【R-18】異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:

山下敬雄

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17 黒騎士

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⬜︎タコイカ学習帳
《40F》
【おもしろくなりそう】
登別海:この【黄金の盾】といらない武器、本当にもらっていいのかしら?

ピネス:あぁー盾はだれも今んとこ使わないし、いんじゃねぇかな? あ、ひょっとしてまたなんかしまうのか? それに。

登別海:そうね、盾は単純にこの状態で──ありがとう、収納しておけば使えそうな気がするわ。他のいらない武器は属性を吸い取って、またまとめておくわ。

ピネス:……属性をまとめる……なんかまたおもしろくなりそうなこと、してる? 登別さん?

登別海:そうね、きっとおもしろくなると思うわ。



【くいとめる】
トモル:わわっゆっゆびわです!?

ピネス:あぁー、なんかそれさっき拾ってさ。あ、欲しけりゃどうぞだけど? いるか?


【熱の圧縮のGGC黄金指輪】
フィンガーバルカン
炎+5
風+2
DP獲得量+1


トモル:なっ、なっ、ナッ!? エッチ!!!

ピネス:なっ、なにがぁ……!?

トモル:かるがるしく指輪を渡すなど言語道断ですよっっ! このエッチアイ! くぬぬぬぬぬぬぬ!

ピネス:あぁーっ……いやいやごめんってぇ……ならこれは校長にていしゅ

トモル:ダメですっっ!!!

ピネス:え、なんで?

トモル:とっ、と・に・か・くダメなのです!!! これは貴重品としてわたしが預かり食い止めますっっ

ピネス:おっおぅ……? ほらよ……どうぞ(くいとめる?)
⬜︎


 40Fゴールデンゴーレムコンディショナーを見事に倒したブク高の3人は、手分けしてドロップアイテムを回収。その中の持ち帰るものを精査厳選。そして、水筒の冷たいお茶を一杯いただき、ほっと一息。

 場の雰囲気はすっかり緊張から緩和へと変わっていった。だが、一匹だけは落ち着かない様子だ。

 金魚が泳ぎ回っている。ぐるぐるぐるぐると、大部屋の中を円を描きながら朱文金は泳ぐことに飽きない。

 像の周りを泳ぎつづける白黒赤のその元気な魚を捕まえるため、階段の前にはトモル部長が既にランタンを持ち待ち構えている。また地下階段を降りられてはかなわないので、いつでもランタンの中へと戻せるように探偵帽をしっかりと被り、出口を塞ぎぬかりはない。

「相変わらず元気だなこいつ」

「そうね。────いや、浦木くん、これ何かをさ」


 そのとき──トツゼン、黒い波が吹き荒れた。黒ずんだ像から突如放たれたエネルギーの波は、大部屋の中央から隅から隅へと、ぶわり、広がり。

 凄まじき突風のようなナニかを浴びたピネスが、その面にぶつかった衝撃に目を開けた時には────

「消え────た!? おっおい、登別さん、コズミ……どこに? んだってんだ! なんだ……」

 大層な演出が一瞬黒く辺りに吹き荒れたが、今ピネスの見回した景色は先ほどの大部屋と変わりはない。

 だがそこにいない。登別海もコズミも……中央に佇んでいた帰りの像すらも、いくら探せどそこにはなかった。


 地はドスリと音を立ておおきく揺れる。今、天井から降り立った巨大な石蛙など、ピネスは知りはしない。威嚇するように震わせる、初対面の野太いカエルの声など──

「帰るところだったんだがなァ!」

 右の鞘から刃をじわり滑らせ抜く。帰路はない、退路は知らない。突如ソラから訪れたカオスな状況に、構えた翠の刃を、眼前の殺気の塊に向けて光らせた。








 ダンジョンから帰るまで、あと一工程というところで、謎の黒い波を各々に浴び、ブク高パーティーの3人は分断されてしまった。

《40F中部屋》

 探偵帽を探せどない。エッチなアイツも、クールな部員も見つからない。

「え、エッチアイ!? 登別さん!?」

「くぬぬっっモンスター!? ゴレ山がこんなに!?」

 ただあるのは、そこに歩み寄ってきたのは、ゴーレムナイトたちの重い足音だけである。

「ぬぬぬぬぬ! 風紀委員部部長びびったりなんてしませんよっっ、朱文金、チカラを貸すです! ダンジョンの風紀の乱れはわたしが正しますっっ!」

 ランタンから火を水飛沫のように散らし飛び出した、朱文金は応える。

 震えなど握りしめればダイジョウブ。勇ましきトモル部長は、意志ある異能生物に今エンチャントされた、燃える剣を手に取った。






《40Fモンスターハウス》


(こういうときのために)

