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41 危険な危険な番外編
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「あぁーまったく、やっと捕まえたと思ったら追いかけっこの第二ラウンドかよっ。まじで子どもみたいにはしゃぎまわって読めねぇぞシュブンキっ………………ん? なんだ……これ……??」
一度は捕まえたもののまたランタンの中から朱文金は抜け出し、校舎内での追いかけっこを再開。その子どものように元気に泳ぐ赤い魚の黒い尾を見失い、今ピネスが当てずっぽうで入った──一面の白い部屋。
従業員のいつものゴーレムは挨拶もしない、みな掃除で手一杯だ。トレーニング室内はあちこちに威力凄まじき熱されたクレーターができていた。ピネスは迷い込んだこの室内にできあがった未知の光景に、黙りこくり何も言えなかった。
今入室した彼の目に映る何もかもが、分からない。ただ、これがただの遊びではないことだけは嫌でも分かった。
大の字に横たわる紫色が冷めていき、染まっていた魔力の塗装を失い、元の水色の作業着へと色褪せていく。ピネスの見たことのある用務員の女が、盛大に敗北を喫していた姿がそこにあった。
そしてもう一人、そんな用務員をねじ伏せた者がそこにいる。彼も知らないブク高の制服を纏った長い黒髪の女子生徒が、その大の字に伏した用務員の前に立ち、何かを宣っている。
「おそらく魔力の差を埋めるための、様々な特化した願を込めた色変え……それがあなたの異能。そのような面白そうな戦い方をする子は初めてです」
(分かってはいたけどいくら叩いてもまるで魔力も実力も底が見えない。さすがに枯れない井戸が相手じゃ【魔力暴走】はしなかったかー。かと言って、身をも纏うあの厚い魔力のガードと、途中から出てきたあのバカ硬い羽衣の障壁をどうにかクリアしないことには、まともなクリティカルは出ず。んー、先駆者がいると聞いて登ベッツちゃんにコーチングしてもらったこの〝異能の追加ルール〟ってやつ……。登ベッツは【カード】と【じゃんけん】、あたしはこの馴染みの仕事着にとある【システム】を搭載したけど……こりゃ想定通りともピーキーとも分からないね。打撃を受けすぎてこっちが連続魔力暴走を引き起こすと、魔力もなにもかもトんですっからかんになることは分かった、──身を持ってね。異能の使い方が未熟だとこうなるのかぁ……。それともお相手の対応がすこぶる良かったものか。お相手はガン、おそらく願って今言ってたけど。あたしの願かけ込めたゲームチックに求めた強さは通じない……。いっそ能力の路線を変更するか? いんやこれは番外編さぁすがに超格上、挑むには早すぎちゃった? てことでこの敗北──なしでいいよ、ねっ?)
反芻する戦いの結果は完膚なき敗北。ついにお披露目の池原叉鬼の異能も通用せず。己の身に手痛いしっぺ返しを喰らう始末だった。
⬜︎タコイカ学習帳
【魔力暴走】:
なんらかの方法や衝撃で魔力の集中コントロールを著しく失い、体内に宿す魔力がトんでしまうこと。
近頃魔力の性質について熱心に調べていた戦闘術デザインアドバイザーの池原は、自身の昔の怪我の功名もあり、この気の流れがボロボロになる現象を知っていた。
修行の末に爆弾を抱えることになった己の身を、もう幾度も定期的に爆発させていたからだ。
このクリティカルにも関連するあやふやさを孕む現象に目をつけた池原は、防御を固めた強敵に対する対処法として、己の異能の追加ルールの一つとして組み込んだ。
異能内で取り決めたルールとしては、魔力暴走で魔力が一度トんでしまうと内在魔力総量が一時的に減ってしまう。分かってしまえば非常にシンプルなものだ。
つまり作業着の色を【紫色】に塗り替えた池原の放つ特殊な攻撃を受け、相手がその攻撃に耐えきれずに魔力暴走を引き起こしてしまう度に、内在魔力総量の最大パーセンテージが段階的に減り、ガードに回せる魔力も減りに減り、結果ガードが段々と薄く弱くなる。
最終的にはこの内在魔力総量がすっからかんのゼロへと至るまで、異能の効果とダメージは持続されることだろう。
