異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第五十六話 無表情の理由

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第五十六話 無表情の理由


「えっと、これは・・・」
「気にするな」

いや、無理でしょう。
緑溢れる庭園。花々が咲き、優雅なお茶会・・・の横で、巨大なドラゴンがプリンを食べている。
六トンのプリンなんてなんの冗談だと言うサイズだが、リシュナが持つと普通のカップに見える。ドラゴン、恐るべし。

「ふぅ・・・やはり、お主の作る菓子は別格じゃな」

二杯目の紅茶を飲み終えると、リシュナが人型に戻って帰って来た。
スタイル抜群・・・六トンのプリン、どこ行った!?

「ヒナ、何か欲しい物は無いか?」
「夢と希望と愛と自由」

しまった。つい前の世界の癖で、口からペロッと出てしまった。

「それは冗談として、何故欲しい物?」
「酒やクロの事もある。お主は金を欲しがらぬからの」
「スキルを貰ったよ?お礼をするなら、私の方だと思うけど」

超便利スキル、ホームセンター。かなりお世話になってます。

「それはクロを救ってくれた礼じゃ。礼に礼を返していては、永遠に終わらぬ」
「母上、ヒナはこちらが欲しいと」
「ん?そんな物ならば、いくらでもあるぞ。ゴート」
「こちらに」

ゴートさんがキラキラした箱をテーブルの上に置いて蓋を開けると、中には更にキラキラのビー玉が入っていた。
何時の間に用意したの!?セバスもそうだけど、執事って凄いな!

「使い方はアイテムバッグと同じだが、装備品しか入らぬ」
「装備品・・・」

下着も装備品に入るのか?
防御力高い下着・・・痴漢防止には良いかも?
いや、この世界に満員電車は無いだろう。

「どうぞ」
「箱ごと!?いやいや、そんなにいらないよ!二つか三つあれば十分!」

箱ごと貰っても、クローゼットの中身を全部入れても半分以上余る!

「それではドラゴンの涙一つ分にもならぬではないか」
「十分です!」
「ふむ・・・そうじゃ、ジェフはどうじゃ?」
「は?」
「婿に」

思わず口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

「そんな、手土産持たせるみたいに」
「なんじゃ、気に入らんか?」
「気に入る、気に入らないの問題じゃありません!自分の子共を物みたいに扱わない!」
「我とて、ヒナだから申しておる。ジェフは王座に興味が無い。次期国王が決まれば城を出てゆかねばならぬのだが、下手をすればどこぞの山に引きこもりかねん」

引きこもり?

「見ての通り、いつもぼんやりとしておるからのぉ」

え、これぼんやりしているの?無口とか寡黙とかじゃなくて?

「婿はともかく、島なら場所はいっぱいあるよ。家を出なきゃいけないのは大変だもんね。ただし、ジェフが来たいって言ったらね」
「分かった。では、礼は別のものが良いか・・・ゴート」
「こちらに」

また、名前を呼ばれただけなのに、テーブルに小さな箱を置いた。

「礼になるかどうかは分からぬが、これをお主に」

指輪が入っていそうな小さな箱を、リシュナに渡された。
開けてみると、小さな豆が入っていた。

「それは、種だ」

豆じゃなかった。

「随分と昔に手に入れたものだが、何をしても芽吹かなかった」

見た目は枝豆に近い。つやつやとした緑色。

「芽吹かない?」
「土に植えても、水に入れても、駄目だった」

色艶からして、種が死んでいるって感じもしない。
取れたてと言われても信じるだろうな。

「触ってみても良い?」
「好きにしてくれ。それはもうお主のものじゃ」

そう言われて触ってみると、予想外にぷにっとした感触があった。
強く押せば、プチッと行きそう。怖いな。

「心配せずとも、我が踏んでも傷一つ付かなかったぞ」
「踏んだって、ドラゴンで?」
「そうだ」

ドラゴンが踏んでも大丈夫!じゃないだろ!どんな種だよ。

「ありがとう。色々やってみるよ」
「もしも芽吹いたら、おしえておくれ。それともう一つ」

今度は名前を呼ばれていないのに、ゴートさんが二度手を叩いた。
すると、数名のメイドさん達が大き目の扉を運んできた。

「お主専用の扉じゃ。これでいつでも遊びに来ると良い」
「ありがとう。でも、大丈夫?警備の関係とか」
「ふふ、心配はいらぬよ。お主に害が無いのは周知の事実。何も問題はあるまいて。それに、我もクロに会いたいからの」
「キュ」
「それとも、国盗りでもしてみるか?」
「全身全霊で遠慮します」