 彼女の心中は静かに呟きながは落ち着いている。

 焦らずじっくり敵を引きつける。【チョキ】のカードのエネルギーを使い、魔力線を引きトライアングルをふたつ──重ねてひとつ、足元に六芒星は描かれた。

 月影の刃は、騒ぐ風の属性を纏いだし……。

 足元水面に刻まれた六芒星のナカで、左足を前にし右足をゆっくりと溜めるようにさげる。その構えたポーズは、さらに彼女のチカラを増幅させてゆく。

 風は今か今かと渦巻き唸り、ミントグリーンの長髪が、刹那に吹く荒風に乱れた。


「たぁあああああ!!!」


 魔力で伸びた超ロングソード。長い刃渡りを成したギミック剣は、ゴブリンを、コボルトを、ゴーレムを、お玉杓子を、全て真横一文字ノ一閃にて──────

「ふぅ……腹から叫ぶのも案外たのしいわ」

⬜︎六芒星結界×超ロングソード×風のエンチャント
【チョキ】×3
チョキ脚のポーズで溜めたチャージ回転斬り
【風+23】の武器エンチャント
⬜︎

 風は止み、風は部屋の細い通りへと遅れて音を鳴らし吹き抜けてゆく。

 風音をも置き去りにするイチゲキ一閃で、モンスターハウスの中を一気に薙ぎ払った。登別海は呼吸と心音のコンディションを整え、開かれた道を選び急いだ。






 動きの鈍い石像へと、飛びかかるような兜割が炸裂。炎の剣はその魔力と熱量で、ゴレ山を燃やし硬い石頭から叩き割った。

 ねじれたナイフが狗顔の側頭へと突き刺さる。今跳ね飛び石のモンスターを仕留めたピンク髪の影、その背後。突如狡猾にも忍び寄った忍者コボルトを、研がれた爪が部長に襲い達する前に倒した。

 奇襲に失敗した狗の忍者は影すらも溶けて失せる。見事に刺さったナイフは霧状となり、緑髪の女子の手元へとかえりゆく。

 強制的に部屋、道、敵の配置構造、現れる敵の種類まで生まれ変わったダンジョン40F。

 黒波を浴びランダムジャンプしてしまい、はぐれていた登別海部員とトモル部長が、たった今敵を殲滅し終えた中部屋で幸運にも合流を果たした。

「良かったわ小角部長」

「わわ、登別さんいたです!? 怪我はないですか!」

「それほどないわ、それより」

「わかってますっ! またどこかに徘徊しているエッチアイを見つけ出すのは、風紀委員部の仕事なの!!! こっちです!!!」

 有無を言わずとも分かる。トモルは朱文金をイニシエランタンの中へと手早く戻した。

 ランタンを持ち駆けるピンク髪の後に、緑の髪がつづく。照らし出した通路に速い足音を鳴らしていく、迷子の男子生徒を探すために。








 白い腹を貫き【バーンファイア】は炸裂、赤く染まってゆくカエルの腹は────膨らむ口から火を吐き出した。

 石蛙は破裂しない、逆に確信し油断した黒髪の小人へと、その威力と熱を激しくお返しした。

 腹がしぼみ、がま口から噴射する火に、炎に、ブレザー制服の防具ごと飲まれてゆく────

『熱っっついなこの野郎! おもしろいけどいらねぇよっ、カエルが贅沢にドラゴンやってんじゃねえええええ!』

 防御するように構えた翠の刃は、その焼かれた炎陽術のエネルギーを吸い寄せた。バチバチと唸り、枝分かれする雷線を宙へと逃がし漏らす。吹いてきた炎を受け止め雷に変換するように。

 黙って突っ立ち焼かれているわけにはいかない。おもしろいカウンターには、さらに機転の利いたカウンターを。

 決定打の炎剣を、返すサプライズのガマ火炎、返された火炎を刃に飲み込んだ雷剣は天へと昇る。

 股を裂く雷轟くイチゲキは、〝ゴーレムオタマフロッグ+++〟を縦に切り裂いた。

 勢いあまり宙返りし後ろへと着地。大蛙のモンスターを処し、地に降り立ったピネスは今アドリブで繰り出した技の、いつも以上の威力と斬れ味に驚いた。

 だが、今は手応えを感じているよりも。大蛙をどけた目の先に佇むそれに、聞かなければならないことがある。

「(剣より速く裂けるみたいに?)おい、あんたは一体? ──あ、そうだ! 登別さんとコズミっしらな」

 黒い鎧のナイトは足元に突き刺さっていた緋色の剣を拾い上げ、投げつけた。

 突然投げつけられたくるくると回転する剣を、なんとかキャッチ。ピネスは、まだ熱い自分の剣の柄をつかんだ。

「おっ、さんきゅーぅぅう????」

 ピネスが律儀に礼の言葉を返した最中──

 透明から青白い月色に色付いてゆく。三日月が天からゆっくりと落ちていき、ピタリ……。その尖った輝きが、留まり、律儀に礼をした男の顔へと向けられた。

 黒い鎧兜姿の人型は、月色の曲刀をピネスへと、切先が揺らぐことなく静かに構えた。

「マッ!? ……まじぃ……このかんじ……」

 それは明らかに殺気。ここ最近、彼がダンジョンでモンスターから向けられている殺気とは異質な────

 浦木幸はなんとなく知っている。自分ではどうにもならない選択と、理不尽なパワーが、この世にはあることを。

 ピネスは翠の剣を右鞘に休ませて、返却された緋色の剣を一度そいつに向けて構えてみた。お互いの切先を向け合うこの光景と感覚に、やはりと、確信をした。

 黒波により生まれ変わったダンジョン40F。

 緋色のショートソードの剣柄を湿る手汗に温める浦木幸と、冷たくも美しい蒼月の刃を敵へと向ける黒騎士は────やがて、不気味な静寂に刃と刃を交えて危ないご挨拶をした。

