって———罪を背負って、沈むべき人間なんだって、信じてしまったから。
「……僕があの村で依頼を受けていたのは、贖罪のためなんです。……人を殺した、その贖いを———他者を救うことで、行いたかった……
でも、その末に僕は———結局また、殺したんです。だから、もう自分にはそんな価値なんて……ないんです」
「気にするな———」
「気にしますよっ!……僕は、僕は幸せになっていい人間なんかじゃないんだ、一生あの村で償いをする方がいいんだ、殺してしまった人の分だけ———っ!」
自分の胸の内を。その想いをつらつらと述べ始めた瞬間、ガスさんは僕のことを床に押さえつける。
「………………友達にならないとか、そういうのは……この際どうだっていいんだ。……だけどな、死んだやつにいつまでも囚われるな!…………死んだやつにずっと囚われてても……いいことなんか1つもないからな!」
そう言い残すと、ガスさんは『分かったか』と言わんばかりにムスッとして、隣の部屋へと移っていった。
———でも、僕は言ってしまったんだ。次の瞬間に、その言葉は自然と口から出てしまった。
「はっ………………っ、人を———人を、殺したことさえ、ないくせに! そんな経験がないから、いつまでも……余裕でいられるんだよ……っ!」
不機嫌そうに早々と足を進めるガスさんの動きが、ほんの一瞬だけ止まったのが分かって。
そして、そのまま時は進んでしまった。
———これ以上ないまでに、愚かな僕を置いて。
「あぁそうだ、友達だ友達! お前友達いなさそうだろ?」
「うっ……そう言われると、マトモに友達してくれたのって……アイツぐらいしかいない……!」
「だろ?」
そう言われるとなんかちょっと腹立つ……!
「まあ、友達ってんなら……もう一度改めて自己紹介しとかないとな!
俺の名前はガス! ここらで……なんか色々やってる! そう、依頼とかサイドツーの修理とかギルドのボランティアとか、色々だな!
そしてコイツがジェールズ! いっつも俺に着いてきてくれる大親友なんだぜ~っ!」
「どうも、何かと影が薄いと言われがちなジェールズです、よろしくぅ」
「あっはは、よろしく……お願いしますね……」
……なんか、楽しそうだな、ガスさん。
きっと毎日を楽しんで生きてるんだ。……こんな退屈そうな場所なのに、当の本人は一切退屈そうな顔を見せないんだから。
「そしてアイツがな~……っ!」
ガスが向いた方向は、先程『フォルス』と呼ばれていた人(?)の方だった。そこまで溜めて言うような事実でもあるのだろうか。
「アイツが……アイツが……俺の彼女のフォルスだ! まあさっきも言った通り本物の姿はスライムだが、フツーに人間として接して大丈夫だからな!」
『はい!……元気な女の子、フォルスです!』
「元気……って、足ないんですけど……」
どうせそんなこと気にせず話を進めるんだろうな、と呆れながら。
「で、俺たちのことよく分かったか?」
「分かったか……と言われると、まあまあ…………ですけど」
「ならもう一回自己紹介する必要があるな! 俺の名は……」
「ああっもういいですっ!」
◆◆◆◆◆◆◆◆
「……で、どうしようか?」
「どうしよう……?」
「いや、友達になるためにお前とやること。何をやれば、俺はお前と友達になれるのか、俺はそれを全脳内回路を用いて演算している」
「そ、そうですか……?」
友達になるために……やるべきこと、か。
ガスさんはガスさんなりに真面目に考えてるんだな、言い回しがちょっと意味不明だけど。
「……そもそも、僕なんかがそんなのになっても……いいんですか?」
「というと?」
「その……フォルスさんの……足、だって……僕が奪って……僕がヘヴンズバーストを起こしたから……だから」
空気が沈む。そんなことは分かっていた。
分かっていたけど、自分はそんなに恵まれてもいい人間なんかじゃないって———罪を背負って、沈むべき人間なんだって、信じてしまったから。
「……僕があの村で依頼を受けていたのは、贖罪のためなんです。……人を殺した、その贖いを———他者を救うことで、行いたかった……
でも、その末に僕は———結局また、殺したんです。だから、もう自分にはそんな価値なんて……ないんです」
「気にするな———」
「気にしますよっ!……僕は、僕は幸せになっていい人間なんかじゃないんだ、一生あの村で償いをする方がいいんだ、殺してしまった人の分だけ———っ!」
自分の胸の内を。その想いをつらつらと述べ始めた瞬間、ガスさんは僕のことを床に押さえつける。
「………………友達にならないとか、そういうのは……この際どうだっていいんだ。……だけどな、死んだやつにいつまでも囚われるな!…………死んだやつにずっと囚われてても……いいことなんか1つもないからな!」
そう言い残すと、ガスさんは『分かったか』と言わんばかりにムスッとして、隣の部屋へと移っていった。
———でも、僕は言ってしまったんだ。次の瞬間に、その言葉は自然と口から出てしまった。
「はっ………………っ、人を———人を、殺したことさえ、ないくせに! そんな経験がないから、いつまでも……余裕でいられるんだよ……っ!」
不機嫌そうに早々と足を進めるガスさんの動きが、ほんの一瞬だけ止まったのが分かって。
そして、そのまま時は進んでしまった。
———これ以上ないまでに、愚かな僕を置いて。
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