異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
32 / 141
連載

第四十六話 お花見・本番

しおりを挟む
第四十六話 お花見・本番


トン、カン、トン、カン。
金槌を打ち付ける音が響く。

「ふぅ・・・朝からうるさくてごめんね!」
「クゥ!」

桜の樹のうろから、モチとモチの家族が顔を出す。
う~ん、可愛い!
今日はお花見!
木枠を作り、畳を乗せる。
地面にゴザだけだと、お尻が痛くなるからね!
テーブルを置いて、座布団を人数分設置。

「後は、料理を並べて・・・」

お酒も用意してあるし・・・。

「ヒナしゃま~!」
「くだもの、とってきたぁ!」
「いっぱいありますよぉ」

最初に到着したのは、猫達とクロ。
果樹園で果物を収穫してきてくれた。

「ありがとう、皆のご飯も沢山あるからね」

猫達はおさかな型のクッキーが主食。
偶に果物も食べるが、クロみたいに私と同じ食事はしない。
少し寂しいけどね。
猫達に手伝ってもらい、食器を並べていく。
そうこうしている内に、皆が集まり出した。
ジロー、クレス、アヌリ、セバスにツバキ。

「ヒナ様、亀爺をお連れいたしました」
「ありがとう!」

セバスが亀爺を連れてきてくれた。

「ふぉっふぉっ。お招きいただき、感謝するぞ」
「ゆっくりしていってね」

亀爺の席は、水をはった木桶だ。

「お、おい!」

ジローが指した方を見ると、ドラゴンが・・・一、二、三、四?多くない?
最初にリシュナが人化しながら降り立った。その姿も優雅で、女王様だ。

「ヒナ、来たぞ」
「ようこそ」

挨拶をしていると、次々に人化して降りて来きた。

「はじめまして。君がヒナだね。私はリシュナの夫、ジェイクだ」

リシュナの旦那さんと言う事は、国王!
数名連れて来るとは聞いていたけどさ!
ダンディなオジサマだ。

「あ、あの・・・先日は、どうもすみませんでした!」

いきなり頭を下げたのは、アルシェだ。

「もう気にしなくて大丈夫だから、ね?」
「ありがとうございますぅ」

う~ん、若干怯えられてる気がするぅ。まぁ、思いっきり殴ったしね。

「妹の事、私からも詫びよう」

妹・・・兄妹か。って事は、クロのお兄ちゃん!

「本当にもう気にしていませんから。二人も、あの通り元気ですし」
「寛大なお心、感謝する。俺の名はジェフだ」
「ヒナです」

一通り挨拶が終わり、それぞれの席に着いた。

「え~っと・・・今日はお集りいただき、ありがとうございます。ささやかではございますが、皆さんに楽しんでいただけると・・・あ~、こういうの苦手。いっぱい飲んで食べて、楽しみましょう!乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」

やれやれだ。

「おっと、あれを用意しないと」

皆が料理を食べ始め、そこかしこから「美味しい」と言う声が聞こえてくる。
一先ず、上々なんじゃないかな。

バーベキューコンロに行き、昨日仕込んでおいた物を取り出す。

「五平餅!」

平たい串に潰したお米を付けて、草鞋型に成形。それを、炭火で焼いて行く。

「五平餅には、これでしょ」

これまた仕込んでおいた、特製タレ!赤味噌ベースの、甘辛!
お米に少し焦げ目が付いたら、刷毛でタレを塗り、もう一度焼く。

「はぅ」

久しぶりの香ばしい香に、思わずヨダレが・・・。
今度、味噌カツ作ってみようかな。

「良い匂いだな」

一番にやって来たのは、やっぱり食いしん坊のジローだ。

「来ると思った。食べる?」
「もちろん」
「はいよ。熱いからね」

ジローに一本渡すと、躊躇無くかぶり付いた。

「熱いって言ったのに」
「はふっ、はっ、美味い!」

やっぱり、自分の作った物を「美味しい」って言われるのは嬉しい。

「ヒナ様、こちらをお持ちしても?」
「ありがとう。よろしく」

セバスに食事は必要ないので、もっぱら給仕に回ってもらってる。
ツバキは桜の木の上で、モチ一家と楽しそうだ。

「う~ん・・・あ、忘れ物。ちょっと家に行って来るね」

今朝作ったプリンを、冷蔵庫の中に忘れて来た。
セバスに後を任せ、取りに戻る事にした。





「やっぱりヒナちゃんの料理は美味しいわねぇ」
「当然だ」
「ヒナの料理を食べたら、王都の料理が味気なく感じたな」
「分かる!そうなのよねぇ」

珍しく気があっているジローとクレスに、陶酔状態のアヌリ。
リシュナ達につられて、いつもよりお酒が進んでいる様子。
それを見て、リシュナがふと一息ついた。

「おい、そこのオス共」

リシュナの手には、透明な酒の入った升。その中には、一枚の桜の花びらが浮いている。

「お前達は、ここで何をしておるのだ」
「「「え?」」」
「えっと・・・私は、ヒナちゃんや猫ちゃん達のお洋服を作ったり?」
「俺は、畑仕事だな」
「私は、ヒナ様のお傍にいられるのなら、何でもやります」

