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第五十八話 隊長さん
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第五十八話 隊長さん
「この・・・大馬鹿者がぁ!」
ゴン!と凄い音がして、女騎士が地面に倒れた。
また気絶しちゃったよ。
「いやぁ、申し訳ない」
突然現れたのは、女騎士と同じような鎧を着た大柄の男性。
一見、今駆け付けましたって感じだけど、女騎士が気絶した辺りから気配を消して木の陰に隠れてこちらを伺っていた。
「隊を離れてどこに行ったかと思ったら・・・本当にすまないな」
「・・・いいえ。実害があったわけじゃないので、特になんとも」
グキュルルル、と盛大な音が響いて来た。
あんたもかい!
「・・・食べます?」
「良いのか?」
男性がチラリと女騎士を見た。
「まぁ、それにはあげませんけど」
「当分起きないから良いだろ。その辺に転がしておけば」
おや、良い性格をしていらっしゃる。
ちゃんと私から離しつつ、男性を挟んだ反対側に置くあたり、部下思いではあるようだ。
「そんじゃ、ちょっと待ってくださいね」
焚火台の網の上に、新しいミトの実ウィンナーとパンを乗せて焼く。
「先にお茶、どうぞ」
「おお、すまんな」
コップを渡した時、男性の右腕が無いのに気付いた。
「はぁ~・・・年を取ると、どうにも温かいもんが良くなるなぁ」
「ははっ、そこまで年には見えないですけど」
「いやいや、実は今日の任務で引退が決まっててなぁ」
「引退?年齢制限でもあるんですか?」
身体付きと片腕が無いとは思えない動き、それに観察力。どれを取っても、引退が必要とは思えない。
「これのせいだとは思わないのか?」
男性が自分の右肩を叩く。
「十分強そうだなぁと思って」
「はっはっ!嬉しいねぇ。まぁ、実際は右足も右目も駄目なんだけどな」
「そんな事、初対面の私に言っても良いんですか?自分で言うのもなんだけど、怪しいでしょ」
「そうだなぁ・・・そこに転がってる馬鹿を、殺さずにいてくれた。その分の信頼ってとこだな」
信頼ねぇ。これっぽっちも思ってなさそうだけど。
「後は、年寄りの世間話ってとこだ」
「愚痴、ではないんですね。それが原因なら、辞めなければいけない、不満がありそうですけど」
おっと、ウインナーが焦げる。
パンに切り目を入れて、千切りキャベツと焼きたてのウインナーを挟む。
ケチャップとマスタードを掛けて。出来上がり。
「どうぞ」
「ありがとな!ん~、美味い!」
一口で半分行ったぁ!豪快だな!
「こんなに美味い腸詰、食べた事無いぞ!」
「そりゃどうも。クロのおかわりも」
「キュ!」
「・・・ドラゴンの幼体か。随分と懐いているんだな」
「まぁ、卵から孵したんで、半分親だと思ってるみたいですね」
「へぇ~、そいつは凄いな」
ホットドックのおかわりを、男性にも渡した。
笑顔で美味しそうに食べる姿は、爽やかで人好きそうな、イケオジ騎士って感じだ。
「俺は元平民でな。農民だった両親が亡くなり、この身一つで村から追い出された。腕っぷしだけはあったが、冒険者になろうとは思わなくてなぁ。町で喧嘩して、取っ捕まって・・・騎士団の隊長に拾われた」
う~ん、これは嘘じゃない。
「騎士団ってのはお貴族様が多くてなぁ。俺みたいな平民出は、お気に召さない。そんな奴等を見返してやろうと躍起になってたら、この歳だ。あの人と同じ隊長にまで登ったが・・・この通り」
「その傷が無かったら、まだ騎士団に?」
「そうだなぁ・・・わからん」
「へ?」
「まだまだひよっこに負ける気はないが、田舎に行って畑を耕す生活ってのも、良いかもしれん」
正直、スカウトしたい人材ではある。
農業経験有りで、力もありそう。本人は年だなんて言ってるけど、ノナさん達やリシュナを見ていると、年齢って・・・と思う事もある。まぁ、種族的な事も関係あるだろうけど。
そう言えば、出会う人達の年齢が高い気がするなぁ。
「あの」
言いかけた時、割と近くでドーン!と何かが爆発する音が聞こえて来た。
「チッ・・・あの阿呆共!あれだけこの森の中で火炎魔法を使うなって言っただろうに!」
火炎魔法!?おいおい、そんなもんぶっ放したの!?
