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「ナニこの……個包装のバームクーヘンみたいな中途半端な教室? 落ち着かなくてきもちわるいんだけど」
「チョコっとおもしろいですね?」
「ここから一目で全体を見渡せるな。指揮官が前に立ち衛兵たちをブリーフィングするには良さそうだ。よく考えられている」
「よちよちよち、四角い餌が好きなのかおめぇ?」
「んっん~城の形状とは星型以外もありですねぇ、ホッホ」
ゴシックな衣装の小悪魔女子は軽く不平を垂れる。ギンギラのスパンコール衣装を纏ったチョコ色肌の女は居合わせた部屋の構造に興味ありげに頷き、黒のスーツを着た鉄兜の男は黒板を背にした壇上から扇状の景色を一望した。
白い包帯で全身をオシャレしたミイラ男は珍しいキューブモンスターたちに接し餌をやり、星のサングラスをした怪しげな男は上機嫌に鼻唄を口ずさんだ。
てんでタイプとまとまりがバラバラな悪魔たちは、自由に用意されていた教室内の席に着席した。
しかし時がただ過ぎ、最初は物色していたこの部屋もそろそろ目新しい驚きや発見もなくなった頃合い。手に取るデコられた天使色の拡声器を用い、小悪魔女子はこの場に呼びつけた張本人の男へと大きな声を発した。
「ちょっとカッコつけてないで説明しなさいよ! 何? 今とさっきからずっと足が長い自慢でもしてたわけぇ??」
「……」
黒尽くめのファッションの男は、机の上に己の脚を組み乗せたまま、悠然とした態度で無視を決め込んでいる。かれこれずっとそんな静かな調子であった。
「へへ、なんでも食べるか? よちよち、へへ」
「んっん~~見事な静けさは、余計な争いを生みませーん★」
「悪魔サンフンさん! そのバランス見事なしなやかな体を、チョコっとトレーナーの私に調整させてもらえないでしょうか?」
「だまれギラチョコ野郎」
脚や体に触ろうと近付いてきたギラチョコ女に、悪魔サンフンは椅子に掛けたまま、女の顎先へとナイフのように鋭く向けた足先の捌きを披露した。
「かかっ? なんというシャープな柔軟性! ですがっ、そんなに冷たいとチョコ体質の私もカチっと固まってしまいます? ──ナラ、そこのあなたは調整? チョコっといかがです?」
「【ヤよ】!!!」
向けられた天使の拡声器から飛んでいった【ヤ】と【よ】の魔力文字の塊の隙間をぬるり──柔軟な銀色とチョコ色がポーズを決めながら抜けていった。怒りに染まった赤い文字が砕け散り、教室を汚した塵ゴミは内包していた魔力が失せると同時に消えていった。
しかしそんな女どもの小競り合いも気にせず、悪魔サンフンは淡々と告げた。
「勝手にやれ。俺はオマケのお前らのことは信用していない。純粋な強さだけが俺の城での理だ」
「は? これがあんたの城? アタシがオマケぇ??」
「つまり、ポイントは今後の信用を得る働きしだい。なるほど先程からカチっと冷たいワケです、まだかかっと味見の段階であると」
「なーによ、ツンデレイケメンねぇ! そうならそうと言いなさいよ! このワタシの魅力、存分に見せてやんよ!(って、しれっと近付くなギラチョコ!)」
「白星、黒星……。ホッホ、いつの世いつの時代も傾き自転する星の上でのバランスを求めるもの、こればかりは避けられないものですねー☆★」
「なるほどこの城では強さこそが……か────。舞台の下見をさせてくれ。良い闘いにしたい」
「フッ────」
「ちょっとおすかしッ、アンタどこいくのよ! わざわざ敵が来るからって、このHIGH小悪魔GEMを、こんな寂れた遊園地メンツと一緒くたに呼んでおいて、責任持って一番ガツっとバえる目立てるステージに案内しなさいよ!」
「どうでもいい、言っただろ勝手にしろと。気に食わねぇなら失せろケバオンナ、責任転嫁する弱いヤツに席はねぇ」
