異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第五十七話 ぷに種

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第五十七話 ぷに種


「う~ん」

只今、温室で思案中です。
リシュナから貰ったぷに種(プニプニした種)は、彼女が言っていた通り土に埋めても水に入れても発芽しなかった。
ノナさんとセバスに聞いても何の種なのか分からなかった時は驚いたな。

「ヒナ」

ノナさんだった。

「どうしたの?」
「アルパの毛刈りをするから、見にくるかと思ってね」
「行く!」

ノナさんを抱えて温室を出ると、生暖かい風が吹いた。

「もうそろそろ夏だねぇ」

最近、もこもこした雲をよく見る様になってきた。

「あの種はどうだい?」
「な~んにも」
「ならば、ドライアドに聞けば良い」
「ドライアドって、綺麗なお姉さんの姿をしていて、見目の良い男の人を誘惑して・・・って、やつ?」
「ほう、知っておったか」

まぁ、ゲームや漫画でもお馴染みだし、神話にも出てくるからね。

「女は喰われる心配は無いが、姿を現さない分、見つけるのが困難になる」

男(イケメンに限る)ならば、向こうから出て来てくれるけど、女はガン無視ですか。
会社にも、いたなぁ・・・。

「それ、見つけられないんじゃ?」
「これを持って行け」

渡されたのは、小さなハンドベルだった。

「赤い花をつけた蔦がはう、樫の樹を探して、鳴らせば良い」
「へぇ、ありがとう」

ノナさんって、何だかんだで優しいと言うか・・・ツンデレ?

「アルパと同じように刈ってやろうか?」
「何にも言ってないけどごめんなさい」
「お前さんに何かあったら、この島がどうなるか分からないからね」
「ああ、それなら心配ないよ。島の充電は終わっているから、私がいなくても、あと千年?くらいは大丈夫だってセバスが言ってた」

ノナさんなら、千年後も生きてそうだけど・・・とは、口が裂けても言いませんけどね。

「自分がいなくても、か」
「ん?」
「はよう行かんと、毛刈りが終わるぞ」
「はいはい」

途中でクロと猫達にも声を掛け、皆で毛刈り見学にやって来た。

「「「ふぉっふぉっふぉっ」」」

アルパの小屋へやって来ると、三婆がすでにスタンバっていた。
手には手動のバリカン。ちょっと怖い。

「「「ほい!」」」

掛け声と共に三婆の姿が消えた!?
そして、物凄い速さでアルパの毛が刈られて行く!

「「「ほ~い!」」」

再び三婆の姿が見えた時には、アルパはすっかり涼し気なマルガリータ(丸刈り)に!

「ふぅ、五秒もかかってしもうた」
「若い頃は三秒じゃったの」
「儂らも年じゃて」
「「「ふぉっふぉっふぉっ」」」

いや、十分だろ。
クロや猫達が拍手をしている。
二頭目のアルパも見事に終わり、これから刈った毛を綺麗にして毛糸にするのだそうだ。
猫達がお手伝いするらしく、私は邪魔だと追い出された。

「私だって、糸紡げるのにぃ」

シルキナから糸を紡ぐのは、今は三婆の仕事となっている。
確かに私がやるよりも断然綺麗なんだけどね・・・。

「お主は器用だか不器用だか分からん」
「それ、褒めてる?」
「いいや?」
「酷い!」
「ボケ防止だと思って任せておけ。そんな事より、ツバキの所へ行くぞ。ドライアドの森の場所を教える」
「へ~い」





やってきました、神社にあるツバキの部屋。

「ツ~バキ~」
「は~い」

中へ入ると、ふよふよとツバキが宙に浮いていた。

「あれぇ?珍しい組み合わせねぇ」
「無駄話は良い。マジェルナの森を出せ」
「はいは~い。マジェルナの森ね・・・ここよぉ」

世界地図で見せてくれた。このまま海を渡った、別の大陸にあるようだ。

「ここ、砂漠だ」
「砂の国、トーナ王国よぉ」

トーナ・・・どこかで聞いた事があるな。

「そう言えば、アヌリちゃんがトーナ出身って言ってたわねぇ」
「ああ、それで聞き覚えがあったんだ」

ドライアドがいると言うマジェルナの森の隣に、広大な砂漠が広がっていた。
案内無しに入ると、迷うとか言ってたな。
まぁ、上から行けば関係ないけど。

「ドライアドは森の中心にいる。だが、ここから入って行った方が良い」

ノナさんが指したのは、砂漠とは反対側の森の端。

「上からモチに落としてもらう、じゃ駄目なんだ」
「森の木をむやみに傷付けると、ドライアドの怒りを買うぞ」

森は木でみっちみち。枝の一本も折らずに着地するのは無理だろうな。
モチには森の手前で降ろしてもらい、歩いて行く事になった。





「ありがとね!」
「クゥ!」

送って来てくれたモチにお礼を言って見送る。

「はてさて、行こうか」
「キュ!」

今日はクロも一緒。こんな所じゃ人もいないだろうから、私も猫のまま来ている。
森の木々はかなり背が高く、幹は両手を広げても半分も回らないくらい太い。
樹齢何百年か、千年以上はありそうだ。
森の中を歩く事二時間。
コンパスを頼りに、南を目指して進んで行く。