 不黒ダンジョンに飼い慣らされた二つの刃は、赤く爆ぜ、青い三日月を描く。

 若き剣士と若き剣士、互いのことなど何も知らないまま。

 邂逅した剣と剣はただ命を奪う音を奏で、語り合う。








 慌ただしい足音は通路を駆け抜けた。

 ぶち当たったその壁は行き止まりに思われたが、イニシエランタンの灯は、僅かに煌めいた上向き矢印のマークを、暖色の魔光に照らしだし発見した。

 それはダンジョンの冒険者たちを閉じ込める一方通行ルールのマジナイが、既に作動している証。中に誰かがいる可能性が高い。

 矢印の描かれた硬い石壁へと臆せず────ピンク髪、ミントグリーン髪はつづき走り抜けた。

 2人が部屋へと進入するやいなや、高い金属音が剣と剣が合わさった一合、響き渡る。

 遠いツギハギブレザーの背が近づいてくる。近づいて、近づいて、やがて2人の目の前で白いスニーカーが白煙を上げながら踏ん張り止まった。

 焼けこげた二足、引き摺った跡が地に残るほど踏ん張りを効かせていた。散らした黒髪から舞った汗の玉が、後ろにはじけて煌めいた。

 『きょ~ん……』捻じ曲がったような音が鳴る。剣と剣が離れてもまだ奇妙なうねりの音を震わせつづけている。ピネスは震えさせられた緋色の刃を、八の字に泳がせて地に払った。

 そして2人の気配に気づいた彼は、一瞬背後を見た。だがまた、正面先にある青い三日月の刃の揺らぎをしっかりと見据えた。

 浦木幸はもう振り返らない、いや振り返れない。黒騎士の一挙一動を逃さないように見据えたまま────

「ちょっとアレだ、これは……なんとなくじゃ、どうにもなんねぇ。はぁはぁ……手ぇ──貸してくれ」

 しかし浦木幸は今やってきた2人のことをすぐさま頼った。

 階層ボスの黄金のゴーレムを相手にしていた時とは違う。汗を垂らす彼の背姿と呼吸する様から見てわかる緊迫感。それ程までに異様なオーラをかもしだす黒騎士は脅威であり。

 引率リーダーである彼に頼られる。それがどれほど認められているかを、同時にどれほどの危機であるかを、知らされてしまう。

 40Fここまで彼と冒険を共にしてきた女子2人は、もちろん──

「エッチアイ、これ以上あまり怪我してはダメなのですよ! 風紀委員部部長の小角灯! 校則違反のいかつい兜鎧の不良生徒は、わたしにまかせるです!!!」

「私と小角部長がなんとかするわ、浦木くん。だからもうすこし、なんとか頑張って」

 小角灯の黒目はメラメラと灯り、頷く。彼の左へと一歩二歩、歩み寄る。彼女が勇ましくその剣を鞘から抜いたと同時に、ランタンから休ませていた朱文金は元気に飛び跳ね示現した。

 登別海の藤色の瞳はいつものクールな雰囲気より、あてられた周りの熱気によどんでいる。だが心の中はひとり冷静に、もうすでに目先の敵を倒す術を考える。右へと一歩二歩──ねじれたナイフを手にし、宙に浮かべたカードを次々とドローし重ね準備していく。

「はぁはぁ……あぁっ、──たのんだ!」

 2人がなんとかする、ならば任せる。だから、自分はなんとか頑張るしかない。

 ピネスは並び立った2人に、わずかに横顔の歯を覗かせ見せた。そして冷たい三日月を侍らせる黒騎士の元へと、走り出した。緋と翠の光刃を、虚空に力強く疾らせながら──────


 そしてはじまったブク高3人+1匹vs黒騎士の闘い。

 ゴングなどない。ただ疾る剣と待ち構える剣を強く合わせた。浦木幸、黒騎士の再びのご挨拶が戦場ダンジョンに響いた。




▼▼▼
▽▽▽




 部長が前方にむけたランタンから、放たれる魔力を圧縮した炎のバルカンは、黒騎士の泳がせた三日月の華麗な動きに不思議と全て弾かれていなされた。

 そのわずかな隙に噛みついたピネス、三日月と合わさった翠の剣は鍔迫り合いを無視した。バチバチと青く唸り宙を伝い届くが、その程度の不完全な雷撃は黒騎士の鎧兜を焦がすことも出来ず。