つまり結果的に魔力量が減るということは相手のガードと硬さが弱まり、池原もお得意のクリティカル攻撃が安定し通りやすくなるということである。
校長やピネスにも劣る魔力量の彼女にとっては、相手との魔力の差を度外視し大いにメリットを享受できるそんな異能の一つなのであった。
しかしこれは纏う作業着という分かりやすいフィルターを通して相手に伝え、同時に異能の発動者本人にも適応される諸刃の剣でもある。
だが池原の考える強さ、そして加えてできれば同じ土俵で強者と戦いたいと願う彼女のフェアプレイ精神と信念の現れともいえるだろう……。
登別海指南★池原叉鬼の異能
【鬼怒愛幸-ism(β版)】
⬜︎
「戦い対峙し相手の力量が分かるのは強さの証。私が最初は受けに回るのもきっと見越していたのですね、いい着眼点でした。しかし込めた願がお互いの魔力を通じて覗かれてしまえば、こういった風に逆に賢しさの裏を利用されもします。ご注意を」
天に聳えるその黒い瞳は、地に伏した子の顔をのぞく。その黒き美貌は戦闘での真剣さと冷たさから一変、今ニコりと笑いながら、先ほどの戦いの過程を勝ち誇ることなくただ振り返っていた。
カメラを回しているのを理解してのことか、それが彼女の素であるのかは分からず。
「ありがたいご注意をどうも……。ハァー……めちゃくちゃ人生一ってぐらい楽しませてもらったよ。〝あたしの方は〟だけど。ま、今日のあたしの全力のバージョンはこんなものかな(……こりゃ明日と腰に響くね)」
「私も最初にあった期待以上に楽しめました。これからの子のあなたの成長に大いに期待しています、イケハラサキ。強きに向かうあなたのその強さと姿勢を、私は何一つ嫌いではありませんよ」
「こっちはなんとか傷一つでもって感じで必死だったんだけどねぇー。なんていい親……じゃお言葉に甘えてまた一歩一日成長させてもらう、よっ、いえーい」
勝者からのありがたいお言葉を頂戴した池原は『よっ』という掛け声と共に起き上がった。
手痛く負けた彼女のことを見守っていたパッツン生徒は、勝負を終えた握手の代わりに本日三度目となる小気味のいいハイタッチを交わした。
用意したステージにクレーターを咲かせるほどの激しい番外編の戦いは、事前に約束した通り、お互い楽しめる範囲の実力を出し合い、敗者も勝者も後腐れなくそれぞれの笑顔で終わりを迎えた。
「で、あなたはどうしますか? 先程からめらめらとなさせている……その魔力、そんなに無防備だと私、気になってしまいます」
蛇に睨まれた──いや、蛇などではない。
黒い瞳に黒い髪、それはピネスにとって自分と同じ色であってもどこか決定的かつ圧倒的に違うと断言できる。黒は黒でも質も美しさも柔らかさも迫力も、まるっきり別次元で違うのだ。
美しき何かの化身、その女のことをそう言わずにはいられない。それでさえ言い表すに足りないようにも思えた。
ピネスは自分にそれが振り返るとは思わず、見つめられたその瞬間に、ズキンと心臓が跳ねた。
彼は、それが放つ異質な魔力を敏感にもその肌に感じ取ってしまった。全身の毛が逆立つほどの、異質で膨大なその秘められし魔力を。
微笑んでいてもそれは長い睫毛の鋭い目で睨んでいる。明らかに重々しい殺気を帯びた烏、ミステリアスを超えた黒いプレッシャーを放ち続けるナニかなのだ。
「竹馬競争と同じ、スイッチが入るとおしとやかなだけとは言えないね。しかし、啄むおかわりも返答次第じゃあるってね? はは、がんばれ戦闘のイモムシ2号!」
なにが嬉しいというのか。駆け寄って来たボロつき焼き焦げた作業着の女、その無責任すぎるお気楽な手が、困惑する少年の下げていた手へと叩かれた。
勝手に受け継がれてしまった汗ばみ濡れたそのバトンの意味は一体なんなのか。ピネスには分からない。
「たけうま?? 戦闘のいもむし……にごう?? な、なんか、なんなんだこれ?? いったい……」
「エッチアイ! 朱文金はいたですか!? ──くぬっ? このおっきぃ穴はいったいなんなのですっ?? わぷっ!?」
「おっとと観客は下がった下がった。今ガツってる面白いとこだからねー。あとでパフェおごるから、部外者は退場退場よっよっ」
帽子のツバのカメラをくいと向ける。乱入してきたピンク髪の観客を手早く黙らせ、作業着をきたお姉さんが遠くへと引きずっていく。
