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「ということで最後の作戦会議だ」
空腹と装備を整え、冷水に浸けゆっくりと抽出した秘蔵の【ドピンク茸のポーション】で、失われた魔力を万全に満たす。
午前9時45分。朝礼台にお立ちになった校長先生の号令の元、皆が集められたのは、まだ痛々しい焦げ跡の残る広いグラウンドの中であった。
「うちの最高戦力の寝ぼけたピネスくんをボッコボコにしたサンチュのお兄ちゃんは、決して侮れない。よってこれからブク校の全戦力で突っ込む!!! と言いたいところだが」
「あのぉ! おれ、ボッコボコってわけでは!!」
「黒い花火がきれ~~~~にお空に爆発した後から見てたけど、ボッコボコだったよ。あと最高戦力は、まだあたしだね校長様、ははっ」
「ってなんで見てて来ないんだ! その最高戦力が!」
「そりゃ昨日、トレーニングに張り切りすぎてちょっと腰の辺りが、ねっ? いやー、その分じっくり観察してたけど、お相手は侮れないよっ。ありゃプロかじってんね、あの蹴りのキレは上澄みの上澄みよ、あたしの目から見てもね。(あたしも朝弱いのよ)」
「まじか……(朝は俺もだけど……)」
「ごほんっ! まぁまぁ、過ぎたことは仕方がない。事態は過去が起こした今と未来だ、それにかかっている、いいか?」
「そーそー、はーぬけは戦ったけどダサくて弱くてまんまとサンチュ後輩ちゃんを連れ去られただけだし、うん、ダサいだけ」
「そうだな。ってぇ……なんも言い返せねぇが……」
「そんなことより急ぐべきなのです!! お兄さんとはいえ不法侵入の不良なのですよっ! 誘拐されたサンチュさんの身がもしかすると危ないのです!!」
「わたしもそう思うけど。けど、兄って言うなら妹を殺したりはしないでしょ。テンション下がるし」
「そうね、ここで慌てては手のひらの上ね。希望的観測だけど、最悪を想定するのは少し早いわ」
「這いつくばって見上げてろ、ってまで言われたんだ。わざわざ妹迎えに来て見下げたことはしねぇって俺も思う。連れ去るってことは……少なくともそれぐらいに大事だってことだよ……な?」
「はーぬけ頭いいじゃん、そーそー、それだから悪人にも家族はいるでしょ。徹底的にヤルなら、虫の息のはーぬけから片付けてるし」
「虫の息の片付けって……確かにそうだな……?」
「くぬぬぅー……それでも不良なのですよ! とにもかくにもッ、サンチュさんのことが第一ですっ!」
「妹をかわいがりたいのか。それか誘っているのか、な?」
「フッ、そうだな。そこで全力でサンチュ救出に向かいたい!! とはさっき言ったが。────こちらにも守るべきものは、他にもある。等しく守るべきものがな。校長としてそれを疎かにはできない」
「くぬぬぅー……学校の風紀なのです……」
「そうださすが風紀委員部部長。察するようにここからは安全と冒険のバランスを踏まえて、そのギリギリを見極め、現有する戦力をしぶしぶ分けねばなるまい」
「いつもの校内の風紀を守る側と、この先の円形校舎のダンジョンの風紀を正す側の二手ね? よくある手として、派手に動き回った方が釣りだす囮役を兼ねてる可能性もあるわ。それで妹さんを連れ去ったとも考えられるわね」
「ふむふむ、そうだ! ふふふ、つい30分前の私もその可能性は考えた。これまでと同じように、いやすっかり侵入されてしまった今は、様々な悪意や悪戯が向けられる可能性が考えられる。これまで以上にやはり、学校側にも戦える者を残さねばなるまい。そしてそれは風紀委員部、主にキミたちに全体の指揮を任せたい」
「くぬぬぅー、もちろんそれも風紀委員部の大事な仕事なのです!!!」