 そして小技も無意味になり、黒騎士の剛力にやがてピネスの身体は弾き飛ばされた。

 しかしピネスはこそこそと狙っていた。一番誰のものでもない時間、それは剣の勝負に負けた弾かれ際。手ぐせ悪く突き刺さった緋色の剣は、黒騎士の地面足元でチカっと光り魔力を上げ爆ぜた。

 赤き爆発の渦中から、一足早くバックステップで煙を切り抜けてゆく、そんな黒騎士の反応の速さを逆手に取る。今、黒騎士の位置取るポジションは、藤色瞳が虎視眈々と狙う3秒先の未来にほぼ重なった。

 黒い背に向けて一直線に伸びた殺気は弾かれる──。槍のように伸びたロングソードは三日月の刃の奇妙な剣術に絡め取られ空を舞った。黒騎士はそのまま後方へと慌てて退がろうとした登別海を切り裂いた。

 しかし登別海の本当の狙いは通用しないロングソードの単純な刺突などではない。黒騎士が肉薄したその瞬間、出力を上げた青白いビームマントと黒い天体スカートは一気に華開いたように満開になる。

 華奢な長身から大きく、迫る危機に対して威嚇するように膨らんだ布地のシルエットは、目にも止まらぬ剣に裂かれ────

 ユラユラと眩しくはためく青と黒のカーテン。その内側から手品のように現れたのは六つの爆弾。敵の攻撃に切り裂かれ、地に落ち──爆ぜた。

⬜︎登別海
登別海考案【パー】
❹パー属性を帯びたモノから【パイナツプル】を出現させることができる。
パイナップルを模った【パイナツプル】は衝撃を加えると爆発する性質を持つ。
この黄色い爆発と魔果汁を浴びたモノは、パー属性が任意で付与される。
⬜︎

 剣術に長けた黒騎士に対して、トリッキーな行動を一瞬のうちに判断し重ね意表をつく。

 登別海が引き起こした派手な黄色い爆発後、突っ込んできた赤と緑の刃は踊る。

 それは二刀流。決して奇をてらった馬鹿ではない。だが若気の至り、その二刀の勢いは若く荒々しくただ速い。

 疾風迅雷──気迫と光るセンスと勢いに、渦巻く十三合の剣線は、最後に赤赤と爆発し締められた。


「わわっ登別さん! 大丈夫なのです!?」

「ふぅ、ふぅ…………大丈夫──マントとスカートで的を隠して考えたとおりに致命傷は避けたわ。でも……それより、浦木くんは完璧にやってくれたけど──アレを凌駕するには、もっと幸運の手札を手繰り寄せる必要があるみたい」

「ぬぬぅ……エッチアイと互角!?」

 小角灯部長が心配して駆け寄った登別海部員はシールド値は減らされたが、無事。元より正面から劣る剣で深くやり合う気はなかったという。どっと汗をかきながら、想定の範囲内の軽傷で済んだと告げた。

 しかしそれよりも、登別と小角は2人してそちらを見た。先程の激しい剣音が静まり──彼と漆黒のシルエットが現れてきた。

「──んなろぅが……! なんとなくの付け焼き刃じゃ、本物のナイト様には効かねえってか……」

 怒涛の勢いをもって切り刻んだのは浦木幸。全てを受け止め吹き飛んだ黒騎士は、──健在。浦木幸の睨む目の先に、足を少しも挫かずに平然と立っている。

 青白い三日月の刃はそれ以上欠けることなく、妖しく光る。

 紺と赤のネクタイが、はらり……。白い襟から垂れ下がり繋がっていたネクタイはその中途を斬られ、地へと落ちていく。

 斜めにはしった血がじわりと、白シャツに滲んでゆく。ピネスは斬られた薄皮の痛みすら、ダンジョンのシールド値に守られて感じ取れない。

 だが、一瞬の最中に魅せられたそのなめらかな曲刀のうごき、冷たさは感じ取れる。獲物の命を刈り取る美しいカタチをしていることを──


 ブク高パーティー3人の連携をもってしても、敵は倒れず。今までのどの敵よりも、明らかに練度の高い動きと剣をみせる黒騎士にはとどかない。

 ダンジョン40Fなおも底知れぬ魔力とチカラを持つ黒騎士と対峙。そこに逃げ場はない、そこに出口はない、どこへ帰れもしない。

 不気味なダンジョンが気まぐれか、用意したこの黒き試練を打ち倒さないことには────。







 隆起した石のグー拳は、曲刀の奏でる奇妙な音にあてられただけで練り上げた魔力が配列を乱され崩壊する。

 鋭い雷撃のマジックを中距離から放つも、三日月のひとつに相殺される。

 飛び道具には飛び道具、宙をなめらかに泳がせた曲刀から放たれた数多の小三日月が、ピネスの身をその鋭利さで切り刻まんと集束。

 いつの間にか取り囲まれたピネスは赤い刃を地に突き立て、迷わず魔力爆破。咄嗟に自分の技で自爆することを選び、身動きできぬほど散りばめられていた三日月のその全てを赤く染め上げ砕いた。