その元気な2人の騒ぎを一瞥したパッツン生徒は、クレーターに刺さっていた剣を遠隔からその手に引き寄せ取った。そしてまた、先刻、先の試合に見せたように刃を踊り遊ばせ──意気揚々と挑発した。
あちこちに空いた室内のクレーターが、DPを補充されたゴーレムたちが注ぎ込む特殊なセメントに埋められて補修されていく。
師範と言っていいのかよく分からない関係性の、あのいつもの水色作業着のお姉さんに、笑いながら着々と外堀を埋められていく。
なおも知らない女子生徒から向けられている謎の刃は、彼の腰に携えたその立派な二刀が飾りでないのならば──と楽しそうに切先を向けて、はやし立てる。
抜いても地獄、抜かずともきっとこの女の機嫌を損ねてしまう地獄。まだ何も始まってもいないのに少年の汗はなぜこんなにも流れるのか、その答えはきっと目の前にしかない。
剣を向けられたからには──
「どこからでも受け止めましょうその刃、その魔力、その異能すべてを!!!」
「あぁー……シュブンキンはあとでいいかな……コズミ? ちょっと、外せないスペシャルな強制力ってのが、俺の道にはなんとなく……あるらしいぞッ……!!!」
剣を向けられたからには──!!!
浦木幸はその汗粒が地へ滴る前に顎先をぬぐった。この興奮と、殺気と、入り混じる期待が醒めないうちに、修理されたばかりの疼く……緋色の剣をすべり抜いた。
ピネスとパッツン、話し合うよりも早く、話し合うまでもなく互いの剣は向き合わされた。
メラメラとその魔力を滾らせ、剣に熱を乗せ、今走り出した。
もはや覚悟は決めてある。仕方なく、なんとなく、決してそんなぬるい覚悟ではない。スーパースニーカーの赤と緑の足跡を臆せずに白い地へと刻み、相手の懐へと一気に踏み込む。
今はまだ羽をとじたその不気味な黒い烏へと、剣士、浦木幸は飛び込んだ。
一度は捕まえたもののまたランタンの中から朱文金は抜け出し、校舎内での追いかけっこを再開。その子どものように元気に泳ぐ赤い魚の黒い尾を見失い、今ピネスが当てずっぽうで入った──一面の白い部屋。
従業員のいつものゴーレムは挨拶もしない、みな掃除で手一杯だ。トレーニング室内はあちこちに威力凄まじき熱されたクレーターができていた。ピネスは迷い込んだこの室内にできあがった未知の光景に、黙りこくり何も言えなかった。
今入室した彼の目に映る何もかもが、分からない。ただ、これがただの遊びではないことだけは嫌でも分かった。
大の字に横たわる紫色が冷めていき、染まっていた魔力の塗装を失い、元の水色の作業着へと色褪せていく。ピネスの見たことのある用務員の女が、盛大に敗北を喫していた姿がそこにあった。
そしてもう一人、そんな用務員をねじ伏せた者がそこにいる。彼も知らないブク高の制服を纏った長い黒髪の女子生徒が、その大の字に伏した用務員の前に立ち、何かを宣っている。
「おそらく魔力の差を埋めるための、様々な特化した願を込めた色変え……それがあなたの異能。そのような面白そうな戦い方をする子は初めてです」
(分かってはいたけどいくら叩いてもまるで魔力も実力も底が見えない。さすがに枯れない井戸が相手じゃ【魔力暴走】はしなかったかー。かと言って、身をも纏うあの厚い魔力のガードと、途中から出てきたあのバカ硬い羽衣の障壁をどうにかクリアしないことには、まともなクリティカルは出ず。んー、先駆者がいると聞いて登ベッツちゃんにコーチングしてもらったこの〝異能の追加ルール〟ってやつ……。登ベッツは【カード】と【じゃんけん】、あたしはこの馴染みの仕事着にとある【システム】を搭載したけど……こりゃ想定通りともピーキーとも分からないね。打撃を受けすぎてこっちが連続魔力暴走を引き起こすと、魔力もなにもかもトんですっからかんになることは分かった、──身を持ってね。異能の使い方が未熟だとこうなるのかぁ……。それともお相手の対応がすこぶる良かったものか。お相手はガン、おそらく願って今言ってたけど。あたしの願かけ込めたゲームチックに求めた強さは通じない……。いっそ能力の路線を変更するか? いんやこれは番外編さぁすがに超格上、挑むには早すぎちゃった? てことでこの敗北──なしでいいよ、ねっ?)