「ふっふ話が早くて助かる。そこでッ! こうなる未来を事前に読んだ私の考えた!! 最強最高の布陣がこれだ────!!!」
皆で会議と熟考を長々と重ねる内に、良質なプランは既にまとまり、答えは導き出された。
不黒文校長は、「バンッ」と白扉を叩いた。バトラーバトラーのキャラクター、シャイニーを模したマグネットの下に、一枚の紙が冷蔵庫へと貼り付けられた。
⬜︎
【サンチュ奪還・円形校舎ダンジョン攻略パーティー】
池原叉鬼
浦木幸
木浪智火瑠
Venus
紫紫刀
冷蔵庫
不黒文SP校長先生
【不黒高校風紀防衛パーティー】
榎田椎名
緒方結美
小角灯
登別海
水野サーガ
モミジ
⬜︎
各々は群れたひよこのように密集した体と体の隙間から顔を出し合い、紙に書かれていた自分の名前とその役割を確認した。
「先生、なんで冷蔵庫に……」
「ちょうどいいからな。スペシャルな主婦の知恵だ。教育者とあるものグラウンドに黒板を持ってくるわけにはいかん」
「そんな矜持ははじめて聞くんだけど、冷蔵庫もってくんのもどうなの。まあ、むっすーの冷蔵庫、便利で勝手に動くけど」
「まっ、戦力のバランスは良いかな。はは、いつもより火力強めだけど」
「それではさっき言ったように風紀委員部の2人は協力手分けし、そちらで不在の私、校長の代わりを勤めたまえ、ふっふ」
「紫檀お嬢様の事は一時お任せしました。サンチュさんには仲良くしてくれた恩があります。この足が動く限り精一杯努めさせてもらいます!(そろそろお嬢様は起床した頃合いですかね?)」
「もちろん生徒たちのことは等しく任せるのです!! 不審者は見かけしだい、シュブンキンといっしょに正しますっ!!」
「校内のパトロールと訳あって動けない生徒の補助、それに高所からの監視役、いろいろと異能のない生徒たちも交えて協力をうながし、それぞれに割り当てる必要があるわね。うん、そっちは私が早急に考えておくわ部長」
「もちろん了解したのです!! 登別さん!」
「ここでやらなきゃ、プロじゃないからねー。弟子がボコボコに失点した分は取り返すか。とすると君の出番、ないかもよぉー? ははっ」
「弟子とかアシスタントとかクリティカルなんとかとか……俺のことなんてなんでもいいけど……あぁっ! 別に出番はなくたっていい、とにかくサンチュがッ! あぁーっとなんだ……」
「サンチュちゃんお腹空かせてると思う、浦木くん。これ!」
「そそ、それだ緒方さんっ! そうだな……きっとサンチュは朝飯も食ってねぇーッ、さんきゅっ! ────とにかくんなわけで……ブク高、いくぞーーーー!!!」
「ピネスくん!? それは私の大事にとっていたショートケーキの上の苺だが!??」
「若いねぇっ」
「声でかっ……ま、いこっ!!」
「ハイッ、ブク高いきます!!!」
「うーーー、ならばァ! スペシャルブク高パーティー出撃だ!!!」
「だからもう言ってんじゃん、ならばもなにも」
「美しいもの、汚される前に取りにいきますわ」
「うおおおいくぞーー!!!」
「ふっふぅーー! さぁ乗り込むぞ、取り返すぞ、私の愛する生徒とダンジョンを!!! 余さず全てな!!!」
託し託され、互いの熱を灯し合う。
防衛パーティーの生徒たちは残されたグラウンドから、声を張り上げ出撃する彼らの勇ましい背を見送っていく。
目覚めたシタンお嬢様は窓から顔を出し手を振り、気づいた執事が手を振り返し、深々とお辞儀をする。
おにぎりに、特別な薬草茶に、役立つ武器に厳選きのこ、茶人とコックとシスターは便利な異能冷蔵庫に、かき集めた万全をつめこんだ。
屋上からハープの音が流れる。皆の耳に聞こえてくるのは、冒険心をかきたてる勇ましいカリブの海の音だ。
皆を送りだす、校舎にかかった元気な垂れ幕だけが今はない────