「すまん!話は後だ!」
そう言うと、本当に右足悪いの?と聞きたくなるくらいの速度で男性が走りだした。
「って、森が焼けたら私も困る!」
慌てて後を追っていくと、生木の焼ける匂いと煙が漂って来た。
「囲い込め!手の空いてるやつは火を消せ!」
燃えていない木に登り、上から見てびっくり。
鎧を着た若者達が、巨大なイノシシを取り囲んでいた。
剣を持っている人もいれば、杖を持っている人もいる。
「あの剣じゃ、無理だろぉ」
イノシシの牙よりも細く、短い。それに、その剣を持っている騎士達の、何とも頼りない事。
震えて腰を抜かしている者。辛うじてイノシシに剣を向けているが、剣まで震えている者。
杖を持っている者も、消火しようにも水道ホース並みにしか水を出せていない。
「もう!森が燃えるだろうに!」
木の一番上まで登り、水魔法で水球を作り出した。
その水球を平たく伸ばし、一気に水を降らせた。
畑に水をやる時に使っていたやり方だが、威力は数十倍。
下にいる騎士達?そんなものは自業自得です。死にはしないだろ。
念の為に、周辺にも同じように水を降らせた。これで、燃え広がる事は無いはず。
「ふぅ・・・」
木の途中まで戻ってみると、騎士達は倒れているか腰を抜かしているかになっていた。
そして、巨大なイノシシに対峙する、一人の男性。
「お、さっきの人だ」
ずぶ濡れになっているが、大剣を左手で持ち、イノシシを真っ直ぐ見据える。
そしてイノシシがふらついた瞬間、男性が踏み込んで一刀!
イノシシは一瞬片肘をついたものの、直ぐに持ち直した。
両腕だったらと想像して、ゾワッとした。
「手伝おうかぁ?」
一応声を掛けておかないとね。
「確かに、猫の手も借りたいところだがな。女の手を借りたとあっちゃぁ、男が廃るってもんだ!」
おや、性別バレてら。
男性が跳躍。イノシシの頭の上まで飛ぶと、そのまま大剣をイノシシの眉間に叩き下ろした。
「ブモォォォ!」
イノシシは雄たけびを上げると、そのまま横に倒れた。
ズシン!と音が響き、イノシシはピクリとも動かなくなった。
「おいおい。あれが今日で引退とか、何の冗談だ」
目が合うと、親指で食事をした方を指した男性。
待っててくれって事かな。
何も言わずに頷いて戻ると、転がっていた女騎士はいなくなっていた。
「お茶でも飲んで待ってようか」
「キュ」
それから三十分も経たずに、男性が戻って来た。
「お疲れ様」
「おお、助力ありがとうな」
「バレたか」
「あんな都合よく局地的な雨なんて降らないだろ」
ですよねぇ。
お茶を飲んで一息。
「改めて、俺の名はエストだ」
「私はヒナ。この子はクロ」
「ヒナ、本当に感謝する。お前さんのおかげで、最後に死人を出さずにすんだ」
「私がやった事なんて、雨を降らせたくらいですし。後は、エストさんの戦いっぷりに驚いたくらいで」
「おいおい、そんな堅苦しい話し方はよしてくれ。エストで良い」
「わかった」
エストはゆっくりと息を吐くと、右肩をさすった。
「最近の傷なの?」
「十年前のだ。普段は良いんだが、少し動くと、な」
少しとは。
「さっきの答えだが」
「ん?」
「この身体がもし治ったら」
「ああ」
忘れてた。
「もしもこの身体が治ったら・・・やはり俺は騎士団を辞めるだろうな」
「え・・・意外。てっきり、さっきの人達を鍛え直す!とか言うのかと思った」
「はは!それも良いが、俺じゃ無理だ。それに、引き際ってもんがある。年寄りがいつまでも上に乗っかってると、下が育たないからな」
なるほどねぇ。
「行くあてはあるの?」
両親と住んでいた村は追い出されたと言っていたな。
「まだ決めてない。家族もいないし、気長に探そうと思ってな」
「ふむ・・・じゃあ、うちに来ない?ちょっと辺鄙な所だけど、衣食住は保障する」
「ほう?随分と気前が良いな。こんな爺に」
