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三日月と星を飛び越えて螺旋階段を駆け上がり、聞こえて来る静かな波の音と共に辿り着いたのは────
《20階層……?》にて──。
紫色の灯がふたつ、暗闇と水に妖しく映えている。それ以外の光源はない……とても暗い、だが足元にある草地のような感触を踏み締め、おそるおそる進んだそこに独り、黒い椅子に佇み座る男がいる。
男は手ごろな木を小刀で削りながら木像を彫り出していく。それは暇つぶしなのか、それとも精神統一する為の作業なのかは分からない。
ただ、敵を倒し敵をすり抜け上へと登り続け、やっと一つの目的へと辿り着いた。ピネスは確信していた訳ではないが、その男が区切りのいい階層のそこで誰かを待ち構えているように見えた。つい今日の朝、グラウンドで見た忘れもしないあの黒い装いの男〝サンフン〟が。
ピネスは今目が合った、その暗がりに悠然と黙りながら木像を彫りおこし続ける男に、左右周囲を見渡し確認しながら先ずはこう尋ねた。
「サンチュは?」
「期待外れだな」
「……?」
「邪魔なミーハー妹なんざいるか。ずっと寝ていた方がマシだろう」
「……!」
その返答はどういう意味か。サンフンはまだ木像を小刀で彫りながら、続けた。
「乗り込んできた馬鹿どもの中でお前が一番乗りとはな。遠慮なく席につけ」
「何がだ」
「言ったろ全てを奪う────俺の城では強さだけが正義だ。そこに着け」
気づけば辺りに用意された椅子が一つある。サンフンにそこに掛けろと促されるも、ピネスはしばらく何も言わぬままその場に突っ立ち、己の髪をかいた。
「城…………あぁー……わりぃけど、俺、それならたぶん途中でテストをズルしてここに来てっから座れねぇ。だからなんとなく」
サンフンの言うことが全てなら、ピネスの通って来た道のりは全てが100点とはいかないだろう。ピネスはその席に着くことを拒み、さらにここまで円形校舎のダンジョンを駆け抜け、温めて来た自分の言葉を続けた。
「────あんたの事、確かめてやる。あいにく朝はめっぽう弱いからさ、今度はここまであったまってきた全力でな」
「……全力だと? 弱っちぃ情けで生かされて、わざわざ俺にもう一回殺されたいか? お前──変わってるな」
サンフンは下方を見ながら木を削ることをやめた。そして気に召さなかったのか未完のその作品を、後ろへと投げ捨てた。
「相当に馬鹿だろ」
「かもな」
静まり、暗がりに嗤う黒い悪魔と、見返すボタンの一つ欠けたままのツギハギブレザーのナイト。
2人の呼吸がイヤに重なった時……水面に何かが投げ入れられた音を聞き────瞬く間に、黒と緋色の火花が散った。
ぶつかり合った剣と剣、はじまりの一合の合図に、次々とひとりでに燭台の火が灯り、用意されていた豪華な舞台の全貌が明るく露わになる。
木像はぷかぷかと浮かび、鬼角のついた女神が憎たらしく微笑んでいる。
決する闘いは20F頂上、暗黒巌流島で────
「命が惜しくなったか?」
「そんなの惜しいならぁ……たぶんッダンジョンなんてこねぇよ!」
「フッ、じゃぁ死ねッ悪魔的にナ!」
緋色と翠のショートソードは臆さない、ピネスは魔力に色づいた二刀を勇ましく構え直し、当たり前の返事をする。
黒い悪魔サンフンは、発色し威嚇するその懲りぬ蛮勇を鼻で嗤う。魔力を流し倍ほどに伸びゆく……悪魔の黒く鋭い刃が、のこのこと挑んできた冒険者に今、襲い掛かった────。
《20階層……?》にて──。
紫色の灯がふたつ、暗闇と水に妖しく映えている。それ以外の光源はない……とても暗い、だが足元にある草地のような感触を踏み締め、おそるおそる進んだそこに独り、黒い椅子に佇み座る男がいる。
男は手ごろな木を小刀で削りながら木像を彫り出していく。それは暇つぶしなのか、それとも精神統一する為の作業なのかは分からない。
ただ、敵を倒し敵をすり抜け上へと登り続け、やっと一つの目的へと辿り着いた。ピネスは確信していた訳ではないが、その男が区切りのいい階層のそこで誰かを待ち構えているように見えた。つい今日の朝、グラウンドで見た忘れもしないあの黒い装いの男〝サンフン〟が。
ピネスは今目が合った、その暗がりに悠然と黙りながら木像を彫りおこし続ける男に、左右周囲を見渡し確認しながら先ずはこう尋ねた。
「サンチュは?」
「期待外れだな」
「……?」
「邪魔なミーハー妹なんざいるか。ずっと寝ていた方がマシだろう」
「……!」
その返答はどういう意味か。サンフンはまだ木像を小刀で彫りながら、続けた。
「乗り込んできた馬鹿どもの中でお前が一番乗りとはな。遠慮なく席につけ」
「何がだ」
「言ったろ全てを奪う────俺の城では強さだけが正義だ。そこに着け」
気づけば辺りに用意された椅子が一つある。サンフンにそこに掛けろと促されるも、ピネスはしばらく何も言わぬままその場に突っ立ち、己の髪をかいた。
「城…………あぁー……わりぃけど、俺、それならたぶん途中でテストをズルしてここに来てっから座れねぇ。だからなんとなく」
サンフンの言うことが全てなら、ピネスの通って来た道のりは全てが100点とはいかないだろう。ピネスはその席に着くことを拒み、さらにここまで円形校舎のダンジョンを駆け抜け、温めて来た自分の言葉を続けた。
「────あんたの事、確かめてやる。あいにく朝はめっぽう弱いからさ、今度はここまであったまってきた全力でな」
「……全力だと? 弱っちぃ情けで生かされて、わざわざ俺にもう一回殺されたいか? お前──変わってるな」
サンフンは下方を見ながら木を削ることをやめた。そして気に召さなかったのか未完のその作品を、後ろへと投げ捨てた。
「相当に馬鹿だろ」
「かもな」
静まり、暗がりに嗤う黒い悪魔と、見返すボタンの一つ欠けたままのツギハギブレザーのナイト。
2人の呼吸がイヤに重なった時……水面に何かが投げ入れられた音を聞き────瞬く間に、黒と緋色の火花が散った。
ぶつかり合った剣と剣、はじまりの一合の合図に、次々とひとりでに燭台の火が灯り、用意されていた豪華な舞台の全貌が明るく露わになる。
木像はぷかぷかと浮かび、鬼角のついた女神が憎たらしく微笑んでいる。
決する闘いは20F頂上、暗黒巌流島で────
「命が惜しくなったか?」
「そんなの惜しいならぁ……たぶんッダンジョンなんてこねぇよ!」
「フッ、じゃぁ死ねッ悪魔的にナ!」
緋色と翠のショートソードは臆さない、ピネスは魔力に色づいた二刀を勇ましく構え直し、当たり前の返事をする。
黒い悪魔サンフンは、発色し威嚇するその懲りぬ蛮勇を鼻で嗤う。魔力を流し倍ほどに伸びゆく……悪魔の黒く鋭い刃が、のこのこと挑んできた冒険者に今、襲い掛かった────。
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