 どさくさに乗じて朱文金は仕掛ける。口から炎を吹き黒い鎧兜を熱く染め上げるも、天からトツジョ下った死角からの三日月のトラップに首から真っ二つに斬り捨てられた。

「わっわっ朱文金!? わっ!?」

 慌てるトモルのランタンからまた魔力を補充し、死んだはずの朱文金は元気よく現れた。


 精一杯の攻防は相手の実力を引き出せたのかも分からない。ブク高パーティーの3人と1匹の連携攻撃も、結果はまたまた黒騎士の侍らせる三日月の刃と術にいいように阻まれてしまった。

 トモルは肩で息をするピネスの背を見つめる。そうしていると何故か、後ろにいた彼女の体は前へと動き出さざるをえない。

「エッチアイ大丈夫ですっ!?」

「待って部長、あまり近寄らない方がいいわ。幸い間合いに近付かないかぎり、なんでか積極的に狙ってはこないみたい。ここで動いたら気が変わるかもしれないわ。私もこれ以上の接近戦は練度が足りないみたい、じっくりとサポートの技に徹して浦木くんに任せるしかないわ。どこかで彼がスイッチを入れたその時に、全力でサポートできるように」

「くぬぬぬぬぬぅ……」

 前へと動き出そうとしたトモル部長のうずく肩に、手を添えて止めた。登別海は冷静に敵のことを分析した。黒騎士の最優先の狙いはあくまで浦木幸ただひとり、今までの戦いを通してそうだと分かる。こちらの茶茶入れすら気に留めないほどに、浦木幸との戦いに正々堂々とは違うかもしれないが黒騎士は拘っているように見えた。黒騎士の間合いにはあまり近付かず遠くから彼のサポートに徹する。スイッチを入れたときに全力の異能と手札のこりの魔力をさらす、やはりそれに注力すべきだと登別海は判断した。

 緋色のショートソードを地から引っこ抜いた。

 相変わらず不気味な程静かに構える、妙な音のうねりを奏でる黒騎士と三日月の行方を、ピネスは凝視する。

(はぁはぁ……困った……どう考えてもいつものコイツをブッ刺して当てれる気がしねぇ……。さっきのドラゴンデカ蛙の時のアレ……アレなら、アレってどうやったんだ俺? ぅーーー……剣よりも速い、勝手につたって裂けるかんじのかみなり……えっとつまり裂けるイカヅ……あ)

 ピネスは仰々しく翠の剣を天へと掲げた。バチバチと唸り、青く、白く、点滅する雷光。地には赤く灯る刃を同時に構えた。

 それを見た、2人の女子は頷いた。

 物を言わない黒騎士は三日月の切先を、ゆっくりと目の前の二刀の剣士に向けてすべらせていく────。

 スイッチを入れるのは今。

 真剣勝負の勝負どころなど一介の学生である彼は知らない。ただ、その天と地の二刀にまだあると思われる期待感をふたつ灯らせて、前へと走り出した。

 向かい来る二刀の剣士を悠然と構え待つ黒騎士も、彼の醸し出すその期待感にのまれていたのかもしれない。

 その気迫、昂る期待感、当然あの若さに任せた疾風迅雷の十三の剣線が脳裏によぎる。黒騎士を脅かした勢いと切れ味で勝負に来ると思われた、熱量を上げつづける二刃は──

 スベテ、何もかも裏切るように投げ捨てられた。

 ピネスが選んだのは、愚策。手練の剣士を相手にそう何度も剣を投げ捨てる奇策など、もはや奇策ではない。

 黒騎士を目掛けて飛んできた緋色と翠。意表を突くものでもない、手放して放たれたマジックの威力などしれている。

 もはや黒騎士は目の前に迫るそれを避ける必要もなかった。

 予想通りに赤く魔力爆発する。

 鎧の内側へと響かない、そのひとりよがりの攻撃により受ける爆発ダメージなどそんなものだ。

 黒騎士は曲刀を振動させる。そして鎧兜に纏わせたオーラを震えさせて強固なシールドとした。それはただのシールドではない、黒騎士のシルエットごと覆った震える防御膜は、ピネスの放った【バーンファイア】の魔法威力を加速度的に減衰させてゆく。

 受けた爆発の衝撃すら吸い取り、技を構成する炎の魔力を分解するように乱していく。

 勝負を放棄した剣ではこの身を焦がすこともない。そろそろ終わりを迎える緋色に燃ゆる景色は、──また赤く轟いた。

 緋色の爆炎の中を泳ぐのは、翠の刃。高速回転しながら突っ立つ黒い鎧の的へと、幾度も飛来し赤雷をぶつけていく。

 一体何が起こったのか──。一歩も動かず受けに徹していたはずの黒騎士は、赤雷纏う円盤を三日月で弾き返し、未知の危険が襲うその場から脱出した。

 ピネスは剣を捨てたが勝負を捨てたのではない。石蛙戦で起こった事を返す返す思い返していた。残り魔力をたらふく注ぎ、自らの二刀で〝あの奇妙な感覚〟を今、再現しただけであった。