「もちろん、働いてもらうよ?うちは自給自足を目指しているからね。畑や果樹園がある」
「そいつは有難いが、俺はこの身体だ。本当に良いのか?」
「それなら、はいこれ」
ポーションを取り出して、エストに渡した。
もちろん、世界樹の秘薬だ。
「こいつは、ポーションか?」
「正解。とは言っても、今飲むことはお勧めしないかな」
エストが一瞬怪訝そうな顔をしたが、ポーションが何か気付いたようだ。
「おいおい、そんなもん」
「ああ、それを渡したからって、うちに来る事を強制はしないよ?飲んだ後で、やっぱり騎士団に戻りたいって言うならそれでも良い。但し、私の事は一切口外しない事」
私の素性は何も話していない。かなり怪しい猫だ。
だから、断られてもしょうがないと思ってる。
「そうだなぁ・・・十日。十日後、ここで待ち合わせってのはどう?来なくても、追いかけるとか探すとかは絶対にしない」
お互いに、知っているのは名前だけ。
エストは今日で騎士団を引退するから、辞めてしまえば姿を消せる。
もしも騎士団に戻ったとしても、私はこの姿だから町に行くとは考えにくいだろう。
最悪、エストがポーションを国に献上して、私に追手がかかったとしても、島に戻れば問題無い。その場合は二度とこの国に来ないけど。
「わかった。十日後だな」
近くの木の枝に布を巻き、目印にした。
「ふぅ、やれやれ。さてと・・・あ」
一仕事終えたなと思って、ふと本来の目的を思い出した。
「いかん!急ごう、クロ!」
「キュ!」
大急ぎで森の奥へと向かった。
「この・・・大馬鹿者がぁ!」
ゴン!と凄い音がして、女騎士が地面に倒れた。
また気絶しちゃったよ。
「いやぁ、申し訳ない」
突然現れたのは、女騎士と同じような鎧を着た大柄の男性。
一見、今駆け付けましたって感じだけど、女騎士が気絶した辺りから気配を消して木の陰に隠れてこちらを伺っていた。
「隊を離れてどこに行ったかと思ったら・・・本当にすまないな」
「・・・いいえ。実害があったわけじゃないので、特になんとも」
グキュルルル、と盛大な音が響いて来た。
あんたもかい!
「・・・食べます?」
「良いのか?」
男性がチラリと女騎士を見た。
「まぁ、それにはあげませんけど」
「当分起きないから良いだろ。その辺に転がしておけば」
おや、良い性格をしていらっしゃる。
ちゃんと私から離しつつ、男性を挟んだ反対側に置くあたり、部下思いではあるようだ。
「そんじゃ、ちょっと待ってくださいね」
焚火台の網の上に、新しいミトの実ウィンナーとパンを乗せて焼く。
「先にお茶、どうぞ」
「おお、すまんな」
コップを渡した時、男性の右腕が無いのに気付いた。
「はぁ~・・・年を取ると、どうにも温かいもんが良くなるなぁ」
「ははっ、そこまで年には見えないですけど」
「いやいや、実は今日の任務で引退が決まっててなぁ」
「引退?年齢制限でもあるんですか?」
身体付きと片腕が無いとは思えない動き、それに観察力。どれを取っても、引退が必要とは思えない。
「これのせいだとは思わないのか?」
男性が自分の右肩を叩く。
「十分強そうだなぁと思って」
「はっはっ!嬉しいねぇ。まぁ、実際は右足も右目も駄目なんだけどな」
「そんな事、初対面の私に言っても良いんですか?自分で言うのもなんだけど、怪しいでしょ」
「そうだなぁ・・・そこに転がってる馬鹿を、殺さずにいてくれた。その分の信頼ってとこだな」
信頼ねぇ。これっぽっちも思ってなさそうだけど。
「後は、年寄りの世間話ってとこだ」
「愚痴、ではないんですね。それが原因なら、辞めなければいけない、不満がありそうですけど」
おっと、ウインナーが焦げる。
パンに切り目を入れて、千切りキャベツと焼きたてのウインナーを挟む。
ケチャップとマスタードを掛けて。出来上がり。
「どうぞ」
「ありがとな!ん~、美味い!」
一口で半分行ったぁ!豪快だな!