サンチュ奪還パーティーを組んだ6人と1台は、学校の塀の向こうに聳え立つ円形校舎のダンジョンを目指して、今、覚悟をあらたに見上げる先へと、地を踏み締め歩み始めた。
空腹と装備を整え、冷水に浸けゆっくりと抽出した秘蔵の【ドピンク茸のポーション】で、失われた魔力を万全に満たす。
午前9時45分。朝礼台にお立ちになった校長先生の号令の元、皆が集められたのは、まだ痛々しい焦げ跡の残る広いグラウンドの中であった。
「うちの最高戦力の寝ぼけたピネスくんをボッコボコにしたサンチュのお兄ちゃんは、決して侮れない。よってこれからブク校の全戦力で突っ込む!!! と言いたいところだが」
「あのぉ! おれ、ボッコボコってわけでは!!」
「黒い花火がきれ~~~~にお空に爆発した後から見てたけど、ボッコボコだったよ。あと最高戦力は、まだあたしだね校長様、ははっ」
「ってなんで見てて来ないんだ! その最高戦力が!」
「そりゃ昨日、トレーニングに張り切りすぎてちょっと腰の辺りが、ねっ? いやー、その分じっくり観察してたけど、お相手は侮れないよっ。ありゃプロかじってんね、あの蹴りのキレは上澄みの上澄みよ、あたしの目から見てもね。(あたしも朝弱いのよ)」
「まじか……(朝は俺もだけど……)」
「ごほんっ! まぁまぁ、過ぎたことは仕方がない。事態は過去が起こした今と未来だ、それにかかっている、いいか?」
「そーそー、はーぬけは戦ったけどダサくて弱くてまんまとサンチュ後輩ちゃんを連れ去られただけだし、うん、ダサいだけ」
「そうだな。ってぇ……なんも言い返せねぇが……」
「そんなことより急ぐべきなのです!! お兄さんとはいえ不法侵入の不良なのですよっ! 誘拐されたサンチュさんの身がもしかすると危ないのです!!」
「わたしもそう思うけど。けど、兄って言うなら妹を殺したりはしないでしょ。テンション下がるし」
「そうね、ここで慌てては手のひらの上ね。希望的観測だけど、最悪を想定するのは少し早いわ」
「這いつくばって見上げてろ、ってまで言われたんだ。わざわざ妹迎えに来て見下げたことはしねぇって俺も思う。連れ去るってことは……少なくともそれぐらいに大事だってことだよ……な?」
「はーぬけ頭いいじゃん、そーそー、それだから悪人にも家族はいるでしょ。徹底的にヤルなら、虫の息のはーぬけから片付けてるし」
「虫の息の片付けって……確かにそうだな……?」
「くぬぬぅー……それでも不良なのですよ! とにもかくにもッ、サンチュさんのことが第一ですっ!」
「妹をかわいがりたいのか。それか誘っているのか、な?」
「フッ、そうだな。そこで全力でサンチュ救出に向かいたい!! とはさっき言ったが。────こちらにも守るべきものは、他にもある。等しく守るべきものがな。校長としてそれを疎かにはできない」
「くぬぬぅー……学校の風紀なのです……」
「そうださすが風紀委員部部長。察するようにここからは安全と冒険のバランスを踏まえて、そのギリギリを見極め、現有する戦力をしぶしぶ分けねばなるまい」
「いつもの校内の風紀を守る側と、この先の円形校舎のダンジョンの風紀を正す側の二手ね? よくある手として、派手に動き回った方が釣りだす囮役を兼ねてる可能性もあるわ。それで妹さんを連れ去ったとも考えられるわね」
「ふむふむ、そうだ! ふふふ、つい30分前の私もその可能性は考えた。これまでと同じように、いやすっかり侵入されてしまった今は、様々な悪意や悪戯が向けられる可能性が考えられる。これまで以上にやはり、学校側にも戦える者を残さねばなるまい。そしてそれは風紀委員部、主にキミたちに全体の指揮を任せたい」
「くぬぬぅー、もちろんそれも風紀委員部の大事な仕事なのです!!!」
「ふっふ話が早くて助かる。そこでッ! こうなる未来を事前に読んだ私の考えた!! 最強最高の布陣がこれだ────!!!」