「け、けばっ!? だぁれが責任転嫁のよわよわヨッ、ちょっと待ちなさッ──どへぇっ!?」
突如、座っていた椅子がバラバラと崩れ落ちる。HIGH小悪魔GEMは、黒フリルのスカート尻からどしんと痛々しく転んでしまった。
何をすればそのようになるのだろうか、椅子がまるで玩具のパズルのように分解されている。今、床に散らばった残骸へと、室内の皆は驚き視線を集めた。
情けなく転んだ尻を抑え、怒りを思い出したGEMが突っかかろうとするも、既に悪魔サンフンの姿はそこになく、前方の教室のドアだけがぽっかりと開いたままであった。
「かかっ? 黒板にいつの間にか、ABCDEFGの配置図……クラス分けですか? なるほど、ここはチョコっと即席くじで行先を決めましょうー!」
「くじ? なんだそれは?」
「ホッホきいたことがあーーる。★を高めるおまじない♡」
「はい、三振でもヒットでもデッドボールでも恨みっこはなしです! くじ結果の良かった順に好きなアルファベットを選びましょう。あまった特製のチョコっとバットはそのまま食べてもOKです♪」
「さんしん……ヒット……? 分かった、そちらのやり方に任せる。これを一つ選び取ればいいのか?」
「痛ったーーい……ちょちょっと待ちなさい! 残り物には福がないっってぇ相場が決まってんのよ!! アタシが絶対一番! 先頭打者ホームランよ!!!」
気づけば前方の大きな黒板には、ABCDEFG──それぞれの配置に対応した見取り図が、リアルタイムで勝手に詳細にチョーク文字で描かれていく。
温めていた席から立ち上がった悪魔たちは集い、ギラチョコ女に即席で用意されたチョコ色の棒くじを引いていく。
強さだけが理、それだけを言い残し城主の悪魔サンフンは彼らに関与しない。高く高く聳え立つ城へと招き入れた、信念も志も違う自由な悪魔たちが、侵入者を迎え撃つためそれぞれのクラスへと羽ばたいた。
「チョコっとおもしろいですね?」
「ここから一目で全体を見渡せるな。指揮官が前に立ち衛兵たちをブリーフィングするには良さそうだ。よく考えられている」
「よちよちよち、四角い餌が好きなのかおめぇ?」
「んっん~城の形状とは星型以外もありですねぇ、ホッホ」
ゴシックな衣装の小悪魔女子は軽く不平を垂れる。ギンギラのスパンコール衣装を纏ったチョコ色肌の女は居合わせた部屋の構造に興味ありげに頷き、黒のスーツを着た鉄兜の男は黒板を背にした壇上から扇状の景色を一望した。
白い包帯で全身をオシャレしたミイラ男は珍しいキューブモンスターたちに接し餌をやり、星のサングラスをした怪しげな男は上機嫌に鼻唄を口ずさんだ。
てんでタイプとまとまりがバラバラな悪魔たちは、自由に用意されていた教室内の席に着席した。
しかし時がただ過ぎ、最初は物色していたこの部屋もそろそろ目新しい驚きや発見もなくなった頃合い。手に取るデコられた天使色の拡声器を用い、小悪魔女子はこの場に呼びつけた張本人の男へと大きな声を発した。
「ちょっとカッコつけてないで説明しなさいよ! 何? 今とさっきからずっと足が長い自慢でもしてたわけぇ??」
「……」
黒尽くめのファッションの男は、机の上に己の脚を組み乗せたまま、悠然とした態度で無視を決め込んでいる。かれこれずっとそんな静かな調子であった。
「へへ、なんでも食べるか? よちよち、へへ」
「んっん~~見事な静けさは、余計な争いを生みませーん★」
「悪魔サンフンさん! そのバランス見事なしなやかな体を、チョコっとトレーナーの私に調整させてもらえないでしょうか?」
「だまれギラチョコ野郎」
脚や体に触ろうと近付いてきたギラチョコ女に、悪魔サンフンは椅子に掛けたまま、女の顎先へとナイフのように鋭く向けた足先の捌きを披露した。
