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106 黒く解けないパズルの中で
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登りゆく階段、渡りゆく廊下。
しかし、店主から借りたスマホ画面の3Dマップに赤く示されていたそのポイントの反応は、探す途中で忽然と失せていた。
赤いポイントが音もなく消失した、聡明な彼女にはそれでも考えられる要因は複数ある。くろまねき商店の店主の【絶対的金銭感覚】そのレーダーに引っかかったことに気づき、対象が晒していた魔力を消したのか、既にどこかに帰り居なくなった冷やかしの珍客なのか、特殊な隠蔽武器や遮断するマントを使ったのか、それとも────
やはり気のせいではない。先程から見知らぬ誰かの魔力の存在を感じる……。そんな見えないテリトリーに侵入したような重い感覚が、彼女にはある。自分の魔力がざわざわと乱され、定まらない。そんな……ずっと、募るイヤさ……。
しかし姿はやはり見えない。この体に肩にのしかかる重々しい魔力の発生源について、しばし考え耽り彼女が立ち止まっていると……微かな足音と鳴き声が耳に響いた。
背方を振り返ると──
登別海は、廊下の暗がりに現れた四角いヤギ、ブク校で飼われているそのドツジの特徴的な姿と、その生き物を腕に抱えながら撫でる──謎の者の姿を見た。
「ヤギの目は四角いって知ってた? こんなに人懐っこいのに悪魔だなんて、かわいそうね」
白いドツジと溶けあう、白き存在。とても澄んだ声で他愛のないことを宣っている。
女神とも見紛うような美しさを表すその白髪その白肌とその佇まい、その白きシルエットから同時に醸し出される儚さと危うさに、自分の心臓が何故だかそっちへと引きつけられるような奇妙な感覚に陥る。鼓動する胸を一瞬手を添えて抑える──出会ってはいけないものだと、登別海は一目ソレを拝んだだけで酷く自覚する。
「……暗くなると、丸くなるわ」
問われた登別はそう、か細い声で言葉を返した。
嘘か本当か、もっともらしい雑学を耳にした女は、さっそく試す。ドツジの前に手を添えて、振りながら、ゆっくり……いないいないばあっ────
「へぇー、────ホントだ」
右に宿す青い瞳はとても澄んでいる、ワラう少女のようだ。しかし、もう一つの四角い灰色の瞳はとても似ていて似ていない。
儚げな素顔に邪を宿し、妖しげなその色を己の一部とし、馴染ませ、静観している。
不気味な存在が微笑んだ瞬間、制服の内で不正確に鼓動する彼女の心臓が凍りつく。
今目の前で、空気をも他者をも支配する圧倒的な魔力量を解き放つそれは────大悪魔クリアクレア。
出会ってはいけない、あの日世界から消えた世界の敵。眠れし古代悪魔の眼を盗み取った、大罪人────。
しかし、店主から借りたスマホ画面の3Dマップに赤く示されていたそのポイントの反応は、探す途中で忽然と失せていた。
赤いポイントが音もなく消失した、聡明な彼女にはそれでも考えられる要因は複数ある。くろまねき商店の店主の【絶対的金銭感覚】そのレーダーに引っかかったことに気づき、対象が晒していた魔力を消したのか、既にどこかに帰り居なくなった冷やかしの珍客なのか、特殊な隠蔽武器や遮断するマントを使ったのか、それとも────
やはり気のせいではない。先程から見知らぬ誰かの魔力の存在を感じる……。そんな見えないテリトリーに侵入したような重い感覚が、彼女にはある。自分の魔力がざわざわと乱され、定まらない。そんな……ずっと、募るイヤさ……。
しかし姿はやはり見えない。この体に肩にのしかかる重々しい魔力の発生源について、しばし考え耽り彼女が立ち止まっていると……微かな足音と鳴き声が耳に響いた。
背方を振り返ると──
登別海は、廊下の暗がりに現れた四角いヤギ、ブク校で飼われているそのドツジの特徴的な姿と、その生き物を腕に抱えながら撫でる──謎の者の姿を見た。
「ヤギの目は四角いって知ってた? こんなに人懐っこいのに悪魔だなんて、かわいそうね」
白いドツジと溶けあう、白き存在。とても澄んだ声で他愛のないことを宣っている。
女神とも見紛うような美しさを表すその白髪その白肌とその佇まい、その白きシルエットから同時に醸し出される儚さと危うさに、自分の心臓が何故だかそっちへと引きつけられるような奇妙な感覚に陥る。鼓動する胸を一瞬手を添えて抑える──出会ってはいけないものだと、登別海は一目ソレを拝んだだけで酷く自覚する。
「……暗くなると、丸くなるわ」
問われた登別はそう、か細い声で言葉を返した。
嘘か本当か、もっともらしい雑学を耳にした女は、さっそく試す。ドツジの前に手を添えて、振りながら、ゆっくり……いないいないばあっ────
「へぇー、────ホントだ」
右に宿す青い瞳はとても澄んでいる、ワラう少女のようだ。しかし、もう一つの四角い灰色の瞳はとても似ていて似ていない。
儚げな素顔に邪を宿し、妖しげなその色を己の一部とし、馴染ませ、静観している。
不気味な存在が微笑んだ瞬間、制服の内で不正確に鼓動する彼女の心臓が凍りつく。
今目の前で、空気をも他者をも支配する圧倒的な魔力量を解き放つそれは────大悪魔クリアクレア。
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