反芻する戦いの結果は完膚なき敗北。ついにお披露目の池原叉鬼の異能も通用せず。己の身に手痛いしっぺ返しを喰らう始末だった。
⬜︎タコイカ学習帳
【魔力暴走】:
なんらかの方法や衝撃で魔力の集中コントロールを著しく失い、体内に宿す魔力がトんでしまうこと。
近頃魔力の性質について熱心に調べていた戦闘術デザインアドバイザーの池原は、自身の昔の怪我の功名もあり、この気の流れがボロボロになる現象を知っていた。
修行の末に爆弾を抱えることになった己の身を、もう幾度も定期的に爆発させていたからだ。
このクリティカルにも関連するあやふやさを孕む現象に目をつけた池原は、防御を固めた強敵に対する対処法として、己の異能の追加ルールの一つとして組み込んだ。
異能内で取り決めたルールとしては、魔力暴走で魔力が一度トんでしまうと内在魔力総量が一時的に減ってしまう。分かってしまえば非常にシンプルなものだ。
つまり作業着の色を【紫色】に塗り替えた池原の放つ特殊な攻撃を受け、相手がその攻撃に耐えきれずに魔力暴走を引き起こしてしまう度に、内在魔力総量の最大パーセンテージが段階的に減り、ガードに回せる魔力も減りに減り、結果ガードが段々と薄く弱くなる。
最終的にはこの内在魔力総量がすっからかんのゼロへと至るまで、異能の効果とダメージは持続されることだろう。
つまり結果的に魔力量が減るということは相手のガードと硬さが弱まり、池原もお得意のクリティカル攻撃が安定し通りやすくなるということである。
校長やピネスにも劣る魔力量の彼女にとっては、相手との魔力の差を度外視し大いにメリットを享受できるそんな異能の一つなのであった。
しかしこれは纏う作業着という分かりやすいフィルターを通して相手に伝え、同時に異能の発動者本人にも適応される諸刃の剣でもある。
だが池原の考える強さ、そして加えてできれば同じ土俵で強者と戦いたいと願う彼女のフェアプレイ精神と信念の現れともいえるだろう……。
登別海指南★池原叉鬼の異能
【鬼怒愛幸-ism(β版)】
⬜︎
「戦い対峙し相手の力量が分かるのは強さの証。私が最初は受けに回るのもきっと見越していたのですね、いい着眼点でした。しかし込めた願がお互いの魔力を通じて覗かれてしまえば、こういった風に逆に賢しさの裏を利用されもします。ご注意を」
天に聳えるその黒い瞳は、地に伏した子の顔をのぞく。その黒き美貌は戦闘での真剣さと冷たさから一変、今ニコりと笑いながら、先ほどの戦いの過程を勝ち誇ることなくただ振り返っていた。
カメラを回しているのを理解してのことか、それが彼女の素であるのかは分からず。
「ありがたいご注意をどうも……。ハァー……めちゃくちゃ人生一ってぐらい楽しませてもらったよ。〝あたしの方は〟だけど。ま、今日のあたしの全力のバージョンはこんなものかな(……こりゃ明日と腰に響くね)」
「私も最初にあった期待以上に楽しめました。これからの子のあなたの成長に大いに期待しています、イケハラサキ。強きに向かうあなたのその強さと姿勢を、私は何一つ嫌いではありませんよ」
「こっちはなんとか傷一つでもって感じで必死だったんだけどねぇー。なんていい親……じゃお言葉に甘えてまた一歩一日成長させてもらう、よっ、いえーい」
勝者からのありがたいお言葉を頂戴した池原は『よっ』という掛け声と共に起き上がった。
手痛く負けた彼女のことを見守っていたパッツン生徒は、勝負を終えた握手の代わりに本日三度目となる小気味のいいハイタッチを交わした。
用意したステージにクレーターを咲かせるほどの激しい番外編の戦いは、事前に約束した通り、お互い楽しめる範囲の実力を出し合い、敗者も勝者も後腐れなくそれぞれの笑顔で終わりを迎えた。
