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Side-2:最悪の敵
史上最悪の鬼ごっこ
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◆◇◆◇◆◇◆◇
「…………あれ?」
ハイパーゾーン……内に入ったものと思っていたのだが、なぜか意識も体も保たれている。
一度———還元作戦の際、私もハイパーゾーンに入ったことがあるから分かるけれど、本当ならばここは『意識』のみが集まる場所、すなわち実体のない場所だと思っていた。
……なのに、これは。
「ヴェンデッタ・シン……っ!」
ハイパーゾーン、とは呼べぬものであった。
不自然に浮き、不自然に整った雲の完全球体。
———が、それは本当に雲の球体だった。
一面見渡す限りの暗雲で、その空間の中央にヴェンデッタが浮いている。まるで、外の全てを拒絶しているようだった。
「———ケイ、聞こえる?
話してほしいのよ、ケイの全て。何があったのか、どうしてこうなったのか、全て」
『…………消えろって、言っただろ……!』
…………きた!
「だから、そうなった理由を知りたいって言ってるじゃんっ!」
ヴェンデッタを発進させ、ヴェンデッタ・シンに向けて激突させる。
『…………っ!』
「コレ、クーデターの時に先にやったのはそっちでしょ!」
『……だからって、強引すぎるぞ!』
「軍の機体強奪して脱走して、旅にまで出たケイがそれ言えないからねっ!」
『ああ言えばこう言う……!』
「もちろん! ケイが話してくれるまで、いつまでだって話してやるんだからっ!」
『もういいだろ!……僕は———僕は、復讐をしてやるって決めたんだ!』
「よくないよっ! だってケイには、そんなの似合わないからっ!」
『うっとお……しいっ!』
「うわあっ?!」
ヴェンデッタ・シンより蹴りを入れられ、機体は後方に押しやられる。
『それ以上近付くな、それ以上話すな!……撃つぞ、君相手だって、撃ってやるからな……!』
「何言ってんのよ!……ケイが銃を向けるべき相手は私たちなんかじゃない、もっと他にいるでしょ!」
『…………いいや、僕にとっては全てが敵だ。オリュンポスだろうが、人界軍だろうが、全部全部、僕の復讐の対象だ!
あの子を理解しようともせず、守ろうともするどころか殺した人界軍も! あの子に普通の幸せを与えなかった、オリュンポスも!
全部全部殺すって、言っただろおっ!』
「また『あの子』の話ばっかり! ケイの彼女は私でしょ! ずっと浮気の話ばっか!」
『………………浮気じゃ、ないって、何度言えば———!』
「トゥルース、なんでしょ?」
絶句したかの如き、間。
どうやら図星だったらしい———と言うか、それ自体は読めていた。
なんたって、ケイが言ったんだから。『今の自分は、ケイとトゥルースの融合体』……とかって。
だから、名前的にも———そしてケイとトゥルースの話を聞いていても、明らかに何かあるんじゃないかって1人で勘繰ってた。
……まあ、当のトゥルース……さんが女だったのは、ちょっといけすかなかったけど。
『……は———はは、分かっている、じゃんか……』
「なら教えてよ、私にも! そろそろ何か教えてくれたっていいじゃんよ!」
『ダメと言ったらダメなんだよ!』
ヴェンデッタ・シンが、スラスターを吹かして距離を取り始める。……何をされるか分からない。
「それでもっ!……教えてくれるまで、ずっとずーっと着いていくからねっ!
恨むなら前の自分を恨んでよ、私をこんな風に救ってくれた、前の自分をっ!」
『…………っく……来るな、関係ないだろ、お前はっ!』
こっちもたまらずヴェンデッタ・シンを追う———が、あっちはすかさず距離を取り始める。
……鬼ごっこってなら、何度でも……!
