幻想機動天使 ヴェンデッタ・ゼロ〜Vendetta:Zero-If my wish could come true〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
229 / 237
Side-2:最悪の敵

史上最悪の鬼ごっこ

しおりを挟む
◆◇◆◇◆◇◆◇


「…………あれ?」

 ハイパーゾーン……内に入ったものと思っていたのだが、なぜか意識も体も保たれている。

 一度———還元作戦の際、私もハイパーゾーンに入ったことがあるから分かるけれど、本当ならばここは『意識』のみが集まる場所、すなわち実体のない場所だと思っていた。


 ……なのに、これは。


「ヴェンデッタ・シン……っ!」

 ハイパーゾーン、とは呼べぬものであった。
 不自然に浮き、不自然に整った雲の完全球体。
 ———が、それは本当に雲の球体だった。


 一面見渡す限りの暗雲で、その空間の中央にヴェンデッタが浮いている。まるで、外の全てを拒絶しているようだった。



「———ケイ、聞こえる?


 話してほしいのよ、ケイの全て。何があったのか、どうしてこうなったのか、全て」

『…………消えろって、言っただろ……!』

 …………きた!


「だから、そうなった理由を知りたいって言ってるじゃんっ!」

 ヴェンデッタを発進させ、ヴェンデッタ・シンに向けて激突させる。

『…………っ!』
「コレ、クーデターの時に先にやったのはそっちでしょ!」

『……だからって、強引すぎるぞ!』

「軍の機体強奪して脱走して、旅にまで出たケイがそれ言えないからねっ!」

『ああ言えばこう言う……!』
「もちろん! ケイが話してくれるまで、いつまでだって話してやるんだからっ!」

『もういいだろ!……僕は———僕は、復讐をしてやるって決めたんだ!』

「よくないよっ! だってケイには、そんなの似合わないからっ!」

『うっとお……しいっ!』
「うわあっ?!」


 ヴェンデッタ・シンより蹴りを入れられ、機体は後方に押しやられる。


『それ以上近付くな、それ以上話すな!……撃つぞ、君相手だって、撃ってやるからな……!』

「何言ってんのよ!……ケイが銃を向けるべき相手は私たちなんかじゃない、もっと他にいるでしょ!」

『…………いいや、僕にとっては全てが敵だ。オリュンポスだろうが、人界軍だろうが、全部全部、僕の復讐の対象だ!

 あの子を理解しようともせず、守ろうともするどころか殺した人界軍も! あの子に普通の幸せを与えなかった、オリュンポスも!

 全部全部殺すって、言っただろおっ!』

「また『あの子』の話ばっかり! ケイの彼女は私でしょ! ずっと浮気の話ばっか!」

『………………浮気じゃ、ないって、何度言えば———!』





「トゥルース、なんでしょ?」



 絶句したかの如き、間。
 どうやら図星だったらしい———と言うか、それ自体は読めていた。

 なんたって、ケイが言ったんだから。『今の自分は、ケイとの融合体』……とかって。

 だから、名前的にも———そしてケイとトゥルースの話を聞いていても、明らかに何かあるんじゃないかって1人で勘繰ってた。

 ……まあ、当のトゥルース……さんが女だったのは、ちょっといけすかなかったけど。


『……は———はは、分かっている、じゃんか……』
「なら教えてよ、私にも! そろそろ何か教えてくれたっていいじゃんよ!」

『ダメと言ったらダメなんだよ!』

 ヴェンデッタ・シンが、スラスターを吹かして距離を取り始める。……何をされるか分からない。

「それでもっ!……教えてくれるまで、ずっとずーっと着いていくからねっ!

 恨むなら前の自分を恨んでよ、私をこんな風に、前の自分をっ!」

『…………っく……来るな、関係ないだろ、お前はっ!』

 こっちもたまらずヴェンデッタ・シンを追う———が、あっちはすかさず距離を取り始める。

 ……鬼ごっこってなら、何度でも……!

「待てーーーーーっ!!!!」
『だから来るなって、言ってるだろっ!!!!』
「着いていくって、私も言った!!!!」

『面倒くさい……っ!』


 ヴェンデッタ2機は、あまりにも激しい機動を繰り広げる。
 幾度となく揺れる視界の最中においても、論争もどきは終わりを知らなかった。

「ええ! うん、そう! 私ったらめんどくさい人間なのっ!……なんで今の今まで気付かなかったの!」

『…………気付いてた……気付いてたさ……!』
しおりを挟む
感想 239

あなたにおすすめの小説

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

処理中です...