「こんなに美味い腸詰、食べた事無いぞ!」
「そりゃどうも。クロのおかわりも」
「キュ!」
「・・・ドラゴンの幼体か。随分と懐いているんだな」
「まぁ、卵から孵したんで、半分親だと思ってるみたいですね」
「へぇ~、そいつは凄いな」
ホットドックのおかわりを、男性にも渡した。
笑顔で美味しそうに食べる姿は、爽やかで人好きそうな、イケオジ騎士って感じだ。
「俺は元平民でな。農民だった両親が亡くなり、この身一つで村から追い出された。腕っぷしだけはあったが、冒険者になろうとは思わなくてなぁ。町で喧嘩して、取っ捕まって・・・騎士団の隊長に拾われた」
う~ん、これは嘘じゃない。
「騎士団ってのはお貴族様が多くてなぁ。俺みたいな平民出は、お気に召さない。そんな奴等を見返してやろうと躍起になってたら、この歳だ。あの人と同じ隊長にまで登ったが・・・この通り」
「その傷が無かったら、まだ騎士団に?」
「そうだなぁ・・・わからん」
「へ?」
「まだまだひよっこに負ける気はないが、田舎に行って畑を耕す生活ってのも、良いかもしれん」
正直、スカウトしたい人材ではある。
農業経験有りで、力もありそう。本人は年だなんて言ってるけど、ノナさん達やリシュナを見ていると、年齢って・・・と思う事もある。まぁ、種族的な事も関係あるだろうけど。
そう言えば、出会う人達の年齢が高い気がするなぁ。
「あの」
言いかけた時、割と近くでドーン!と何かが爆発する音が聞こえて来た。
「チッ・・・あの阿呆共!あれだけこの森の中で火炎魔法を使うなって言っただろうに!」
火炎魔法!?おいおい、そんなもんぶっ放したの!?
「すまん!話は後だ!」
そう言うと、本当に右足悪いの?と聞きたくなるくらいの速度で男性が走りだした。
「って、森が焼けたら私も困る!」
慌てて後を追っていくと、生木の焼ける匂いと煙が漂って来た。
「囲い込め!手の空いてるやつは火を消せ!」
燃えていない木に登り、上から見てびっくり。
鎧を着た若者達が、巨大なイノシシを取り囲んでいた。
剣を持っている人もいれば、杖を持っている人もいる。
「あの剣じゃ、無理だろぉ」
イノシシの牙よりも細く、短い。それに、その剣を持っている騎士達の、何とも頼りない事。
震えて腰を抜かしている者。辛うじてイノシシに剣を向けているが、剣まで震えている者。
杖を持っている者も、消火しようにも水道ホース並みにしか水を出せていない。
「もう!森が燃えるだろうに!」
木の一番上まで登り、水魔法で水球を作り出した。
その水球を平たく伸ばし、一気に水を降らせた。
畑に水をやる時に使っていたやり方だが、威力は数十倍。
下にいる騎士達?そんなものは自業自得です。死にはしないだろ。
念の為に、周辺にも同じように水を降らせた。これで、燃え広がる事は無いはず。
「ふぅ・・・」
木の途中まで戻ってみると、騎士達は倒れているか腰を抜かしているかになっていた。
そして、巨大なイノシシに対峙する、一人の男性。
「お、さっきの人だ」
ずぶ濡れになっているが、大剣を左手で持ち、イノシシを真っ直ぐ見据える。
そしてイノシシがふらついた瞬間、男性が踏み込んで一刀!