「そろそろ休憩しようか」

慣れない場所での無理は禁物。
地面に直の焚火は怖いので、キャンプ用の焚火台をセット。
お水を入れたヤカンを置いて、ベンチに座ってお湯が沸くのを待つ。
向こうの世界ではキャンプをした事無いけど、なかなか良いね。
そろそろお湯が沸くかな・・・ん?
立ち上がりかけた時、森の奥から何かが走って来るのが見えた。

「はぁ~・・・」

思い切り、ため息が出た。

「またか」

そう、またか、だ。
走っているのは、鎧を身に着けた女性。
なんだろうね、この世界は森に入ると追われる女騎士に出くわすのかね。
真っ直ぐこっちに向かって走って来る。

「ああ、狼か」

女性の後ろに、数頭の狼の姿。
探索で調べると、更に数頭いる。
私に気付かず、通り過ぎて・・・くれる訳ないよね。

「すまない!助力を願いた・・・魔獣!?」

まぁ、そうなるよね。
息を切らせた女性は、私を見るとへなへなと地面に座り込んでしまった。
顔に「絶望」と書いてあるようだ。失礼な。
そうこうしている内に、狼に囲まれたみたいだ。

「キュ~!」
「クロ、ここで戦っちゃ駄目だよ」

臨戦態勢に入ったクロの頭を撫でて、落ち着かせる。
この森での戦闘はなるべく避けるように、ノナさんから言われていた。

「グルルル」
「出来れば、穏便にお引き取り願いたいんだけどねぇ」
「ウ~」

う~ん、怖くないなぁ。
狼たちが少しずつ距離を縮めて来る。

「・・・躾けて、あげようか?」

ちょっとだけ威嚇してみた。
すると、狼たちが尻尾を巻き、お尻を下げた。
そしてそのまま踵を返し、逃げる様に去って行った。
え、マジ?
そんなに怖かったかなぁ?失礼な。
まぁ、穏便に済んだから良しとしよう。

「だいじょう」
「ひぃっ・・・ば、化け物」

またか・・・これで三度目だ。
プチッと、何かが切れる音がした。

「あぁ?」

思わず、女騎士の頭を掴んだ。一応、爪は出してませんよ?それくらいの理性は保ってます。

「むぐっ!?」
「獣人と言い人族と言い、毎回毎回人が助ける度に化け物だ魔獣だと・・・そんなにお望みなら、煮て焼いて食ってやろうか?」
「キュ!」

クロもご立腹である。

「ん?」

反応が無いので手を離してみたら、女騎士がその場にパタリと倒れた。
どうやら気絶したみたいだ。

「・・・やれやれだね」

つくづく面倒だな。





「う・・・ん・・・」

お昼ご飯の用意をしていると、女騎士が目を覚ました。
結局そのまま放置する事も出来ず、結局彼女が目覚めるまで待つ事にした。
両頬引っ叩いて起こす、という選択肢もあったけどね。

「目が覚めた?」
「ひっ・・・」

なんだかなぁ。
まぁ、いいや。放っておこう。
こんな所に一人でいるくらいだ。目が覚めれば、自分でなんとかするでしょ。

「クロ、熱いから気を付けてね」
「キュ!」

出来立て熱々のホットドッグをクロに渡すと、自分の息を吹きかけて少し冷ましてからかぶり付いた。

「キュ~!」
「美味しい?」
「キュ!」
「まだあるから、ゆっくり沢山お食べ」

私も一口・・・うん、美味しい!
帰ったらバーベキューとか良いかもなぁ。
グキュルルル、と盛大な音が聞こえて来た。

「あ・・・」

女騎士が頬を染め、自分のお腹を押さえた。
こっちをチラ見しながら・・・この世界の女騎士って、こんなに面倒なの!?
それは何?「こっちに来て、一緒に食べよう」的な事を期待しているの!?

「その・・・私はカルーネル王国騎士団、メリル・アルトナイルだ」
「ご丁寧にどうも」
「私はこの森にボア討伐に来たのだが、先程のワーウルフに襲われ、荷物を無くしてしまった」

何か語り始めた。

「それでその・・・出来れば、それを一つ・・・」

全部言わせるの?みたいな空気。

「助けてくれてありがとう、さっきはごめんなさい」
「え?」
「ワーウルフから助けてくれてありがとう、化け物と呼んでごめんなさい」
「は?」

ここまで言っても、分からないのか・・・。

「物乞いをする前に、お礼と謝罪じゃないの?一応、命の恩人ですけど?」
「なっ・・・物乞い!?こちらが名乗ったにも関わらず、自分は名乗りもしないくせに!」

自分は微塵も悪くありませんって顔だ。

「助けてもらってお礼も言わないやつに、名乗る名は持ち合わせていなくてね」
「ふっ・・・名乗る名が無いのだろう?人の言葉を解し、人の様に食事をしようと、所詮は獣。近隣の村から畑がボアに荒らされると申告があり来たが、お前ではないのか?その食べ物も、村から奪った物だろう!」

女騎士が剣に手を掛けた。
森での戦闘は避けるようにって、言われてたんだけどなぁ。
カチャリ、と音がした瞬間だった。

「この・・・大馬鹿者がぁ!」

ゴン!と凄い音がして、女騎士が地面に倒れた。
もう、何なの次から次へと・・・。
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