母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月

文字の大きさ
38 / 48

36.パーカーさんの魅力

しおりを挟む
 茶会用衣装を、それぞれ10着ずつ選んだ。他の参加者と被らないように、その日の天候に合わせられるように、お祖母様の気が変わった時のために。何が起きても、この中の衣装以外は着ませんからね! という予備であって、衣装替えをする予定はない。
 個人的には、服など何でもいい。ドレスでなければ、何でもいい。動きやすくて、汚しても懐が痛まない服なら、何でもいいと思っている。それなのに、嬉しそうに服選びをするお祖母様に付き合って、疲れてしまった。多分、お祖母様は、ウルクハイより体力がある。
 少しお茶を頂いて休憩してから、翡翠の様子を見に行った。


「あ、お兄ちゃん、見てみて! おどり覚えたよ!!」
 私を見つけると、翡翠は、嬉しそうにこちらに駆け寄ってきて、今日の成果を披露してくれた。
「えーと、右、左、右、左。左、右、左、右。できた!」
 自信満々披露してくれたのは、基本のステップ1つだけだった。半日頑張って、1つだけ。しかも、うろ覚え臭い。茶会は、明日だと聞いたのに。
「セレスティア様、ぬいぐるみを抱えて踊ってもよろしいでしょうか? 私は、お気に入りのぬいぐるみを手放せないので、ぬいぐるみと踊るしかできないのです。明日までに、気に入るものを見繕って参りますので」
「ひどいよ! 頑張ったのに」
 翡翠はぷんすか怒っているが、私の成果を見ておいて、よく言えるな、としか思えなかった。
「いや、翡翠は頑張った。ありがとう。だが、先生の技能に疑問を感じているだけだ。どうせなら、違うのを教えて欲しかったと思っただけだ」
「そっかー」
「いやいやいや、4歳なら、本当にこれくらいで。え、なんで?」
 パーカーさんも、翡翠の成果に満足していたらしい。私の成果を以下略。
「ぬいぐるみより、翡翠ちゃんの方が、可愛いわよ」
 お祖母様は、翡翠の成果に満足しているらしい。私は、翡翠よりお祖母様の方が余程可愛いような気がしているが。恐らくだが、実年齢より30歳以上若く見えるのだ。年の離れた姉にしか見えない恐ろしいお祖母様だ。
「そうですか。それでは、試しに一緒に踊ってみましょう」
 一発本番は嫌なので、翡翠と組んで踊ってみることにした。

「翡翠、さっきのステップは、全部忘れていい。全てを私に任せ、進む方へ付いてくること。最悪、転んでもいい。私が支えてる間に、復帰して欲しい。
 注意することは、表情だ。うつむかず、前を見て、楽しそうに笑ってろ。今回は、お試しだから、それだけでいい」
「わかった。がんばる!」
 伯父が拍子をとってくれるのに合わせて、模範演舞と同じ踊りをしてみた。翡翠の頭は、興味がある分野にしか働かないが、身体能力と勘だけなら私より上だ。頭で理解させるより、自然とそこに足を運びたくなるよう身体を動かしてやれば、それなりに踊っているように見せかけることはできるだろう。翡翠が重くて少ししんどかったものの、一応、最後まで通すことはできた。支えるのが大変すぎて、まったく客観視できなかったので、出来はわからないのだが。
「どうでしょうか?」
 お茶会の余興で汗だくになるのは、完全アウトな気がするのだが、これでダメなら、やはりぬいぐるみ作戦しかない。
「どうしてだ!」
 途中から、伯父は拍子を取るのを放棄したので、お祖母様がバトンタッチをしていた。声を張るほど、気に入らない踊りだったらしい。
「そんなに許せない踊りでしたか。残念です」
 よし。ぬいぐるみを買いに行こう。緑小鬼か黄色熊が欲しい。お店で売っているだろうか。オーダーメイドじゃ明日までには、間に合わないのだが。
「違うわ。翡翠ちゃんが、ちゃんと踊っているようにしか見えないから、負けを感じているのよ」
 お祖母様は、笑顔だから、ぬいぐるみ作戦には移れないのが、決定した。ぬいぐるみの方が、軽くていいのにな。


 翌日、意気揚々と衣装部屋に突撃した。さっさと茶会を終わらせて、とっとと帰るのだ。可愛い黄色熊と共に!
「お兄ちゃん、ぬいぐるみはなしって言ったのに、ひどいよ!」
「何を怒っているんだ。ダンスは、翡翠と踊るつもりだ。これは、私のお友達のキリンジくんだ。格好良いだろう。昨日、パーカーさんにおねだりして、買ってもらったんだ!」
「なんで、1人だけ買ってもらってるの? ズルくない」
「パーカーさんは、すごいんだぞ? パパに似た顔で生まれたのに、いい年して、彼女の1人もいないんだ。独身貴族の小金持ちなんだ。ちょっと話したら、すぐに買ってきてくれたぞ。キリンジくん以外にも、2つもオーダーメイドに応じてくれたんだ。いい伯父だった。パパに捨てられたら、パーカーさんの子にしてもらおうかな」
 ウキウキ衣装を手に取ったら、図られたことに気付いた。
 昨日、お祖母様と一緒に選んだ空色のスーツである。翡翠の瑠璃色のドレスと対になると言われて了承したものだった。
 スーツは、昨日選んだものと相違ないのだが、下に着るシャツのレースとスカーフ? が、びらびらだった。こんなの着てたら、お菓子食べれるのかな、と心配になるくらいのびらびら加減だ。本当に、これを着なくちゃいけないのか。してやられた。
「琥珀ちゃん、心配しないで。ちゃんとクマちゃんのスカーフも用意したのよ?」
 お祖母様が、ぬいぐるみ用のお揃いのスカーフを作ってくれたらしい。
「クマちゃんではありません! キリンジくんです!!」
 キリンジくんとお揃いなら、やむを得ない。びらびらを着ることに決めた。


 お茶会は、お祖母様のお友達の家で開催される。馬車に乗って出かけたのだが、着いたのは、三軒隣の家だった。
 家のサイズが大きいので、玄関から門を出るまでも近いとは言えないのだが、それにしたって歩いて行けよ、と思った。ドレスで歩くのは大変とか、転んで汚すと困るとかいう理由なのかもしれないが、そんな理由なら、魔法で飛べば良かったと思う。
 そうか、翡翠は魔法で浮かせておけば、ぬいぐるみより軽くなる可能性があるな。ダンスパートナーは、翡翠とキリンジくんだったら、どちらがより踊りやすいだろうか。可愛さなら、間違いなくキリンジくんだ。しかし、キリンジくんと踊ると、相撲をとっているように見えてしまわないか、という懸念があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

うさぎの楽器やさん

銀色月
ファンタジー
森1番のオリーブの木にオープンした、うさぎの楽器やさんのお話です。 児童文学系ファンタジー✨ 大人の方にも。 <うさぎの楽器やさん>のお話 <森のオルガン>のお話 <やまねこのふえ>のお話  の、3部構成になります。 …カテゴリー迷子です。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。 魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。 人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。 そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。 物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...