それぞれの答えだが、リシュナは深くため息をついた。

「情けない。服、畑仕事に雑用?そんな物、お前達がおらぬでも、ヒナ一人で出来るじゃろう」
「それは」
「まぁ」
「お前達がヒナの事を憎からず想うておるのは分かる。それが友情であろうが恋情であろうが、どうでも良い。衣食住をヒナに頼り切る・・・まぁ、あ奴の事じゃから、どうとも思うておらんじゃろうがな」
「リシュナ」

夫であるジェイクが止めようとするが、「お主は黙っておれ」とピシャリと言われてしまった。

「ヒナの傍は、居心地が良い。飾らぬ言動に、裏表の無い性格。見返りを求める気すらない。お前達はどうじゃ?戯れにヒナの心をくすぐる程度で、自分達の居場所を得たつもりになっておるだけ。たとえお前達が明日ここを去ると言うても、ヒナは笑顔で送り出すだろうのぉ。少しは寂しがるやもしれぬが、そんな浅い穴なぞ、直ぐに塞がるじゃろうて」

リシュナの言葉に、三人は飲み込む言葉すらなかった。

「そうじゃのぉ・・・お前達が開ける穴なぞ、ジェフが三日で埋められる程度じゃな」
「母上、変な所で私を出さないでいただきたい」
「じゃが、嘘ではなかろう。何もかもをヒナに与えられ、挙句に助けられ、それでも尚、己が男だと言えるのかのぉ。儂は何も、此処を去れと言っておるわけではない。お前達が去れば、ヒナは少なからず悲しむ。それを想うて尚、このままにはしておけぬのじゃ」

リシュナが酒の口を付けると、桜の花びらがゆらゆらと揺れた。

「我の予想じゃと、お前達の中の一人でも、ヒナから言い寄られた者はおるまい」
「「ぐっ」」
「私は、ヒナ様をお慕いしておりますが、けして恋情の様な邪な気持ちでは」
「ならば、ヒナの写真でも貰い、立ち去ればよかろう」
「それは・・・」
「我は、ヒナが幸せならば何も言わぬ。我が息子の命の恩人であり、大恩ある友人じゃ。幸せに暮らしてほしい。じゃが、このままではどうなる?ズルズルとヒナの優しさに浸かり続けるのか?まるで、母御に甘える子供のようじゃのぉ」

彼女の言葉に、ジロー、クレス、アヌリの三人は、己の拳を握りしめる事しか出来ない。
言い返す言葉が、見つからないのだ。

「それでも、ヒナはお前達をここから追い出す事はせぬだろう。あの優しい娘は、一度懐に入れた者は死ぬまで忘れる事は無いだろうからな。じゃが、ヒナを泣かせる事があれば・・・ヒナが許しても我が許さぬ。その時は、古龍族全てを敵に回す覚悟をせよ」

一瞬、強い風がざぁっとふいた。殺気とも呼べる空気が、花びらと共に舞い踊る。

「う、わぷっ!?」

突然聞こえた声に、空気が一瞬にして緩んだ。

「うわっ、口の中に入った。今の風、凄かったねぇ・・・あれ?どうしたの?」
「何、皆ちと飲み過ぎただけじゃ。お主の作る料理が美味いからのぉ」
「あはは、ありがとう。甘い物持って来たけど、入る?」
「勿論じゃ!さぁ、はよう!」

それぞれにプリンを配り、果物や三色団子も出した。

「ん~、想像以上じゃ!」
「そう?それは良かった。あ、三色団子もどうぞ」
「もちろん、両方頂こう」
「わぁ、これ美味しい!」
「この団子、酔いが治まったような?」
「ああ、緑色のにはお茶の葉を混ぜてあるので、胸焼けに効くかもしれないですね」

リシュナ達には好評だ。ジロー達は・・・酔い過ぎたのかな?
結構強いお酒も出したしね。

「はい、お茶。多少気分が良くなると思うよ?」
「ん?ああ、ありがとう」
「とっても美味しいわ、ヒナちゃん」
「ありがとう!」

お花見は概ね好評で幕を閉じた。
来年もまた、皆で集まってワイワイできたら良いなぁ。
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。