イノシシは一瞬片肘をついたものの、直ぐに持ち直した。
両腕だったらと想像して、ゾワッとした。
「手伝おうかぁ?」
一応声を掛けておかないとね。
「確かに、猫の手も借りたいところだがな。女の手を借りたとあっちゃぁ、男が廃るってもんだ!」
おや、性別バレてら。
男性が跳躍。イノシシの頭の上まで飛ぶと、そのまま大剣をイノシシの眉間に叩き下ろした。
「ブモォォォ!」
イノシシは雄たけびを上げると、そのまま横に倒れた。
ズシン!と音が響き、イノシシはピクリとも動かなくなった。
「おいおい。あれが今日で引退とか、何の冗談だ」
目が合うと、親指で食事をした方を指した男性。
待っててくれって事かな。
何も言わずに頷いて戻ると、転がっていた女騎士はいなくなっていた。
「お茶でも飲んで待ってようか」
「キュ」
それから三十分も経たずに、男性が戻って来た。
「お疲れ様」
「おお、助力ありがとうな」
「バレたか」
「あんな都合よく局地的な雨なんて降らないだろ」
ですよねぇ。
お茶を飲んで一息。
「改めて、俺の名はエストだ」
「私はヒナ。この子はクロ」
「ヒナ、本当に感謝する。お前さんのおかげで、最後に死人を出さずにすんだ」
「私がやった事なんて、雨を降らせたくらいですし。後は、エストさんの戦いっぷりに驚いたくらいで」
「おいおい、そんな堅苦しい話し方はよしてくれ。エストで良い」
「わかった」
エストはゆっくりと息を吐くと、右肩をさすった。
「最近の傷なの?」
「十年前のだ。普段は良いんだが、少し動くと、な」
少しとは。
「さっきの答えだが」
「ん?」
「この身体がもし治ったら」
「ああ」
忘れてた。
「もしもこの身体が治ったら・・・やはり俺は騎士団を辞めるだろうな」
「え・・・意外。てっきり、さっきの人達を鍛え直す!とか言うのかと思った」
「はは!それも良いが、俺じゃ無理だ。それに、引き際ってもんがある。年寄りがいつまでも上に乗っかってると、下が育たないからな」
なるほどねぇ。
「行くあてはあるの?」
両親と住んでいた村は追い出されたと言っていたな。
「まだ決めてない。家族もいないし、気長に探そうと思ってな」
「ふむ・・・じゃあ、うちに来ない?ちょっと辺鄙な所だけど、衣食住は保障する」
「ほう?随分と気前が良いな。こんな爺に」
「もちろん、働いてもらうよ?うちは自給自足を目指しているからね。畑や果樹園がある」
「そいつは有難いが、俺はこの身体だ。本当に良いのか?」
「それなら、はいこれ」
ポーションを取り出して、エストに渡した。
もちろん、世界樹の秘薬だ。
「こいつは、ポーションか?」
「正解。とは言っても、今飲むことはお勧めしないかな」
エストが一瞬怪訝そうな顔をしたが、ポーションが何か気付いたようだ。
「おいおい、そんなもん」
「ああ、それを渡したからって、うちに来る事を強制はしないよ?飲んだ後で、やっぱり騎士団に戻りたいって言うならそれでも良い。但し、私の事は一切口外しない事」
私の素性は何も話していない。かなり怪しい猫だ。
だから、断られてもしょうがないと思ってる。
「そうだなぁ・・・十日。十日後、ここで待ち合わせってのはどう?来なくても、追いかけるとか探すとかは絶対にしない」
お互いに、知っているのは名前だけ。
エストは今日で騎士団を引退するから、辞めてしまえば姿を消せる。
もしも騎士団に戻ったとしても、私はこの姿だから町に行くとは考えにくいだろう。
最悪、エストがポーションを国に献上して、私に追手がかかったとしても、島に戻れば問題無い。その場合は二度とこの国に来ないけど。
「わかった。十日後だな」
近くの木の枝に布を巻き、目印にした。
「ふぅ、やれやれ。さてと・・・あ」
一仕事終えたなと思って、ふと本来の目的を思い出した。
「いかん!急ごう、クロ!」
「キュ!」
大急ぎで森の奥へと向かった。
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