 そして、たまらずその場を逃れた黒騎士に、確かな隙が出来た。

 登別海の背に留められていたバッテンに交差する骨飾りが、前方へと射出された。独立浮遊しながら、捉えた、炎の中から出てきた黒騎士の正面へと──

⬜︎【パー】×【チョキ】の六芒籠目ろくぼうかごめ
それは古来から日常にある強力な魔除け。
編まれた籠は数多の六芒星の紋を規則正しく作り出す。
数多の網目、幾多の目を持つ。六芒籠目は普通の【パー】よりも強力であり、これに包まれたモノは同時に【チョキ】の能力カット効果も一時的に受けてしまう。この籠の強度はいかなる魔性の存在の爪牙でも容易く破られはしないだろう。

★合体じゃんけん魔法は、通常より多量の魔力を使うため、使い所をよく考える必要がある。
⬜︎


 骨飾りから華開くように展開されたビーム性質の六芒籠目。丹念に練り上げ編まれた登別海考案の合体じゃんけん魔法。

 だが、それすら──即座に三日月の飛び道具を四方八方にばら撒き黒騎士は対応した。

 裂かれてボロボロになりつつも、それでも強力な魔法は意地を見せる。ボロボロになった網目を再び結び直し、敵を瞬く間に包み込んだ。

 【パー】の効果は包んだモノの強制転移。既にこの部屋の天井に刺さっていた一枚の【パー】カードの元へと、黒騎士は何も知らず運ばれていく。

 登別海の仕掛けた下準備はこれだけでない。魔力線で予め六芒星の描かれた地を、今、猛スピードで走り込んできたスニーカーが強く蹴り上げる。

 さらに炎を纏う金魚が、今跳んだツギハギブレザーの背を遊ぶように元気に追いかけていく。

 そして、属性変化。トモル部長の手持つイニシエランタンの灯は、ナカに挿された【雷カード】を燃やしつくし──燃えるおさかなは雷龍と成り、剣士と共に天へと向かい昇ってゆく。

(いつもの【バーンファイア】じゃとどかねぇ! よくて自爆! ならっ、さっきカエルを裂いた【コイツ】に賭けるしかないっ! ──なっ?)

 猛る彼を鼓舞する全てのバフは回収された。見上げて目指す天に待つ、黒い鎧と蒼の三日月のターゲットへと────


⬜︎浦木幸&朱文金
貫通力156%
空中破壊力309%
雷破壊力278%
クリティカル破壊力444%
斬撃性+75
ちかる+1
レベルアップ状態+1(しあわせ茶)
力+8(力のおにぎり)
属性威力1.1倍(ふしぎなおにぎり)
雷+37(雷カード)
析雷神+1
⬜︎


(戦いはそう──天、空中のイーブン。私もそうだと思う、これに全てを出し切って浦木くん)

(エッチアイ……!!!)