「待てーーーーーっ!!!!」
『だから来るなって、言ってるだろっ!!!!』
「着いていくって、私も言った!!!!」
『面倒くさい……っ!』
ヴェンデッタ2機は、あまりにも激しい機動を繰り広げる。
幾度となく揺れる視界の最中においても、論争もどきは終わりを知らなかった。
「ええ! うん、そう! 私ったらめんどくさい人間なのっ!……なんで今の今まで気付かなかったの!」
『…………気付いてた……気付いてたさ……!』
「…………あれ?」
ハイパーゾーン……内に入ったものと思っていたのだが、なぜか意識も体も保たれている。
一度———還元作戦の際、私もハイパーゾーンに入ったことがあるから分かるけれど、本当ならばここは『意識』のみが集まる場所、すなわち実体のない場所だと思っていた。
……なのに、これは。
「ヴェンデッタ・シン……っ!」
ハイパーゾーン、とは呼べぬものであった。
不自然に浮き、不自然に整った雲の完全球体。
———が、それは本当に雲の球体だった。
一面見渡す限りの暗雲で、その空間の中央にヴェンデッタが浮いている。まるで、外の全てを拒絶しているようだった。
「———ケイ、聞こえる?
話してほしいのよ、ケイの全て。何があったのか、どうしてこうなったのか、全て」
『…………消えろって、言っただろ……!』
…………きた!
「だから、そうなった理由を知りたいって言ってるじゃんっ!」
ヴェンデッタを発進させ、ヴェンデッタ・シンに向けて激突させる。
『…………っ!』
「コレ、クーデターの時に先にやったのはそっちでしょ!」
『……だからって、強引すぎるぞ!』
「軍の機体強奪して脱走して、旅にまで出たケイがそれ言えないからねっ!」
『ああ言えばこう言う……!』
「もちろん! ケイが話してくれるまで、いつまでだって話してやるんだからっ!」
『もういいだろ!……僕は———僕は、復讐をしてやるって決めたんだ!』
「よくないよっ! だってケイには、そんなの似合わないからっ!」
『うっとお……しいっ!』
「うわあっ?!」
ヴェンデッタ・シンより蹴りを入れられ、機体は後方に押しやられる。
『それ以上近付くな、それ以上話すな!……撃つぞ、君相手だって、撃ってやるからな……!』
「何言ってんのよ!……ケイが銃を向けるべき相手は私たちなんかじゃない、もっと他にいるでしょ!」
『…………いいや、僕にとっては全てが敵だ。オリュンポスだろうが、人界軍だろうが、全部全部、僕の復讐の対象だ!
あの子を理解しようともせず、守ろうともするどころか殺した人界軍も! あの子に普通の幸せを与えなかった、オリュンポスも!
全部全部殺すって、言っただろおっ!』
「また『あの子』の話ばっかり! ケイの彼女は私でしょ! ずっと浮気の話ばっか!」
『………………浮気じゃ、ないって、何度言えば———!』
「トゥルース、なんでしょ?」
絶句したかの如き、間。
どうやら図星だったらしい———と言うか、それ自体は読めていた。
なんたって、ケイが言ったんだから。『今の自分は、ケイとトゥルースの融合体』……とかって。
だから、名前的にも———そしてケイとトゥルースの話を聞いていても、明らかに何かあるんじゃないかって1人で勘繰ってた。
……まあ、当のトゥルース……さんが女だったのは、ちょっといけすかなかったけど。
『……は———はは、分かっている、じゃんか……』
「なら教えてよ、私にも! そろそろ何か教えてくれたっていいじゃんよ!」
『ダメと言ったらダメなんだよ!』
ヴェンデッタ・シンが、スラスターを吹かして距離を取り始める。……何をされるか分からない。
「それでもっ!……教えてくれるまで、ずっとずーっと着いていくからねっ!
恨むなら前の自分を恨んでよ、私をこんな風に救ってくれた、前の自分をっ!」
『…………っく……来るな、関係ないだろ、お前はっ!』
こっちもたまらずヴェンデッタ・シンを追う———が、あっちはすかさず距離を取り始める。
……鬼ごっこってなら、何度でも……!
「待てーーーーーっ!!!!」
『だから来るなって、言ってるだろっ!!!!』
「着いていくって、私も言った!!!!」
『面倒くさい……っ!』
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幾度となく揺れる視界の最中においても、論争もどきは終わりを知らなかった。
「ええ! うん、そう! 私ったらめんどくさい人間なのっ!……なんで今の今まで気付かなかったの!」
『…………気付いてた……気付いてたさ……!』
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