島まで飛んでくるより、連絡貰って私が繋げた方が早いしね。

「分かった。使わせてもらうよ」

リシュナと話をするのは楽しい。
年上のお姉さんって感じだ。
まぁ、ドラゴンの女王様なんだけどねぇ。

「そういえば、あの坊主どもはどうした?」
「坊主?ああ、ジロー達の事?」
「そうじゃ」

坊主・・・まぁ、数千年生きているリシュナからすれば、数百年のジロー達は子供みたいなもんか?

「連絡は無いよ。けど、ジローとはこの前ばったり、ね。元気そうだったよ」
「ふむ・・・女と共におった、と言うところかのぉ」

エスパーがここにも!?

「あの「ピー」エルフが・・・」

リシュナから黒いオーラが!

「いやほら、ジローだって冒険者だし、ね!女の人達も冒険者っぽかったから!」

何故私がフォローせんといかんのか!

「友達の友人関係まで口出すのも、どうかと思うし!」

私がそう言うと、黒いオーラが治まっていった。

「友達、か。ふむ、そうじゃの。友達であれば、女を連れていようと問題無いな」
「?」
「ふふ、自業自得、だの」
「へ?」

聞き取れなかったけど、何か楽しそうに笑っているリシュナ。

「リシュナ様」
「ん?ああ、もうそんな時間か。すまない、ヒナ。来客のようだ」
「え、ああ、大丈夫!」
「ジェフ。ヒナの事、頼んだぞ」

へ?
リシュナの目線を追うと、羽毛の塊がいた。
よく見ると、塊から足が生えている。

「ジェフ!」

リシュナが大きな声で呼ぶと、羽毛がバサバサと散って飛んでいく。

「全部、鳥?」

羽毛の塊は、数十羽の鳥だった。
そして、中からジェフさんが現れた。と言うか、座っていたジェフさんが鳥に蔽われていたみたいだ。
しかも、寝てる!

「まったく・・・その内苔でも生やしそうだな」

リシュナが去っていった後、ようやく目を覚ましたジェフ。

「ん・・・ん?」
「えっと、おはよう?」
「・・・おはよう」

ぽんにゃりとした顔!なるほど、リシュナの言った事が分かった気がする。
それに、クロさんや・・・いないと思ったら、ジェフの膝の上におったんかい。
今も気持ちよさそうに寝ている。

「クロ、そろそろ帰るよ」
「キュ~・・・」

クロを起こすと、寝ぼけながら私の首に抱き着き、また寝た。
こういう所は、まだまだ子供だなと思ってしまう。

「はいはい」

背中を支えてあげると、気持ちよさそうに力を抜くクロ。
ふと見ると、ジェフが座ったまま両手を広げていた。

「ん・・・」
「ん?」
「・・・俺も」

こっちも寝ぼけとるんかい!
でも、このままにしておくのもなぁ。
周りを見渡してみても、誰もいない。

「しょうがないなぁ・・・よっこいせっと」

ジェフの両手をかわし、担ぎ上げた。俵担ぎである。
私の肩の上で、ぷら~んと垂れ下がるジェフ。

「なんか、違う・・・」
「文句を言うなら、その辺に捨てる」

そのまま歩いて部屋の中へと入ると、ゴートさんを見つけた。
流石にちょっと目を見開いたけど、取り乱したりはしなかったのは流石だ。

「どうしたら良い?」
「申し訳ございません、こちらへ」

ソファに下ろすように言われたのでそうすると、ジェフは既に寝ていた。
すると、どこから取り出したのか、ゴートさんがジェフに毛布を掛けてあげた。

「じゃあ、私は帰りますね」
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

リシュナが用意してくれた扉をしっかりと覚え、そのまま扉を使って島へと帰った。

「お帰りなさいませ、ヒナ様」

出迎えてくれたセバス。

「セバス、いつもありがとう」

思わずお礼を言った。
セバスとゴートさん、会わせてみたら意外と面白そうだな。
とりあえず、このおねんねちゃんを寝かせて来ますか。
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