 舞台空中、彼がよく知る異能で手元に引き寄せた翠の剣は、赤き雷剣と化した。

 錐揉み状に昇っていき、勢いを上げていく赤き刃は──蒼き三日月と衝突し交わった。

 ぶつかり合うそのイチゲキ同士は、激しく魔力を散らしフラッシュする。

 唸り散らす荒々しき赤き雷と、蒼白き魔力を圧縮した美しさを決して崩さない熱き三日月は、──譲らない。

 天地、上下、睨み重なり合う二つの刃、魂を込めた勝負の行く末は──

 〝斬り裂くような雷を〟


「【サクイカヅチのぉぉ……イチゲキぃぃいい!!!】」


 積み重ねた赤きツキと迎え浮かんだ蒼き月──火花を散らした競り合いの果ては、天をも裂く果てへの一閃。

 それは剣よりも速く、彼方へと轟いた。

 裂ける雷は、宙を一瞬に伝いその漆黒の胸内へと響いた。

「その先は、きっとルールや理屈だけじゃない。──ツキ。そんな人だから」

「とどいたですっっ!!!」



⬜︎【サクイカヅチのイチゲキ】
その赤き雷は、天地を裂くように威力轟く。
従来のようなただの垂れ流しの技ではない、まるで析雷。

とてつもない雷属性を帯びた陽気と、鋭い魔力を孕むイチゲキであり、よほどの幸運と良い状態が重ならないと再現することは難しい。

浦木幸史上最高威力のイチゲキ────


《40F なぞの黒騎士の大部屋》
⬜︎








 迷宮の霹靂へきれき────赤きイカヅチが、天を斬り裂いた。

 黒雲に浮かぶ蒼月は沈みゆく────


 ぼろぼろに破れた背が上から迫る。小角灯と登別海は、2人で引っ張った黄金のマントの上にソレを受け止めた。

「エッチアイ大丈夫なのですっっ!?」

「浦木くん、大丈夫?」


「痛ててて……あぁー……ぶっつけのなんとかだが……生きてる……っぽいな」

 かけられた心配声。黄金の布の上に落下したピネスは、痛む腰を上げて2人に無事を伝えた。

 そしてそれよりも、最後に死力を尽くし放った、この戦いの行く末を3人は同じく見つめた。

 よろよろと起き上がった黒騎士の胸には、そこに雷がはしったような赤く痛々しい、ピネスが放った雷剣の威力の痕が刻み込まれている。

 硬い鎧を砕くほどのイチゲキが通った跡が、確かにそこにある。割れた兜から除いた紅い片眼は、倒れた剣士をじっと睨んだ──。やがて、胸を苦しそうに抑えながら、首を左右に振り回した。

 登別海はナイフをゆっくりと後ろ手に取ったが、そのいけない手は部長に掴まれて止められてしまい。

 なおも剣士を睨んだ黒騎士は、いつの間にか後ろに現れた地下階段へと、嫌なモノを振り払い逃げるように、背を見せ、走り下っていった。

 3人の重なる緊張の息遣いは、黒い鎧姿が完全に消えてもなおつづく。

 やがて、やっと穏やかになり。

「これは……」

 黒騎士の去ったあと、落とし物に気づいた登別海は、ダンジョンの床に煌めいた黒い一欠片をその手に取った。
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 旧王城地下、隠し通路鼠通りにある一室。

 吊り下げられた魔道具の灯が辺りを照らす。黒い食卓を囲むのは────

『浮かない顔だな。今日は王がおいでになるというのに』

『どうしたんだよ飯が不味くなるぜ』

『姉さんヘマをしたか』

『きょう──剣士をひとり斬った』

『はぁ? 当たり前だろ??』

『姉さん当たり前、それが任務だよ』

『そいつは深手を負いながらも、私より強かった』

『姉さんより強いわけないよ』

『まぁ俺より弱いしなおまえ』

『情報通りにしっかりと寝込みを襲ったがそいつは死ななかった、わたっ』

『おいおい飯の時に死に損ないの細かいのはやめろよ』

『姉さん腕が落ちたね、肉たべる?』

『いい、私はどうやらそいつに呪われたようだ』

『なに、知り合いの呪術師を呼ぼうか姉さん?』

『その呪い、解決方法しってるぜ』

『ソゲツ、なんだそれは?』

『まずは渡すもん渡せやこいつはお高い情報だぜ。──よーしへへ、さすが優れた暗殺者だ────要するにタンゲツお前、自分より強いそいつをそれよりちょっと弱いお前が暗殺しちまった、その傷の決着が気に食わねーんだろ? 取るに足らない貴族もどきが相手ならまだしも、剣士。そんなお前が落ち込むほど強ぇヤツを、寝込みの首を襲いすっぱりヤっちまったとなりゃぁ……俺でももったいなくて心の病気になるぜ? 三日ぐらいはな、ははは』

『嘘だよ姉さん、ソゲツはただの暗殺術半人前の戦闘バカだから、任務も失敗のゴリ押しばっかり。あちこちで顔が割れててもう素顔で歩けないんだからね』

『るせぇなケイゲツ、王がそれでいいっつってんだからいいんだよ。顔は割れたんじゃなくて売ってんだよ、ははは! とにかくおまえ、下手なんだよ。隠れて首をちょんぎって殺すことしか考えてねぇから、そうなる。いいかよく聞け、真の殺しってのはな』

『はいはーい返り血ゼロ』

『やはり一瞬でクビを……』

『ちげぇ、真の殺しそれは、そいつの持ってるポテンシャル実力をスベテ出させた上でこっちの全力でソレを刈り取ォォォォるっっ!!! ハッハーーーーッそうすりゃ後悔も呪いもねぇ、すぐ殺しちゃうなんておまえのその剣、きっとバカだぜ?』

『ほらソゲツはバっっカだぁぁ』

『スベテ出させて刈り取る……どうすればそうできる?』

『ハッハッハ、興味あり気だな? ちょーどいいついて来いタンゲツ! 俺が真の殺しを教えてやる! よーし任務はこいつだ、騎士くずれの山賊を刈り取るぞ!!』

『姉さんほどほどにね、ソゲツのバカがうつっちゃうよ』

『おいっ。もう王が来る、座れソゲツタンゲツ』

『るせぇショゲツ、全盛期の王ならここで俺たちを萎えさせて止めねぇぞ?』

『────そうだな。行って来い』

『お前イチバン馬鹿だろ……。まいや、騎士くずれをぶっ殺しにいこーぜタンゲツ!』

『あぁ、わかったソゲツ。騎士くずれ山賊の寝ぐらはどこだ? 火はつけるか? 地図をかせ』

『馬鹿か、それじゃ一緒だろぅが。ひさびさ兄妹で楽しもうぜ! ノープランだ〝ジェットブラックアローズ〟いくぞぉぉ!!!』

 武王の直属秘密暗殺部隊、ジェットブラックアローズのソゲツとタンゲツは、席を立ち意気揚々と山賊狩りへと出向いた。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎



⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎





⬛︎


「登別さん、しゃがんだままどうしたですか?」

 屈んだ姿勢のまま長らくぼーっとしていたミントグリーン髪の部員に、近づいたトモルは後ろから不思議そうに声をかけた。

「いえ、なんでもないわ部長。ただ、珍しいこれが落ちていたみたい」

「わっなんですこれ? くろい化石? なにかのしっぽですか?」

「たぶん黒曜石の……矢じり……ね?」

 手のひらに乗せて見せた小物を、登別海は訝しみ見た部長に説明した。

「ぬぬぬぅ? こくよーのやじり?」

「うん。黒の宝石みたいなもの。それより──」






『気に食わんな童。ワシの雷を勝手につかってあの程度の剣士風情ごときを、ひとおもいに倒せぬとは情けない』

 ピネスの顔の目の前でバチバチと放電しながら、ガンつけ、凄む、おさかながいる。

『炎神が認めたのがこんな弱々しい娘だとは、ふんっ。どれ……いっそ食ってやろうか!!!』

 パクパクと金魚の口を開いて、ギャップと圧のある低音で言葉を発している。雷魚はピンクの頭を急に勢いよくかすめて泳ぎ、嘲笑うように探偵帽子を吹き飛ばしていった。

「なっ!? わっ!? 朱文金が急にしゃべって!?」

『陰陽師か、ふんっ、きさまは取るにたらない』

「あら、陰陽師、お札? 言われてみればそうね、気づかなかったわ」

 登別海が宙に浮かべるカードの異能が、その喋る雷魚の目には忌々しいお札に見えたようだ。

『どれもこれも妖力のひくそうな、匂わんなぁー。その点、童、きさまはまだまだ青い、食べるにも熟すにも青くさいな。まぁいい、先程の黒い剣士とのたたかいは久々に小指ほどは楽しめたぞ。またそちらの供物をワシにたんと捧げ、ワシの名を喚べば遊んでやろう矮小なる人間どもめ、くっくっく────』

 ひとり語り続けた雷魚は、ぐるぐると3人の周りを速く勢いを上げ泳ぎ続けた末──。天へと勢いよく飛び上がった。やがて天に達し、体内のエネルギーの全てを激しく放電し、一瞬に弾けて消えた。

 一同は唖然と固まる。咲き誇る青雷が最後に激しい赤い雷光を発し消えるまでを、眺めた。

「なっなんだったんだ……」

「きっと八雷神の析雷神さくいかづちのかみ。私が異能のカードで武器から抽出した雷エネルギーを供えて、小角部長のランタンの特異な炎の匂いにつられたのかも。そして、あなたの叫んだ言霊と魔力が炎の使い朱文金へと、満ちた瞬間、あの神を憑依させて示現させたのよ浦木くん」

「ぅーーーー……なるほど、って俺が? いやそりゃ登別さんに前にきいたヤツでさ。切り裂く感じのちょーどいい気合いは入れたが……まさか神様ご本人が登場なんてな……出席確認した覚えは……ねぇな? あと神様ってこわいんだな」

「まぁ黄泉にいる雷の神様だから、一般的な神々よりもこわいとおもうわ。でも餌付けはきくみたいね」

「神様に餌付けって……大胆だな」

「あの世、黄泉にすむ存在はこっちのモノがさぞ美味しいと感じると聞くわ。供えるのはそういうことね。ウィンウィンといったところかしら?」

「といってもここはあの世、そのヨミってのと、半分似たもんじゃねぇのか……?」

「ただのダンジョンですよエッチアイ! 心の乱れは風紀の乱れなの!」

「ただのダンジョン……はは、それもそうだな、おっと!? お前、変な神様じゃない? 今?」

 やんわりと注意するトモル部長のランタンから炎の金魚は飛び出した。3人の周りを元気に泳いでいる。

 八雷神のひとつ、析雷神。まさかの金魚へと憑依し現れた神様との邂逅。ピネスの放った【サクイカヅチのイチゲキ】へと、その雷神は焚べられた数多の供物をエネルギーとし、呼び名に応えて力添えをしたのだという。

そんなダンジョンの中で次々と起こった、激しくもミステリアスなイベントも、気づけば残すところ、地下階段とともに現れていたこの部屋の石像を浄化するだけであった。

 もうここに用はない。最後に地下階段の方をちらりと振り返り見たトモルは、朱文金をランタンの中へと戻し、待つ2人の元へと急いだ。

 無事、目的地へと集ったブク高の3人は浄化した像の前へと立ち、まばゆき光とともに不黒ダンジョン40Fから、やっとの帰還を果たしたのであった────────。
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