「で、あなたはどうしますか? 先程からめらめらとなさせている……その魔力、そんなに無防備だと私、気になってしまいます」
蛇に睨まれた──いや、蛇などではない。
黒い瞳に黒い髪、それはピネスにとって自分と同じ色であってもどこか決定的かつ圧倒的に違うと断言できる。黒は黒でも質も美しさも柔らかさも迫力も、まるっきり別次元で違うのだ。
美しき何かの化身、その女のことをそう言わずにはいられない。それでさえ言い表すに足りないようにも思えた。
ピネスは自分にそれが振り返るとは思わず、見つめられたその瞬間に、ズキンと心臓が跳ねた。
彼は、それが放つ異質な魔力を敏感にもその肌に感じ取ってしまった。全身の毛が逆立つほどの、異質で膨大なその秘められし魔力を。
微笑んでいてもそれは長い睫毛の鋭い目で睨んでいる。明らかに重々しい殺気を帯びた烏、ミステリアスを超えた黒いプレッシャーを放ち続けるナニかなのだ。
「竹馬競争と同じ、スイッチが入るとおしとやかなだけとは言えないね。しかし、啄むおかわりも返答次第じゃあるってね? はは、がんばれ戦闘のイモムシ2号!」
なにが嬉しいというのか。駆け寄って来たボロつき焼き焦げた作業着の女、その無責任すぎるお気楽な手が、困惑する少年の下げていた手へと叩かれた。
勝手に受け継がれてしまった汗ばみ濡れたそのバトンの意味は一体なんなのか。ピネスには分からない。
「たけうま?? 戦闘のいもむし……にごう?? な、なんか、なんなんだこれ?? いったい……」
「エッチアイ! 朱文金はいたですか!? ──くぬっ? このおっきぃ穴はいったいなんなのですっ?? わぷっ!?」
「おっとと観客は下がった下がった。今ガツってる面白いとこだからねー。あとでパフェおごるから、部外者は退場退場よっよっ」
帽子のツバのカメラをくいと向ける。乱入してきたピンク髪の観客を手早く黙らせ、作業着をきたお姉さんが遠くへと引きずっていく。
その元気な2人の騒ぎを一瞥したパッツン生徒は、クレーターに刺さっていた剣を遠隔からその手に引き寄せ取った。そしてまた、先刻、先の試合に見せたように刃を踊り遊ばせ──意気揚々と挑発した。
あちこちに空いた室内のクレーターが、DPを補充されたゴーレムたちが注ぎ込む特殊なセメントに埋められて補修されていく。
師範と言っていいのかよく分からない関係性の、あのいつもの水色作業着のお姉さんに、笑いながら着々と外堀を埋められていく。
なおも知らない女子生徒から向けられている謎の刃は、彼の腰に携えたその立派な二刀が飾りでないのならば──と楽しそうに切先を向けて、はやし立てる。
抜いても地獄、抜かずともきっとこの女の機嫌を損ねてしまう地獄。まだ何も始まってもいないのに少年の汗はなぜこんなにも流れるのか、その答えはきっと目の前にしかない。
剣を向けられたからには──
「どこからでも受け止めましょうその刃、その魔力、その異能すべてを!!!」
「あぁー……シュブンキンはあとでいいかな……コズミ? ちょっと、外せないスペシャルな強制力ってのが、俺の道にはなんとなく……あるらしいぞッ……!!!」
剣を向けられたからには──!!!
浦木幸はその汗粒が地へ滴る前に顎先をぬぐった。この興奮と、殺気と、入り混じる期待が醒めないうちに、修理されたばかりの疼く……緋色の剣をすべり抜いた。
ピネスとパッツン、話し合うよりも早く、話し合うまでもなく互いの剣は向き合わされた。
メラメラとその魔力を滾らせ、剣に熱を乗せ、今走り出した。
もはや覚悟は決めてある。仕方なく、なんとなく、決してそんなぬるい覚悟ではない。スーパースニーカーの赤と緑の足跡を臆せずに白い地へと刻み、相手の懐へと一気に踏み込む。
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