「かかっ? なんというシャープな柔軟性! ですがっ、そんなに冷たいとチョコ体質の私もカチっと固まってしまいます? ──ナラ、そこのあなたは調整? チョコっといかがです?」
「【ヤよ】!!!」
向けられた天使の拡声器から飛んでいった【ヤ】と【よ】の魔力文字の塊の隙間をぬるり──柔軟な銀色とチョコ色がポーズを決めながら抜けていった。怒りに染まった赤い文字が砕け散り、教室を汚した塵ゴミは内包していた魔力が失せると同時に消えていった。
しかしそんな女どもの小競り合いも気にせず、悪魔サンフンは淡々と告げた。
「勝手にやれ。俺はオマケのお前らのことは信用していない。純粋な強さだけが俺の城での理だ」
「は? これがあんたの城? アタシがオマケぇ??」
「つまり、ポイントは今後の信用を得る働きしだい。なるほど先程からカチっと冷たいワケです、まだかかっと味見の段階であると」
「なーによ、ツンデレイケメンねぇ! そうならそうと言いなさいよ! このワタシの魅力、存分に見せてやんよ!(って、しれっと近付くなギラチョコ!)」
「白星、黒星……。ホッホ、いつの世いつの時代も傾き自転する星の上でのバランスを求めるもの、こればかりは避けられないものですねー☆★」
「なるほどこの城では強さこそが……か────。舞台の下見をさせてくれ。良い闘いにしたい」
「フッ────」
「ちょっとおすかしッ、アンタどこいくのよ! わざわざ敵が来るからって、このHIGH小悪魔GEMを、こんな寂れた遊園地メンツと一緒くたに呼んでおいて、責任持って一番ガツっとバえる目立てるステージに案内しなさいよ!」
「どうでもいい、言っただろ勝手にしろと。気に食わねぇなら失せろケバオンナ、責任転嫁する弱いヤツに席はねぇ」
「け、けばっ!? だぁれが責任転嫁のよわよわヨッ、ちょっと待ちなさッ──どへぇっ!?」
突如、座っていた椅子がバラバラと崩れ落ちる。HIGH小悪魔GEMは、黒フリルのスカート尻からどしんと痛々しく転んでしまった。
何をすればそのようになるのだろうか、椅子がまるで玩具のパズルのように分解されている。今、床に散らばった残骸へと、室内の皆は驚き視線を集めた。
情けなく転んだ尻を抑え、怒りを思い出したGEMが突っかかろうとするも、既に悪魔サンフンの姿はそこになく、前方の教室のドアだけがぽっかりと開いたままであった。
「かかっ? 黒板にいつの間にか、ABCDEFGの配置図……クラス分けですか? なるほど、ここはチョコっと即席くじで行先を決めましょうー!」
「くじ? なんだそれは?」
「ホッホきいたことがあーーる。★を高めるおまじない♡」
「はい、三振でもヒットでもデッドボールでも恨みっこはなしです! くじ結果の良かった順に好きなアルファベットを選びましょう。あまった特製のチョコっとバットはそのまま食べてもOKです♪」
「さんしん……ヒット……? 分かった、そちらのやり方に任せる。これを一つ選び取ればいいのか?」
「痛ったーーい……ちょちょっと待ちなさい! 残り物には福がないっってぇ相場が決まってんのよ!! アタシが絶対一番! 先頭打者ホームランよ!!!」
気づけば前方の大きな黒板には、ABCDEFG──それぞれの配置に対応した見取り図が、リアルタイムで勝手に詳細にチョーク文字で描かれていく。
温めていた席から立ち上がった悪魔たちは集い、ギラチョコ女に即席で用意されたチョコ色の棒くじを引いていく。
強さだけが理、それだけを言い残し城主の悪魔サンフンは彼らに関与しない。高く高く聳え立つ城へと招き入れた、信念も志も違う自由な悪魔たちが、侵入者を迎え撃つためそれぞれのクラスへと羽ばたいた。
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