皆で会議と熟考を長々と重ねる内に、良質なプランは既にまとまり、答えは導き出された。
不黒文校長は、「バンッ」と白扉を叩いた。バトラーバトラーのキャラクター、シャイニーを模したマグネットの下に、一枚の紙が冷蔵庫へと貼り付けられた。
⬜︎
【サンチュ奪還・円形校舎ダンジョン攻略パーティー】
池原叉鬼
浦木幸
木浪智火瑠
Venus
紫紫刀
冷蔵庫
不黒文SP校長先生
【不黒高校風紀防衛パーティー】
榎田椎名
緒方結美
小角灯
登別海
水野サーガ
モミジ
⬜︎
各々は群れたひよこのように密集した体と体の隙間から顔を出し合い、紙に書かれていた自分の名前とその役割を確認した。
「先生、なんで冷蔵庫に……」
「ちょうどいいからな。スペシャルな主婦の知恵だ。教育者とあるものグラウンドに黒板を持ってくるわけにはいかん」
「そんな矜持ははじめて聞くんだけど、冷蔵庫もってくんのもどうなの。まあ、むっすーの冷蔵庫、便利で勝手に動くけど」
「まっ、戦力のバランスは良いかな。はは、いつもより火力強めだけど」
「それではさっき言ったように風紀委員部の2人は協力手分けし、そちらで不在の私、校長の代わりを勤めたまえ、ふっふ」
「紫檀お嬢様の事は一時お任せしました。サンチュさんには仲良くしてくれた恩があります。この足が動く限り精一杯努めさせてもらいます!(そろそろお嬢様は起床した頃合いですかね?)」
「もちろん生徒たちのことは等しく任せるのです!! 不審者は見かけしだい、シュブンキンといっしょに正しますっ!!」
「校内のパトロールと訳あって動けない生徒の補助、それに高所からの監視役、いろいろと異能のない生徒たちも交えて協力をうながし、それぞれに割り当てる必要があるわね。うん、そっちは私が早急に考えておくわ部長」
「もちろん了解したのです!! 登別さん!」
「ここでやらなきゃ、プロじゃないからねー。弟子がボコボコに失点した分は取り返すか。とすると君の出番、ないかもよぉー? ははっ」
「弟子とかアシスタントとかクリティカルなんとかとか……俺のことなんてなんでもいいけど……あぁっ! 別に出番はなくたっていい、とにかくサンチュがッ! あぁーっとなんだ……」
「サンチュちゃんお腹空かせてると思う、浦木くん。これ!」
「そそ、それだ緒方さんっ! そうだな……きっとサンチュは朝飯も食ってねぇーッ、さんきゅっ! ────とにかくんなわけで……ブク高、いくぞーーーー!!!」
「ピネスくん!? それは私の大事にとっていたショートケーキの上の苺だが!??」
「若いねぇっ」
「声でかっ……ま、いこっ!!」
「ハイッ、ブク高いきます!!!」
「うーーー、ならばァ! スペシャルブク高パーティー出撃だ!!!」
「だからもう言ってんじゃん、ならばもなにも」
「美しいもの、汚される前に取りにいきますわ」
「うおおおいくぞーー!!!」
「ふっふぅーー! さぁ乗り込むぞ、取り返すぞ、私の愛する生徒とダンジョンを!!! 余さず全てな!!!」
託し託され、互いの熱を灯し合う。
防衛パーティーの生徒たちは残されたグラウンドから、声を張り上げ出撃する彼らの勇ましい背を見送っていく。
目覚めたシタンお嬢様は窓から顔を出し手を振り、気づいた執事が手を振り返し、深々とお辞儀をする。
おにぎりに、特別な薬草茶に、役立つ武器に厳選きのこ、茶人とコックとシスターは便利な異能冷蔵庫に、かき集めた万全をつめこんだ。
屋上からハープの音が流れる。皆の耳に聞こえてくるのは、冒険心をかきたてる勇ましいカリブの海の音だ。
皆を送りだす、校舎にかかった元気な垂れ幕だけが今はない────
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